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第43話 同行者

第43話 同行者


 翌朝、私は後悔していた――。


「セセラまでは350ランク、そこから海路でルホラへ渡るのに520ランク。」


 アルテミスの奢りと言う事で、調子に乗って3軒――、甘味処をハシゴしたことが、ここに来て痛手となっている。


「ニーズからイーヴァンまでは750ランク掛かるから、全部で1620ランクになるね。」


 折角なので、旅猫を利用しようと言う事になったけど、思いの外目的地までは距離があるらしく、猫車代の見積もりの時点で、既に高額な代金がはじき出されていた。


「セセラまでは一人100ランクの定期便に乗るとしても、海路は二人料金で520ランクは変わらないし、イーヴァンには定期便はないからね。安い方を選んでも1470ランクは掛かるかな。」


 決して払えない額ではない。

 かといって、簡単に支払うには少し躊躇われる金額だ。

 そもそも、人間領域で流通しているベルクス通貨しか持ち合わせていないのだけど、換金するにしても、100ベルクスで1ランクの交換率である。

 ベルクスの使いどころがないにしても、ぼったくり感が否めない。

 それに、これからも旅が続くことを考えれば、ここでの高額出費は後の後悔につながりそうだ。


「セセラまでを定期便で行くとして、海路は飛球で何とかなるかもしれないか。問題はその後、遊戯邸までを歩くかどうかだな。」


 提示された金額を参考に、アルテミスから方針が述べられる。


「ルホラから少し南西に行ったニーズという町に旅猫の支部があるんだけど、何か用事があれば同乗のお誘いができたんだけどね。これから僕は、また北の方へと行かなくちゃいけないんだ。」

「さすがに何度も世話になるわけにはいかない。気持ちだけ頂いておくよ。」


 シャオルの気遣いにアルテミスが礼を述べ、私達は一礼をしてから受付を後にした。

 すると、丁度入れ違いに、肉付きの良い小太りな男が受付にやってくる。


「ヘスター殿。急で申し訳ないが、フランまで往復を頼めないだろうか?」

「これはこれは、オストレア殿。いつものでよければ直ぐにでも出せるよ。」


 男は受付にではなく、シャオル本人に依頼を述べていた。

 直接依頼を頼むなんて、お得意様とか何かなのだろう。

 そんなことを考えながら入口へ差し掛かった時、私達はシャオルから急に呼び止められた。


「アルテミス殿とヨヅキ殿!ちょっといいかな?」


 何か忘れものでもあっただろうかと、不思議に思いつつ振り返る。


「あちらのオストレア殿がフランに行かれるみたいなので、護衛の名目で同乗させてもらうってはどうだろう?フランはイーヴァンの東に位置する町だけど、遊戯邸までの距離は左程変わらないと思うよ。」


 目の前までやってきたシャオルから提示された内容は、正に渡りに船だった。


「見ず知らずの私達が同乗させてもらっても大丈夫なのかしら?」


 しかし、本人の確認もなく、見知らぬ私達を易々と同乗させていい筈がない。

 そんな思いから、質問の言葉が出ていた。


「問題ないと思うよ。」


 しかし、あっさりと私の懸念は否定される。


「殺気とか悪意に敏感なもぐにゃが腕の中で眠るくらいだからね。それに、二人ともかなり強そうだし、危険が迫っても解決してくれそうだ。」


 納得のいく説明を受け、後はオストレアと呼ばれていた男がどうするかだ。

 シャオルはこう言ってくれているけど、同乗させてくれるかどうかは依頼主であるオストレア氏が決めることになる。


「私は構いませんよ。お二人が護衛をしてくれるのであれば、道中は何も心配いらないでしょう。」


 オストレア氏の回答もイエスであった。

 それに、何故か高評価を受けている。


「申し遅れました。わたくしは商人グループ、大商連だいしょうれんの代表をしております、ハンミルド・オストレアと申します。」


 男は簡単な自己紹介をし、アルテミスの方へ視線を向けた。


「貴方がアルテミス殿ですね。85年前の大戦では、我々妖魔種となった身の者達に尽力いただき、誠に感謝しております。よろしければ、道中その時のお話でも、お聞かせいただけると幸いです。」


 ハンミルドはアルテミスの手を握り感謝の意を伝える。


「そう言われると断りにくいな。あの時は、もっと他にやりようがなかったかと後悔もしていたが、私達の判断によって救われた方がいたのであれば、気が晴れる思いだ。」


 アルテミスもそれに手を添え、返答していた。


「決まったようだね。それじゃあ猫車を一台準備させるから、少しだけ待っててね。」


 二人の様子を見て、シャオルは手際よく猫車の準備を指示する。


「出来れば僕もその時の話を聞きたいところだけど、また機会があれば、旅費代金の代わりに話を聞かせて貰えると嬉しいかな。」


 準備の指示を送りながら、シャオルは少し残念そうに呟いていた。


「そんなに面白い話でもないが、旅費が安く済むなら喜んで話そう。」


 そんなシャオルに対し、少しでも気が晴れればと思ってか、アルテミスは話しの約束を交わす。

 こうして、私達はハンミルドの猫車に同乗し、彼の目的地であるフランまで向かう事となった――。

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