二度目の運命の出会い
結婚した後も、愛は時々智哉を思い出す事があった。
あの後間もなく彼氏のヒデも含め、智哉もその仲間も警察に捕まり、自然と愛は彼等と会う事も連絡する事も無くなった。
ヒデとも自然消滅。
しかし、ヒデを思い出すことは無くても、不意に智哉を思い出す。
今でも謎の智哉。
ムカつく印象しか残っていない智哉。
今でもあのお人形のような彼女と一緒にいるのか?
ヒデに一度だけ聞いた事がある、智哉のフルネーム。
星野 智哉。
はっきりと今でも覚えていた。
しかし、智哉は自分のことなんて覚えていないだろう。
なんせ、一度【どーも】の言葉しか交わしていない。
【今もし再会したらどうなるのかな】
愛はよくそんなことを想像した。
まぁ、もう会う事はないだろうと、次の瞬間には違う事を考える。
しかし、数ヵ月後にはまた同じ事を考えたりするのだ。
そんな時に、愛は友人から【SNS】のお誘いを受ける。
自分の日記をインターネット上で公開するだけではなく、同じ母校で疎遠になっていた人を探せたりもできる。
しかし、愛はそういうのがあまり好きではなかった。
面倒そうだし、変な出会い等がありそうで、ちょっとウザイ。
しかし最近、暇な時間を持て余していた愛は、
【暇つぶしにはなるか】
と、軽い気持ちで登録。
【探したい人のキーワードを入力してください】
愛は試しに同じ母校の人を探したりしてみる。
それが、次から次へと出てくる出てくる。
『すっげ〜・・・・』
愛はしばし夢中になり過去の友人などを探した。
一通り探した後、早々と飽きてしまった愛は、パソコンから離れ横になる。
『別に今更会いたい人もいないしな・・・』
探したものの、連絡をしてみようと言う気は起きず、チラチラ見るくらいで満足してしまった。
『・・・会いたい人なんかいないしな・・・・・あっ!!』
ふと愛は思い出す。
バッと起き上がり、マウスを握る。
【友人検索】
星野 智哉
『・・・まさかこんな簡単に見つかるわ訳ないか・・・』
愛は軽い気持ちでマウスをクリックする。
【ヒット 一件】
『え!?マジ!?』
開いてみるが、写真などは載せていない。
住所も都道府県のみ。
しかし、同じ都道府県だ。
しこで愛は更に、相手のプロフィールを読む。
『・・・間違い・・・ない・・・かも』
ヒデから少しだけ聞いていた智哉の経歴。
出身校は私立。
高校の名前。
全てが当たってた。
愛は、【メッセージを送る】に、カーソルを合わせるが、なかなかクリックできないでいた。
なぜなら当時、ほとんど絡みもなかった上に、印象は最悪なのだ。
仲良しだったならば、【久しぶり〜】というノリでいいが、そういう訳にはいかない。
愛は迷った。
自分からのメッセージを見てなんて思うだろうか?
その前に覚えていないかもしれない。
そうなると、自分はいつまでも智哉を忘れられない、しつこい変な女だ。
そんな風に思われるのは、男を手玉にとってきた愛のプライドが許さない。
どうしようかと、愛は20分ほど悩んだ。
【・・・どうせm忘れてたなら返事は来ないよね。】
愛はついに決意をして、メッセージを作成する。
【10年くらい前に少し遊んだ、ヒデの彼女だけども、覚えてる?】
これだけの短いメッセージ。
送信ボタンをクリックし、【メッセージが送信されました】の文字が出る。
愛は少しドキドキしている。
すぐに返事は来ないだろうと、愛はパソコンの電源をおとした。
それから1日がたち、二日がたち、毎日愛はメッセージを確認した。
しかし、一向に返事はない。
愛は残念なような、ホッとしたような、複雑な気持ちでいた。
『・・・覚えているワケないか・・・』
そう思い、メッセージを送って三日後の今日、同じようにパソコンを開き、【SNS】に入る。
【新着メッセージが一件あります】
こう表示され、愛は息をのみ、クリックする。
【メッセージ 星野 智哉
え!?ってくらい、久しぶりやな!
愛やんな??
覚えてるよ。
よく俺のこと覚えてて、俺やってわかったなぁ!】
・・・覚えていやがった・・・
愛はしばらくメッセージを見つめながら固まる。
しかも、あの当時の智哉とは、ノリが全然違う。
彼は変わったのか・・・?
愛はとにかくメッセージを送り返す。
【何でかな?智哉は印象的やったから覚えてたよ。
偶然見つけてメッセージしてみました。
智哉は元気?】
偶然見つけて なんて、ウソだ。
でも探してみたなんて絶対に言いたくない。
メッセージの返事はすぐに返ってきた。
【俺、そんなに印象的やった?(笑)
愛は結婚したんやな。
ヒデと結婚したん?】
このメッセージで智哉はヒデと、あの後繋がりが無くなったと言う事がわかった。
そうだ、自分のプロフィールには結婚したことを書いていたんだ。
あわてて愛は、もう一度智哉のプロフィールをじっくり読み直す。
『・・・智哉、今お店やってるんや・・・』
智哉のプロフィールに書いてある、【バーを経営しています】と言うのを読み、愛は智哉にメッセージを送る。
【結婚したよ。相手はヒデじゃないけどね。
智哉はお店やってるんやね?
今度遊びに行こうかな〜】
愛はこのメッセージを送るのに少し手が止まった。
『・・・会う事になる・・・?』
ほとんど絡みがなかった彼と、10年ぶりに会ってどうする・・・?
今の彼を見てみたい・・・?
いや、違う。
それもあるけど、10年前、あたしをあれだけオドオドさせた彼を・・・
彼に・・・・
【仕返しがしたい。】
あれから自分は恋愛の場数を踏んできた。
今なら、今の自分なら、オドオドせずに彼に接する事もできる。
そうだ、仕返しをしたい。
今度こそ、自分の心の中にずっとあった彼。
何かあった心残り。
自分の中での大ボス。
【彼を、智哉を、自分に振り向かせてやる!】
愛は、先ほどのメッセージを力を込めて送信する。
すぐに彼からの返事が届く。
【うん、いつでもお店に遊びにおいで!
久しぶりに会いたいわ〜!】
よっしゃキタ〜〜!!
これが先にも後にも、あたしにとっての最後の男とのゲームだ。
愛は小さくガッツポーズをした。