第十三章 決意と意味
文字を打っているうちに、自分で何書いてるのか分からなくなってくる......。
青年編突入しました!!いや、幼少期のネタがなくなったから時間を飛ばしたとかそういうわけじゃないからね。うん( 一一)
「.......」
僕は夢を見ている。よくわからない夢だ。水にどこまでもどこまでも沈んでいく夢。
体が重くて、そう簡単に動きそうにない。いや、動こうとしない。いくら自分が指令を出そうとしたって、言うことを聞いてくれない。
このままでは死んでしまう。そう思っていたけど、意識とは別に僕の体は必死に上に手を伸ばしはじめた。
「ーーーーー」
必死に声を出そうとした。声なんて出るはずがない。ここは水の中。声を出そうと思えば口に水が入る。
「ーーーーーーー」
でも僕は叫ぶのをやめない。無意識に口が動き、無意識に手が動き........
.......無意識に誰かの名を呼んでいた。
「ーーーーーーノア」
「は...!」
僕の夢は、そこで終わった。
「.....ノア...?」
寝ていたのに無駄に疲れた僕は息を切らしながら、時間を確認する。
今は午前八時十三分。僕にしては早いほうだった。
僕は時間を確認した後、カーテンを開け眩しさに耐えながら、全身で太陽の光を浴びた。
最近はこれが日課になっている。寝起きに太陽の光を浴びると目がパッチリ覚める。
そして次は鏡の前に行って、自分の髪を梳かす。
生まれた時からずっと切っていない僕の髪の毛は、五年で背中まで伸びた。母親に似た僕は、髪が伸びるのが早く、そして顔が整っている.....と言われている。
正直この髪は邪魔だけど、切ることはしない。何故かって?
それは......
「兄さんまた鏡の前で髪梳かしてる...」
......朝から何勝手に人の部屋に入ってるんですか、レルミスさんよ。
扉から可愛げに顔を出しているレルミスに僕は視線を向けず鏡を見ながら言う。
「悪いか。しょうがないだろう?髪が長いとこうせざるを得ない」
「じゃあ切ればいいじゃないか」
即答で返ってきたので僕は言葉に一瞬詰まった。早い。そして声がデカい。
朝からうるさいのは嫌いだ。父様に似て、静かな朝を迎えなければその日は一日中機嫌が悪くなる。
まぁ、最近になってレルミスの声には慣れてきたが.....完全に解消されたわけではない。
日に日に増していくのだ。レルミスの声の音量が。だから、ストレスが溜まらないようにするのは正直言って難しい。
「.....朝から元気だな、レルミス....」
ボソッとそう言うと聞こえていたみたいで、「うん。皆の目を覚ますためにわざとデカくしてる」と再び大声で返ってきた。
.....仕事ご苦労だな。
「そうか.......。...というか、早く出て行ってくれないか。人に見られながら着替えるのはあまり気分が良くない」
髪を梳かし終わり、僕は側に置いてあった自分の服に手をかける。
レルミスの視線が気になって仕方ない。早く出て行ってほしいものだ、と僕は言うが、
「嫌だ。兄さんの成長した体を見たい」
とか変なことを言い出した。
「お前は変態か。.....早く出ていかないと、母様に言いつけるぞ」
正直そのレルミスの返答に呆れた。いつからか、急にレルミスが僕に甘えてくるようになり、甘えては母様に怒られる結果になっている。もう日課になってしまっているな。
甘えてくる原因が未だに判明していなく、何なのか分からないまま毎日レルミスの謎の甘えに振り回されている。
「それだけは勘弁してくださいお願いします朝からお騒がせしてしまい申し訳ございませんでしたでは失礼します」
レルミスが早口で、そして速足で僕の部屋を出て行った。
本当、母様を出すと無力化されるよね、レルミスは。
「...さて、と」
レルミスが出て行った後、僕はすぐに着替えて自分が愛用している剣を腰に携え、部屋を出る。
すると部屋を出てすぐ右に先ほど出て行ったはずのレルミスがいた。
「レルミス.....お前は...」
今度こそ叱ってやろうと深く息を吸い込むと、レルミスは慌てて「違う違う」と腕を振った。
