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創神~善悪宿りし神の化身~  作者: とりあえずネタ
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第六章 獣人の力解放、暴走に要注意!?


 「両者、用意。......始め!!」


 二人の兄妹が激突する。両者共に、極東仕様の「苦無」を両腰に各三本、両手に一本ずつ持っていた。

 その武器を持って、二人は激しい戦闘を繰り広げる。激突する度に爆風が起き、それらを母さんとエルミスと一緒に見ているボクは、飛ばされかかっていた。

 火花が散り、兄さんとラルミスの目の火花も散る。二人は本気で殺しあっている模様。母さんはそれを止めることなく、ただじっと見ていた。

 今やっているのは、妖術と忍術、刀と苦無の訓練だ。今まで母さんの元で妖術や忍術などについて学んできたラルミスが、魔法を極めているカルミス兄さんに魔法を一切使わずにどれだけ対抗できるのかを調べているらしい。カルミス兄さんが勝ちそうな予感がしたけど、


 「兄上、もう降参した方が良いと思いますよ...!!」


 「っ......!!」


 今現在、ラルミスが優勢状態だ。手加減をしているのかと最初は思ったもののそうじゃないみたいで。兄さんが本気で魔法を行使してもこんなにも圧倒的な力の差が生まれてしまう......。すごいラルミス、とボクは感心した。

 そろそろ二人、精神オドと妖力が切れそうだ。息苦しそうに息を切らしていた。


 「降参......?ハッ...自分が優勢になったからって調子乗らないほうが良いと思うよ、ラルミス」


 兄さんの挑発行為。あれをやるってことはまだ精神切れはないということだ。それに乗っかるラルミスも、妖力切れじゃないことが分かる。


 「[鎮魂歌レクイエム]」


 兄さんが催眠魔法をかける。それに対してラルミスは、


 「[解魔法の結界]」


 中級魔法以下の魔法を無効化する妖術を出してきた。「鎮魂歌」はギリギリ中級魔法だったので、無効化された。それを見て軽く舌打ちを打つ兄さん。もうなす術がないのだろうか。

 もう終わってしまった、とそう思っていたら。


 「[時間停止クロノスタシス]」


 兄さんが何かの詠唱を唱えた。その瞬間に、ラルミスの動きが止まり、全く動かなくなってしまった。

 「時間停止」。敵一人の動きを止める、上級魔法に位置する魔法。術者が解除呪文を唱えなければこの魔法は消えない、案外厄介な魔法。

 兄さん、この間中級行ったばかりなのにまた上に上がったのか、とボクは驚いた。さすが兄さん、成長が早い。

 兄さんは止まったラルミスに向かって色んな魔法を打つ。四方八方から攻撃をし、それをしている間に、兄さんは時間停止を解いた。


 「[時間停止解除タイムストップリリース]」

 

 再びラルミスが動き始める。だが兄さんの魔法に攻撃されその場に膝を付く。


 「ハァ...ハァ...いつの間に...?」


 「時間をちょっと止めたからね。こんな事普通に出来るさ」


 兄さんが自慢げに言う。これも一種の挑発だろう。まだまだ足りない、こんなの序盤だと。とう言いたいのだろう。ラルミスはそれを察し、兄さんにまた攻撃を仕掛ける。

 苦無同士がぶつかり合い、火花が散り、時には折れたり欠けたりした。だがすぐに腰から苦無を引き抜き、すぐ先頭に復帰する。時間停止の後はずっとそれの繰り返しだった。

 開始して三十分ぐらい経った頃だろうか。母さんが終了の合図を出した。


 「そこまで!!」


 その瞬間に、兄さんとラルミスがその場で止まり、それぞれ苦無をしまい未完成の魔法や妖術の霧を消した。そしてこっちに向かって走ってくる。


 「どうでしたか、母上。上手くなっていますか?」


 母さんの元に辿り着いて一番最初に口を開いたラルミス。その期待の笑顔に対し、母さんは苦笑いで


 「上手くはなっているわ。でもまだ動きが少し鈍いわね」


 と少し言いにくそうに言っていた。その言葉に少し落ち込んだラルミス。少しかわいそうだと思ったのか母さんがラルミスに「大丈夫。きっと上手くなるから」と言って元気付けていた。するとラルミスがパッと顔を明るくし、「これからもご指導よろしくお願いします!!」と言ってランランになっていた。その時、母さんが密かに「チョロいわね...」と言っていたことは、聞かなかったことにしておこう。

