電話での再会
時を同じくして・・・・
智哉は正直驚いていた。
愛とまさか今になって再会するとは思ってもいなかった。
『なんとな〜く覚えているんだけどなぁ・・・』
しかし、自分が何故覚えていたのか、またそれが不思議だった。
何度もサイトの中の彼女のプロフィールを読み直す。
『可愛かった・・・っけ?
でもなんとなく覚えてる・・・んやけど・・・
なんでかなぁ・・・・』
彼にとっては出会った女やセックスした女は数知れずいる。
セックスした女でさえ、覚えていないこともある。
そんな自分が彼女をなぜ覚えていたのか、自分でも解らなかった。
しかも、今度店に遊びに来ると言う愛。
『可愛かったらいいけども、ブサイクやったらどうしよ・・・
繋がりたくないな・・・』
そこで智哉は友人に電話をして聞いてみる事にした。
『もしもし、俺』
『おぉ、智哉。どうしたん?』
彼は10年前の当時、毎日一緒に遊んでた仲間の一人だ。
『お前さ、昔遊んでた時に、ヒデが女連れてきてた時期あったやん?』
『あ〜、愛ちゃん?』
この友人は女のことであればどんなに少ししか遊んでいない子でも覚えている。
『そうそう、どんな子だったっけ?』
『まぁまぁ可愛かったんやない?なんでまた?』
子の過程を説明するのが、面倒になった智哉は
『いや、いい、また今度ゆっくり話しするわ。じゃぁな』
『え?ちょ・・待っ・・・』
プーーッ プーーッ・・・・
そう言うと一方的に智哉は電話を切った。
『まぁ・・・可愛かったならいっか。
面倒そうな女なら無視すりゃいいわな。』
そうして智哉は、愛にメッセージを送った。
『月曜日か水曜日か金曜日においで!』
そう、自分の彼女、沙織がシフトに入っていない日だ。
もちろん理由なんて、愛には言うはずはなかった。
その頃愛は、メッセージを受け取り、店に行く日にちなどを考えていた。
一緒に行く友人・・・男にしようか女にしようか・・・
ここは無難に女にしておこう。
行く日は・・・早すぎても嬉しくて急いできたようだし、暇なヤツとは思われたくない。
一ヶ月後くらいに当日突然連絡を入れて店に行こう。
たまたま近くを通った・・・とかなんとか言って。
しかし、愛は大変な事に気付く。
『あたし、店の場所も、名前も知らんやん・・・』
さてどうする?
サイトを通してのメッセージ交換は何かと面倒だ。
一度サイトに入らなくてはメッセージを見ることも送ることもできない。
当日連絡するにしろ、道を聞くにしろ、不便すぎる。
彼はそれに気付かないのか・・・?
それとも、どうせ社交辞令だと思って店に来ないと思っているのか?
とにかく、当日までにはガッツキを見せずに連絡先を彼に聞かなくてはならない。
どうしても愛は彼よりも上の立場に立ちたかった。
こちらから追いかけるなんて、言語道断。
まだそんなことを言う仲ではないと思われるが、最初が肝心。
特に女は色々と頭の中でロールプレイングする。
色々悩んだ結果、愛は単刀直入に聞くのが一番だと思った。
あまり回りくどいと余計にいやらしい。
愛はマウスを持ち、智哉にメッセージを送る。
『あたし、店の場所も名前も知らないよ。(笑)
080−※※※※ー※※※※
時間があるときに電話下さい。』
メルアドを書くかどうかは悩んだが、メール交換の方がなんだか形に残り気を使う。
それなら用件だけをさっさと伝えられる電話の方がいいと、愛は思った。
いつ、連絡があるのか、緊張感が漂う。
明日か・・・一週間後か・・・
しかし、愛の予想を裏切り、メッセージを送信してから30分後、知らない番号からの着信が入った。
時を同じくして・・・・
智哉は電話番号が書かれたメッセージを見つめ、悩んでいた。
『深い意味は・・・無いよな・・・?』
店の場所すら知らない、そりゃそうだ。
しかし、いきなり10年ぶりに電話で話しをする。
ちょっとだけ抵抗がある。
なぜここまで智哉は警戒心が強いかと言うと、今までの彼の素行に問題があった。
女癖の悪い智哉は何人もの女から恨みを持たれていても当たり前。
しかも、酷い時にはストーカー行為を受けたりもしていた。
自業自得。
しかし、面倒臭がりやの智哉はこんなふうに、ぽっと出の女は特に警戒心が強くなる。
『・・・念の為に店の電話でかけるか・・・』
プルルルル・・・・プルルルル・・・・
『もしもし・・・』
テンションの低い、愛の声。
『あ、智哉やけど』
智也の声・・・・
愛は声なんて全然覚えていなかった。
なんせ一度しか聞いた事の無い声。
しかし、こんなに男らしいカッコいい声だったっけ・・・??
愛は不覚にも少しドキドキして、声が上擦る。
『あ、久しぶりだね、智哉』
愛の上擦る声に智哉は気付かず話をする。
『店の場所・・・ホームページに載ってるんやけど・・・店の名前は・・・』
智哉は一通り説明を終え、最後に
『この電話番号、店の番号やからさ、当日迷ったりわからなかったらかけてきて』
と、【普段使いではかけてこないように】と、遠まわしに伝えた。
その思惑に愛はすぐに気付き、少し腹が立ち、
『心配せんでも、よっぽどの事が無い限りはかけないし』
と、嫌味っぽく言った。
『じゃ、また』
『はいはい』
そう、愛想無く言い、二人は電話を切る。
『腹立つ男〜〜〜!!』
『可愛くねぇ女〜〜!!』
電話を切った後、二人はつぶやく。
そして・・・・
『絶対会ったら覚えとけ!!』
二人は心にそう思い、とうとう再会の時はきた。