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創神~善悪宿りし神の化身~  作者: とりあえずネタ
2/19

第一章 無詠唱魔法

前回のと書き方を変えました。



更新遅れてすみません!!


 「父様。少し聞きたい事があるのですが」


 全属性耐性の木で造られた大広間。出入り口から入って左側には、木で造られた半径15cmの大きい的が奥まで等間隔にズラ~~~っと並んでいる。天井は特殊な結界が張られたガラスでできており、青い空が見えるようになっている。

 魔法の使用が許可されているこの場所ーーー魔法訓練所は、その名の通り魔法の稽古をする場所だ。王や王子の側近、騎士や将軍など戦いなどにに出る事が多い役職の人が、よくこの場所をつかって魔法の訓練をしている。ボクは訓練所があるのは聞いた事があるけど、一度もここに来たことはない。妹達は一回くらいは来たことがあるらしいけど、大体はボクと一緒に魔法使用禁止区域で修行をしている。よくよく考えると、魔法訓練所があるならここで修行をやればよかった。ここでやってれば呼び出しをくらう事はなかったかもしれない。自分の心の中に後悔が渦巻くとともに、自分の頭の悪さにショックを感じていた。


 「なんだ?」


 「何故訓練所に呼んだのですか?」


 訓練所に来いと言われてから気になっていた事を話す。玉座に呼んでみたり、訓練所に呼んでみたり...今日の父様は何か変だ。変なのはいつもの事だけど。

 

「何故かって...。規則を破ったお仕置きとして罰を与える為にここに呼んだに決まっているであろう?」


 ものすごい満面の笑みで言われ、より恐怖感が増す。とてつもない威光ととてつもない怒りが混ざって、今ここにとてつもない父親が登場した。そのぐらい怖かった。

 しばらくすると、その笑みは笑いの笑みへと変わり、徐々に父様の顔がボクの顔から離れていく。


 「とまぁ、脅しはここまでとして...。早速、処罰の内容にはいっていくとしよう」


 「父様。まだ質問があります」


 危うく処罰の内容に入るところだった。処罰を受けたくないボクは、できるだけ色んな質問をして処罰の事を忘れさせる、質問攻め作戦を行おうとしていた。だが、「私が忘れっぽいからといって見逃すと思うなよ?」とせっかく考えた作戦を簡単に見破られる。さすがは父。息子の行動さえ読めちゃうすごいお方ですね、とボクは感服した。

 

 「じゃあ父様。これだけはお聞きします」

 

 「なんだ?」


 「何故...妹達までここにいるのでしょうか?」


 ボクが最も気になっていた事。何で妹達までここにいるのか。確かに、妹達も魔法使用禁止区域で魔法を使っていたけど、魔法使用を許可したのはボクだし、それにここは兄としてのボクに責任を負わせるべきだ。正直、刑が重くなるのは嫌だったが、妹達と自分だったら妹達を絶対とる。物心がついた時から誓っていたことだ。絶対に妹達を傷つけたりしないと。だから、妹達が喜ぶのならなんだってするつもりだ。ボクはそう心の中で思いながら父様の返事を待った。

 

 「レルミス達も、魔法を使っていたんだろう?それなら罰を受けるべきだ」


 「確かにレルミス達は魔法を使い規則を破りました。ですが、元はといえばのボクの責任です。妹達の分もボクが受けます」


 ボクは妹達に対しての罰を無しにしてほしいと父様に頼んだ。が、その訴えに対して父様は表情一つ変えず、

 

 「お前のレルミス達に対しての愛が深いのは良く知ってる。だがレルミス達にとってもお前に甘えてばかりいてしまってはこの都市の立派な女王を名乗ることが出来ない。だからカルミス。今回は妹達にも罰を与えさせてくれないか?」


 優しい眼差しでそんな事を言われると、断るにも断れなかったボクは、「...分かりました」と降参した。父様の言うとおり、レルミス達、特に第一王女であるレルミスは、将来この都市の王の共に女王としてこの都市を。世界を守らなければならない。いつまで経っても兄に甘ったれな女王であっては、女王を名乗れない。ボクの甘やかしで、妹達がダメになるところだったと安堵の息を漏らした。


