第1話 全身が痛い、頭も痛いのです
この当時の法律(主に旧民法)に基づいて、話を描いていますが、私は弁護士でも司法書士でもないので、前にも何処かで書きましたが、法学部の学生の居酒屋談義くらいのつもりで読んでください。
法律解釈等を間違っていたら、感想等で生暖かく、ご指摘ください。
(なお、主人公は基本的にダメ人間ですので、よろしくお願いします)
痛い、全身が痛い、何でだ。
僕は民宿に泊まっていた筈だ。
目を開ければ、状況が分かるのでは。
全身の痛みで、頭が回らない中で、何とか、その考えにたどり着いて、僕は目を開けた。
目を開けた瞬間。
「おお、気が付いたか。これなら、何とかなるかもしれん」
自分が目を開けたことに気付いて、偶々、傍にいた軍医が、僕に声を掛けてきた。
軍医?
しかも、あの軍服姿となると、第一次世界大戦時の日本海兵隊の軍医の軍服ではないか?
僕は休暇を取って、民宿に泊まっていた筈なのに。
夢の世界なら、全身がこれ程、激痛に苛まれる筈がない。
そう不思議に思いつつ、全身の痛みに苦しみながら、僕は考えている内に、ようやく状況が分かった。
過去の世界、自分が内心で考えていた望みが叶った世界に、僕はいるのだ。
だが、この世界に、本当に僕が飛び込んでいるのなら。
僕は、全身の痛みに苦しんでいた筈なのに、更に酷い頭痛が加わった気がしてきた。
僕が、自分の記憶の世界の中で、日本海兵隊士官になるのは2度目になる。
最初の時は、第一次世界大戦のヴェルダン要塞攻防戦において、僕は名誉の戦死を遂げた。
そして、21世紀に自分の玄孫として生まれ変わってきた僕は、最初の時に関係を持って、子を生した4人の女性の生まれ変わり(彼女達も玄孫として生まれ変わってきた)と再会した。
だが、問題はその時に、僕は大卒の新人教師だったのに対し、他の4人は小学校を卒業したての女学生だったことで。
しかも、再会した時に5人全員の記憶が一時に戻ったことから、記憶が混乱した末に、4人の女性は酷い修羅場を演じてしまった。
そのために、僕は小学生の女の子4人に手を出した鬼畜ロリコン呼ばわりされる羽目になった。
更に彼女達4人も、酷い濡れ衣を被る羽目になった。
お陰で、自業自得と言えば、自業自得だが。
僕は海兵隊士官に志願して、国連平和維持隊任務に何度も赴くことで、半ば国外逃亡する羽目になり。
彼女達4人は、6年程、フランスに留学して、ほとぼりを冷ます羽目になったのだ。
そして、6年後、彼女は海兵隊に兵として志願し、僕と再会したという次第だった。
だが。
そもそもの発端は、岸澪が切れたことだった。
「「はい」」
「いつも、済まんな」
ジャンヌ・ダヴーと土方鈴は、僕の癖や思考を先回りして、大抵は行動してくれる。
その理由はというと。
「だって、50年以上、内妻として暮らして、最期を看取った仲だし」
「私は、それこそ彼を幼い頃から知っていて、最期まで看取ってもらえたし」
そう、二人共に自分の願いが叶った過去の異世界で、僕と長年、連れ添った経験があるからなのだ。
しかし、澪の願いが叶った過去の異世界は、ジャンヌと同じ過去の異世界で。
鈴が行った世界では、僕と澪は知り合ったが、澪は別の男性と結婚していた。
一方、ジャンヌが行った世界では、僕と澪は結婚していたが、澪が女性解放運動に奔り、家をないがしろにしたためもあり、僕は澪を捨てて、ジャンヌの下に去ったという次第になる。
お陰で、澪は意固地になり、衆議院議員にまでなって、それなりに活躍したのだが。
ともかく澪としては、悔いが残っており、それを見せつけられたのだ。
「納得いかない。何で正妻の私の下に帰ってこなかったの」
「「「自業自得でしょ」」」
澪がとうとう切れたが、愛を含めて、ジャンヌも鈴も、この件では澪に冷たい。
そして、澪は僕に矛先を向けてきた。
「あの民宿に私と泊まりに行って」
澪は、僕に強く求めた。
そう、僕の泊まっていたヴェルダン近郊の民宿は、心の奥底で自分の願いが叶った過去の異世界へと赴けるかもしれない宿なのだ。
澪の要求を聞いた3人は、それを聞いてうごめいた。
ご感想等をお待ちしています。