第十章 友との一戦
最近四千文字が多いなぁ......。
父様達の元を離れてから二時間以上が経過していた。ボク達は庭園で遊んでいた。
「人と遊ぶというのがこんなにも楽しいなんて、思っても見ませんでした」
「確かに!久々に体を動かした感じがしてなんか気持ちいいよ!!」
友達と遊ぶ喜びを分かち合っていた。こんなにも体を動かしたのは久々だ。初めての友達だから、もっと楽しかった。何故早く作らなかったのだろう。
エルと一緒に、ボクは芝生に寝転び仰向けになる。その後二人で笑いながらそれぞれの今まであった出来事を話した。
「実はいうと僕は、ほとんど外に出た事が無いんですよ」
「え」
「ずっと城に籠りっぱなしで、ひたすらに書斎で勉強をしていました。......だからですかね。数多くの王子の中でも知識が飛びぬけてしまっているんです。それに、家族や城の中にいる人達以外と対面して話すのが苦手なんです...」
「......」
エルの話を黙って聞く。家にずっと籠りっぱなしの生活なんて、今のボクには耐えられない事だ。外の世界を知りたがっている今のボクの体には苦痛以外の他の何でもない。
と思うと、エルは耐えられたのだろうかと気になってきたので、ボクは聞いてみることにした。が、
「ねぇ、エル王子ーーーーーー」
「でもね、カルミス王子」
エル王子が吐いた言葉によって、ボクの言葉は綺麗に遮られた。
「......王子と話していると、そんな苦手意識や嫌な事も全部吹っ飛んでいくんです。......不思議ですね」
エルが微笑んで仰向けのままこちらを向く。ボクはその視線を受けてしばらく固まったがすぐに空の方向を向いた。
「不思議......だね」
顔を掠める風が心地よい。全ての疲れを吹き飛ばしてくれるような、そんな感じがした。
しばらくの間、ボク達の間に沈黙が流れる。今聞こえるのは風の音だけだ。するとそんな心地良い時間を突き破るかのようにエルが
「さぁ、王子。今度は何をしましょうか」
と勢いよく立ち上がりボクの見下ろす。ボクもその勢いにつられて同じように立ち上がる。
「他に何が出来るかな」
庭園でできることといえば、追いかけっこやかくれんぼだ。だがそれはもう既にやった。庭園で魔法は使ってはいけないし......うーん......。
ボクが頭抱えずっと考えていると、エルが何か思いついたように目を見開いてボクの両手を取った。
ボクはその行動に少しビビリ動けなかったが、そんなのをなりふり構わず明るい声で言った。
「王子。一騎打ちなんてどうですか?」
「一騎打ち......?」
一騎打ち。一対一を原則として行う戦闘のことだ。ボクは困惑した。なんで一騎打ちなんかやりたいのだろう。そもそも一騎打ちって遊びじゃないし。
出された案に対し僕が戸惑っていると、エルがニコッと笑いながら返事を待たずルールを説明してきた。
「ルールは簡単。この木剣で相手のどこでもいいから触れたら勝ち。その間に相手に攻撃して体力を減らして木剣を当てるっていう方法もあり。ただし、魔法は使用禁止。危険だからね。じゃあ、いきますよ!!」
「!!」
急に始まった一騎打ちにボクは成す術も無くエルの攻撃をもろに受けた。攻撃を受けたボクの体はそのまま後方に飛ばされ、城の壁に当たる。
「っ!!」
体に激痛が走る。どうやら相手は本気のようだ。正直乗り気ではないが相手がそうなら......
ーーーーーーこっちも本気でいくしかない......!!ーーーーーー
壁にめり込んでいた体を引っ張って戦闘態勢に入り、眼光を見開く。
魔法は使用禁止。この感じだと刃物も使用禁止のようだ。ならば......素手か。
ボクはニヤリと笑い、自分の右手を見る。
これでもボクは怪力だ。今の歳で自分より大きい石を一発で割れるくらいの力を持っている。
この力を使えば、相手をノックダウンさせることも安易だ。
ボクはエルが考えたルールに感謝をした。いや、エル本人に。
こんなルールにするってことは、ボクが怪力だという事を知らないということになる。と、考えると好都合だ。
ボクは凄いスピードで迫り来るエルの前で地面を右手のみで叩いた。するとボクの拳が地面についた瞬間に地面が盛り上がり、ボクとエルの間に壁を作った。
壁の大きさは高さ十メートル、横五メートル、縦一メートルの大きい壁。ボクの今の位置からじゃ壁より向こうの景色は見えない。そのぐらい大きかった。
ボクはその時、勝ったと確信した。こんな大きい壁にめがけて、彼は突っ込んでいったのだ。ダメージも大きいはず。
ボクはその場から一旦抜けようと、壁の向こう側に回ろうとした。だがその時。
カンッ
「!!」
突然降ってきた小さな体。ボクの体が反射的に動いて木剣でガードしてくれたため当たることはなかったが、エルが全く傷を負っていないことにボクは唖然とした。
そのままボクは木剣でエルを押し返し、自分より遠くのほうに着地させる。だってさっき、壁に突っ込んでいったはずじゃ......。
そう思っていると、エルが口を開いた。
「貴方が怪力だという事、僕は把握済みですよ」
え?
