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不食の人

作者: チチャ

 一人の知り合いが亡くなりました。栄養失調による心停止だったそうです。今日はその彼について話します。


 ある日彼は突然、「不食人間になろうとしている。ここ一週間一日一食玄米と大豆と果物しか食べていない」と僕に言いました。聞くと「体の怠さは感じたが、走ったら治った。気を取り込むことができるようになっている。いずれ何も食べずに生きられるようになる。何も食べなければ働かなくてもよくなる」らしいのです。


 「体重はどうなっていますか」と僕が尋ねると「体重は減っている。でもいずれ増えるか止まるかする」と彼は答えました。「それは自分の体を分解してエネルギーに変えてるだけです。そのままでは死にますよ。」と僕は言いかけたけど、彼は他人の話で自説を曲げるような人ではないので、呑み込みました。


 また別の機会に彼は、「大人になったら宇宙船に乗って宇宙を探検すると思ってた。けど、君はまだ若いから違うだろうけど、実際この年になると毎日が同じ繰り返し。自分から何か変えようとしないと何も変わらない。」と言いました。「もしかしたら彼は、不食人間なんて嘘だとわかってて、緩慢な自殺をしているのかもしれない」と僕は思いました。


 今思えば、もし僕が騒いだら彼を救えていたかもしれません。けれど、命を長らえさせて、徒に苦しみを増やすだけに終わってしまったかもしれません。僕に救える人間はどう頑張っても一生に一人くらいしかいなくて、その一人が彼であるとは思えなかったのです。などと言ってて、誰一人救えないまま一生を終えるかもしれませんが。

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