 そのランランなラルミスの隣で、兄さんが少し落ち込み顔でいた。気になったので、


 「どうしたの、兄さん」


 とボクは兄さんに話しかけた。すると兄さんは、


 「いや.........まさかラルミスにあそこまで追い詰められるなんて...思ってもみなかったからさ...」


 と言っていた。どうやらラルミスに負けそうになったのが悔しかったらしい。兄さんは下唇を軽く噛み、ラルミスを睨みつけていた。それを見て、笑う事しかできないボクは兄さんを放っておくことにした。

 なんかもう疲れたなぁ...と兄さんが芝生に寝転がる。それにつられてラルミスも同じように寝転んだ。確かにこの二人、この城壊すんじゃないかと言わんばかりの勢いで魔法とかぶっ放してたしね。疲れるのもしょうがないと思うよ。ボクも見てるだけで疲れちゃったもん。

 兄さん、ラルミスと次々に寝転んで、ボクもやろうと兄さんを間に挟んで右隣に寝た。

 頬を掠めるこの冷たい風が心地よい。いつもだったら寒くて外出たくないと言って部屋でずっと本を読んでるけど、今は戦闘を見た後だから結構暑くて。この風がとても涼しく感じた。

 

 「「「ん~~~~」」」


 三人同時で寝ながら背伸びをする。さすが四つ子だね、とその後小さく呟く兄さんの言葉に、ボクとラルミスは軽く笑った。

 そんなくだらない話を続けていると、母さんが


 「ほら三人とも。起きなさい」


 とキツイ口調で言ってきた。もうこれくらいにしようよー、とボクは言ったけど、「学校に行かせてあげないわよ」と言い返されボクはその後何にも言えなくなった。

 さすがボク達の母。娘達の弱点を把握済みで。

 そんなこと言われたらさすがに立つしかないと思い、ボク達は立った。

 これから何するんだろうというワクワクしているラルミスと、何を言われるのか緊張して待っている兄さん。そして面倒くさそうに、早く終わらないかなーと思いつつも普通に見せて立っているボク。四つ子でも、似ていない所はある。

 

 「何をするんですか、母さん」


 なかなか口を開かない母さんにボクは少しイライラしたので、ボクが最初に口を開いた。だって早くしてもらわないと正直言ってこの修行やりたくないし。母さん厳しいから。ボク厳しいの嫌いだし。

 だから早くしろ、と。そうボクは母さんに訴えた。すると母さんはそれを察したのか、小さく溜め息をしてボク達の顔を順番に見て言った。


 「カルミス、レルミス、ラルミス。貴方達に獣人の奥義[獣化]の仕方を教えます」


 獣化!?ボクが獣人として一番待ち遠しかったものだよ、それ!!母さんが言った言葉に対してボクは目をキラキラと輝かせて、早く早く、と念を送った。今度は止めたいの方ではなく、やりたいの方。

 ボクと兄さん、ラルミスが目を輝かせながら母さんを見つめる。それを見て少し引き気味な母さん。でも気を取り直して、母さんは真剣な目つきで語りだした。


 「[獣化]とは、獣人の力を最大限に引き出し、自分の中に眠っている光と闇の力を解放して本来の獣の姿になる事。それが出来れば、数多くいる獣人のトップに立つことができる。実際、私はそれで獣人のトップに立っているます。まぁ、天狐だからという地位的な関係もあるかもしれませんがね」


 母さんの話を要約すると、いっちゃえば「獣化」は「覚醒」することと同じだ。光と闇を解放してその二つの力で敵を圧倒する。人によって神に敵うほどの力を持っている獣人もいるらしい。ちなみにその逆もいて、小さいアリにすら勝てないくらいの獣人がいたり、そもそもその力が無い者だっている。

