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思い出せない

    初恋 おめでとう!(笑)



家に帰った愛の携帯に由佳からメールが入った。


【27歳にして初恋かよ・・・】


愛は笑う。


【こんなにドキドキしたり不安になったり・・・

 めっちゃしんどいけど、今の今までこんな体験したことなかったなんて、もったいなかった かなぁ・・・】

   

愛はふと思う。


【今まで何であたし、こんな経験しなかったんやろ・・・?

 恋愛はいっぱいしてきたはずやのに・・・】


愛は不思議だった。


確かに遊び人だとは言え、今まで付き合ったり、デートしたり、キスしたり、セックスしたり。


結婚までもしたのに、こんなドキドキや緊張や不安は感じたことがない理由。


【勿体無いって言うよりも、体験した事ないもんな・・・】


愛は由佳に携帯にメールで聞いてみようと、携帯を開いた。



そして、返信されてきた由佳からのメールに、愛はハッとした。




    今までの相手が悪いんじゃなくてさ、

    愛が相手に対して壁を自ら作ってたからじゃない?


    愛自身が全力で人を好きになろうとしたことが無いだけやろ?違う?

    それを格好悪いとか、恋愛で傷つくのがいややったのか

    理由まではあたしにはわからんけどさ・・・


    最初から防御線張ってたんやろ。


    モテたあんたは、自分から仕掛ける事はあっても、自分から好きになる

    きっかけもなかったんやろうし、余計やなぁ。


    そんなんやと、前には進まれへん様に、知らんうちに

    少し好きな気持ちがでてきたとしても、気付かないフリして

    その気持ち、無理に押し殺してしまうからなぁ。


    じゃぁ、あたしも聞くけど、どうして今回は

    素直に好きを認めてしまったん?




【何で・・・やろ・・・難で素直に認めた・・・?

 好きになってる事に気付いてしまった・・・?  

 

 フラッシュバックがあってから・・・

 あたしは急に素直になったんや・・・


 10年前に笑顔の智哉と目が合った

 あの時の智哉の顔が、あたしを素直にさせ・・・た・・?】


愛は頭の中で徐々に何か思い出そうとしていることに、まだ気付いていなかった。


由佳にはとりあえず



    さぁ・・・なんでやろ・・・?



とだけ、返事した。





店を閉めて、智哉は沙織と店を出た。


するとそこには、智哉の単車に跨る、修がいた。


『よっ!』


修が智哉に手を挙げて言った。


『どないしたん、修、バイト入るんか?悪いけど今日はもう閉店や。』


智哉が笑いながら修に言う。


『お前、こないだ【また明日飲みに行こうや】言うて、次の日熱出して行けんかったやろ』


修が単車から下りて智哉に近づく。


『いつの話してんねん!』


智哉が笑いながら答える。


『悪いな、そういうワケで沙織ちゃん、今日は智哉、俺が借りるわぁ。』


そういうと、修は智哉の肩に手を回す。


沙織は少し笑って


『智哉を変な事に誘わないでね、修』


と言うと、バイバイと手を振る。


『また、電話するわ』


智哉が沙織にバイバイと返しながら言う。


『さて、話聞かせてもらお!

 よ〜さん聞きたいこと、あるわ〜!』


そう言うと、修は智哉の単車の後部座席に跨る。


『なんや〜?お前〜』


智哉が笑いながら単車に跨り、エンジンを回した。




修と智哉はいつも来るBarに来ていた。


ここは朝まで経営している為、多い時にはシュウに会くらい、智哉は仕事の後のみに来る。


『で、どうよ?智哉くん』


修が煙草に火をつけ、智哉に突然聞く。


『何がやね〜ん』


智哉は突然の質問に、グラスを口に付けた途端、吹き出してしまう。


『いや〜、沙織ちゃんの事とかさぁ』


修が一度フーッと煙草の煙を吐き出すと、続けて言う。


『あの、人妻さんの事とか』


智哉は酒を一口飲み、修の方を見ずに


『あぁ、沙織な・・・』


と、答えたあと、すぐに


『って言うか、何で愛やねん!』


と、笑って聞き返す。


修は笑うと


『いや〜・・・ただなんか、いつもの智哉のお遊びとは違う気がしてなぁ。

 ほら、3日前だって・・・』


と、修が指を立てて言いかけると


『あ〜、あの日・・・な』


智哉が笑う。


『あれは明らかにいつもの智哉違うやん。遊びの女相手に・・・』


修が話をすると、そこに被せて智哉が話す。


『全部言うなぁ!・・・あれは俺も自分で驚いた。

 なんでまた続けようとしたんか・・・今もわからんわ〜・・・』


智哉もポケットから煙草を出す。


『俺が言うのも何やけど、あの人妻さ、智哉に本気なんちゃう!?』


修は真面目な顔で言うので、智哉は笑いながら


『有り得へん。旦那おるしやなぁ・・・俺にはそんな風な態度、全然とらんし。

 でも実はな、今日、アイツ店に来たんよ・・・』


智哉が急に真面目な顔をする。


『ほんで?』


修が聞く。


『チューした。』


智哉がそう、真面目な顔で言うので、修が吹き出す。


『だから何やねん〜!』


修が爆笑する。


『・・・いや、別にいつもの事やねんけどな、なんか・・・あ〜も〜わからん!』


智哉が頭を貪る。


それを見た修が話を少し変える。


『そういやぁさ、いきなりあの人妻現れたけど、何で知りあったん?

