第八章 動き出す、運命の歯車
テスト期間をはさんでいたのでなかなか投稿するのが難しかったです!!すみません!!
なんかタイトルが中二病......
「うわーーー......酔いつぶれてるよ...」
現在の時刻、午後七時。今日はボクとレルミス達の誕生日ということで、様々な国から来客者が来た。五歳の誕生日とかそれみたいに多くはないけど、この城の1階は全部埋まっている。あ、ちなみにこの城は何階建てくらいあるか正確には分からないけど、十階建て以上は普通にある。一つの階が無駄に広いから、無駄に幅をとるんだよね。これは言っちゃいけない事だけどさ。
目の前でベロベロになっている父様や他国の貴族王族達、将軍や側近の方々を見て、ボクはポツリと呟く。特に父様には、ものすごく冷たい視線を送ってやった。
「......国王とあるまじき者が、そんなだらしなくてどうするのですか...?」
溜め息交じりの言葉を父様に浴びせる。だが父様は「あぁ...気にするなぁ...」とだけボクに伝え、そのまますぐに熟睡してしまった。早っ!!
「全く......」
本当にどうしようもない国王だな、とボクは溜め息をつく。こんな姿を国民達が見たらどうなるだろうか。きっと父様の好感度が下がる事だろう。そしてそんな父親を持つボク達兄妹はあらゆる所でバカにされ、不幸な人生を送る事になる。そして最悪の場合、イジメを受けて.........いや、考えすぎか。
テーブルから落ちそうになる父様の上半身をすばやく受け止め、起こさないようにそっと元に戻す。
「......これどうするんだろう...?」
やがて父様から別の方向に視線を移す。その視界の先には、空っぽのワインの瓶やゴミなどがあちこちに散乱していて、それをうちの使用人達が一生懸命に拾って掃除をしている光景だった。どうするんだろうと思っても、もう使用人達が既にどうにかしているからボクが手を出す必要は無いかもしれないけど、何もかも使用人に任せる程ボクは悪い奴じゃない。
ボクはそのままゴミの山の方へと足を進める。そして他の使用人達みたいにゴミを拾い掃除をする。
「あ、王子!!これは全て私達がやりますので......」
「いや。毎回毎回使用人さん達に任せるのもこっちとしては嫌ですので。手伝わせてください」
ボクが取ろうとしたゴミを横からすばやく取ってボクに取らせないようにする使用人が、ボクに申し訳ないと言ってそのままボクを二階に連れ込もうとしてくる。けどボクはメイドばっかりに任せっきりは嫌だからと言って、ボクを掴んでいるメイドの手を優しく引き剥がした。すると諦めたメイドは、「ありがとうございます、王子」とだけ言い残して、そのまま別のゴミの山へと向かっていった。
よし、じゃあ早速やりますか......って...。
「.........」
メイドがいなくなったので、ボクは早速掃除に取り掛かろうとした。だが改めてゴミの山を見ると、ボクだけでは丸一日かかりそうなぐらいの勢いでゴミが溜まっていた。母様が見たら、きっと気を失われてしまうだろう。
バタッ
「!?」
どこかで人が倒れたような音がした。も、もしかして......。
「母様......」
もしかしてと思って僕が向かった先には、仕事帰りの母様が地面に倒れていた。ほら...ね。予想通りだった。母様が帰ってくる前に全て片付けたかったけど、なかなか上手くいかなかった。丁度母様の仕事が終わる時間だしね。
ボクは母様に向かって呼びかける。が、返事が無い。完全に気絶しているようだ。ボクは仕方ないと言って、そのまま母様を引っ張りながらメイドの元へ連れて行く。
「メイドさん。母様を部屋に運んでもらえますか?」
メイドの服を軽く引っ張り、母様を部屋まで運んでとお願いをする。するとメイドは「あぁ......気絶なされたのですね......」と苦笑いをし、分かりましたと言ってそのまま母様を背負って部屋まで運んでいった。
「...アハハ...」
母様結構綺麗好きなところあるからなぁ......。こういうゴミの山みたいなものを見るとどうしても気を失ってしまうんだよね。だから...父様に何度も散らかさないでねって言って「あぁ、分かっている」っていう会話をやっているのに、散らかさない宴があったことなんて一度も無い。約束と全然違うと問うと、「約束?なんだそれは」としらばっくれるんだ。本当。こういう所、子供っぽいなぁって思う。でもそういう短所があるいっぽうでとても良い長所があるから、恨めないんだよなぁ...。
「さて......もういいか」
ゴミを拾い終わる。あとは雑巾がけだけど......なんかメイドさんに何かいわれそうな予感がしたので止めた。
「ふぁ.....」
その場で小さな欠伸を漏らす。眠い......。もうお風呂入って寝ようかなんてあれこれ考えるが、そういえばまだ宴は終わっていないんだっけ、とその事が頭をよぎる。ふと周りを見ると、メイド達の他にまだお酒を飲んでいない他国の貴族王族達がぞろぞろいる。
いつまで続くんだ...?この宴。
ガタッ
急にボクの後ろの椅子が動く。どうやら父様が起きたらしい。
「......」
よろよろと歩く父様。その足が向かっている先は、2階。何をするつもりなのだろうか。
「父様...あの、何をしようとしているのですか?」
ボクは父様の後ろについていき、何をするのかと問う。だが返事は無い。寝ぼけてるのかなぁ......。
やがて、父様とボクは階段を上りきり、一階を見渡す事の出来る出っ張りのところに行って身を乗り出した。不思議な行動だ。ボクは再び声をかける。
「あの、父様ーーー」
「諸君!!こちらを見てもらえるか!!」
そうボクが言おうとした時だった。急に父様が口を開いた。何をするつもりなのだろうか。しばらくボクは父様の言葉を待った。すると。
「今回のパーティは、これにて終了にする!!」
父様がそう言った。よっしゃ、っとボクは心の中で喜びに浸っていたが、その直後。僕は目を見開いた。
「......これから、夜の宴を始める!!」
.........え?
