表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/34

二人の関係

あれから愛は、智哉になんと連絡しようか悩んでいた。


と言うよりも、これからどう持っていこうか悩んでいた。


【ただの友達になる。】


【縁を切る】


【それとも智哉を落とす為に引き続き仕掛ける】


しかし、今どれだけ考えても答えは出なかった。


とりあえず相手の出方を見ようと、智哉から何かしら連絡あるのを待つ。


明後日はホワイトデー。


おそらく彼女と過ごすであろう。


明後日までになにかしら連絡があると、愛はよんでいた。


しかし、待てども待てども何の連絡もない。


もしかして、一度ヤッたことで満足し、関係を終わらせたのは智哉の方だったのか。


愛は自分が冷めたように、智哉ももう自分の事がどうでもよくなったのでは?と頭をよぎる。


【・・・それだとムカつく・・・なんかあたしがやり捨てされたみたいやん・・・】


このまま自然消滅も結構だが、ヤッても友達として仲良くしようと言ったのは智哉の方。


このまま智哉の方から一度も連絡がないのはどうにも腑に落ちない。


悔しいが自分からメールをしてみようと愛は携帯を開く。


まずは出方を伺おう。



  あれから、彼女にはバレなかった?(笑)



一行だけのこの文を送り、愛は携帯を閉じた。




沙織との喧嘩をした次の日、久しぶりに智哉は寝坊した。


『やっば〜〜!寝すぎた!』


智哉は飛び起き、慌てて着替える。


【あ!オレ風呂は言ってそのままあの後寝てしまったんや・・・

 髪乾かしてなかったからえらい爆発しとるやん!】


慌ててドライヤーで髪をセットするが、なかなか寝癖がなおらない。


【あ〜〜も〜〜!】


智哉は仕方なく帽子ではねた髪を押さえ、とにかく家を出た。


【マジ?あと15分で開店の時間ヤン!】


単車に飛び乗り店へ向かう。


なんとかギリギリ店に着き、慌てて開店準備をする。


【そういや今日は沙織がシフトに入ってる日やな・・・

 あいつ、昨日の今日で来るかな・・・あ!!】


ここでやっと智哉は携帯の電源を切ったままだったのを思い出した。


ポケットから携帯を取り出し携帯を起動させる。


そして新着メールを問い合わせてみた。


  【新着一件】


おそらく沙織だろうと思い、メールを開く。


【あ!愛や。】


智哉は沙織からメールが一件も来ていないことに少し驚き戸惑う。


そして、昨日、愛を抱いた後で何も愛にメールをしなかった事に少し罪悪感を抱いた。



   あれから彼女にバレなかった?(笑)



よかった、愛も起こっていないようだ。


これで愛からも責められてはいい加減疲れがピークに来る。


愛からのメールを読み、智哉は少しホッとする。


【ま、返事は後でいっか】


とにかく智哉は帽子を取り急いで開店の準備をし、店を開けた。




しばらくして、智哉の体に異変が起こる。


【・・・寒い・・・寒気がする・・・】


智哉はガタガタと震えていた。


【しまったなぁ・・・昨日ヤッて汗かいたまますぐに寒い外に出たからか?

 それとも髪乾かさずに寝たからか・・・?】


智哉はとてつもない寒気と闘うが、自然と体が震える。


それに気付いたバイトの男の子が智哉の側に寄り


『大丈夫ですか?』


と、声をかける。


大丈夫だよ・・・と言いたいところだが、今日ばかりはどうやらヤバイ。


これじゃぁ客の前に出る事もできない。


客に酒を勧められても飲めそうもない。


手の震えも止まらない。


『いや・・あんまり・・・大丈夫じゃない・・・・』


智哉はなんとか答えるが、歯がガタガタなり声までも震えてうまく話せない。


店員の男の子がこれは大変だと思い


『星野さん、今日は暇だし大丈夫ですから、あがってください!』


と、智哉に言う。


あと一時間もすれば沙織も出勤してくるだろう。


『悪いけど・・・休憩室で横にならせてもらうわ・・何かあったら呼びに来て・・・』


そう言い智哉は休憩室に入り倒れこむ。


とにかくその辺にある服やジャンパーを被り、横になり震える。


【あ〜寒い!熱上がってんのかぁ・・・?】


智哉は震える手で携帯を取り出しとにかく沙織にメールをする。


  

   悪い、できるだけ早くに店に来て仕事に入ってほしい



メールを送信した後、次は愛にメールを打つ。


とにかく何かをメールしなくては愛にも責められる。



   彼女は問題なし!

   って言うか、寒気がする!ヤバイ!



送信した後智哉は携帯を置き、その後もジャンパーに包まり、ガタガタ震えた。


その後、携帯に一件のメールが受信される。



   え!?大丈夫なん!?



