表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/34

冷めてゆく心と湧き上がる感情

『え!?ヤッちゃったの!?』


声を裏返しながら由佳は聞く。


『・・・うん・・・』


愛はハンドルを握り、片手に携帯を持ちながら頷く。


『・・・マジで・・・』


由佳は笑い声にも似た、呆れ口調で答えた。


『だって〜逃げられんかったんやもん〜』


愛は信号待ちでブレーキを踏み停車すると、ハンドルに顔を押し付けた。



パーーーーッ!



自分の顔でクラクションを鳴らしてしまい、驚き慌てて顔を上げる。




30分前・・・・・



『あっ!』


智哉が飛び上がる。


『何!?』


愛も慌てて起き上がる。


『今何時!?』


智哉が脱いだ服のポケットから慌てながら携帯を探る。


愛は運転席横にあるデジタル時計に目をやる。


『11時10分・・・過ぎだけど・・・』


愛が答えるとすぐ


『やっべ〜!店放置して一時間近く経ってるやん!』


智哉は慌てて服を着ながら車外へ飛び出し、携帯から誰かに電話している。


愛も乱れた服を素早く着なおし、横に置いてあった智哉のダウンジャケットを持って外に出る。


携帯電話をパタンと閉じた智哉にダウンジャケットを手渡しながら愛は聞く。


『店、大丈夫?』


智哉はダウンジャケットを着ながら


『多分・・・急いで戻るわ!』


と答え、財布から2千円を取り出し、愛に渡す。


愛が困惑していると、


『あ、駐車場代』


と、智哉が答えた。


智哉がもう一度車に乗り込み、シートの位置などを確認して、空っぽの缶コーヒーを二つ手にして再び車から降りた。


『これ、捨てとく、愛こそ家、大丈夫?』


愛に智哉は早口で聞く。


『うん、結構急がないとヤバイかも』


愛は答えながら駐車場代を払う。


うまく千円札が入っていかず何度も返ってくる。


『ちょっと貸してみ』


智哉が愛の手から札を奪い取り、清算機に入れるとすんなり入っていく。


続けてもう一枚入れると、お釣りがチャリチャリ音を立てて落ちてくる。


そのお釣りを智哉は掻き出し、愛に手渡し


『気をつけて帰れよ、遅くなってごめんな』


と言った。


『うん』


と、愛は答え、運転席に乗り込むと、窓を開け、智哉に手を振った。


『じゃぁな』


智哉も手を振る。


愛はそのまま車を出し、角を曲がり智哉が見えなくなるとすぐに携帯を取り出し、由佳に電話をかけた。




『は!?何それ!?』


由佳は少し怒りを込め愛に聞く。


『ね〜、ちょっと酷いでしょ〜?』


愛もこたえる。


『エッチ終わった後にそれかよ!いくら遊びでも酷すぎるっちゅうねん!』


由佳がまくし立てる。


『あはは・・・』


愛が呆れ笑いをする。


『で?』


由佳が続けて聞く。


『え?で?ってそれだけ。』


愛が少し困り気味に言う。


『ちゃうっちゅーねん!愛、あんたヤッて、今どんな感情よ?』


少し苛立ちながら由佳が聞いた。


『あ〜〜・・・あははは・・・』


愛は力なく笑う。



『まさか、ハマッたんやないやろ〜ね?』


由佳が真面目な声で聞く。


『・・・う〜ん、それがさぁ、期待を裏切るようで悪いんやけど・・・変なんよね。』


愛のテンションが少し落ちた。


『どういう意味?』


由佳が聞くと、愛はテンション低いまま、ぼちぼち話す。


『正直さぁ、あたしもヤッちゃったら、ハマってしまうんやないかと思ってね、少し怖かった んやけどね・・・

 なんていうか・・・どちらかと言えば気持ちが冷めていってると言うか・・・

 なんか、もういいやっていうか・・・

 全くドキドキしてないんよね、さっきまでのが嘘のように』


愛は自分の今の気持ちを何て言う言葉がぴったり来るのかわからず、悩んでいた。


なんだろう、この急激に下がっていく心の温度は・・・


『エッチが良くなかったって事?』


由佳が少し笑いながら聞く。


『いや、違う、それはそれはもう、よかった』


愛が笑う。


『終わった後の態度に冷めた?』


続けて由佳が聞く。


『いんや〜?違うなぁ・・・』


愛も困惑する。


しばらくの沈黙。


『そこが愛にとっての今回のゲームのゴールやったんやない?』


由佳が少しトーンを落とした声で言う。


『あ・・・そうなのかも・・・』


愛は自分では気付いていなかっただけで、エッチした時点で終わりだと、心のどこかで決めていたのかもしれない。


『勿体無いなぁ・・・これから面白くなっていくのに』


由佳が悔しがるように言う。


『あはは!そうだね。でも・・・ちょっと考えるわぁ・・・』


愛が力なく笑い答えた。


『了解、でも愛?背中押すわけじゃないけどさ・・・』


由佳が言葉に詰まる。


言おうか言わまいか、悩んでいるのが伺えたので、


『何?』


と、愛が聞き返す。




『あ〜・・・うん。

 今、愛の感情が断ち切れたからこそ、もし自分に振り向かせる作戦を続行した場合、

 愛が少し有利になるんやで〜』





そして、由佳との電話を切った。




電話を切り、愛は考えた。


【有利・・・か】


愛は悩む。


あまり気が乗らなかった。


どうしてこんなに一気に冷めていくのか。


しかも、彼との最初のメールでの約束。


【抱いてもいいけど、一度だけね】


その一度がこんなに早く来てしまった。


まさかこんな風になるなんて思ってもなかった。


作戦シナリオもおかげでめちゃくちゃだ。


ここからどう繋いだらいいかももう、わからなかった。


【もしかしてあたし、諦めてしまってる・・・?だから冷めてってる・・・?】


愛は髪をグシャグシャかき回す。


『はぁ・・・・』


大きくため息をついた。


もう時期家にたどり着く。


そしてふと、思い出す。





【ホントにキス、一度もなかった・・・な。】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