その言葉にボクは再び目を見開いた。そして新たな疑問が出てくる。
ボクが怪力だという事を知っておきながら、何故暴力禁止のルールにしなかったのだろうか、と。
え、だっておかしいよ。ボクだったら普通に禁止にするよ?だって当たったら死ぬほど痛いもん。一回寝ているときに寝ぼけて自分の顔を本気で殴っちゃったことがあるから、強烈に痛いって事は身に染みている。
もしかして、エル。怖いもの知らずならぬ痛いものしらず?
次から次に疑問が浮かんでくる。彼の行動が謎過ぎるからだ。
そんなあらゆる疑問で頭を悩ませていると、エルが木剣を構えボクに襲い掛かってきた。
「!!」
そしてまた驚くことがあった。彼がやった構え。それが「極東流」だったのだ。
一番取得しにくい極東流、しかも明らかに極東に住んでいる人じゃない人が、その流儀をやっていた。
しかも持っている武器は刀ではなく木剣。
ーーーーーーこの子......強い...!!ーーーーーー
ボクはそう思い始めていた。極東に住んでいたボクの母親でさえ取得するのに数十年はかかったのに、エルはボクと同じ歳、二歳だ。
たった二年で取得したというのか!?
ボクはエルの異常な成長速度に驚いた。驚くことばかりで、もう頭がついていけなかった。
だが、ボクは気を取り直して防御態勢に入る。
極東流は非常に攻撃力が高く、スピードがとにかく速い。その攻撃をもろに食らったらまともに立つことすら叶わない事になるだろう。
だからボクは......
「......っ!!」
防御に適した「英神流」で、極東流の攻撃ダメージを半減する。
彼の元々のスピードのせいでもあるか、ものすごい後ろに押されていた。ボクの足で地面が削れ、それが何十メートル先まで続いていく。
やがてエルの押しが弱まる。それを見計らってボクは木剣をエルに向かって横切りで振る。だが外れた。
ボクは無意識に歯を食いしばった。多分悔しかったのかもしれない。自分より力がある彼に、嫉妬しているのかもしれない。
ボクはひたすらに連続攻撃を繰り返した。ただひたすらに。いつか来る奇跡を信じて、ボクはメチャクチャに木剣を振った。
するとエルがボクの勢いに押され態勢を崩した。その好機の瞬間をボクは見逃さずに、彼の腹へと木剣を振る。が、
カンッ
いつの間にか出ていたエルの木剣によって、その好機は終わってしまった。
だが、ボクはエルに向かって先程のようにひたすらに木剣を振り続けた。
エルが徐々に押されていく。そして再び、ボクに好機が訪れた。エルがガード態勢を崩した。今だ!!
「ーーーーーー」
今度こそボクの勝ちだと思い、木剣をエルの腹に向かって突く。が、
「力任せに相手を押そうとしたってーーーーーー技術がなければ、その先に勝利は無いんですよ」
突如告げられたその言葉の後にボクは目を見開く間もなく、腹に激痛が走った後後方へ突き飛ばされた。
そして勢い良く地面を転がり着地地点から数メートル先までボクの体は転がった。そして、止まる。
「ーーーーーー」
痛い。痛くて声が出なかった。
視界がぼやける。気絶寸前なのか?
力なく、ボクはそこで横たわる。体が麻痺しているようだ。だが、かろうじて頭は動く。
ボクは見えない視界のまま、ボクを隠すように出来た影の主の方を向く。
エルがボクに木剣を当てて、右手を出して詠唱を唱えていた。
徐々に視界が開いてきて、体の麻痺や痛みが取れていく。どうやら神聖魔法をかけてくれたようだ。彼が創神の家系ではないのに神聖魔法が使えるということにボクは驚く暇もなかった。
エルがボクの手を取り、立ち上がるのを手伝ってくれた。そして彼はボクに、
「自分の力を抑えきれず王子に無礼な行動をとったことを、深くお詫び申し上げます。どうかお許しを」
とものすごく丁寧に謝ってきた。ボクは「本当だよ!!マジで痛かったんだからね!!」って言おうとしたがそれを押し殺して、
「いいよ。楽しかったし」
と優しい笑みで返した。するとエルが「良かった......もし王子の気に障っていれば、死刑でも何でも受けようかと考えていた......」と何かやたら物騒なことを口にしていた。
さすがにそこまでボクはやらないよ......って思ったけど、彼のその時の顔に思わず笑いが漏れてしまった。それにつられて笑うエル。
しばらく雑談をした後、父様に呼ばれそろそろ帰る時間だと言われたので、エルを見送る。
その帰り際にボクはエルにこう言った。
「明日も来てよ、エル。稽古をつけてもらいたいんだ」
するとエルが喜びの笑顔で
「喜んでお受けしましょう、王子」
と言った。その後エルはボクに手を振りながら帰っていった。
「......」
ボクはしばらくその場に立ち尽くす。すると隣にいた父様が
「エルと何していたんだ?」
と言ってきた。一騎打ちをやっていた、なんて言ったら怒られそうな気がするから、ボクはあえて
「内緒だよ」
と言った。父様がそれ以上ボクに聞くことは無かった。
だが......。
「カルミスゥゥウウゥウゥ!!!!!!!」
エルが帰ってから数時間後。父様が馬鹿デカイ声を出した後に数時間にも渡った説教に、ボクは精神的体力を使い果たしてしまった。
次回更新予定 7月23日




