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泡沫の夢を紡いで成る世界~序幕の為のプロローグ~  作者: 詩游燼
第5章 番外編~アナザーストーリー~
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第28.5話 【2】ソアとアネモネとワース

第28.5話 【2】ソアとアネモネとワース


 私は寝室へと向かう。


「アネモネ!私に力を貸して。」


 扉を開けてすぐに、私はそう告げた。


 青紫の綺麗な長髪に、タンザナイトの様な濃い紫色の瞳の少女――、アネモネ・リスル。

 その父、ロキウス・リスルが賢者の称号を得たことで、リスル家の跡目争いから脱出する名目でヴァルキュリス家に預けられていたのだ。

 実際は、ヴァルキュリスとのつながりを持とうとしたが、婿として送れる人物が居なかった為、使用人として仕えることで友好を示す為である。

 しかし、両親は私の友人として迎え、私もそれに納得していた。


「ソア……。お逃げになられたのでは?」


「私が貴方を置いていくなんてありえないわ。」


 アネモネの言葉に、私は突き刺さる痛みを覚えつつ返答する。


「それよりも、貴方の力が必要よ。私に貴方の英知を貸してほしい。」


 私は頭を下げた。


「あ、頭をお上げください。私の力が必要でしたら、いくらでもお貸しますので。」


 少し焦ったようにアネモネは答え、私の元へ歩み寄ってくる。


「ありがとう。」


「感謝の言葉も不要です。それより、私は何をすれば?」


 私も焦っているのだろう、それに気づいてか、アネモネはすぐに用件を要求した。


「ついさっき得たばかりの力を使ってオルローグの追撃を阻止したい。いい策はないかしら?」


 実際にはまだ得ていないが、女神は大丈夫だといっていた。

 ならばその力も使えるだろと想定し、アネモネに策を託す。


「その得た力が何なのか……、本来それによって策は立てるものですが、ひとまず今理解している戦力での対抗策を考えてみます。」


「お願いするわ。」


 無事にアネモネの協力を取り付けた。

 一つ目の不安を解消し、私は寝室から退出しようと扉へ向かう。


「ワースの元ですか?」


 何も伝えていなかったが、アネモネは私の次の行動を言い当てた。


「ええ、そうよ。」


 屋敷内を探し回ろうとしていた私に、アネモネはヒントをくれる。


「でしたら、玄関口の大広間にワースはいるかと。」


「ありがとう。行ってみるわ。」


 私はそう言い残し、ワースの元へと向かった――。






 玄関の扉を目の前にし、仁王立ち姿の少女を私は見つけた。


「ワース、ここにいたのね。」


 アネモネと同じ青紫の髪を、両サイドでツインテールにし、トパーズの様な黄色い瞳の少女――、ワース・オブレイオン。

 彼女もまた、オブレイオン家とヴァルキュリス家の結びつきを強めるためにと送られてきたのである。

 アネモネと同じく、実家に居辛い境遇であった為、帰還するようにと通達が着た今でもここに留まっていた。


「ソア!ここは任せて逃げろ!」


 振り返ったワースはそう私に告げる。


「それはできないわ。ここは私達の家じゃない。」


 しかし、私がワースを見殺しにすることなどあり得ない。

 それは彼女もわかっているはずだ。


 そう――、だってここは、〝私達″の家なのだから――。


「攻めて来られたら私達では勝てない。ソアが生きていたらヴァルキュリスは再建できる!」


 ワースらしい、言葉足らずだが一言一言に気持ちのこもった言葉。

 そんな彼女の思いが私に向けられているからこそ、私は彼女を守りたい。


「私にはとっておきの力があるわ。アネモネも作戦を立ててくれている。だから、戦うなら私達で力を合わせて戦うのよ!」


 思いを乗せて言い放った。


「それなら私ももらった!だから私で大丈夫!」


 ワースはそう言い、両手の親指と人差し指を立て手で銃を表現する。

 そして、左右の人差し指の先に赤い光と茶色い光を各々集束してみせた。


「二属性の精霊術を同時に……!」


 私の知っているワースは、一度に二つの属性を放ったことなど無い。

 つまり、ワースもドロシーからギフトを受け取ったと言う事だ。


「ワースも女神と会ったのね。」


「ソアもなのか!?私はまだ一つ目だけ!」


 一つ目。

 すでにワースはギフトの一つを開放したと言う事になる。


「私はまだだけど、その時がきたら開放するわ。ワース、一緒に戦うわよ。」


 正直虚勢のようなものだ。

 しかし、彼女一人で戦わせるわけにはいかない。

 アネモネもワースも、親友であり家族だからだ。


 それと、一つ目の解放をしたと言う事は、ワースは覚悟を見せたのだろう。

 ワースの覚悟――、それが私を守ることだとするなら、私はワースとアネモネを守る覚悟を見せればいい。


 私の覚悟は、既にできている――!


 そう強く心に決めた時――、私の中で唐突に、何かが開いた――――。

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