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第32話デート? に誘おう

2話同時投稿してます。

 みっちゃんが幼き頃の友達であった幼馴染であったという事を知ったが、だからと言って大きく関係が変わるわけでもない。

 過去に面識があって、幼馴染だという事をカミングアウトした後、みっちゃんは普通に何事もなかったかのように去って行った。


「間宮君とみっちゃんは幼馴染だったんだね」

 幼馴染だというだけ言って去ったみっちゃん。

 そのことについて、たまたま出くわして一緒に歩いていた山野さんが触れる。


「とはいっても、相当昔の話ですけどね」


「なんで気が付かなかったの?」


「名字が変わってたし、最後に会ったのは成長期を迎える前だったので。全然、気が付きませんでした」

 今思うと、かれこれ再開してから5カ月が経過しており、悪い事をしたと思う。なぜ今のタイミングで言ってきたんだ?

 いや、特に理由なんてなく、言い出すタイミングが中々無かっただけだろう。


「で、実際はどうなの?」


「何がですか?」


「間宮君とみっちゃんの関係についてだよ」


「あー、別に何もないですよ。ただの幼馴染ですし、今更、何かが変わるとかそう言ったのは全然ないです」

 幼馴染だという事を知った所で何も変わらないのは間違いない。


「そうなんだ。それは一安心だよ。ほら、幼馴染だというのを思い出したのをきっかけに恋が始まるのかな~ってさ」

 山野さんが居心地が悪そうに俺がみっちゃんとラブストーリーを繰り広げるんじゃないかと疑って来た。

 当然、俺の眼中には山野さんしかいないわけではっきりと言い切る。


「そんなこと絶対に無いですよ」


「それなら安心だね。ほら、もし2人が恋を突き進む中、私が今、こういう風にコミュニケーションを取るって言うのもおかしな話でしょ?」

 ……今、言われた言葉には心当たりが大有り。

 姉さんがハンカチを忘れて行った時に気を使って山野さんは俺から距離を置いた方が良いと思い、露骨に俺の部屋に来なくなったのだから。

 また、そうならないように、みっちゃんとの仲を疑われないように気を付けて置かないとダメだな。

 

「って、あれ? と言う事はみっちゃんの姉であるけい先輩とも幼馴染なの?」

 

「違いますよ。けい先輩はみっちゃんの母親が再婚した相手の連れ子でしょうね」

 けい先輩と会ったのは高校生になってからだ。別に幼馴染でも何でもない。

 色々と勘ぐって来る山野さんに対して、俺はしっかりと誤解をされないようにすることが大事だと思いながら帰り道を歩くのであった。


 今日はそこまで暑くないので、エアコンは入れない。

 よって、山野さんと部屋で一緒に過ごすことは無いなと思って玄関のカギを開けて中に入ろうとした時だ。


「間宮君。ちょっと消費を手伝って欲しいかな~って」


「何の消費ですか?」


「白玉だよ」


「さっぱり話が見えて来ないんですけど……」


「あはは、ごめんごめん。玄関前で話すのもあれだし、取り敢えず着替えてから私の部屋に来てくれるかな? さすがにそっちの部屋に食材を持っていくのは面倒だからね」

 そう言われたので、自分の部屋で着替えてから山野さんの部屋へと出向く。

 インターホンを鳴らすも反応はない。

 おそらく、着替えてるんだろうなと思いながら待った。


「ごめんね。着替えてた。じゃあ、上がって、上がって」

 

「はい。それじゃあ、お邪魔します」

 玄関をくぐると山野さんが少し大きめのタッパーを取り出して見せてきた。


「という訳で、これなんだよ」

 タッパーの中にぎっしりと詰まった白玉。

 確かにこの量の白玉を一人で食べるのは無理があり、俺に消費を手伝ってと言って来るわけだ。


「凄い量ですね。どうしたんですか?」


「実はさ、文化祭でフルーツポンチを作る予定なんだよ。衛生的にフルーツポンチに入れる白玉は冷凍じゃないとだめ。そこで冷凍で売っている白玉の味を確かめないとねって言う事で、今日のお昼休みに家庭科室を借りて事前に業務用の一袋1.5キロ入りを解凍して何人かで味見したんだよ。で、私が節約してるってみんな知ってるから、飢え死にしないようにとか言って残ったのを全部渡された」

 

「……ちなみに味はどうだったんですか?」

 一度、母さんが安かったからと言う理由で業務用の冷凍食品を買って来たが、驚くぐらいに不味かった。

 業務用の冷凍商品は割とガチで本当に不味い事が多いので味について聞く。


「味は全然普通だったよ。ちゃんと解凍できるかって感じで一袋丸々と解凍しちゃって量が多いから、間宮君にも食べて貰おうかなって感じ。不味いから間宮君に食べさせて無くそう! じゃないからね? っと、ちょっと待っててね、この前買って来たフルーツの缶詰と合わせちゃうから」

 簡単な調理を始めた山野さん。

 それをキッチンから離れて見守ろうとするも、これから何かを食べるのだから手を洗わないといけない。

 山野さんがキッチンで調理しているので、もう一つ手を洗えそうな場所を使っても良いか聞いた。


「脱衣所の洗面台を借りても良いですか?」


「良いよ。勝手に使っちゃって」

 調理している山野さんに許可を貰ったので洗面台があるお風呂場へとつながる脱衣所に入った。


「……」

 言葉を失い、ゴクリと喉を鳴らす。

 よくよく思わなくても、ここは脱衣所である。

 

 洗濯籠には着た後の服が無造作に放り込まれていた。

 無造作に放り込まれて重なり合った服の隙間からちょっぴり質感の違う布が顔を覗かせている。

 