ボクはぽかんとした顔でそのまま固まった。もう終わりじゃないの?え?どういうこと?
後ろで歓声をあげる他国の貴族王族達。ボクは数十分ほど、どの場に立ち尽くしていた。
只今の時間、夜十時。子供が寝る時間をとっくのとうに過ぎている。超眠かった。
宴も終盤に入っていき、もうそろそろで終わる。やっと終わってくれた宴に、ボクはホッと息を吐く。
「いやぁ~~......にしても今回は大盛り上がりだったな。疲れたよ...」
「父様ご自身がこの宴を延長なされたのでしょう?......自業自得ですよ」
隣で椅子に座ってグテ~~~っとしている父様に、ボクは冷たい目で見つめ返してやった。そして父様に背を向け、ボクは浴場へと向かう。
「では父様。ボクはこれで失礼します。......メイドさんの手伝いでもしたら、きっとモテる男になりますよ」
「!!それは真か!?」
ボクの後ろで父様が必死に叫んでいる。が、ボクはそれをスルーした。
「全く......父様ときたら...」
階段を上がり、ボクは父様に対しての愚痴をぶつぶつ呟く。父様さ!?何であんな宴とかそういうお祭り好きなの!?こっちはまだ一歳......じゃなかった。二歳の子供なんだよ!?普通は子供を先に寝かしてからの夜の宴延長でしょ!?なのに父様ときたらボク達に「寝るんじゃないぞ?」とか何とか脅してきてさぁ!?こっちの気持ちも考えろよ......って言いたい。でもさ。あれでも人々から信頼を得て世界の頂点に君臨している王だからなぁ......しかもものすごく強いし。恨みたいけど恨めない...!!
「おっと...」
そんなことをあれこれ考えていると、前から来た小さい子供とぶつかってしまった。ボクは一瞬こけそうになったが、何とか踏ん張り耐えた。一方ぶつかってしまった子供はというと、ボクみたいによろける訳でもなく何事も無かったかのようにその場に立っていた。
「すみません......ちょっと急いでいたもので...」
するとその子供は、丁寧かつ紳士的な仕草で、ボクに謝りそのまま去っていった。
「......」
彼から何か不思議なオーラが放たれていたように見えたのは気のせいだろうか。人間ではない、神の光に似たような......。
彼が去っていった後、ボクは少しずつ足を進めていき、さっきの少年について頭をフル回転させていた。
「おぉ...帰ってきたか、カルミス。丁度良いところに来たな」
風呂からあがって、二十分の時間が経った。頭をタオルで拭きながら再び宴をしていたところに戻ると、先程のうるささはどこへやら、他国の貴族王族達は早々に解散し、この城から出て行く。そしてドアの近くに並んでいる執事やメイド達が、帰っていく貴族王族達にお礼を言っていた。床も壁も綺麗になっており、ゴミ一つ無いいつもの部屋に戻った。メイドさん達頑張ったなぁ.........。
ボクは父様に呼ばれたので、走って向かった。
「何でしょう?父様」
「いや~~~...それがな...」
父様が手をボクのいる場所と逆方向に伸ばしていた。その先には、他国の王族っぽい父様よりかは身長が低い大人の男性と、先程廊下でぶつかった小さい子供だった。
誰だろうと思ってボクは問いかけようとしたが、問いかける前に答えられてしまった。
「こちらは、ここから少し北のほうにある神ノ都市「ルーノ」王国から来た、アムル王とその息子、エル王子だ」
「どうもカルミス王子。ボクはエル=バロン=クレイアと申します。以後、お見知りおきを」
ぶつかった時みたいに、彼は紳士的な仕草で挨拶をする。とても礼儀正しくてなんか良いんだけど.........ちょっと同じ王子だというのに、そんな畏まらなくてもいいと思う。
「いや...あの、その......そんな畏まらなくてもいいのでは...?」
同じ身分の人に畏まられたり敬語を使われるとちょっと居心地が悪いというかなんというか......。ボクがそう言うと、彼は少し驚いた顔で、
「いいえ。例え同じ王子だとしても、貴方は世界を統治する国王の息子です。身分の差がありすぎます」
と言い返してきた。この子、そんなことやってて疲れないのかなぁ...?ふとそう思った。ボクだったら疲れすぎて頭がおかしくなりそうな気がする。
ボクは再び、その返された言葉に対して返答をする。
「いや。...ボクは身分とかそんなの気にしないんだよね。っていうか、身分なんてこの世から消えてしまえと思っちゃうくらい。...だから、気楽にしてよ。聞いているこっちまで疲れてきちゃうよ...」
苦笑いをしながら返答をすると、彼は納得したように頬を軽く両手で叩き、コホンッと咳払いをした。
「では...改めまして。ボクはエル=バロン=クレイア。これからもよろしくお願いします」
「うん。こちらこそ、よろしくね」
敬語がまだ抜けきってないけど......。まぁそれは地道に直していけばいいか。
ボクの右手と彼の右手が固く握手される。新たな友情の始まりだ。
ここからボクの、運命の歯車が回りだすーーーーーーーーー
次回更新予定 6月25日