 

 「獣化は、個人で強さが違います。なんてったって、自分の力を解放するのですからね」


 弱ければ弱いほど弱い覚醒になり、強ければ強いほどより強力な覚醒になる。人によってステータスが違うから、そこのところは偏りがあるらしい。

 強い獣化をしたければ、鍛えろって話だね。うん。頑張ろう。


 「とまぁ、獣化の説明はこれくらいにしておきましょう。では本題。獣化のやり方について教えていきます」


 まず自分の中にある光と闇の塊を感じ取り、それを体全体に広げる。そして獣人にのみ備わった「獣眼」を開くだけ。そうすれば勝手に力を解放して獣の姿に変わっていくそうだ。なーんだ。意外と簡単じゃん。ボクは余裕の顔で母さんに言われたとおりにやった。

 自分の中にある光と闇の塊.........あれ?なかなか出来ない。

 頑張って精神を集中させて光と闇を感じ取ろうとしているんだけど、なかなか出来ない。というか、自分の体中に流れている精神オドの流れすら感じ取れていなかった。

 これはマズイ。精神さえも感じ取れなかったら、せっかく習得した無詠唱魔法がまた出来なくなる!!ボクは焦って隣にいるであろうラルミスにコツを教えてもらおうと話しかけようとした。だが、


 「これで宜しいですか?母上」


 いつの間にか獣化しており、母さんの元へ行っていた。さすが。母さんの所に毎日修行しに行ってるだけあるな、と同時に、あまりのすごさに嫉妬した。

 妹のラルミスが出来て、何で姉のボクが出来ないんだ、と。同じ母親から生まれてきたはずなのに、何故こうも力の差が生まれてしまうだろうと。酷く嫉妬した。すると。


 「あれ......?」


 何かを感じた。なんだろうこれは。光と闇だ!!怒っているから、何もかも感じ取れるように力が解放されたんだ、とボクは大喜びした。

 その喜びをそのままにし、ボクはその感じ取った光と闇の塊を体全体に送った。これも容易く出来た。やっぱりボクって天才!!

 「獣眼」を開くまでの準備は整ったから、あとは眼を開く詠唱を唱えるのみ!!そしてボクは詠唱を唱えた。


 「[眼の力 我が獣の血筋に覚醒をもたらせ]」


 前教えてもらった詠唱を唱え終わり、ボクは名前を告げる。


 「[眼に宿る力よ 我が言葉に答えよ 神秘なる力の主 我が名はーーーーーーレルミス]」

 

 その時だった。魔法名を告げる前に、ボクの意識が無くなった。急に。体は動いているけど、視界が真っ暗で何も見えない。

 何で......?ボクは状況が分からないまま、そのまま気を失ってしまった。









 「危ない!!カルミス、ラルミス!!」


 「!?」


 急に母様が叫んで、ボク達を吹き飛ばした。何の冗談だと最初は思ったものの、レルミスの姿が視界に入った瞬間、ボクは絶句した。

 赤く燃えるような色の瞳。これぞとばかりにつりあがっている目だった。口には怪物級の牙が生えており、噛まれたら一瞬で食い千切られそうだった。手にも怪物級の爪があった。頭には耳、尻には大きな九本の尻尾が生えている。さっきまで結わえていたはずの髪もいつの間にかティアラが取れており、鬣のようになっていた。

 何よりも怖かったのは、彼女から出る凄まじいオーラだった。怒りと殺気が篭っていて、近づけば一瞬でショック死してしまいそうだ。それ程、彼女は怖かった。

 

 「母様、アレ...!!」


 「えぇ。ーーーーーー暴走ね」


 レルミスは暴走した。理由は自分の無力さと妹への嫉妬から。ちょっとした事で怒るレルミスはよく暴走して大問題を起こしている。いわば世界の問題児ともいわれている王女だ。そうならないように、その短気な性格をどうにかしたいものだが、生まれつきの性格というものは、どうも変える事が難しく、なかなか直すことが出来ない。