「では、もう処罰の内容にはいっていいか?」


 「はい...」


 処罰の内容は、果たしてどんなものなのか。噂によると、絞首とか斬首だとかそういった処刑だといわれているけど、まぁそれは相当な罪を犯さない限り、そんなことにはならないと思う。多分。

 

 「今回の処罰の内容、それは...」


 ゴクッと息を飲み、体に緊張感と恐怖感が走る。これで絞首とか斬首だったらたまったもんじゃない。ボクは静かに父様の返事を待った。


 「無詠唱魔法を、今日中に取得しろ」


 「えっ...?」


 その処罰内容に、ボクは目を見開いた。絞首や斬首よりまだマシな処罰内容だったけど、無詠唱魔法は...。

 無詠唱魔法とはその名の通り、媒介となる詠唱を唱えずに速攻で魔法を打つ高度な技。その技を取得した人は初代国王のみで、取得するには相当の修行が必要になる。それを、父様は今日中に取得しろと言っているのだ。


 「今日中にできなかったら、今年一年間魔法封印だ」


 挙句の果てには、達成できなかった場合、魔法を封印だよ!?んな無茶な話あるかっ!!

 自分が犯した罪と全然割にあってないその処罰内容に、ボクは異論を言いたくてしょうがなかった。でも、父様の威圧が凄過ぎて言うにも言い出せなかった。

 その後、父様はそれだけを言い残して去っていった。なんのヒントもくれずに。


 「嘘...」

 

 「兄さん...どうしてくれるの...」


 「...お兄様」


 「兄上...」

 

 「ホントゴメンッ!!まさかこんなことになるとは思っていなくて...」


 無詠唱魔法の取得を共に命じられた妹達の顔は、兄でもビビるものすごく怖い顔だった。その冷たい視線に怯えながら謝ったボクに対し、妹達は一向に許す気配がなく、むしろボクの声を聞くたびに怒りが増していた。それからしばらく。


 「一生恨むからね。兄さん」


 「ゴメンってば~~~~~~~!!!」


 妹達の長い長い説教に参加させられていた。









 カルミス達の元を去ってから、一時間が経過した。玉座の間にいる私は、カルミス達の魔力を感じられていなかった。何故なのか気になり、全神経を集中させ透視する。その目に映し出された光景は、庭園で妹達に叱られているカルミスの姿だった。それを見て思わず笑いが漏れてしまった私に、「どうした。ルイン」昔からの親友である私の側近ーーーフェリクス=ジム=ヴァーナに心配させられた。その問いに、「なんでもない。気にするな」と返事をした。

 にしても、カルミス達は本当に仲が良いと改めて思う。やはり四つ子だから、お互い誰も絶つことのできない絆と愛で繋がっているのだろうな。

 この国の守護を安心して任せられるなとまだ自分が死んでいないのにも関わらず、そんな事を思いはじめる私がいる部屋に、客人を知らせるドアの音が鳴り響く。あの人が帰ってきたようだ。

 光輝く銀の長い髪。熱く燃えるような赤い瞳。誰もが魅了されるような甘ったるい目。動くたびに揺れ動く水色のドレス。髪の色より少し濃い色の狐の耳と九本の狐の尻尾。

 私の妻であるレフィーヤ=ヴォール=ソレイユーーー別名:アメザクラノ・天狐姫が、扉を開けゆっくりと入って来た。


 「ただいま戻りました。ルイン」


 「お帰り。今日は早かったな」


 「えぇ。今回は護衛の方々が手伝ってくださったから、すぐに済んだわ」


 彼女はこの都市の女王であり、この世界に豊穣と平和をもたらす聖女でもある。主にやる仕事は聖女の仕事のほうで、この世界の各国に行き、神の祭壇で祈りを捧げるという役目を持つ。聖女がもたらすその神聖な力はこの都市にある世界樹へと送り込まれ、その送り込んだ分豊穣の力と平和の力が祈りを捧げた国に還元される。そうすると豊穣と平和の力が還元されたその国は豊穣と平和が保たれ、いつも通りの幸せな生活が送れるという仕組みになっている。年の最後に、この都市にある世界樹の神殿により祈祷祭が行われるのだが、そこではヴェルターナの王子王女に神の加護を授けたり、最後には聖女を中心とし王族、騎士などで祈祷するという大行事がある。その行事は世界中に豊穣と平和は勿論、世界のバランスやモンスター達の数をバランスよくしたりする大仕事であり、全魔力を世界樹に捧げるため、特に聖女は次の日は立ち上がることができなくなるぐらいにヘトヘトになる。私も国王なので参加をしているのだが、本当に疲れる。魔力が無くて、心に穴が開いたみたいに喪失感があってその喪失感がしんどい。まぁ、二日もすれば世界樹の加護で魔力は戻ってくるのだが。

