第一作戦
愛は考えていた。
今のところサイトを通してのメッセージ交換と、店の電話番号しか知らない。
連絡をとりたくても、結構ややこしい。
まずは直アドか、直電を知る事から始めなければならない。
愛は考えた。
とにかく、智哉にうまく聞かなくてはならない。
いきなり聞くとどうしても会ってイイ男だったから連絡先を知りたくなった、そう思われてしまう。
しかし、逆に、どうでもいい存在だと愛が思ってると思われては、それはそれで困る。
愛は彼を、こう分析した。
ああ言うタイプの男はやっぱり、女に対しての免疫が強くある。
そして、自分がモテる事も良く知ってるはず。
そういう男は褒められ好きなナルシストが多い。
これだ。
これをうまく利用するのが一番だ。
彼をまず持ち上げて、多少自分に好感を持ってくれていると言う事に何気なく報せる事だ。
しかし、決してがっついてはいけない。
今までもきっと、面倒臭い女にひっかかり、大変な思いをしているはずなので、逆に警戒して離れていこうとしてしまう。
だからすぐに連絡先は聞かない。
『・・・仕方ない。かなり遠回りになるけどこの方法で行こう。』
愛は作戦を決めた。
最初、智哉を見つけた【SNS】には、日記を公開するブログの様なものがある。
まずこれに、愛は店に行った事を日記に書く。
今日は、女友達と、久々の夜遊び
しかも行く店は、このSNSで見つけた、
10年も昔に疎遠になってしまった男友達の店
久しぶりに会う彼はびっくりするくらいのイイ男になってて、
気合入れてオシャレして行ってよかった〜(#^.^#)
もう、ヤッバイぐらい男前になってた彼・・・
あ〜あ、あたし結婚早まったかな?(笑)
まぁ、あたしがもっと自分に自信があれば
『ぎゅ〜って抱きしめて』
の一言くらい言えたのに〜(>_<)
いや、いっそ、一晩だけ抱いて欲しい(^^♪
それくらい思うほどのイイ男になってた彼。(笑)
また会いにいっちゃおぅかなぁ・・・
よし。
完璧。
な〜にが『自分に自信があったら』・・・だ。
アリアリな癖に!
愛は少し鼻で笑った。
そして、次は智哉に直接メッセージを送る。
昨日はありがとう。
本当に楽しかった!
って言うか、何より驚いたのは、智哉イイ男になりすぎ!
終始ドキドキしてしまったよ〜!
抱きしめてもらえばよかったかな?(笑)
日記にも、男前の友達がいる事書いて、自慢しちゃった!
ま、そんなことはどうでもいいとして〜
また機会があれば遊びに行きます。
昔の仲間にも久しぶりに会いたいしね。
じゃぁ、またね(*^^)v
お仕事がんばって下さいね。
よし。
完璧。
ここまでやって、後は彼の反応を待つのみ。
愛の分析が正しければ、きっと浮かれた返事が来るはず。
少なくとも悪い気はしないはずだろう。
そう思いながらパソコンの電源を落とす。
この男は下手したらこちらがはまってしまい、ボロボロにされてしまうかもしれない。
現に昨日会って、不覚ながらも少しドキドキしてしまった自分がいる。
本当に手を出してよかったのか・・・?
また悩みが沸き起こる。
しかし、もう行動に移してしまった後だ。
今なら後戻りができるが、それではいつか後悔してしまいそうだ。
よし、自分さえしっかり持っていれば大丈夫。
危なくなればその時に身を引けばいいだけだ。
いや、あたしが惚れるわけが無い。
しかも、いかにも遊び人って感じの彼。
本気になるわけなんかない。
逆にこっちが遊んでやる!
愛は色々自分の中で格闘していた。
愛が自分と格闘している時
智哉はボーっと考えていた。
【あいつ、また来るかな・・・?
ただ久しぶりに会いに来たって感じだったな。】
懐かしい話が弾み、智哉なりに楽しい時間が過ごせ、智哉は満足していた。
【可愛くなってたし話も面白かったし、イイ女になってたなぁ。】
ふと、智哉は愛からメッセージが来てるんじゃないかと思い、パソコンを開いた。
そこには先ほど愛が送ったメッセージが記されていた。
【あいつ、褒めすぎやろ?】
智哉は鼻で笑う。
そして次に日記に目を通す。
【あはっ!ここでも褒めてるよ!知り合いに見られたら恥ずかしいやん】
智哉は大きく笑った。
【返事・・・書くか 】
智哉は愛のメッセージに返信した。
こちらこそありがとう。
俺も昨日は楽しかった。
って言うか、日記見たけど褒めすぎや!
恥しいわ〜(笑)
送信した後、智哉は、メッセージが届くと、自分の携帯に届くようにメッセージの設定を変え、パソコンを閉じた。
【また返事来るやろか・・・】
愛はメッセージを送った後、返事が来ないか気になり、何度もパソコンを開いていた。
そして、愛もメッセージの受信設定を携帯に変えた。
程なくして、携帯にメッセージが届く。
もちろん智哉からである。
先ほどの智也が送ったメッセージが目に飛び込む。
【よし、思惑通り】
愛はすぐさま返信をする。
マジで智哉かっこよかったよ。
褒めすぎ違うよ〜〜!
マジで抱いて欲しいのに(#^.^#)
送信。
きっと智哉からはすぐに返事が来るだろう。
内容は想像が付く。
愛は確信していた。
智哉が自分の引く線の上に乗り出した事を。
そして、愛の思った通り、すぐに携帯がなる。
そんなんばっかり言ってたら、ホンマに抱くで!
『はい、乗った〜。』
愛は小さくガッツポーズする。
ここまで来ればメルアドを聞いても問題ない。
彼も時間を置かずにメッセージを返信してくる。
きっと今も愛からのメッセージをじっと待ってるであろう。
そろそろサイトを通してのやり取りは面倒に感じてきているはず。
警戒心もだいぶ取れ、もしかしたらこの女とヤレるかも?と期待に胸と下半身を膨らませているだろう。
愛は一番肝心なメッセージを作成した。
いやん(#^.^#)
ドキドキさせんといてよ〜。
って言うか、サイトを通してのメッセージ交換面倒じゃない??
あたしのメルアド、 ※※※※‐※※※※@・・・・・。
直メちょうだいよ。
送信。
きっとすぐに彼からメールが来る。
餌をばらまかれた鳩の様に、今は他が見えてないはず。
愛は確信して笑った。
しかし・・・・。
愛はソワソワしだした。
そう、すぐに来ると思っていたメールが、待てども待てども来ない。
今までコンスタントに5分おきに来てたメッセージが最後に送ったメッセージから30分経った今も来る気配がない。
愛は一分置きに携帯を確認する。
【・・・きっと、何か用事があったんだ。時期に来るよ。】
必死でそう思う手には携帯が握り締めてある。
しかし、その考えとは裏腹に、その日が終わっても携帯は鳴る事がなかった。
【・・しくじった。早まったか・・・・】
愛は脱力する。
賭けに負けたかのように・・・。
次の日も、その次の日もメールはなかった。
幸い土日だった為、仕事が休みの夫と子供と三人で出かける等をして、気分が多少紛れたものの、やはり気になり何度も携帯を見た。
しかし一向にメールはない。
次の作戦を練るかそれとも諦めるか。
愛は必死で考えたが、なかなか答えは見つからない。
『悔しい〜〜〜!』
愛は携帯を放り投げた。
『・・・もう、知らん・・・。』
考える事を諦め、ここ2日間携帯が気になりなかなか熟睡できなかった愛は、その日は久しぶりに早々と熟睡してしまった。