 前の大暴走から五ヶ月、大丈夫かなと様子は伺っていたが、まさかこのタイミングでくるとは予想外の出来事だった。

 今回は獣化しているため、被害は過去の暴走より大きくなる。城だけではなく、街ににも被害が加わるかもしれない、とボクは思った。

 一刻も早く止めなければ、と。ボクはさっき出来た獣化を再びやった。


 「眼の力 我が獣の血筋に覚醒をもたらせ  眼に宿る力よ 我が言葉に答えよ 神秘なる力の主 我が名はーーーーーーカルミス 獣眼、開眼!!]」


 一気に詠唱と魔法名を唱え、高速獣化をする。猛スピードでやったからちゃんと出来るかどうか分からなかったけど、でもなんとか無事に獣化することが出来た。

 淡い光を放つ青のオーラ。これぞとばかりに長くなる髪。大人まではいかないが、大きくなっていくボクの身長に、金の耳と九本の金の尻尾。鋭い牙と鋭い爪。目はいつもの青色だったが、地味に淡い光を放つ。

 神の象徴、といわんばかりの姿になたボクは、ラルミスと母様を置いて、駆け足でレルミスの元へ向かった。


 「止めなさい!!カルミス!!」


 そうやって心配する母の声さえも無視し、ボクは暴走化のレルミスと激突した。

 いくら暴走したとはいえ、レルミスの体はレルミスの体のままだ。傷つけるわけにはいかないので、魔法、剣を一切使わずに、ボクは武術でレルミスに挑んだ。

 これでもボクは、武術は聖級を取っているんだ。他のやつよりも武術が一番得意。ラルミスとレルミスには敵わないけどね。


 「っ!!」


 先制攻撃を許してしまったボクの腹に、レルミスの強烈なキックがはいる。結構効く。痛い。暴走しているレルミスの力は、いつものレルミスの力の何倍以上も違った。防御は魔法じゃないと駄目だと思うくらい。

 次に出された攻撃を素手で止めるが、腕に激しい痛みが走る。クッソ......怪物かよ...!!


 「グガァアアァアアアッ!!」


 「うわっ!!」


 獣人特有の技、「声魔法」を使ってきた。超音波を出し相手を怯ませたり、攻撃したりする技。ボクはすぐさま防御魔法を使った。


 「[魔障壁のマジックウォール)]」


 魔障壁を自分の周りに出し、攻撃を防ぐ。結構精神の減りが早いこの魔法は、最高でも三分しかもたない。それ以上使うと歩けなくなっちゃうからね。

 障壁の魔法に精神を吸い取られていくのを感じながら、ボクはレルミスを攻撃する。

 攻撃を繰り返すボクに対し、レルミスはずっと腕で受け止めていた。それを狙って、ボクはレルミスに拳を振り上げる。ガード崩しだ。

 その振り上げた拳が、レルミスの腕に直撃。その痛さに、レルミスは腕を解いた。それを見計らって、ボクはレルミスの腹に強烈なパンチをお見舞いした。その衝撃で、レルミスは後方に勢い良く飛んでいく。

 うわっ......!!やりすぎた...!!


 「グギィィィッ...!?」


 ボクのガード崩しの技に少し驚いているのか、彼女の真っ赤に染まった双眸が、大きく見開かれた。だがすぐに立ち上がり、ボクの方に魔法を打ってきた。


 「グルゥゥゥゥ......ガアァァァアアッ!!」


 炎の魔法。大きさや形からして、あれは聖級の魔法「炎竜歌」だ。暴走すると自分の限界を超えてしまう。改めてボクは思い知った。その魔法を、ボクは上級の無効化魔法で食い止める。


 「[無効化(インバリデイション]」


 聖級の魔法だったので完全に消す事は出来なかったが、威力は初級ぐらいまで抑える事ができた。そのまま小さな火の玉がボクに直撃する。全然痛くない。

 それを見てレルミスは顔をしかめる。それと同時に、彼女の周りのオーラがよりいっそう激しさが増し、神の威光に近いものになった。だが獣化しているボクには、そんな威嚇など全く通用しなく、動じなかった。

 どうすればいいだろうか。このまま戦闘を続ければ被害が拡大するのは勿論、レルミスという存在がこのまま暴走によって消えてしまう事になる。だが、この子を止める方法など、全部傷つけてしまう事ばかりでどれもやりにくい。どうしようか......考えろ。

 ボクは一生懸命考えた。どうすれば怪我なしで止められるかを。.........そうだ!!