 こんな感じで、聖女の仕事は大変。私よりも大変かもしれない。


 「そうか。まだ朝10時だが、休むか?」


 「いいえ。女王の仕事があるもの。休むわけにはいかないわ」


 「...あまり無理をするなよ。それでなくても体が弱いんだからな」


「分かってるわ」


 小さい頃から虚弱体質だった彼女は、病気にかかりやすくてほぼ毎日のように病気にかかっていた。軽度のものから重度のものまで、なかには死に至る病気もあった。だから無理をしたりすると、すぐバテてしまうのだ。今は昔みたいに低級の狐じゃないため、ある程度体力はある。それでも私は心配だ。

 彼女のそのサラッとした髪を優しく撫でる。この世の終わりが来るわけじゃないのに、彼女の髪を触っていると何故だろう。悲しくなってくる。確かにここ最近、モンスターが増えてきてる気がするが、世界樹の力でモンスターの数は調整してある。では何故、何に怯えているのだろうか。心の胸騒ぎが気になってしょうがなかったが、大して事はないと放っておくことにした。

 しばらく、目の前にある銀の髪を弄っていると、パッと彼女がこちらを向き、その赤い目で見据えてきた。「どうした?」というと彼女は、


 「なんか...楽しそうな顔してるから...。そんなに私の髪を弄るのが楽しいの?」


 とムスッとした顔でいってきたため、


 「違う違う」


 と慌てて返答した。その慌てっぷりを見たからか、彼女はクスクスと口元を軽く手で覆い静かに笑った。


 「冗談よ冗談。ちょっと弄ってみたかっただけ」


 「弄るな。全くお前は」


 怒りながらもフフッと彼女につられて笑い、彼女の頭を撫でる。

 そろそろね、と己の頭を撫でていた私の手を下ろし、ゆっくりと立ち上がる。「何度も言うが、無茶をするなよ」というと、「もう...心配性にも程があるわよ」と同時に、「カルミス達にはほどほどにしておきなさいね」とだけを言い残し、この場を後にしていった。「じゃあ俺も、そろそろ行ってくる」とフェリクスがそう私に言い残し去っていく。そうやって、この部屋にいるのは私一人になった。


 「ほどほどに......か...」


 静寂に包まれた玉座の間で、一人私は呟く。


 「フッ...。さすがは私の惚れた女だ...」


 恐れいったとばかりに溜め息をつき、私は背もたれにぐったりともたれかかった。










 「無詠唱なんて無理だよ~~~~っ!!」


 レルミスが馬鹿デカイ声で叫ぶ。「うるさい」と言えば、ムッとした顔で睨みつけられる。

 父様が去ってから、既に二時間が経過していた。さっきから出てくる魔法は不発魔法か詠唱短縮魔法で、なかなか無詠唱魔法ができない。あと少しって所で魔力が分散しちゃって、残るのは、精神オド減少による疲労のみ。

 

 「兄さんがボク達を巻き沿いにしたから...」


 「その事については何度も謝ったじゃん!?」


 二時間説教させられ数え切れないほど謝ったというのに、それでも許してくれない妹達に少し嫌気が差してきた。でも今はそんな事より、無詠唱魔法取得が先だ。

 右手に魔力を集める。ゆっくり目を閉じ、あるものを感じ取る。


 「[無詠唱魔法を取得するには、魔力の流れを感じとらなければならない]」


 その時のボクはまだ一歳にもなっていなかったため、全く出来なかったが、今は違う。今まで父様に隠しながら修行してきたから、魔力の流れを感じとるなど朝飯前だ。

 視える。己の手に集まるすごい量の魔力が。建物一つぶっ壊せるぐらいの量が。ちょっとやりすぎかと、余分な精神の塊を分散した。

 丁度いいサイズになったその精神の塊は、自分の思い通りに形を変えてくれた。魔力を操るとはこの事だ、と新たに気がついたボクは、その調子でそのまま精神の塊を上空に向ける。集中力を高め、魔法を放つ準備をする。

