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・・・愛のないSEX・・・

『うわ〜、さっぶ〜〜・・・』


智哉がダウンを深々と着なおし、ポケットに手を入れる。


愛は智哉の左側に移動し、少し小走り。


『おれがこんな風に店の前よりも遠くに送るなんて、ホンマ特別やで!』


なんて押し付けがましい言葉。


でも、愛は何も言い返せなかった。



智哉はふと、足の向きを変え、道の脇にある自動販売機の前に立ち、財布を取り出す。


『どれ飲む?』


愛は暖かいコーヒーを指差す。


『オススメって書いてあるからこれ選んだんやろ?

 これ、マズイで!』


そう言いながら智哉はオススメとPOPのついたボタンを押す。


『え!?嘘!?じゃぁ違・・・あっ!』


愛はまさに【オススメ】と書いてあったために選んだので、違う種類に変えようとしたが、智哉に先にボタンを押されてしまった。


『うっそ〜〜!

 旨いよ、これ。』


智哉はそういうと、愛に取り出した缶コーヒーを渡す。


愛はコーヒーを受け取り、少し膨れっ面をした。


『怒るなって〜!』


智哉は自分の分の缶コーヒーを買い、また道に戻り歩き出す。


愛も急いで智哉に追いつく。


無言の時が流れる。


愛のヒールの音だけが響く。


えらく駐車場が遠く感じる。


無言に堪えられず、愛は口を開く。


『バーの仕事・・・楽しい?』


智哉はコーヒーを空けずに、両手で包み込むように持ちながら手を温めている。


『う〜ん・・・そやな、しんどい時もあるけどな』


智哉はそう言うと、缶を振り、開けて一口飲む。


愛はそのしぐさ、一つ一つをじーっと見つめていた。


『女好きな智哉にとっては良い仕事やね。』


少し笑いながら愛は智哉に聞いた。


『天職やろ!?』


智哉は無邪気な笑顔を見せ、答えた。


『だね』


愛も笑いながら答えた。


気のせいか、店を出てから智哉は愛の方を一度も見ていない。


愛が一方的に智哉の方を見ていた。


その視線に気付いているのかいないのか、智哉は前だけを見て歩く。



そうしているうちに、愛の車をとめてあるコインパーキングに着いた。


『車、どれ?』


智哉が愛に聞く。


『あ、これ。』


愛は車の横に立つ。


『でっかい車乗ってるんやなぁ、いいなぁ、中見せてよ。』


愛の車は8人乗りのミニバン。


智哉は愛は女なので、軽自動車であろうと勝手に想像していたのであろう。


『うん、いいけど』


愛はキーレスで車の鍵を開けた。


智哉はまず、運転席を覗き、次に後部座席のドアを開け、3列目のシートに座る。


『お〜、広いなぁ、これくらい広いとやっぱりいいなぁ』


愛はドアの側に立ち


『うん、広いのは便利だよ』


と、智哉を見て答えた。


智哉は車の中を色々探り


『へ〜・・・あ、こうなってんや〜』


等と、独り言を言っている。


愛は寒いので、運転席側に周り、先にエンジンをかけてから、もう一度後部座席側のドアの側に立ち、


『先にお金払ってくるね。』


と、言い、智哉の方を見た。


その瞬間、智哉が急に愛の手首を強く握り、愛の目を見た。


愛は声すら出せず、ただびっくりして固まる。



『おいで』



低い声で智哉が愛の目を見続け、小さく呟く。


そして、グイッと強く車の中に愛を引きずり込み、後部座席のスライドドアを勢い良く閉めた。



バタンッ



と、大きな音が響いた。



時間にして、10時半過ぎ。


店の場所から少し離れたこのコインパーキングは、住宅街に位置しており、時々会社帰りのサラリーマンが通るくらいで、コインパーキングの中までは誰も目を向けない。


静かな車内に、小さくカーステレオから音楽だけが鳴り響く。


座席に座る智哉、そして座席の下で、智哉の両膝の間に膝まつく様に座り込む愛。


愛は全く動けなかった。


智哉は愛の目をじっと見つめる。


やっとの思いで愛は声をだす。


『・・・な・・・どう・・した・・・ん?』


ちゃんと声が出ない。


『抱いて欲しい・・・んやろ?』


智哉が真顔で聞く。


愛は今にも心臓が口から飛び出しそうだった。


ゴクッ・・・


愛は唾液を飲み込む。


口の中がカラカラだ。


『こ・・・ここで?』


愛はこうこたえるのが精一杯だった。


智哉は何も答えず、表情も変えず、愛の腕を握ったまま、ただ愛を見つめている。


愛は今すぐにでも逃げ出したかった。


しかし、体が思考を反対にうまく動かない。


『冗談・・・』


言いかけて愛は言葉に詰まった。


まっすぐ見つめてくる智哉の目。


少し恐怖感さえ覚える。


愛は完全に黙り込んでしまう。


カーステレオから流れる曲が終わった瞬間


智哉は愛を力強く抱き寄せた。



愛は完全に動けなくなっていた。



あれ?どうしてあたし、こうなったの?



一生懸命今日のここまでの経過を頭の中で辿る。


しかし、今この状況ではちゃんと頭が回らない。


『智・・・哉・・・』


愛は智哉に苦しいくらい強く抱きしめられ、何かを言いたいが言葉が思いつかない。


智哉が愛の横髪を少し撫でてから耳にかける。


そして、愛の耳に唇が触れる。


そのまま首筋に唇を這わせ服を脱がせる。


愛はもう体に全く力が入らなかった。


それに気がついたのか、智哉は一旦手を止め、片腕で愛を抱きしめながら、自分が着ていたダウンを脱ぐ。


そして、制服のベストのボタンとシャツのボタンを外した後、愛を抱き上げ、シートに寝かせた。


愛は既に抵抗することすら止めていた。


もう一度愛を見つめなおす智哉。


一時の間をおき、智哉は愛に覆いかぶさり、愛の胸元に顔を埋め、激しく愛を求めた。


愛も強く、智哉を抱きしめ返した。





・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・



カーステレオから流れる小さな音楽と



二人の吐息だけが



車内に響く



完全に車の全ての窓ガラスは曇り



外からの視覚はシャットダウンされている



車内の温度は



急激に高くなっていく



『・・・オレ・・・・もう・・・・』



智哉の切ない声



『・・・いいよ・・・』



愛はぎゅっと智哉を抱きしめる



次の瞬間



智哉の顔が切なく歪む



そして



愛の体に



智哉の体が倒れこんだ

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