 ボクはふと思いついた事を実行に移した。

 足を踏み切り、一気にレルミスの元へ向かう。目にもとまらぬ速さでレルミスを圧倒させ、隙を現させる。ボクの狙い通り一瞬の隙を見せてくれたレルミスに、ボクは防御する暇も与えず腹に魔法を打った。


 「[気絶スタン]」


 上級の気絶魔法を放った。それと同時に、レルミスはその場で倒れ、ピクリとも動かなくなった。姿は元に戻り、凄まじいオーラも綺麗さっぱり消え、何事も無かったかのように元通りになった。

 最初からこうすればよかった、と心の中で思いつつも、止められてよかったという安心感が心の中で渦巻いていた。


 「大丈夫だった!?カルミス!!」


 「大丈夫ですよ、母様」


 心配して駆け寄ってきたラルミスと母様に、ボクは笑顔で接して安心させた。本当は大丈夫じゃないんだけどね。

 

 「それより、レルミスを運びましょう。手加減はしたけど、肋骨が折れているかもしれない」


 ボクはレルミスを運んで、とラルミスに指示を出し、運ばせた。こうして、ボク達の今日の修行は終わった。

 あれ......?今思えば、何でエルミスだけ修行に呼ばなかったんだろう?









 午後五時三十分。夜食まで約一時間半ぐらいだ。ボクは暴走化レルミスとの一戦を終えた後、左腕に包帯を巻き、首から吊るようにして腕を固定した。そしてそのままレルミスの部屋でレルミスが目覚めるのを待つ。

 レルミスの体は、特にこれといった損傷は無く、肋骨は折れていなかった。大体、折れてるといったら僕の左腕の骨だ。

 あの攻撃は痛かった。マジで。バハムート戦の時よりかはまだマシだったけど、人生で二番目くらいかな。あんな痛かったの。


 「......」


 チクタクチクタクと時を刻む時計の音。この音を聞いていると、軽く眠気に襲われるんだよね......。

 うとうととボクの目が閉じそうになる。もう少しで寝そうだ。とその時。


 「ん...」


 レルミスの目が薄く開く。それと同時に一気に眠気が覚めたボクの体が飛び上がりレルミスの顔を覗く。

  

 「起きた、レルミス」


 「...兄さん...?」


 寝ぼけた感じでレルミスが体を起こし、ボクが誰なのかを確かめた。そして急に泣き出して、ボクに飛びついてきた。急だったので支えきる事が出来ず、ボクはそのまま椅子から落ちた。


 「おっと......どうしたの?レルミス」


 甘えか?と思っていたが、泣いているのでそうではないことが分かる。どうしたんだ、と優しく聞くと、どうやら自分が暴走してしまった事に罪悪感を感じているらしく、しかもボクのこの腕を見て自分を責めているらしい。別にいいのに。


 「ゴメン、兄さん!!どうしても、止められなくて...!!」


 「あ、あはは...大丈夫だよ、レルミス」


 泣いても泣いても止まらないその溢れてくる涙を拭いてあげながら、ボクは少し苦笑いで彼女を慰めた。

 

 「別に、この程度の怪我なら大丈夫だよ。一週間もかからないよ」


 ボクは彼女と目を合わせて笑顔で言った。本当?と首をかしげる妹に、本当だよと優しく応えると、レルミスはホッと息を吐き、ボクの体にもたれかかった。それをなんとも思わずに、ボクは頭を撫でてやった。それを嫌がらないレルミス。

 

 「また......地道に直していこう。暴走しないように」


 「.........うん」


 それだけを言って、ボク達はしばらくそのままでいた。

次回更新予定 4月23日

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