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何をやってるんだ、俺

『ごめん、めちゃ遅くなった!』


店に駆け込んだ智哉。


『何かあったんですか?』


心配そうに店員の一人が智哉を見る。


『いや、ちょっとトラブル・・・もう解決したから』


智哉は店にある鏡を手にして、髪が乱れていないか確かめた。


『智哉〜、お疲れ!』


ニヤニヤ笑いながら近づいてくるもう一人の店員。


彼は智哉の後輩の【しゅう】。


暇な時に智哉の店を手伝っている。


『何がお疲れや!』


智哉が修に殴るフリをしながら言う。


『大丈夫、髪、乱れてない』


修は智哉のパンチを受け止めながら笑う。


『何やねん、お前〜!』


智哉は笑いながら修を見る。


『で、どうやったん!?』


修はニヤニヤしながら智哉に寄る。


『何がやねん、何もないわ!』


智哉が修の肩を軽く押しのけ、カウンター内に入る。


修は智哉に続き、カウンターに入り


『いつもの様に急いで店に帰るフリ、したんやろ?』


と言い、ケラケラ笑う。


『修、黙れ、客の前や』


智哉は真面目な顔をして、話を切る。


修は手をパタパタと振り、【はいはい】と言う感じで厨房に入っていった。


客は何事かと智哉を見ていた。


【・・・あいつ、遅くなったけど大丈夫か・・・?】


智哉は愛にメールを打とうと携帯を開いたが、すぐにまた携帯を閉じてポケットにしまった。


【今メールするのはヤバイか。

 もしかしたら旦那と揉めてるかもしれへんしな】


そうして仕事についた。


【酔いつぶれてくれたなんて、助かった。

 沙織に嘘をついて出かける手間が省けたな】


智哉は少し、鼻で笑った。




深夜3時。


店を閉め、智哉が外に出たると、あとからついてきた修が、智哉の肩を叩く。


『さて、店をほっぽりだした罰として、色々聞かせてもらおうか』


そう言いながら、智哉と肩を組む。


『お前なぁ・・・』


智哉はタバコに火をつけながら笑う。


『どこの店行く?』


修が智哉の顔を覗き込む。


それに対し、智哉はわざとらしく、タバコの火を修の顔スレスレ口に加えたタバコを手に取る。


『おい!危ねぇな!』


修はバッと、智哉の肩に置いた手を退け、智哉から離れる。


智哉はそれを見ながら笑い


『悪い、今日は帰るわ〜。』


と、言いながら、タバコを持つ手を軽く挙げた。


『何?沙織ちゃん?』


修もポケットからタバコを取り出し加えた。


智哉は持っていたジッポで修のタバコに火をつけながら頷く。


『なんやかんや言いながら続いてるんやん』


修はサンキュ、と言うフリで手を挙げ聞きなおす。


『ウザくて仕方ないんやけどね、今日はなんか部屋で待っとるらしくて、怒らしたら面倒くさいやん?』


智哉は煙が目に入ったのか、目を擦りながら答える。


『沙織ちゃん、こえぇもんね〜。

 で、今日見せに来てた女の子に手を出すんかいな?』


修は智哉を見ながら聞いた。


智哉は【無い無い】と言う風に手を左右に振りながら答える。


『ダメダメ、あれ、人妻』


修は【ワハハッ】と大声で笑い、続けて話をする。


『遊びな訳ね、相変わらずやるなぁ、智哉は。』


智哉は煙草を消しながら笑顔で頷く。


『イイ女なんやけどねぇ』


智哉はそう言いながら単車にキーを挿し、エンジンをかけた。


『ま、また明日にでも飲みに行こうや』


そう言うと、智哉は片手を挙げた。


『あいよ』


修も手を挙げ歩き出した。




家に帰ると、寝転んで雑誌を読んでいる沙織がいた。


『あ、おかえり、遅かったね』


沙織は雑誌を閉じ、起き上がる。


『あ〜、店、混んでて。』


智哉は着ていたダウンジャケットをベッドの脇に放り投げ、沙織を見ずに答えた。


『何時に店閉めたの?』


沙織が続けて聞く。


『2時半くらい』


無愛想に答える智哉。


『今、もう3時半』


少し機嫌の悪そうな口調で沙織は言う。


『閉店作業に手間取ってた』


智哉はベッドに腰掛け、ポケットから煙草を取り出す。


『それにしても遅くない?何時に店出たの?』


沙織は智哉の顔をじっくり見ながら聞く。


『修と少ししゃべってた』


ラスト1本の煙草が、真っ二つに折れていた為、少しイラッとしながら、共やは煙草の箱をグシャッとにぎり潰し、テーブルの上に投げた。


智哉の機嫌が悪くなるのを解りながらも沙織はまだ聞く。


『どこで話していたの?』


智哉は即座に


『店の前』


と、答えたが、かなりイライラしている。


『この寒いのに?何を話していたの?』


沙織は構わず話し続ける。


智哉はもう面倒になり、答えずにテレビの電源を入れる。


それが気に入らなかった沙織は続けて話し続ける。


『何?あたしには言えない事?』


智哉はただテレビを見ている。


『今日は誰か知り合いの客、店に来た?』


智哉はテレビのリモコンをテーブルにわざと投げる。


バンッと大きな音を立てる。


『ねぇ、何で無視すんのよ?

