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第58話ただの馬鹿ではないみっちゃん

 違う。

 そうじゃ無いだろ。

 何かと理由を付けて逃げる。

 周りからどうのこうので呼び方を変えるのはおかしい。

 みっちゃんだって、俺だけが写る写真を持っている。だから、山野さんが俺だけが写る写真を持っているのは当たり前で、『俺の事が気になってるんですか?』と聞くのはおかしい?


「臆するな」

 コスプレ衣装を着替えている山野さんが生徒会室の中から出て来るのを待っていた俺は今一度、自分の愚かさを嘆く。

 何かと理由を付けて臆病になって……

 それじゃあ、いつまでたっても山野さんと付き合えるわけが無い。


 

 沸々と煮え滾る思いに従え。

 手を強く握りしめ、俺は山野さんが着替え終わるのを待つ。


 そして、着替え終わり生徒会室の中から出てきた山野さんに言う。


「あ、お帰りなさい。ところで、山野さんって、俺の写真を持ってるとか俺の事が気になってるんですか?」

 やや理屈をこねて回りくどい、研ぎ澄まされていない汚い言葉。

 当たり前に、そして、当然の様に。

 出てきた山野さんに聞いた。


「ふぇ!? って、いきなりそう言う風に聞いて来るとか卑怯だよ間宮君!」

 驚きと焦り。

 それが見て取れるだけで聞いた価値はある。

 俺の事をタダの友達でなんともないとしか思っていない。

 少なくともそうでは無い事が分かっただけで今日は十分だ。


「ちょっと気になっただけですって。まさか、そのご様子は……」

 含みを持たせた感じを装う。

 そんな俺に対して山野さんはというと気恥ずかしさ満点で俺のでこに向かって指を伸ばし……。

 ペチン。小気味の良い音。

 音の正体は山野さんが放つデコピンの音だ。

 痛さ的にはそこそこであるが、激痛ではないと言う何とも良いラインの反撃だ。


「まったく、そう言う風にからかうと、今この時みたいに助けてあげないよ?」


「すみません。つい、出来心でからかいたくなったんです」


「はあ……。あの、優しかった間宮君はどこに行っちゃったのやら」

 答えは出切っていない。

 でも、それでも少しは心がすっきりした。






 そんな、ちょっとした山野さんへの探りをした日の夜。

 みっちゃんから送られてきたアホヅラな俺の写真について改めて追及すべくメッセージを送る。


『おい、お前。俺のアホヅラの写真以外にまだ隠し持ってないだろうな?』 

 数秒後。


『え? 持ってるけど? てか、助かったってメッセージを送ってきたのは何?』

 みっちゃんからさも当たり前のような返事が返って来た。


『助かった……はまあ、気にするな。で、アホヅラ以外はどんな写真を持ってるのか教えろ。さもないと、俺も報復するからな?』


『え~、それは困るかも。しょうがないなあ。後は写真を無理やりデータ化したこんな写真とかだって』

 送られてきたメッセージ。

 それは無理やり写真をデジタルデータに変換したものだ。

 写真の内容。

 それは……なんというか懐かしかった。


『懐かしいな。俺達の小さい頃か』


『でしょ? まあ、昔のだから無理やりデータ化したせいでぼやけちゃったけど』


『確かにな。ちょっと、ぼやけてる』

 送られ来た写真は小さき頃の俺とみっちゃんが写っている写真。

 そう、俺とみっちゃんは忘れがちだが幼馴染である。


『もちろん紙の方もあるよ? こっちは一応保険としてデータ化しただけだし』


『だろうな。で、この写真は誰かに見せてないだろうな?』

 小さい頃の写真を誰かに見られるのは恥ずかしい。

 誰かに見せていないかみっちゃんに問い詰めた。

 

『うん! 見せたよ!』

 元気満点なみっちゃんが容易に想像できる。

 と、そう言えば俺の今この住んで居る部屋の隣がみっちゃんが使っている部屋だった覚えがある。

 なんかムカつくし、壁ドンしてやるか。

 そこそこ分厚い、マンションの壁と言えど伝わるだろう。


 軽い気持ちでドンと壁を叩く。

 すると、とある人から電話が掛かってきたので出る。


『その、いきなり、壁を叩くとは何事かしら?』


『あ、はい。すみません。みっちゃんが俺の部屋の隣が私の部屋だよ~とかほざいてたので。つい』


『まったく、哲郎君のせいでびっくりしてお茶をこぼしちゃったじゃないの。次、壁ドンしたら怒るからその辺は覚悟しておきなさい? 良い?』


『はい、ほんとすみませんでした』


『分かれば良いのよ。分かれば』

 そして、プツンと切られた電話。

 で、俺はすぐさまみっちゃんに電話を掛けた。


『おい、お前。謀ったな?』


『あはは、私がうざい事を言った時に、私がお隣だよ~とか言っておけば、本当のお隣であるお姉ちゃんの部屋に壁ドンして怒られるかな~って。てへ?』


『あのなあ……。というか、お前、さっきはうん! みせた! ってメッセージを送ってきたけど、いったい誰に見せたんだよ』


『うそうそ、ほんとは見せてないよ~だ。だって、あんな写真、友達に見せたら哲君との関係を疑われるからね』


『それなら良い。ったく、本当にお前ってやつは』

 とまあ、それから色々とみっちゃんに常日頃の文句を言う俺であった。



 

