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智哉の思惑

愛が智哉と電話する前



智哉は店で、愛のことを考えていた。


【この女、沙織みたいに束縛とかしないし、楽やな・・・

 やったからって彼女面しないし・・・

 一回だけはもったいなかったかもしれないなぁ・・・】


愛の割と淡白なメールや、しつこさのないメールに智哉は警戒をだいぶ解いていた。


【でもな・・・最初に警戒して一回だけって言ってしまったしな・・・

 今更、やっぱり続けよう、なんて言っても、

 愛だって流石に利用されてるって気付くよな・・・】


智哉はなんとかならないものかと頭を悩ませた。


【あ〜!

 一回だけなんて言うんじゃなかった〜!

 失敗した〜!

 ・・・まぁとにかく、今日は心配してくれてたし、お礼のメールでもしとくか・・・】


智哉は愛とのメール交換をして、愛の思惑の【電話で話す】の内容を見て考えた。


【お!?もしかして、愛の方からお願いか!?】


智哉はラッキーと言う感じですぐに電話をかけた。


そして、考えていた内容の話ではなく、いきなり言われた


【智哉以外の男と、切ったよ】


という言葉に、答えに困ってしまう。




【・・・え?どういう意味?

 そういえばアイツ、オレ以外に夜遊びする男がいるって言ってたな・・・

 そいつの事か・・・?

 でもなんだいきなり・・・?

 もしかしてこいつもヤッた途端、彼女面か・・・?

 しかもさっき心配してきた電話の中では何にも言ってなかったのに・・・】




智哉は頭の中で必死に考えた。


『えっ・・・?』


智哉はこれだけを口にするのが精一杯だった。


『ごめんね、言ってなかったの。』


愛が続ける言葉にただ聞き入る。


『あたしさぁ、他にも遊びの男、何人かいたんだよね。』


【おいおい、最低な女だな・・・】

智哉は少しムッとした。


『・・・はぁ・・・で?』


明らかに機嫌の悪い声で智哉が答える。


しかし愛は淡淡と話続ける。


『あたしが潰れたあの日さ、あたし、つい、言っちゃったよね。

 智哉以外に遊んだりする男いるって』


【あぁ、言ってたよ、知ってるよ】


智哉は心の中で答えながらだんだんイライラしてきた。


『・・・んなこと言ってた・・・?』


智哉は忘れたフリをした。


『覚えてるくせに、智哉相当機嫌悪くなってたやん!』


【なんだ?この女、おちょくってんのか・・・?】


智哉は黙る。

愛は続けて話す。


『でさ、あの日、あたし智哉とヤッちゃったやん?

 でね、思ってしまって。』


智哉は相変わらず黙って聞いていた。


『あれだけで終わるの、あたし、嫌や。』


【は・・?どういう意味よ?

 それと他の男と何が関係する?

 もしかしてオレと本気で付き合いたいとか?

 うわ〜・・・そうだとしたらめんどくせぇ・・・】


智哉は頭が混乱していた。


しかし、次に愛が口にした言葉は智哉の想像したものとは全く逆のものだった。




『智哉知っちゃうと、他の男がつまんないわ。

 あたし、浮気相手、智哉だけで十分楽しめる。

 あたしにセフレでいいから智哉の浮気相手のうちの一人ってポジション

 頂戴!!』




『はぃぃ???』


智哉は思わず声が大きくなる。


こんな変なこと言う女、初めてだ。


やっぱりヤッっちまったら最終的には自分だけのものにしようとしてくる女ばかり。


【何だ?この変な女・・・既婚だからか・・・?】


『あはは、何ていう声出してんの智哉〜!

 セフレって言葉はなんかいやだなぁ・・・

 体の関係がある親友?

 現実とは違う裏の恋人・・・?』


愛は楽しそうに話す。


『・・・って言うか、そんなんでいいの・・・?』


智哉は愛に聞く。


『って言うか、そんなんがいいの。

 智哉と彼女の関係潰す気なんて全くないし、あたしも家庭壊す気ないし。

 ただドキドキしたり、わくわくしたり、疑似恋愛楽しみたいの。

 智哉はそれを私にくれるから』


智哉はそれを聞いて力が抜けて、笑った。


『愛、お前、おもしろいな。』


愛も笑う。


『そう?

 でもさ、浮気だからスリルもあって燃えるんやん?

 智哉すっごいカッコいいし、智哉の本命の彼女だとあたし心配できっと潰れちゃう。

 でもさ、あたし、今旦那以外では、智哉だけの女だよ。

 あたす、智哉以外の男なんか目に入んない』





【結構可愛い事も言うじゃない。

 確かに浮気相手だからこそ重たくないし、喧嘩もしないで済む。

 しかも、沙織に少し疲れてる今なら、愛と過ごすと気分転換になり新鮮な気持ちになれる、

 こんなふうに割り切ってる愛ならオレを自分だけの物とか

 ややこしいことは言わなさそうだ。】


愛は続けて話をする。


『ねぇ、智哉、あたしを好きにしていいよ』


智哉は少しドキッとした。


最近では沙織にもドキッとなんかしてないのに。



智哉は小さく頷いて、愛に言った。





   『わかった、今日から愛は、オレの裏の女、な。』

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