愛からのメールだが、それに返信する元気は智哉には残っていなかった。





『何やってんの』


しばらく時が経ち、芋虫のように丸まる智哉の前に沙織が立っていた。


『や・・・やばいくらい寒くて・・・』


智哉は沙織を見てカタカタ歯を鳴らしながら答えた。


『とにかく今日は帰れば?店の鍵、どこ?』


沙織は冷たく言い放つ。


智哉はロッカーの中にかけてある自分の上着を指差し


『ポケット・・・』


と答える。


沙織は智哉の上着のポケットを探り鍵を取り出し、休憩室の入り口に向かい


『明日の夕方、部屋行くから早く帰って今日は早く寝なよ』


と言い、休憩室を出た。


今日は沙織に店を任せて大人しく智哉は家に帰る事にした。


なんとか家にたどり着き、部屋に入るや否やベッドに倒れこみ智哉は眠った。





〜〜〜〜♪♪♪♪♪♪〜〜〜〜


着メロが部屋に鳴り響く。


智哉は布団に入ったままベッドの下に転がる携帯に手を伸ばす。



『・・・はい・・・』



目を閉じたまま携帯に出る。


『あたし、愛やけど』


智哉はぼんやりする頭で


『あぁ、おはよ・・・』


と答えた後、部屋の時計を見る。


昼の二時を回っていた。


『ごめんね、起こした?』


愛は少し申し訳なさそうに聞く。


『いや・・・大丈夫・・・』


智哉はまた目を閉じ、うつぶせになり携帯を耳に当てる。


『昨日のメール大丈夫なん?』


愛に聞かれ、やっと自分が昨日体調不良によりダウンし、意識朦朧のまま部屋にたどり着き地力尽きて眠ってしまったことを思い出す。


『あ〜・・・うん、大丈夫・・・今はなんともない・・・』


智哉は寒気も治まり震えも止まっていることに気付く。


『無理したらあかんよ、病院には行かんの?』


なにやら愛は本気で心配しているようだ。


『めんどくさいやん・・・』


智哉は答える。


愛は少し笑った。


『智哉らしい・・・あれからメール途絶えるからマジに心配したやん』


電話に出た智哉の声に少しホッとしたようだ。


『ありがとう、大丈夫やで』


智哉はやっと起き上がる。


少し頭痛がするが昨日に比べてだいぶ体が楽になっていた。


『無理はしたらあかんよ?彼女は?』


愛はまだ少し心配そうだ。


『あ〜・・・今日の夕方来るんちゃう・・・?』


昨日は言ったとおり沙織は来なかった事に智哉は気付く。


部屋に来た形跡がない。


『ちゃんと彼女に看病してもらうんやで』


愛の言葉に一昨日の沙織との喧嘩を思い出す。


まだ沙織の手紙がテーブルの上にあった。


『あ〜・・・わかった、心配かけてごめんな』


智哉は手紙を手に取り机の引き出しにしまいこんだ。


『起こしたみたいでごめんね、またメールするし今からまた仕事までゆっくり寝てね』


愛は言う。


『わかった・・・じゃぁ・・・』


智哉が答える。


『うん、じゃぁね。』


愛がそういうと、電話が切れた。



そして、間もなくして沙織が智哉の部屋に来た。


しかし、智哉は電話を切った後もう一度ベッドに横たわり、知らないうちに寝てしまっていたので、沙織が来た事には気付かなかった。




電話を切った後、愛はシナリオを考えていた。


そう、愛は智哉を落とすために先に進もうと決めていた。


諦めかけたがこのままではやっぱり悔しい。


セックスをした途端、諦めてしまうとやはり女の立場からすると【負け】になる。


それだけは愛にとっては許せなかった。



愛の次の作戦は


【あたしはキミだけのもの作戦】


これは失敗してしまえばただの重たい存在になってしまう。


しかし、うまくいけば、ぐんと距離は縮まる。


先ほどの電話で【彼女に看病してもらうんだよ】と言った言葉には意味がある。


違う風にとれば【あたしより彼女が一番でしょ、あたしは彼女から貴方を奪うつもりなんて全く無いわよ】と、言っている。


こうして愛の重たさを軽減させる。


しかし、この作戦を実行にうつすにあたっては、一つの問題があった。


今二人の関係は、約束どおり、一度セックスしただけの関係。


言い換えれば約束どおり、愛を抱いてあげた智哉は、ここで関係が終わったと思っているだろう。


しかし、一回エッチしたが、終わらせないには、重たくない程度に二人の関係を続けたいと言う意思を伝えなくてはならない。


男は自分に害を及ぼす心配の無い女だと、暇つぶしに体の関係を持てる女、所謂【セフレ】としてポジションを与えたがる。


それを利用しようとした。


少し女としてのプライドが許さないが、今回失敗してしまった愛にとってはやむを得ない。


しかも、智哉は都合のいいことに、独占欲がハンパじゃない。


店で潰れてしまった愛が、ふと口に出してしまった【ヒロ】の存在。


それに対して確かに演技ではなく、一瞬機嫌が悪くなり


【浮気癖のある女だけは付き合いたくないわ】


と、嫌味までも吐いた智哉。


自分にメロメロだと思い込んでいた女が、他の男とも関係がある、それだけで怒りを覚える智哉は、よほど自分に自信があり、悔しい出来事なのだ。


自分に都合のいい女が、自分の彼女との仲を壊そうともせずに、しかも自分にゾッコン。


彼にとっては最高に気分が満たされる事だ。


愛はそんな智哉の性質を見逃さなかった。


これを最大限利用する。


愛はこの作戦に進みだした。


二人の関係を良い方向に転がす為に・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