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第32話 千恵子の結婚と欧州への出征

「高砂や」

 その声が流れる中、千恵子の結婚式に新婦の父として参列しながら、僕は思わず、参列者の一人に注目せざるを得なかった。

 その参列者、林忠崇侯爵は、この世界では、僕を自分の秘密の孫かも、と気づいたのだろうか。


 林忠崇侯爵が、実は僕の実の祖父かもしれない、というのを伝えたのは、村山キクの生まれ変わりの村山愛だった。

 愛は、村山キクの時に、林侯爵の告白を聞いていて、何の証拠もないし、真実は闇の中だけど、と前置きしたうえで、愛は僕にだけ、それを再会した後に伝えた。

 実際、僕でさえ確かめようがなかった。

 何しろそのことを良く知っている筈の僕の父方祖父母は、第一次世界大戦前に病死していたからだ。


 そして、史実では岸家と篠田家が大騒動になり、更に村山キクの相談があったことから、林侯爵は疑惑を持って調べ、僕が秘密の孫かもしれない、と察したが。

 この世界では、そんな騒動は無かった。


 また、千恵子の結婚にしても、林侯爵が手を煩わすようなことは、ほぼ無かった。

「実際の戦場で治療に当たった大和なでしこ」

 という軍医士官としての千恵子の評判は、それこそ代々、海兵隊の軍人を輩出している土方伯爵家の嫁に相応しい、という周囲からの評価を受けたからだ。

 父親が少々だらしなくても、本人が立派だからいいだろう、ということだ。


(それに一番、問題になりそうなアランが、既にスペイン内戦で初陣を飾り、スペインから受勲されていて、また、土方勇志伯爵から評価されていたのも、千恵子の評価が下がらなかった一因だった。

 千恵子と結婚させて、アランを義弟に迎えられるなら、と土方伯爵自らが陰では言ったのだ)


 そのために、この結婚の場には柴提督まで参列している。

 柴提督は、篠田千恵子の出産騒動で、危うく会津に帰りづらくなるところだったが(実際、史実ではそうなった)、僕が奔走して何とか収めたので、会津に問題なく帰れている。

 そして、忠子の堕胎騒動の際には、流石にそれは問題だ、と僕の側に立ってくれもした。

 林侯爵の葬儀では、柴提督が海兵隊の最長老として葬儀委員長を務められるのでは、と僕は想った。


 そんな想いをしつつ、千恵子の結婚式に僕は参列し、千恵子は無事に土方伯爵家に嫁いだが。

 世界は、それどころではない事態が起きた。

 言うまでもない、第二次世界大戦の勃発である。

 そのために、僕も総司も千恵子も欧州へと派遣されることになった。

 

 1940年春、フランスに着いた僕は、ジャンヌの家を訪ねようとしていたが。

 お邪魔虫(?)が3匹もついてきた。

 言うまでもない、千恵子に総司、更に土方勇である。


「何で父が訪問する先に、お前達がついてくるのだ」

「母さん3人から頼まれました。これ以上、兄弟を増やさないように見張ってって」

 僕のボヤキに、千恵子がいい、更に総司が追い打ちを掛けた。

「それに末の妹を訪ねるのは、兄として当然です」

 その横で、娘婿の勇も無言で肯いている。

 仕方がない、お邪魔虫付きで、ジャンヌの下を訪ねよう。

 僕は観念した。


 ジャンヌは、僕達を歓迎してくれた。

 ジャンヌの傍には、もうすぐ3歳になるファネットがいた。

 また、アラン夫妻も僕達を歓迎してくれた。

 アラン夫妻の養子、ピエールはファネットとほぼ同い年なので、ピエールとファネットが双子のように傍からは思える。

 そして、


「可愛い」

 兄姉3人は、ファネットに夢中になった。

 ファネットとは3人共に20歳程も年が離れているので、3人が兄姉というより、伯父伯母に僕には見えてくる。

 実際、ファネットとほぼ同い年のピエールからすれば、3人は義理の伯父伯母になる。

 それにしても、僕もとうとう孫ができる年になったか、と思わざるを得なかった。 

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