 見え隠れしている質感の違う布を見てはいけない。

 そう思うも、自然と視線は少しだけ見える質感の違う布へと向いてしまう。


「そう言えば、洗濯籠の中は覗いちゃダメだからね~」

 キッチンから少し大きめな声で言われる。

 ビクっと急に聞こえて来た声に驚き、洗濯籠に視線を向けるのは辞めて、素直に手を洗って脱衣所を後にするのであった。


「あ、お帰り。そろそろできるからね。ま、フルーツポンチなんて混ぜるだけだから簡単だし」

 本当に、すぐに完成したやや白玉多めのフルーツポンチを二人で食べ始める。

 味はと言うと……


「普通ですね」


「うん、普通だね。そして、見て見て、フルーツと混ぜたから全然減ってないよ?」

 タッパーの中には依然として白玉がたくさん詰まっている。

 そして、あれだ。

 フルーツポンチを食べ終わったころにはすでに白玉はもういいやと言う気持ちでいっぱいになっていた。


「……白玉って飽きやすいね」


「フルーツポンチ以外に何か食べやすい方法を考えないと消費しきれなさそうですね。あ、ぜんざいとかはどうですか?」

 

「うん、それは良いかも。じゃあ、明日のおやつはぜんざいだね。って、白玉って日持ちするのかな?」

 白玉が日持ちするかどうか気になり、携帯電話で調べる山野さん。

 一分も経たずに日持ちするかどうかについて調べ上げて俺に伝えて来た。


「んー、少し硬くなるらしいけど別にすぐには腐らないって。後、長く持たせたいなら冷凍しろと書いてある。でも、冷凍してあったのを解凍したわけだし、また冷凍させるのはしない方が良いかもね」


「再冷凍しても大丈夫でしょうけど、なんか怖いので食べきるのが一番かも知れませんね」


「だね。という訳で、間宮君。明日は白玉でぜんざいを作るから食べに来てね?」


「じゃあ、お言葉に甘えて食べに来ます」

 ……と言った感じで、明日もお部屋にお邪魔出来る事になった。

 暑いから電気代の節約のために一緒の部屋で過ごす日々が終わり、少しは疎遠になるのかと思いきや意外とそうでないのに喜びを感じる。

 それと同時に冷房を付けなくなれば一緒に過ごす機会が減るというのなら、一緒に過ごすための別の理由を作ってしまえば良いんだなと分かった。

 夏祭りに行った帰りに言ったことを思い出し、俺は言う。


「そう言えば、夏も終わった事ですし今度、どこかに遊びに行きませんか?」


「……覚えてたんだね。てっきり忘れちゃったのかな~って思ってた。うん、良いよ。遊びに行こっか。場所は……せっかくだし任せるね」

 

「はい、考えておきます」

 こうして、遊びに行く約束を取り付けるのであった。








 そんなことがあった次の日。

 学校で朝のホームルームが始まる前に遊びに行く場所を調べていた時だ。

 後ろからみっちゃんが覗いて来て話しかけてくる。


「あ、デートスポットを調べてるじゃん。どうせ、あの人を誘うんでしょ? なら、屋内プールが良いと思うよ」


「ん? そうなのか?」


「そして、ちょうどこの前行ったからクーポンがある。哲君があんまりお金を持ってないし良いんじゃない?」

 財布をごそごそと漁り中からクーポンを取り出し俺にくれた。


「確かに入場料以外は掛からないし良いかもな」

 

「でしょ?」


「ああ、ありがとな」


「と言うかプールに誘うんだったら早い方が良いよ? ほら、女の子は準備しないといけないし」


「そう言うものなのか?」


「うんうん。という訳で、ささっと連絡しちゃいなよ」

 みっちゃんの言う通り、水着を着るということは肌を晒すという訳で女の子は準備が必要。

 ゆえに俺は早いうちに連絡した方が良いのか? と思い山野さんに『プールに遊びに行きませんか?』とメッセージを送った。

 その様子を傍から見ていたみっちゃんはこういう。


「あ、でも。あれだよ。そんなに親しくないというのにプールに行こ? とか絶対に答えはNOだし気を付けなよ? ちなみに初デートにプールとかは本当に無しだかんね!」

 言うの遅くない? 

 確かに言われてみれば、男からプールに誘われるとか下心があると思われて、がっつく人はちょっと……と思われかねないな。

 失敗したと思っていた矢先の事だ。


『良いよ。楽しみにしてるね!』

 と山野さんからのメッセージが届く。


「ちっ」

 みっちゃんが舌打ちした?


「朝ご飯に食べたものが歯に挟まってて取れなかっただけ。気にしないで? あと、相手が楽しみにしてるって言ってるんだし、こっちも『水着姿を楽しみにしてます』とか送っちゃいなよ」


「それもそうだな」 

『水着姿を楽しみにしてます』とメッセージを送ったと同時だ。


「あ、でも。男の子から水着姿を楽しみにしてるとか、人によっては下心ありありで嫌かもね~。返信は?」

 どんな返信が来るか気になったのかみっちゃんは俺の携帯を覗く。

 それと同時に『あはは、良いよ。楽しみにしててね?』と返信が来た。


「ちっ」

 また、舌打ちのような音がみっちゃんから聞こえた。


「ん?」


「歯に挟まってるだけだよ? 舌打ちじゃないからね」


「てか、あれだ。もしかして、みっちゃんは俺の邪魔をしようとしてるのか? さっきから、俺にわざと失敗しそうな受け答えを選ばせようとしてる気が……」


「そ、そんなことないよ! あ、そろそろ時間だし自分の席に戻るね!」

 そう言って、そそくさとみっちゃんは自分の席へと戻って行くのであった。







  

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