.....本当だろうか。すごい怪しいけど、まぁ話を聞かないで責めるのはおかしい。
「じゃあ、何の用だ」
できるだけ手短に話してもらいたいけど........この後父様に会いに行かないといけないし....。
「落ち着いて、聞いてもらいたいんだけどさ」
先ほどのレルミスの雰囲気とは打って変わって、冷静だ。
一体何があったのだろうか。次の言葉を待っていると。
「________ 人魔大戦争が....始まった」
「父様、どういうことですか!?」
僕はレルミスに報告をもらった後、急いで父様の元へと向かった。
「第二次人魔大戦争」が始まったのだ。これがどのくらいのことか、考えるだけでゾッとする。
もしこの戦争で勝てば被害はあるかもしれないが、この国が滅ぼされることはない。
だが負ければ_________確実に僕達は滅びる。というか、この国以外の国も滅ぼされる可能性が高い。
第一次人魔大戦争で勝てたからって、今回勝てるとは限らない。だが、今回も。
.....いや、これからも勝たなくてはならない。
「そのままの通りだ。魔物達の活性化、増加が引き金となり、今我々の国に向かってきている」
それは分かっている。それが聞きたいんじゃなくて、魔物が増えてしまった原因とか、魔物達の目的とかを僕は知りたい。その辺りを把握しておかないと色々と大変なことになってしまう可能性が高い。
何の理由もなく攻めてくるのなら力づくで止めるし、何か目的があるとするのなら交渉とかできるかもしれない。僕は無駄な血を流させたくないだけ。無駄な争いは控えたいのだ。
でも、そもそも魔物達に僕らの言葉が通じるかどうか分からない。
「.....魔物達の目的などは把握できているのですか?」
僕は冷静な顔で玉座に悠然と座っている父様に質問した。
すると父様は軽く眉間に皺を寄せ、無表情の口を再び開いた。
「それはまだだ。今数十人の兵士達を送ったのだが、なかなか返事が来ない。もしかしたら、戦闘に入っているのかもしれない」
数十人の兵士が...!?いくら被害を抑えるとはいえ、その人数では全滅するのが目に見えている。魔物の数がそれだけ厖大なのだ。
にしても、今の父様の異様な冷静さと余裕はなんだろうか。焦った感じが全く見られない。隣にいるフェリクスさんですらすごく焦っているし、あのいつも冷静なエルミスや母様でさえ焦りを隠せないでいる。
僕も正直焦っている。この戦いは人類の存亡が掛かっていのだから、一瞬でも気を抜けばそれが命取りとなってしまう。
僕は王子だから、正直まだ背負わなければいけない命は少ない。だが、国王は、世界の王は、人類の命を全部一人で背負わなければならない。
それが宿命であり、自分で選んだ道なのだから。
だが、今の父様はどうだろうか。ぐったりと椅子に座るところを見ると、今の状況に全く動じていないように見える。隣で戦場に出るのを待機している兵士達のその嫌な顔をする理由がよく分かる。
「......父様。何故そんなに冷静でいられるのですか」
気になりすぎて、つい僕は聞いてしまった。一瞬父様の目が揺らいだような気がしたが、すぐに返答がきた。
「冷静でなければ、的確な指示は不可能だ。取り乱せば全体に支障を及ぼす」
それはそうだ。指揮官が取り乱していれば、全体に渡る指示の伝達が遅くなり、一つ。また一つと命が失われていく。
そんなことは分かっている。僕もいずれやらなければならない。
聞きないのはそれではなく、少し余裕じみていないか、と聞きたいのだ。
「.........質問の内容を間違えました。______何故そんなにも余裕があるのですか」
僕は改めて言い直し、再度質問した。すると父様は玉座からゆっくりと立ち上がり、階段を下りていく。
「余裕...か。そういう程余裕は無いさ。まぁ、そう思われてしまっているのなら、兵士達にもカルミス達にも申し訳ないことをしたが」
ゆっくりと、一歩一歩進んでいき、やがて父様は階段を下り終わる。
次は、僕の横を通り過ぎて行った。
「一つは、彼らの弱点や情報をすべて把握できていること」
父様は淡々とそう言い放った。
