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拾い物。

そう、あれは夏休みも終わってすぐの頃。


さてと、授業も終わったし帰りましょうかね。

荷物をまとめて席を立つと、廊下に出て端っこを歩きながら思索に耽る。

(ふーむ、やっぱりここはこっちの方が……いやそれは流石に冒険か、ふむ……)

そんなことを考えていると、人間という生き物はどうも前が見えなくなるものらしい。例えそれが天地を繋ぐ混凝土の柱であっても、だ。

「あうっ」

進路をまともに塞がれてヘディング。いたい。

さて、とりあえず目撃者は…………お、ミ・ツ・ケ・タ・ゾ。

「はいちょっとそこの人いいかなー、んー?」

目線が合った瞬間逃げ出そうとした子の肩をがしりと掴んで引き寄せる。

「ぼ、ボク何も見てないよ」

ふるふると首を振る。相当怯えてるね、ここにマジックがあったらおでこに縦線を書き加えてあげたい。かきかき。

「ふぅん、じゃあ何を見たのかな? お姉さんに教えてごらんなさい? 」

「だ、だから何も見てないってぇっ、それにお姉さんってキミそのリボンは同級せ」

「はーい、聞かれたことだけに答えてね? 」

さもないと上からギュッとして密度をあげるからねー? ぎゅっぎゅっ。

「ひいっ!? ほんとに何も見てないってぇっ!? 」

うーん、口の固い子だなぁー。さもなくば、こうだぞー。

「えいっ」

「むぐぅっ!? 」

手提げに入れていた巾着から飴玉を取り出してこの子の口に押し込む。あ、ちゃんと紙は剥いたからね。

「はーい、素直になーれ」

「むぐむぐ……あれ、これおいし…………っ!? 」

お、早速効果が。

「ぼ、ボクに何を食べさせたのさっ!? 」

「んー? ヒミツ。でもポカポカしてきたでしょ? 」

「うぅぅぅー……」

「さ、まずは名前から聞こうかな? 」

「か、カケイ ナミ……」

「ふーん、ナミちゃんかー。漢字はー? 」

「な、菜っ葉の菜に、翠……」

「そっかそっかー、じゃあ菜翠ちゃん。さっきの、見た? 」

「み、見ました…………柱に頭ぶつけてるとこ…………」

「そっかそっか、正直でいいね。じゃあねー、忘れて? 」

ちょっと可愛く言ってみる。自信作だよ、どやぁ。

「わ、忘れる忘れるっ!! だからこれ治してぇっ!? 」

「治す? どうやって? 」

きょとん。おまけに小首を傾げてこてん。

「えっ……これ、治せないの」

さぁぁっと血の気が引く音。

「治すも何もー、それただの生姜とシナモンの飴だよ? 」

「…………へ? 」

「ポカポカしたでしょ? 」

へなへなと崩れ落ちる。忙しい子だなぁ。

「だ、騙したなぁ…………」

へにょーん。なんかかわいい、よしよし。

「菜翠ちゃんが自分で勘違いしたんでしょー。でも、美味しかったでしょ?」

一通りよしよしした後、またカバンを拾って歩きだす。

「じゃあねー、また欲しくなったら2-2に来てね」

「お、覚えてろー!!」

ぺたんと床に座ったまんま捨て台詞を吐く。あれ、捨て台詞って逃げながら言うやつだっけ? うーん、忘れた。




さてさて、行くアテもないしどこに行きましょうかね。とりあえずこういう時は図書館が安牌ですかねぇ。

と、言うわけで図書館やってきましたよわぁぱちぱち。…………とはいっても特に読みたいものはないのですがねぇ…………ほよ?

本棚の前で背伸びする影を発見。むむ、またしてもちびちゃんですな。その指先には……わー難しそーですねーこの本。

つつつと後ろに近寄って、そっと背後に並んで、ぴたっと本棚と僕でその子をサンドイッチ。

「むぐー!? 」

ごちん。あらあらおでこが棚とディープなキッス。

「これですかねぇ」

指先にあった本をひょいと抜き出してその子の頭に載せる。

「小難しいのばかり読んでると頭固くなりますですよー」

ひらひらと手を振って歩いていく。いいことをしたあとは機嫌がいいのです。

「ま、待ちなさいよあんた!?」

む、あんた呼ばわりとはひでーですねー。

「なんです? 」

「なんです? じゃないわよ!! 何してくれてんのよ、この私を本棚に押し付けて、あげくに変な本を頭に載っけて…………」

「変な本とは失礼ですねー。さっきあなたが取ろうとしていた本デスよ?」

「私が欲しかったのはその隣のよ」

「あーそうですかー」

しょーがないですねー、僕は踏み台じゃないのですけどねー。

「ほら、これでいいのです? 」

その本をぺしんと頭に置くと、今度こそ歩いていこうとする。っと、服を掴まれた。伸びるからやめてほしいのです。

「……まだ何かあるのです? 」

「私に対しての謝罪がまだよね? 」

「あーはいはいごめんなさーい」

「何よそれ!! あんたね、」

「おっとストップ」

片手でその子の口を押さえる。これ以上騒ぐとみんなの迷惑なのです。僕にも一応常識はインストール済なのですよ。はい君もお口チャック。

「む、むぐーむぐー」

「はいはい行きますよー」

ずりずりずり。抱え込むようにして図書館から引きずり出す。む、いい感じの柔らかいものみっけ、むにむに。

ふう、なんとか図書館脱出。重かったのですむにむに。

「むー!!」

イテッ!? かかと蹴りとは失礼ですねぇ。

口を押さえていた手を離すと、

「何すんのよこのド変態っ!!」

的確な膝蹴りが飛んできて一歩後ずさり。あ、黒のえっちぃのだ。

「まぁまぁ落ち着くのですよ、周りの迷惑になるからご退出願ったのですよ」

「あんたの方がよっぽど迷惑よ!! 」

ぎゃーすかわーすかうるさい子ですねぇ。

「わかったわかった、じゃあ場所を変えてじっくり話し合いましょうか」

とんでもないものを拾ってしまった気がするのです…………

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