 なんか山ちゃんとも昔ながらの知り合いっぽかったけど・・・』


智哉はそこで、修には何も言っていなかったことに気付く。


『あ〜、昔、10代の頃遊んでた奴の女やってん。

 それが最近ひょんな事で再会してなぁ』


智哉の話に修はじっと聞き入る。


『当時はほとんど・・・いや、全くしゃべったり絡んだりした記憶ないんやけどさぁ、

 あの女が俺の事覚えててな、俺もすぐなんとなく思い出してん・・・』


ここまで言うと、いきなり修が話を止めた。


『ち・・ちょ・・・ちょっと待ってや!

 全くしゃべったり絡んだ事ないのに、お前覚えてたん・・・?』


修が聞く。


『あ、不思議やろ?そんなに印象深かったんかなぁ・・・?

 顔とかはすぐに思い出せんかったんやけど

 10年ぶりに再会したら、すぐ顔見てわかったわぁ。』


修が不思議そうな顔をする。


『だって、智哉、お前18の時に一回ノリでエッチした沙織のことですら

 アメリカから帰ってきたお前、沙織と再会した時忘れとった様な男やん!』


修が大袈裟に驚いたような口調で智哉に話す。


智哉は【あはは・・・】と、自分に呆れるように笑う。


『んなお前がさぁ、ヤッてもいない、ましても話をしてもない10年も前に会った女の事を

 覚えてるなんて聞いても、信じられへんで?

 ホンマに当時、一度も話せんかったん?

 なんか喧嘩したとか、印象に強く残る様な事、なかったんか?』


修が息つく間もなく話すと、智哉がぼーーっと前を見て


『なんかあったっけ・・なぁ・・・・・・あっ!』


と、呟き、急に何かを思い出したかの様に目が一瞬大きく開いて、修の方を見た。


『何!?なんか思い出した?実は10年前にその彼氏と3Pしてたとか!?』


と、修は真面目な顔をして聞く。


『アホか、んな事してへんわ』


と、智哉が笑いながら、大きく煙草を吸い込む。


そして、一気に吐き出し、話し始めた。


『一回さ、俺、自分の女がいないときにさ、アイツの彼氏の単車壊れてさ、

 アイツの彼氏に頼まれて、愛を俺のケツに乗せた事あるねん・・・ 』


智哉が一つ一つ丁寧に思い出しながら、ポツポツ話す。



『んでさ、大阪城・・・やったはず・・・

 その大阪城からちょっとした場所に移動する短時間やったんやけどなぁ

 アイツ、無言で。』


修は前を見たままゆっくり話をする智哉をじっと見て話を聞く。


『俺、なんか話せなあかんのかなぁ・・・と思ってな、愛に【寒くない?】みたいなこと

 聞いたんよ。・・・春でな、その日は風強かったし・・・曇ってたから・・・

 そしたらアイツがボソッとさ、


 【めっちゃ綺麗、雪みたい】

 

 って、意味わからん返事してきて。』


そこまで話をして、智哉は一度酒を飲み、少し思い出す仕草をする。


『・・・で、俺、コイツ何言うてんのや?人の質問に意味わからん答え言うて

 頭おかしいんか?思ってな、バイクのミラーを愛に合わせてみてみたんよ。

 そしたらアイツ、アホみたいな顔して、口をポカーーンと開けて空見とってん』


修が少し吹き出し


『で?』


と聞く。


『コイツやっぱりアホなんかなぁ思ったんやけど、よく見たらな、桜が強風のせいで

 ものすんごい、舞っててん・・・


 俺も一瞬見とれるくらい、綺麗やったわ・・・

 桜の雪道、単車で走ってるみたいやった・・・』


修が黙る。


『・・・・そんだけ。』


智哉が修を見て笑う。


『要するに、単車の音と、風の音で、

 愛ちゃんには智哉の話しかけた言葉が聞こえんかってんな?』


修が聞く。


『多分そうやな』


智哉が答えた。


『・・・それだけの事で、智哉、愛ちゃんの事覚えてたん?』


修がちょっと呆れ顔で聞く。


『あの景色はホンマ、絶景やわ。

 単車に乗ってるからこそ、見れるんやで。

 後ろに後ろに桜の花びらが飛んでいくねんぞ?

 道が開けるように、積もった桜の花びらが、舞うねんぞ?

 それを一緒に見たから・・・かなぁ・・・

 なんせあの景色は印象に残るわぁ』


智哉の目には今、その景色が浮かんでるようだ。


『・・・それか、あのアホみたいな顔がえらい印象的やったんかな?』


と、智哉が付け足す。


修と智哉が大きな声で笑う。


『でも、あいつ、あの時、桜をバックにアホみたいな顔してたけど

 俺、あの顔めっちゃ鮮明に覚えてる・・・』


智哉が急に真面目な顔をした。


『さっきこの時のこと思い出したばっかりやのに?』


修が笑いながら智哉に聞く。


智哉は笑わず、ぼーーっと考えた。




『うん・・・なんでかなぁ・・・


 あいつもあの景色・・・覚えてるんかなぁ・・・』

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