運命の出会い
クールな恋愛の知らない遊び人 星野 智哉
要領の良い知的な遊び人主婦 高橋 愛
この二人が偶然に偶然を重ね、ある日出会う事になる。
ここからは、二人の口に出す言葉と、二人のやり取り、そして、二人の心の中の企みや、戦略。
駆け引き等を楽しんで読んで欲しい。
バチバチと繰り広げられる、【恋愛ごっこ】
退屈な二人のお遊び。
引いては押す、押しては引くの、同等の戦いだ。
実はこの二人、昔少しだけ会った事があった。
智哉、愛、二人が16歳の時に話は遡る。
女子高のいつもの合コン、そこで出会った【ヒデ】という男に手を出していた愛。
その日は春先の少し肌寒い夜。
ヒデの単車の後ろに乗り、愛はとある公園に向かっていた。
愛を徐々に本気で愛し始めていたヒデは、自分の仲間に彼女である愛を紹介したかった。
愛を駅で拾った後、ヒデが仲間の一人に電話すると、いつもの公園にいつもの仲間が集まっていると聞き、急遽愛を連れて行くことにした。
しかし、愛の頭の中は違った。
【イイ男、いるかな】
公園に着くと、数台の単車に数十人の男達がゲラゲラ大きな声で笑いながら話していた。
『よう、ヒデ!お疲れ〜』
その中の一人が声をかけてきた。
『おつかれさん、コイツ、俺の女、愛』
ヒデが愛の肩を抱き、紹介する。
みんながこっちを向き
『よろしくね、愛ちゃ〜ん』
と、軽いノリで手を振る。
愛は少しニコッと笑い、お辞儀する。
しかし愛には、そんな連中の中に、どうしても気になる人がいた。
みんなが手を振る中、こちらをチラっとも振り向かず、単車をなにやらいじってる彼。
その隣には寄り添うようにしゃがみこむ女の子。
この女の子の事を、【絶世の美女】と呼ぶに相応しい。
パッチリとした二重の目に、整った鼻、口角がキュッと上がった可愛い唇に、肩までの髪はとても綺麗な黒髪、白くモチモチした肌、、まるでお人形さんのようだ。
こんなに可愛い女の子を見たことが無い。
愛がそんな事を考えながらじーっと見ていると、お人形のような女の子が、愛の視線に気付き目が合う。
愛はハッとして、目を反らそうとした。
するとお人形さんのような彼女が笑顔でこちらに手を振る。
愛はとりあえず小さくお辞儀した。
そうすると、お人形のような彼女は、隣でひたすら単車をいじり続ける彼の方を向き、こちらを指差し何かを言っている。
次の瞬間、なんとも無愛想な表情で単車から手を離し、彼がこちらをみた。
周りにいる、いかにも不良っぽい人とは明らかに人種が違う彼。
じっとこちらを見て何かを口ずさみ、また単車に目を向ける。
『・・・感じ悪い・・・』
愛がボソッと口に出すと、今まで隣で友人と話をしていたヒデが、愛の目線に気付きこちらを向く。
『あ、あそこにいるやつ?
あいつ、智哉って言うんよ。
みんなとなんか雰囲気とか違うやろ?
あはは、イイヤツなんやけどなぁ。
いっつもあんなんやねん。
隣にいるのはあいつの彼女。
めっちゃ可愛いやろ?美男美女でお似合いやでなぁ!』
そう、これが、愛と智哉の最初の出会いだった。
『智哉〜!単車ばっかいじってやんと、こっち来いよ』
ヒデが大きな声で智哉を呼ぶ。
面倒くさそうに立ち上がり、智哉はゆっくりこちらに向かって歩き出す。
しかし、愛のほうには見向きもしない。
後ろからお人形のような彼女が小走りについてくる。
『・・・単車・・・イカれたし・・・』
無愛想に智哉は仲間に言う。
『まぁまぁ。そうイライラすんなって。
それよりさ、この子、ヒデの新しい女やってさ。』
仲間の一人が愛を指差し言う。
智哉は愛のほうを向きもせずに
『・・・どうも・・・』
と、一言だけ言う。
愛は今まで自分に対して、こんな態度をとる男とは出会ったことがなかった。
完全に気分が害される。
『あはは!お前、ダッセーなぁ』
おおきな笑い声がする。
智哉は仲間や彼女と大きな声で笑いながら話をしている。
『・・・なんだコイツ・・・』
愛はヒデの他の仲間達にも話しかけられるが、智哉の態度や行動に目が釘付けで、耳に入らない。
『とりあえず、どっか移動する?俺、腹減ったわ〜』
仲間の一人が言う。
『吉野家でも行こうぜ』
ヒデがそう答えると、それぞれみんなが自分の単車に乗り込む。
『おぉい、愛、行くよ?』
ヒデに声をかけられ、智哉を見ていた愛は我に返り、ヒデの方を見て軽く微笑む。
そして、もう一度智哉をチラっと見た時・・・
単車に跨り、お人形のような彼女を後部座席に乗せ、エンジンをかけた智哉が次の瞬間、
愛のほうを見て、口を閉じたまま、横目で何かを訴えるかのように、ニコっと笑った。
初めての智哉の印象は、愛にとって衝撃的であった。
『なんだあいつ!!ホント意味わからんし!』
家に帰ってから愛はずっと智哉が頭から離れなかった。
『・・・なんか知らんけどムカつく〜〜!』
馬鹿にされた様な気持ちになっていた。
その後も何度かヒデ達と遊ぶ時に、智哉やその仲間と幾度と会うことがあった。
しかし、特に会話をすることもなく、目が合っても笑い合うことも無く、そんざいがある程度だった。
いつもお人形のような彼女を連れた彼。
仲間と話をする時だけはとても楽しそうな彼。
愛は目で追うが、なぜか彼には声をかけることができなかった。
どんな男でも声をかけ、自分に振り向かせる愛が、智哉にだけは、声すらかけることができなかったのだ。
しかしその後、愛は、一度だけ智哉の単車の後部座席に乗る機会があった。
愛は、【なんて声をかけたらいいのかわからない・・・】そんな事を考えている内に目的地についてしまった。
【こいつだけは・・・無理だ・・・・】
愛は当時の、彼の印象はこういうものであった。