プロローグ
この作品はかなり前に閉鎖されたブログサイトで途中まで連載した作品を手直ししたものです。
昔、ある魔女が村の男に恋をした。
魔女は魔法を使ってその男を自分に夢中にさせることもできた。
しかし、できなかった。
恋の媚薬と言うものは、もしかすると作っても使えないものかもしれない。
魔女は泉に服を洗いに来た男を見ていた。木の陰に隠れてしまった男の姿を見ようと身を乗り出したその時、魔女は、魔女らしからぬ失敗をしてしまう。
バシャン!
見事に泉に落ちた魔女。焦った彼女は溺れていた。男は慌てた近寄る。
「おい、大丈夫か、焦るな、ここは浅いぞ」
溺れている彼女はまだそのことを理解できずにいる。
「おい!」
男は彼女を抱きかかえた。
水から顔を上げた彼女は、とても美しかった。
魔女は媚薬など作っていない。魔法をかける暇もなかった。しかし、二人は恋に落ちていた。
魔女が親に、普通の人と結婚すると告げると、見事に反対された。言うことを聞く彼女ではなかった。すぐに森を出ることを決意する。男の下へと向かった。
そして、すぐに子供を授かる。
親となった魔女は驚いた。その子にはちゃんと、いや、もしかすると彼女以上強い魔力を持っていた。
大丈夫だろうか、この子の将来は。普通の人の中で、普通に暮らせるだろうか。私が生きている間は私が守る。でも、その後は?
強い魔力を持った彼女は気付いていた。自分の命がもう長くないことを。夫は、目立たない土地に家を建てた。
「何をそんなに心配しているんだい。その子の将来はその子が決めるんだ。運命だって同じさ。君が今、魔法を使うか使わないか決めるのと同じさ」
魔女は、子供に魔法を使うことを禁じた。自分が世の中から背を向けられたように感じていたから。同じ思いをさせたくなかった。
しかし、運命は親の考えることを全く無視して動いていく………。




