第15.5話 【4】エピローグ
第15.5話 【4】エピローグ
遊戯邸の屋敷につき、あたしはメーディスからハウスメイトを紹介される。
ドランクの世話係筆頭のメーディス・ラ・フラン。
その補佐をしているエル・アストリーゼ。
情報収集の為各地を転々としているリーネ・フレイン。
その誰もが美人と言う――、正にハーレムであった。
そして、もう一つ共通するものが、全員巨乳と呼ぶにふさわしく、豊満な胸をお持ちであった。
なるほど――。
これならあたしの体に興味を示さなかったのも納得だ――。
それから数年が経ち、あたしは15歳くらいになろうとしていた。
「なぁメーディス。この肖像画の人って誰なんだ?」
屋敷の一番目に付くところに飾られた肖像画。
それなのに、この人物のことについて誰からも聞いたことがなかった。
「ああ、エイリス様ですね。」
あたしは初めて肖像画の人物の名を知った。
「誰なんだ?その……エイリスって言うのは?」
特に興味があったわけではないが、せっかく名前を聞いたのだからと、話を深堀してみた。
「エイリス様はドランク様の奥さまです。もうお亡くなりになられましたが、私はよくお話をさせて頂きました。」
なるほど。
ドランクには妻がいたようだ。
数年一緒に暮らしていたはずなのに、あたしはそんなことも知らなかったのか。
あたしはその話で納得できたことがあった。
あたしを含め、数年間一緒に暮らしていながら、ドランクとそういった関係の話しを耳にしたことは一切なかった。
出会った頃に言われた通り、ドランクが巨乳にしか興味が無いのなら、メーディス達は関係を持っていてもおかしくはないはずである。
それでも噂の一つすら聞かないと言う事は、あっち専門ではないのか?と、疑いを持ったくらいだ。
ドランクにとって、エイリスはよほどの存在だったのだろう。
そう思うに至った。
「なぁメーディス。」
「はい、なんでしょう?」
思うに至り、あたしはもう一つ気になる事があった。
「エイリスって……、その、やっぱり大きかったのか?」(胸的な意味で!)
「とても大きな方でしたわ。」(人として)
「やっぱりか……。」
メーディス程はないが、あたしも十分成長した。
自分でもびっくりするくらい、あたしの胸は大きく育っていたのだ。
何ならまだ大きくなる可能性もある。
それでも手を出してくる素振りは一度も見せない。
やはり、エイリスの胸がとてつもなく――、メーディス程の胸の持ち主がとても大きいと言うだけあって――、うん、とにかくすごかったのだろう。
このままでは勝てる要素はないか――。
「……。」
――って!あたしは何を考えているのだろう。
「また今度、エイリス様についてお話いたしますね。」
「あ、ああ……。」
そう言ってメーディスは去っていった。
あたしはこれからどうするのだろうか。
本当はそう言う事をしてみたいのだろうか――。
そんなことを考えていると、外に出ていたドランクが帰宅してきた。
「おお。めずらしいな。今日はユナがお出迎えか。」
「べっ、別に待ってたわけじゃない……。」
あたしは何を動揺しているのだろうか。
「そうか、まぁいい。それよりも、明日行くところがあるんだが、ついてくるか?」
あたしの動揺に気付いてはいないようだ。
それと、珍しくあたしに同行を求めてきた。
「何処かへ行くのか?」
「ああ。この肖像画の人物と、旧友の眠る場所にお参りだ。」
どうやら亡くなったエイリスのお墓参りに行くそうだ。
メーディスから話を聞いていなければ、多分断っていただろう。
しかし、話を聞いたからこそ、行ってみたくなった。
「別に用事もないし、ついてくよ。」
あたしはそう答え、自分の部屋に戻っていった――。
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(21.5話)
魔王城から遊戯邸への帰宅途中――、あたしはその日の事を思い出していた――。
声を掛けられた翌日。
ドランクと一緒にウィンディーネの孤島と呼ばれる場所まで船で行き、墓前に花と酒をお供えした。
普通は故人の好きだったものを供えると思うのだが――、明らかに酒はドランクの趣味だろう。
供えて、拝んで、その後すぐに酒を飲み始めていた。
墓標のような石には、エイリス・リネと、その上にアルテミスという名前が掘られているだけで、周りには雑草が生い茂っている。
手入れの雑さはドランクの性格が現れているようだった。
これは頻繁に手入れしていかないといけない。
なぜか、そう義務感に駆られた瞬間であった――。
「そういえば今年は行ってないな。」
あれ以来毎年のようについて行き、あたしが筆頭で手入れをしてきた。
しかし、今年はついていけなかった。
烈風の剣の調査と言う仕事があった為である。
「あたしが行かないと、いつか墓標が隠れるくらい埋もれてしまいそうだからな。」
そう独り言をつぶやきつつ、船を漕ぎながら目的地を目指す。
そして、ふと自分の言った言葉の中から、気になる事を発見する。
「墓標の名前……、あれ?たしかアルテミスって……、死んだ旧友の……、だったような?」
確かに墓標にはアルテミスの名前が刻まれていた。
何度も墓参りに同行したからこそ、あたしは明確に覚えている。
「偶然……、だよな?」
これもドランクに聞いてみなくてはと思い、あたしは漕ぐスピードを速めるのであった――。