 その瞬間、魔法の発射が開始され、精神の塊が自分の右手から少し離れる。今度こそは上手くいったと、右手に力を込めたが。


 「!!」


 魔力の塊はあと少しのところで分散し、今回もまた、不発で終わった。


 「ハハッ、ハッ...。...嘘でしょ...」


 「あと少しだったのに...」


 何がいけないのだろうか、と原因を追究し続け、思い当たる原因は一通りやったはずだ。なのに全部不正解。今の頭じゃ、分からない原因なのかもしれないが、それでもボクは、また原因を追究した。

 魔力の流れを感じ取るでもないとすれば、他に何があるというのだろうか。魔力の量か?いや、それは最初にやって不発で終わった。うーん......。

 悩み続けて10分が経過。「駄目だっ!!」と溜め息交じりの諦めた言葉を言うと、ボクは地面に倒れ伏した。精神の疲労と頭の使いすぎで目眩がする。もう無理だ。魔法封印決定。

 妹達も諦めボクも諦めた、その時だった。


 「どうしたんですか?王子様」


 桃色の髪にオレンジの瞳。その髪は、髪をひとまとめにし、編まれている。本当にエルフなのかと疑うくらいの妖美な体つき。大人っぽい美しい声。ボクを隠せるぐらいの大きな黒いローブ。

 ボクの目の前に現れた魔法使いは、この城に仕える宮廷魔法使い、アンブレラ=フィール=ノイズ。世界でトップといわれる三大魔女のなかに数えられるというとても凄い御方。この都市の王族しか使えないはずの「神聖魔法」や「暗黒魔法」を使用でき、神の遣いエルファーの称号を持つボクの尊敬する師匠だ。彼女はこの都市を出て、巨大な石竜ガーゴイルの討伐に参加したり、他国に行って王族の魔法家庭教師を務めたり、色々と大変な人。この王宮から出れば、王族が城下から下りてきたぐらい市民達が大パニックになるそうだ。それだけみんなからの信頼が厚く、有名だということだ。

 とまぁ、そんな有名でインドアな師匠が何故魔法訓練所のグラウンドに来ているのか、とボクは言った。


 「たまたま通りかかっただけですよ」


 ニコッと年齢性別関係なく誰もが惚れてしまうような笑顔を見せる彼女に、ボクは惚れてしまいかけた気を紛らわすために苦笑いで誤魔化した。全く。師匠は恋愛の方でも最強の魔女だな...。

 たまたま通りかかっただけ、と彼女は言ったが、今の服装と休日の彼女の習慣からみると明らかに偶然じゃなかった。普段外で着る事のない黒いローブに、魔帽子、彼女の腰ぐらいまである高さの杖。全然偶然じゃない。それに彼女は休日はインドア。外に出る事はほぼ無い。今日は父様も暇な日だし...三大魔女に依頼するほどのことは起こっていない。

 ジ~~~ッと偶然じゃないだろといわんばかりの顔でボクは彼女を見つめた。そうすると彼女は苦笑した手を上げた。

  

 「嘘嘘。偶然な訳ないでしょ。ちょっと魔法について困ってそうだから来てみただけだよ」


 アハハ~~...と笑ってボクを見る師匠。「だから、その顔やめて?」と言われ我に返ったボクは、自分の目を、疑いの目からいつもの目に変えた。


 「んで?なにやってるの?こんなところで」


 「父様からの罰を受けています。今日中に無詠唱魔法を取得しないと、一年間魔法封印とい無理な話を押し付けられました」


 「無詠唱魔法!?無詠唱魔法ってあの初代にしか使えなかった、あの!?」


 コクッと頷くと、師匠はうーんと唸りだし何かを考え始めた。しばらくすると何かを思い出したかのようにボクの方に勢いよく振り向き、サクサクと足音を鳴らしながらこちらに向かってきた。


 「王子。君、魔法大百科の本、読んだ?」


 「えぇ、読みましたけど」


 それが何か?と問うと、師匠は「あー...やちゃった」と頭に手を当て頭を横に軽く振った。


 「その本にさ、破った後みたいなの無かった?」


 「うーん...。...あ、そういえば無詠唱魔法の解説のところに破られたページがあったような...」


 「そのページ、破ったのは私なんだ」


 えぇ~~~~っと驚きを見せるとともに、本の中身破っちゃだめだよ師匠~~~~!!とツッコミの言葉が心の奥底から出てきた。ゴメンゴメンと舌を出す師匠。そんな事しても無理ですよ、と言ったら、ショボーンと落ち込んでしまった。


