エピローグ
あれから三年の月日が経つ。あの戦いが嘘だったかのような平和がレベッカにもやってきた。その間に出産、子育てを経験した彼女の顔は、大人びているだけでない、ふんわりとした顔になっていた。
子供が産まれてから少々かかぁ天下になったようで、テリーは何でも手伝えるパパに。この家族の下へマリーとアウルラも一緒に住むこととなった。
あの邪心竜の一件以来、魔法が少し認められた。
「きょうは、パーティ、きょうは、パーティ」
幼い女の子が歌っていた。
「私のパーティ!」
家族みんなが微笑んでいた。
「さぁ、ケーキの出番よぉ~」
可愛らしいケーキには二本のキャンドルが立っている。
「じゃぁ、電気を消そう」
パチンとスイッチを消すと、キャンドルの灯りが女の子の顔を照らす。
「じゃ、みんなで歌いましょ。せぇの…………」
「待って!」
女の子が止めた。
「パーティはディーバが歌わないと始まらないのよ、私が一番に歌うの」
歌姫『ディーバ』と名付けられた女の子は自分で自分の誕生日の歌を歌い始めた。
「ハッピーバースディ、ディーバ、ハッピーバースディ、ディーバ…………」
最初からディーバの名前が入っているところは少々気になるものの、そこにいる者はみんな、この可愛らしい歌姫の歌に微笑んだ。ディーバはなぜか、何度もはじめのフレーズを歌い続けている。
小声でレベッカとマリーが話す。
「この子の魔法は、歌ね」
うんうん、と、二人で頷く。
「名付け親のディーバはどうしているかしら」
「あの森に住んでいるらしいわ。神殿の横の森の、祠のあと。ちょうどいい大きさだって、快適に暮らしているみたい」
「そうなの。…………不思議だったんだけど、ディーバは何竜だったのかしら。水も、風も、火も操っていたけど」
「白竜としか言いようがないわね。力が強すぎて何でも扱えたんだわ」
「ハッピーバースディ、ディア、ディーバ~」
ずっと自分の誕生日を祝っているディーバが、もう少しで歌い終えそうだ。
「ハッピーバースディ、ディーバ」
END




