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夏休みは最後の部屋で その3続き 

後でその3とくっつけます。

これにて、一章完結。

 水着姿をいくらでも見せてくれるという事なので、しっかりと目に焼き付けている。

 しかし、ものには限度と言うものが存在しており、さすがにまじまじと見過ぎだと思い、目を逸らそうとした時だ。


「間宮君。せっかくだし、ポーズでも取ってあげよっか?」

 以前の人畜無害なふりをしている俺なら、「いえ、大丈夫ですよ?」なんてほざいていたかもしれないが下心があると気付いてほしい。


「……じゃあ、お願いします」

 山野さんはグラビアアイドルであるまいし、自分でポーズをとるとかナルシストみたいで甚だしいといった感じで、少し恥ずかしそうになりながらポーズを取る。

 やや、前かがみ。

 片方の手は膝。もう片方は腰。

 グラビアっぽさそうな感じでポーズを取ろうとするも、いまいちポーズは決まっていない。


「ポーズを取るって言ったのに全然出来ないや。という訳で、間宮君。この体勢からどんな感じで動かせば良いと思う?」

 

「えっと、右腕をもうちょっと手前にすれば……」

 ぎこちないポーズを正すべく指示をするも、説明が下手なのかいまいち伝わっていない様子。


「んー、良く分からないから私の体を動かして良いから教えて?」

 

「……セクハラって言いませんか?」

 

「言わない。言わない。お好きに動かしちゃって良いから」

 俺の手はポーズを取っている彼女に伸びる。

 触れる肌と肌。

 近づく、体と体。

 水着姿で露出が多いせいで、ドキドキが止まらない。

 

「っと、こんな感じですかね」

 思いっきり、触りたい気持ちを抑え、山野さんの体を動かしてそれなりのポーズを取らせられた。

 よく耐えたな……俺。

 一方、ポーズを取らせられた山野さんは言うとちょっとだんまりしている。


「……」


「どうしたんですか?」


「ううん、何でもないよ。いやあ、あれだね。女の子の体に触れられるって言うのに随分と紳士的なんだねっって思ってただけ。せっかく、ちょっとくらいあれなとこに触れても許してあげたのに。なーんてね?」

 確かに多少は触っても許してくれそうだ。

 でも、気が付けばこう言っていた。


「いくら親しくてもさすがに軽はずみな気持ちでセクハラ出来ませんよ。だって、俺は山野さんの事が普通に好きですし」

 好きという言葉は恋人に限らず、親しい人へも良く使う便利な言葉。

 親しい人と仲が悪く成りたくないと言う気持ちを込めて、好きと言っていた。


「あはは、うん。私も間宮君の事が好きだよ」

 同じく、親しい人に向けるかのように好きだと言われる。

 ……俺が求めてる好きじゃないが、好きと言われて嬉しいのには変わらない。

 しかし、ちょっと複雑な気分だ。


「そろそろ、冷えてきたから着替えて良い? 間宮君がもう少し見たいなら見せてあげても良いけど」


「冷えてきたなら服を着て下さい。もう、十分すぎるくらいに堪能しましたし」

 突拍子もない、水着姿を見せつけるという行為を終えた。

 ……何事もなかったかのように。


「いや、うん。俺は何をしてたんだ?」

 水着姿の山野さんがこの場から消えたことで、若干の冷静さを取り戻す。

 一つ年上の女の子の水着姿をまじまじと見つめるという普通ではありえないシチュエーションっておかしくないか?


「さすがに仲が良いとはいえ、あそこまでしてくれるか?」

 彼女の行動の大胆さに疑問を抱く。

 その大胆さは『友達』としての大胆さなのか、果たして別のなにかがもたらす大胆さなら嬉しい。


「失敗したらもう終わりなんだぞ?」

 関係の崩壊を恐れて手を伸ばし切れない。

 今回の一連の流れは手を伸ばしても平気な関係性の象徴かも知れない。


「徐々にだ。徐々に攻めて行こう」

 どうも男として見られている気がしない。

 自分のあまりの人畜無害な感じが、関係を『友達』たらしめる要因。

 ちょっとした下心を表に出して、もう少し山野さんに意識して貰ってからの方が成功するに決まっている。


「さてと、戻ってきたら山野さんに言わないとな」

 水着姿を見られるのは今だけで、このままの関係ではそのうち距離は離れてしまい、水着姿を見られなくなる。

 それだけは避けたいと、俺はより一層と彼女へと近づいていく。



 

 その決心を終えた時だ。着替えを終えて戻ってきた。


「ふー、ただいま」


「あ、おかえりなさい」

 ゆっくりとベッドに彼女が腰掛けた後。

 口を開き、より近づくための言葉を投げかける。

 それと同じく、山野さんも口を開いた。


「生徒会役員に立候補します」



「生徒会役員に立候補してみない?」



 こうして、俺は新しい関係に向けて一歩を踏み出したのだ。 

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