第28.5話 【3】ハーゼルン・オルローグの襲撃
第28.5話 【3】ハーゼルン・オルローグの襲撃
私を見失ったと、使用人たちが騒ぎ始めだしたころ。
「大変です!オルローグの手の者と思われる軍勢がこちらに向かっています。」
「すぐに戦闘班は戦闘準備に入れ!ソア様を見つけ次第、脱出班は撤退だ!」
どこからともなく、そんな言葉が飛び交っていた。
そんな中、ワースと合流した私は、一つ目のギフトを開放したことによる副作用に見舞われる。
といっても、筋肉痛の様な痛みが全身にあるくらいだった。
「お、お嬢様!こんなところに。ここは私達に任せてお逃げください!」
使用人の一人に見つかり、そう告げられる。
しかし、アネモネとワースを守ると決めたのだ。
私は逃げない。
「私は逃げないわ。オルローグと対峙し、ヴァルキュリス家を守る。」
決意を伝える。
「お嬢様……。その立派なご意志、感銘を受けました。しかしながら、私達は貴方を失う訳にはいかないのです。」
しかし、承認はしてもらえない。
承認を得るだけの信頼――、信頼に足る力を示さなくてはいけないようだ。
「大丈夫よ。ワースと私で撃退して見せるから。」
そう告げて、私はワースと共に外へと出る。
友を守る覚悟と、ヴァルキュリスの誇りを胸に秘め、信頼を勝ち取るための初陣が始まった――。
「ソア!もう来てる!」
まだまだ射程内ではないにしろ、敵の軍勢が迫っていた。
「報復には報復を……。手加減なしで行くわよ、ワース。」
逃げ場を無くすように敷き詰められた隊列。
その光景に臆する気持ちは一切沸いてこない。
「右、私がやる!ソア左任せる!」
ワースも同じ気持ちのようだ。
「わかったわ。」
無慈悲に奪っておきながら、更に奪おうと――、否、報復を恐れての殲滅だろう。
そんな弱腰の相手に、お母様とお父様が殺されたなんていまだに信じられない。
そして――、到底許せるものではない――。
「お母様とお父様を手にかけたことを……、ヴァルキュリスを敵に回したことを後悔させてあげるわ。」
包囲するほどの数を素早く削っていくしかない。
速度は重要だ。
『マーブルショット』
私が考えている隣で、ワースは躊躇いなく力を発揮する。
両指がら放たれた二つの光が着弾し、包囲の一角が崩れた。
「やれる!勝てる!」
その光景にワースは希望を見出し、次の攻撃に移る。
『マーブルショット』
またしても命中。
まだ射程には程遠いはずだが、力を得たワースには関係ない。
いきなりの攻撃に焦りを見せた軍勢は急いでシールドを展開した。
「青い光……、水属性の盾ね。火属性の攻撃を緩和する効果があるわ。」
私は両親が残したグリモアの知識から判断し、ワースに告げる。
「大丈夫!地属性は止められない!」
その忠告をお構いなしにと、ワースは再度2色の指弾を放った。
『マーブルショット』
赤い光がシールドで掻き消されるも、茶色い光の弾は敵兵に着弾する。
しかし、威力は半減しているようであった。
「さっきより威力弱まっている。シールドが厄介ね。」
私は更に考える。
スピードと威力、その双方を持ち合わせた攻撃――、そのイメージを思い浮かべた。
「鋭く、速く、突き刺すような……、光の如く放たれる一撃を……。」
イメージする。
そして、思い浮かんだ光の槍のイメージを、私は具現しようと試みた。
『ヴァニッシュスピア』
手の平に白銀の光が集まり、それは具現する――。
光属性をイメージして、白い光を集束させたはずだったが、透明にも近い白銀色の光がそこに集まっていた。
そして、狙いを定めて放つイメージを実行すると、それは瞬時に着弾までに至る。
「おお!ソア、その速度すごいな!」
隣にいたワースは率直な感想を述べていた。
「……そうね。威力も速度も私の想像以上だわ。」
イメージ通りの精霊術ではなく、その想像を超えるものである。
力を得た喜びと、制御に対する不安が同時に訪れていた。
『ヴァニッシュスピア』
不安を取り払い、制御も兼ねて再度放ってみる。
敵兵は、咄嗟に闇属性の盾でシールドを張るが、対極の光属性ではない白銀の光を止めることはできなかった。
「敵の包囲が乱れ始めている。ワースたたみかけるわよ!」
私は確信して咆哮する。
この力があれば、敵の襲撃を防ぎ大事な友を守れると――。
そして、お母様とお父様の仇を取ることができるのだと――。
それらの思いを全て込め、私はワースと共に力を揮ったのだった――――。




