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食中毒にはお気をつけください

作者: ひなまつり

勢いだけで書いた作品です。

生きるために必要なものとはいったいなんだろうか?

こんな疑問に対してロマンチックな人ならこう答えるだろう『愛』だと。

だが俺が今求めているのはそんな聞いているほうが赤面しそうな脳内ファンタジーな回答ではなくもっと現実的な回答だ。

すなわち食事と睡眠である。

たいていの人ならすぐにこの二つが思いつくだろう。

しかし果たして本当にこの二つだけだろうかと問われれば俺は真っ先に否をたたきつけるだろう。

それはなぜか? ヒントは食事にある。

人間は食べたからといってそこで終わりではないのだ。

食べたものは消化器系で消化され栄養となるがその際に搾りかすが発生する。

そうした不要なものは体の外に出さなくてはならない。

ここまで言えばもうお気づきだろう。

そう排泄だ。 これは食事と切っても切り離せない事柄なのだ。

だからこそ排泄というのは食事、睡眠に並んで人間が生きるのに必要なファクターなのだと俺は思うのだ。

長くなってしまった。 結論を言おうか。


めっちゃうんこしたい……


やばい! やばい! やばい!


哲学的なことを考えて気分を紛らわしていたがもう限界だ……


というか哲学的な思考も結局うんこにたどり着いてしまったあたりまったく気は紛れてなかった気がする。


いったい何が悪かったのだろうか?


どうせ腐ってるんだし問題ないだろうと食べた期限のだいぶ過ぎた納豆か?


それとも納豆に混ぜたいつ買ったかいまいち思い出せない卵か?


もしくはちょっとすっぱい臭いのしていた牛乳か?


はたまた帰宅しようとする俺を呼び止めてだべり始めた田中か?


田中だ! 間違いない!


あいつが呼び止めなければ腹が痛くなったときにはもう家に着いていたはずなんだ!


「鼻毛が出たまま一日過ごしてた。 どうしよう……」なんてくそどうでもいい議題で一時間も話しやがって。


くそ! ゆるさねぇぞ田中ぁ!!


ぐぎゅるるるぅう


はう! や、やばい力みすぎた……


がんばれ俺! 負けるな俺! もうちょっとで公園に着く……


そこで思う存分開放すればいい……!


「ここみ? 今日の晩御飯はカレー(・・・)でいいかしら?」


うん(・・)! ()こみお母さんのカレーだいすき!」


「よーし()難易度()題~ 1998年のオリンピックで優勝したにもかかわらず金メダルを剥奪されてしまった選手は?」


「う~ん…… あ! ベン(・・)ジョ()ンソン!」


ついに周りの人の会話まで変な風に聞こえるようになってきた……。


つーか後半のやつらはわざとやってんじゃねぇだろうな!? 


よ、よし! なんとか公園に着いた! ぎりぎり間に合いそうだ……


「や、やめてください!」


すると中から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「うせやろ……」


思わずつぶやく。 そこでは柄の悪い兄ちゃんたちに女の子が絡まれていた。


おまけにその女の子俺と同じクラスの子だった。


「いいじゃん、いいじゃん。 カラオケ付き合ってよ。 おごるからさぁ」


「君かわいいね~ 高校生?」


あれれ~おかしいぞ~ なんで俺こんなテンプレみたいな状況に陥ってるんだ~?


え、まじほんとどうしよう!? 兄ちゃんたち怖いしぽんぽんも痛いし帰ってもいいだろうか?


今なら自宅にもぎりぎり間に合うかも……。


ゴロゴロォオオオ


うぎぃ! 


見捨てようかとしたその時今日一番の腹痛が俺を襲う。


……そうだよな。 逃げるわけにはいかないよな。


ふっ まさか腹痛に教えられるなんてな。


偶然かもしれない。 それでも構わない。 俺は彼女を助ける!


覚悟を決めた俺は拳を握り締め、肛門を引き締めると両者の間に割って入った!