情報を全て得ているのなら、陛下が行けばいいじゃないか。兵士の者達が口々にそう言った。
父様はそんなのは気にせず、扉の前で僕のに振り返った。
「....あとは、お前がいるから、かな」
僕がいるから...?僕が有力な戦士だとでもいうのだろうか。
僕はバハムート戦以来、戦争に出たことはない。大体、この世界は平和で満ちているため戦争というほどの戦争は起こらないのだ。
まだ戦争の経験が浅い僕が、使えるというのか。
確かに、戦争と戦闘は規模が違うだけで、やり方はほとんど同じだ。むしろ今回は相手が魔物なのだから、いつもの戦闘より魔物が少し増えただけと考えたほうが妥当だと思う。
戦闘といっても、外には出られないのだから実際に魔物と戦うということはなかったが。
戦争経験が浅いというより、戦い自体の経験が浅い。だから僕は心配なのだ。
今まで対人でしか戦闘をやったことがない僕は、正直魔物との戦い方がいまいちよく分かっていない。そういう本を幾つも読んだことがあるが、習うより慣れろってよく言うし、実践でなければ僕は覚えることができない。
だから父様とかによく言われるんだ。頭が良いくせに覚えが悪い。その時点でかなり矛盾してるけどね。
父様はそれを言い残して、兵士達を引き連れ玉座の間から出て行った。
「俺達も行くか?カルミス」
隣にいる僕の側近であり幼馴染み_______ヴァイス・クロローゼが眼鏡を軽く押し、僕にそう告げる。僕達と同じようにこの場に取り残されたレルミス達も、僕の方を見て指示を待っている。
ここにいるわけにもいかないし、父様の言葉からして、僕らは戦場に駆り出されることが分かる。
少しでも戦力になれるのなら、行くしかない。
いや、行かない理由はない。
「あぁ。行くよ。当たり前じゃないか」
「......そうだな」
二回目の戦場。初陣よりかは大分緊張感があるけど、ここで活躍すれば、少しでも僕達の種族に対しての視線が変わってくるかもしれない。
それも含めて、僕はレルミス達の後について玉座の間を出た。
戦況は最悪だ。
すぐ近くまで魔物達が迫っていた。
父様が最初に送った兵士達は勿論全滅していた。
ある程度の精鋭だったため少しぐらいは時間が稼げたみたいだが、体力の限界が来たのか、それとも殺されたのかで全滅に追い込まれてしまった。
「......」
この戦況であっても、父様は顔色を変えることなく遠くにいる魔物達の大軍を見ていた。
父様率いる兵士達は父様の指示を待つが、父様は何も言わずただ魔物達を見ていた。
...何か、策を練っているのだろうか。確かに、何の作戦も立てず突っ込んでいくのは、自殺行為だ。なかにはそういう戦略で幾多の連戦を乗り越えてきたという者もいるらしいけど、さすがに父様はそこまで無謀なことはしないし、するとしても計算して頭をひねりにひねった結果がその自殺作戦になった、という感じだと思う。
父様は小さい頃からずっと魔法学校に通っていて、座学も実技も成績は他学校のトップさえも上回る実力だったそうだ。そこから、「人類最強」とか、「世界の頭脳」と呼ばれたそう。
今までも幾つもの連戦をその優れた頭脳と飛び抜けた戦闘能力で乗り越えてきた。
そんな父様に、僕は憧れている。僕にとっては近くて遠い存在。
だから......今はこの人を信じるしかない。どれだけ策を練るのに時間がかかっても。どれだけ無謀な作戦だとしても。
今はついていくしかない。この人の背中に。
「.....今だな」
父様がボソリと呟いた。どうやら、タイミングをはかっていたらしい。兵士達はその父様の呟きに、スタンバイをし始める。
僕達も馬に乗り、準備をした。父様はそれを見て、兵士達の方に向く。
やっと指示が出る、と。誰もが思ったが違った。
父様の口から出たのは。
「今から、ここにいる半分の兵士達は、カルミスの指示に従ってもらう」
その言葉に誰もが困惑した。勿論、僕も。
「どういうことだ、ルイン」
父様の隣で馬に乗っていたフェリクスさんが強い口調で言う。
それをきっかけに兵士達がざわつきだした。
僕もフェリクスさんに次いで言った。