 みっちゃんとの電話を終えた後の事だ。

 そう言えば、母さんが成長する俺が写る写真を焼き増しして、俺に持たせたアルバムの存在を思い出す。

 パラパラとめくって中身を確認しただけだ。

 みっちゃんが俺の小さい頃の写真という周りに見せつけたら、俺へダメージを与えられるような物を持っている。

 という訳で、俺もあいつにダメージを与えられる写真を確保しておこう。

 そう思い、アルバムを取り出す。

 なあに、ここには引っ越してきたばかりだ。

 どこに物があるのかなんてすぐに思い出せる。


 そうして、出されたアルバムを見て呟く。


「懐かしいな」

 お、これはみっちゃんへの嫌がらせとして使えそうだ。

 これは絶対に周りに見せられない。

 だなんて、色々と考えながらページをめくり続ける。


「っと、そう言えば」

 ふと思い立って、携帯を取り出した。

 そして、俺は山野さんから送られてきたと不思議の国のアリスのコスプレをした山野さんが写る写真を見つめる。


「可愛い」

 その一言に尽きる。

 というか、地味に山野さんが写る写真ってこれしか持ってないのでは?

 撮った記憶がないぞ?


「……欲しい」

 もっと、欲しいなあと思いながら俺はデータを本体メモリから外部メモリにもバックアップする。

 小さい頃の俺とみっちゃんが映る写真。

 それを見た俺は嘆く。


「みっちゃんとじゃなくて、山野さんと一緒に写った写真が欲しい」

 山野さんと一緒に写る写真が欲しいなと思いながら、小さい頃の俺が写るアルバムをめくって行た時だ。

 ……ん?


「この子は……誰だっけか?」

 みっちゃんではない女の子と写る写真が見つかった。

 こんな写真、いつ撮ったのだろうか? と頭をフル回転させるも思い出せない。

 仕方がない、ここは姉さんにでも聞くか。


 そう思い、リビングに向かうと姉さんはぐったりとしながらお酒を飲んでいた。


「姉さん。ちょっと良いか?」


「はい。いいですよ~」

 ぽわぽわとした雰囲気が漂う姉さんにアルバムを見せて、俺と一緒に写るこの女の子は誰なのかと聞いた。


「ああ、その子ですか……。たしか、夏休みの間、田舎に遊びに来てた子だった気がします。名前は~思い出せませんね。まったく、年を取ったもんです」


「っと、明日も早いんだろ? 程々にな?」


「はい。きょうはこの缶で辞めときます」

 リビングでくつろぐ姉さんの元から自分の部屋へ。

 姉さんですら、分からなかった謎の女の子。

 一体、名前は何だったのだろうか? ともやもやとした気分。


「みっちゃんに聞くか」

 そう思い、みっちゃんに携帯のカメラで無理矢理データ化した俺と謎の女の子が映る写真を送るとすぐ様に電話と言う形で返事が返って来た。


『哲君、さっきぶり! それお姉ちゃん!』


「は?」


『まったく、私がさすがにお姉ちゃんを哲君にただ単純にお似合いだ~って勧めてるわけないじゃん。哲君とお姉ちゃんがひと夏のランデブーをしてたから、良いんじゃない? って感じでくっ付けようとしたわけ』


「おいおい」


『そう、私がつい最近であったばかりだと思い込んでるお姉ちゃんを哲君に勧める。哲君はつい最近、お姉ちゃんと出会ったばかりだと思い込んでいて……。でも、お姉ちゃんとは実は小さい頃に出会っていたとふとした時に知る。そして、哲君はそんな事実にドキドキとしてしまう。で、なんやかんやで、付き合う事に~ってシナリオ!』


「……ちなみに、この事をけい先輩は覚えてるのか?」


『覚えてるに決まってるじゃん。でも、哲君と山野先輩の関係を気遣ったのか、初めて会ったってことにしたっぽいね』


「……」

 色々と思い出す。 

 なんと言うか、凄く冷汗を流す俺にとどめを刺すみっちゃん。


『大きく成ったら、お姉ちゃんと結婚する~って哲君が言ってたもんね! そりゃあ、私が助けてあげないとじゃん?』


「ぐはっ」

 そう、みっちゃんはタダうざいやつではない。

 馬鹿そうに見えて実は計算高い馬鹿なのだ。


『いや~、楽しみですな~。哲君が思い出したこれからが本番だね!』




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