「おいあんたら! 彼女は嫌がっているでしょう! 離れてくれると助かります」


どんどん丁寧になっていく俺の言葉遣い。 やだこの兄ちゃんたち近くで見るとピアスいっぱい着けててめっさ怖い。


「え? 高橋くん?」


「あ? おまえ誰よ?」


その問いの答えは一行上にございます。 


「あ、あの俺はその子の友達です。 彼女は乗り気じゃないようですし他を当たっていただけませんか?」


「てめぇヒーロー気取りか? 調子乗ってんじゃねぇぞ!」


うんこ我慢しながら颯爽と現れるヒーローがいるならぜひとも教えてほしい。


「おい。ちょっとこのガキに世間ってもんを教えてやろうぜ」


「ああ、こういう馬鹿はしっかりしつけてやらねえと」


薄い笑みを浮かべながらこちらによってくる兄ちゃんたち。


おや? これはほんとにまずいですね。


「た、高橋くん……」


不安げにこちらを見る彼女(本名、鈴木さん)。


そんな顔しないでくれ。 大丈夫だ。


たとえこの拳砕け、脱糞したとしても君だけは助けてみせる!


「はあぁ!」


「げふっ!」


腹痛により脳のリミッターが外れた(気がする)俺の拳が兄ちゃんAの頬を捉えふっとばす。


「て、てめえ!」


それに激昂した兄ちゃんBが殴りかかってくる。


くっ! しまっ……


きゅるるぅぅ


おぎぃ! また便意がぁぁ


思わぬ痛みに反射的に身をかがめてしまう。


「な! かはっ」


それはまさしく奇跡としか言いようがなかった。


かがんだ事により兄ちゃんBの拳は俺の上を素通りし前に突き出された俺の頭が兄ちゃんBのみぞおちに突き刺さったのだ。


これぞ神いや、うんこの思し召し。


「っく おい! もう行こうぜ! しらけちまったよ!」


「おう…… おい! おまえ覚えとけよ!」

 

それぞれやられた箇所を押さえながらテンプレどおりのセリフをはき捨て公園を後にする兄ちゃんたち。


良かった危機は去ったようだ。 これでやっと苦痛から開放される。


「た、高橋くん! ありがとう! か、格好よかったよ! そ、それでその……」


トイレに向けて駆け出そうとした俺だが鈴木さんが声をかけてきたため足を止めてしまう。


なにか伝えることがありそうなので流石に無視していくわけにもいかない。


わけを話して行かせてもらおう。


「気にすんな。 あのな鈴木さん実は俺、今ちょっと腹が……」


「私、高橋くんが好き!」


「ファ!?」


あまりの衝撃にこんな音出んのかと思うような声が口から漏れる。


「実はクラスでもずっと気になってて、ちょっとお馬鹿だけどいつも明るくて面白い人だなって思ってたんだ。 今のことで自分の気持ちがはっきり分かったんだ。 ……私と、付き合ってください」


上目遣いで俺を見つめはっきりとそう伝える鈴木さん。


それに対する答えなど当然決まっている。


「よろこんで」


否などと言うはずがない。


「高橋くん! うれしい……」


俺の名前を呼びながら抱きついてくる鈴木さん。 俺はそれをそっと抱きとめる。


生きるために必要なものとはいったいなんだろうか?


食事? 違う。


睡眠? 違う。


排泄? 馬鹿か。


『愛』だよ。


そこで俺は確かに神の声を聞いた。


『お前最初といってること違うじゃねーか』


天罰だったのかもしれない。 そこで俺は本日最大級の便意に襲われた。


今までの便意がダイナマイト級だとすると今回のはビックバン級。


やばい! すぐにトイレに……


「あっ」


まるで俺はスペースシャトル、宇宙の大爆発に巻き込まれなすすべもなくその身を滅ぼした。


それでも気分はエクスタシー……


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


彼女の悲鳴も俺を現実に戻すには至らなかった。


こうして俺の『愛』はわずか5秒で終了した。


次の日から俺のあだ名は「脱糞くん」になった。


とりあえずこれだけは言わせてもらおうか。


ゆるさねぇぞ田中ぁぁ!!!




田中はいっさい悪くありません。

すべては夏場の食品管理を怠った高橋の責任です。

これから食中毒も増えると思いますので皆様は高橋のようにはならぬよう十分にお気をつけください。

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