 「何で破ったんですか?破っちゃいけないはずでしたよね?」


 「無詠唱魔法について詳しい事がいっぱい書いてあったから、忘れないようにとつい...」


 「ほら、忘れっぽいところあるじゃん?私」とまたまた許しを請おうとしている彼女の姿を見て、ボクは溜め息をついた。どうせ父様に言ってもお前も規則違反をしたから人の事いえないだろとか何とか言われるのがオチだろと思い、黙っておこうと仕方なく見逃した。そうすると、「ありがとー!王子ー!」と喜び飛びついてきた師匠。その重さに耐え切れず、ボクはそのまま後ろに尻餅をついた。痛いんですけどー、とボクの上に倒れ伏している師匠に呼びかけると、あぁ、ゴメンと勢いよく師匠が立ち上がる。


 「あ、そうだ。...これ」


 師匠が自分のバッグから何かを取り出す。そして、取り出したものを僕に渡してきた。

 貰ったのは一枚の紙切れ。そこには裏表両面に文字がズラーッと書かれており、ボクはすぐに師匠が魔法大百科から破ったものだと分かった。

 どれどれ...と内容を読む。


 「[無詠唱魔法は、魔力、イメージ、想いが合わさって初めて発動できる技である]」


 ふむふむ...。魔力、イメージ、想いね...。...ん?想い?ボクはその言葉に注目した。

 想い...とは何だ...?気持ち...?何か分からない。とりあえず師匠に聞いてみよう、と


 

  「師匠。これは一体ーーー」

 そう問いかけようとした。が、師匠の姿はどこにも無く、いつの間にか消えていた。

 えぇ...。これ自分で考えろって...全然分からないんだけど、と心の中でつぶやきながらボクは裏を見た。するとそこには。


 「[想いとは]」

 

 と想いについての解説があった。それを見て、ボクはその解説を読む。


 「[想いとは、魔法に込める気持ちの事。術者がその魔法を誰に向けて打つのか。もしくは魔法にどの様な効果を求めるのかを気持ちに表して魔法に乗せる。今目の前の者を殺したければ、殺意を。今目の前の者を癒したければ、祈りや優しさを。その気持ちが強ければ強いほど、その魔法の威力がアップする。尚、普通の詠唱魔法のようにその気持ちを言葉に出さずに無詠唱で発動するため、相当の修行が必要となる]」


 非常に分かりやすかった。想いについてよく理解できたボクはその紙切れ一枚にお礼を述べた。

 ボクに足りなかったのは魔力でもなく集中力でもなく、魔力の流れを感じることでもなかった。自分に足りなかったのはその魔法に対する「想い」だと。

 ボクは早速実践した。

 またさっきみたいに、右手に精神を込める。全神経集中し、徐々に集まっていく精神を視る。風の魔法にしようと竜巻をイメージすると、ボクの右手にある精神の塊が竜巻に変わっていった。そろそろかと思い、ボクはゆっくり目を閉じる。

 想い...。...何がいいかと考える。殺意じゃあ、ボクいき過ぎる可能性あるけど...。それ以外に無いと思い、ボクは殺意を魔法に込める。

 徐々に膨らんでいく精神の塊は、いつの間にかボクの頭より大きくなっていた。たっぷり殺意を込め、魔法を強化していく。

 もう十分だと、ボクは精神の塊を空に向けた。そして。


 「[風雅フウガ]」


 ビュウゥゥウゥゥウゥッ


 魔法名を言った途端、ボクの右手から勢いよく魔法が放たれる。その舞い上がる風の魔法は踊るのかのようにあっちこっちを飛び回り、周りにある葉っぱや花を巻き込んでいった。それを繰り返し数秒。魔法は燃え尽きたかのようにサーッと消えていき、グラウンドは一瞬で静かになり音一つ聞こえなくなった。

 

 「あ...」

 「「「あ」」」


 無詠唱魔法が打てた事に目を見開くボクと妹達。この静寂をぶった切るかのように、ボクは嬉しいような嬉しくないような声音で呟く。


 「無詠唱魔法......打てた......」

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