「僕に指揮をするまでの力は備わっておりません!!父様が指揮を執ったほうが生存率が上がります」
僕が指揮を執れば、確実に全滅する。一度も仕切ったことはない。いくら頭が良くても、父様のように冷静な判断はできないし、正しい判断なんてできない。
出した決断次第で、結果は大きく変わってしまう。そんな重い役職を、僕ができるわけがない。
将来やることになる可能性があるが、今の僕では無理だ。
僕は必死に父様に訴えたが、父様は
「カルミス率いる兵士達は、私が率いる兵士達の後に続け。戦場についた後は、カルミスの指示に従い、動くように」
僕のことなんか無視して、全く聞き入れてくれない。
僕は再度父様を呼んだ。
「父様!!」
すると、バッとこちらの方に視線を移し、ゆっくりとしゃがみ僕と同じ視線に合わせた。
「カルミス。やってくれるね」
真っすぐな目で見つめられた僕は、何も言うことができなかった。その目には、微かに期待と信頼が混ざっていたのが見えたからだ。
そんな目で見られてしまったら、断るにも断れない。
父様は何を考えているのだろうか。この場にいる誰もが分からなかった。
「......これは命令だカルミス。指揮を担当してくれ」
とうとう父様は国王直々の命令として僕に命じた。ここまでくると反逆罪として罰せられることになる。
「...........はい...仰せのままに、陛下」
僕は結局断ることができないまま、父様の命令を聞き入れた。
今は...父様を信じるしかない。この人の命令を聞き入れることが、この危機を逃れることができるのだと。
そう判断せざるを得なかった。
「感謝するよ、カルミス。________生きて戻ってこい」
父様は僕にそう言い残して残りの兵士を引き連れ去っていった。
「カルミス王子。ご命令を」
僕達と共にこの場に残された兵士の一人が、僕に声をかける。
今僕はどんな顔をしているのだろうか。多分情けない顔だろう。
僕の指示を静かに待っていた。誰一人として喋らず、微動だにしない。
と思えば、今ここにいる兵士達は、どんな気持ちで幾多の戦場に身を投じているのだろうか。
必死に国のために貢献する者。滅茶苦茶な指示を出す指揮官を批判しつつも、それでもなお抗う者。指揮官の指示に猛反対し、早く家に帰りたいと思っている者。それぞれ色んな思いを持っている。
そんな彼らの命を背負って、指揮官は指示を出す。一人一人の兵士を駒として。そして、仲間として。
今まで幾千もの命が、戦場で散っていった。死にたくないと思っていても、運悪く死んでしまった人だってたくさんいるだろう。
では僕達は......死ににきているのだろうか。
いや、違う。僕達は、仲間である死者達がくれた、僕達が「生きている意味」を引き継がなければならない。「死」とは、人に悲しみだけを与える残酷なものではない。
生者に意味を与え、使命を与え、生きる力を与えるもの。
だから.....
「どうか皆、ここで散ってくれ」
ここで散って、意味のある死に方をしてくれ。
「死者の魂を背負って、散ってくれ」
死者達の魂を無駄にさせないように。
「必死に抗って、たくさん血を流して、たくさん喚いてくれ」
それが僕達にできる、意味のある死に方。そして生き方。
その場にいる兵士達は、皆目を見開き僕に注目した。中にはボソッと批判の言葉を口にする者もいたし、早く帰りたいと思う者もいた。
...そうだよ。批判されたっていいじゃないか。自分が後悔しないのなら。選択を誤ったとしても、悔いが残らなければこっちのもの。
父様。貴方には生きて戻ってこい、って言われたけど、守れそうにないや。
いや、ある意味守れてるか。
僕はそんな兵士達に精一杯の声で指示を出した。
「______兵士達よ!!私に続け!!」
自分の剣を、この曇った空に掲げる。
これが戦争の合図だ。
僕らの戦いは、これから始まる。
人類の勝利を掴むために。
僕らは、「英霊」になる。
「オォオォオォオオォオォ!!!!」
僕の姿を見て、兵士達も己の剣を掲げて返事をする。
ゴメン、みんな。そして______ありがとう。
次回更新予定 未定