 マズイ事があるからで・・・・』


沙織がそこまで言った時、智哉はとうとう我慢できなくなり、テーブルをおもいっきり蹴る。


ダンッと、大きな音が部屋に響く。


沙織は少しびっくりしたが、平然を装い


『何テーブルにキレてんのよ』


と答えた。


智哉は沙織を睨みつける。


『仕事から疲れて帰ってきたオレにお前はそんな事ばっかりしか言えんのか!?』


智哉はやっと口を開く。


『そんなことばっかって、あたしはただ聞いてるだけやん!』


沙織も負けずに言い返す。


『何がただ聞いてるだけや?

 人疑うことばっかダラダラ聞きやがって』


智也のイライラは限界だった。


『んなこと言ったって過去にあんなことあれば誰だって信用なんかできるはずないやろ!?

 携帯も意地でも見せへんし!』


沙織は過去の智哉の浮気を責めた。


『昔のことやろ!

 あの時謝ったやろ!

 それに対してお前は許したやろ!

 嫌ならその時に別れたらよかったやろが!?』


智哉はすごい形相で沙織を睨む。


黙り込む沙織。


『嫌なら今すぐ別れたらええやろ?

 オレは構わんわ!』


沙織は目に涙が溜まるが、必死でこらえる。


『・・・ええからもう今日は帰ってくれ・・・

 ほんま疲れた・・・』


智哉が新しい煙草の箱を引き出しから取り出す。


沙織は首を横に振る。


それを見て智哉は大きくため息を吐く。


『・・・風呂入ってくる・・・』


そう言うと、智哉は部屋を出る。


それを見届けた後、沙織は声を殺して泣いた。




風呂場で智哉は考えていた。


【・・・最近沙織と会う度に喧嘩してるな・・・】


智哉も決して沙織を嫌いなわけではなかった。


今日こそは優しくしてやろうと思いながら沙織に会う。


智哉も喧嘩ばかりは嫌だ。


喧嘩にならないように最大限我慢をし、努力する。


しかし、いつも智哉をイライラさせる行動や言葉ばかり、沙織に先手を打たれ、我慢できずに言い返す。


いつからこんな風になったのか、考えるがわからない。


日が経つにつれて沙織の干渉はどんどn酷くなる。


沙織も足掻いているのだろう。


それは解る。


でも、智哉は沙織の態度や言葉に我慢できない。


正直もう、好きかどうかなんて解らない・・・


最近ではかわいいとも思えなくなっていた。


【・・・潮時やな・・・】


智哉はため息をついた。


風呂から憂鬱な気持ちで出てきた智哉。


ところが部屋には沙織の姿はなかった。


【帰ったのか】


少しホッとして髪をタオルで拭いてから一服しようと、テーブルに手を伸ばす。


そこには手紙らしきものが置いてあった。


智哉はベッドに腰掛け、タオルを首に掛けてから煙草に火をつけ、二つ折りの手紙を開いた。


【智哉へ】


癖のある沙織の字だが、どうやら慌てて書いたのだろう。


少し乱雑な字だ。



   智哉が解らなくなりました。

   でも、それ以前にあたしは自分自身もわからなくなりました。

   仲良くしようと努力もしました。

   でも、智哉はそれに答えてくれません。

   あたしだけ頑張っても意味がありません。


   それをわかってほしかった。

   智哉はもう、沙織のことが嫌いですか?

   

   とにかく今日は帰ります。

   連絡待ってます。



智哉は手紙を読み終え、テーブルの上に無造作に投げた。


【何があたしばっかり努力しても・・・やねん】


智哉は呆れていた。


【結局自分のことしか考えとらんやん】


−−−連絡、待ってます−−−


沙織のことだかた、手紙を読んだら智哉からすぐに電話があると思っているだろう。


電話がなければおそらく沙織の方から、かけて来るだろう。


智哉は服のポケットに入ったままの携帯を取り出し、電源を切った。


『・・・今日は色々疲れたな・・・』


智哉はそう言い、そのまま眠ってしまった。






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