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終章

 目覚めたセッカが見た風景は、学校の個室トイレだった。なぜかズボンを下ろして便座に座っている。

 夢だったのか?

 半信半疑でトイレから出ると、血相変えたジュウイチが走っちゃいけない廊下を走っている。まぁ、いつものことだけど。

 セッカを見つけたジュウイチは、体当たりをするんじゃないかと身構えたくらいの勢いでセッカの所へやって来た。

 「大変だセッカ。…ところでお前、どこにいたんだ?」

 「トイレに行ってたらしい」

 「???」

 「で、大変って何が?」

 「あ、ヒバリ、行方不明なんだって。職員室で先生たちが話してたの聞いちゃったんだ」

 ジュウイチは青い顔をしている。ヒバリが行方不明になったのは自分のせいだと思っているらしい。だから責任を感じているのだろう。

 「どこに行ったと思う?」

 「学校の裏山だと思うけど」

 ここは田舎の小学校。六年生は三人しかいないという小さな小学校だ。全校児童を合わせても三十人までいない。そんな田舎の学校だから周りは当然何もない…いや、自然ばかりがいっぱいある。隠れようと思えばいくらでも隠れる所があるのだ。特に学校の裏にある山は高くもないし、熊もいない。家出するには持って来いの場所だった。

 それにセッカにはどういう訳だかヒバリのいそうな場所の見当がついている。

 「俺、あいつにちゃんと謝んなきゃなんないし…」

 「僕もだ。一緒に捜しに行こう。そして一緒に謝ろう?」

 ジュウイチは泣きそうな顔でコクリとうなずいた。

 裏山は決して険しい山じゃない。けれども道らしい道がある訳じゃないし、湿ったふかふかの地面は歩きにくい。ジュウイチは何度転んだか判らないくらいなのにセッカは平気で歩いてく。この間までは一緒になって転んでいたはずなのに。

 「一体、どうなってんだ?」

 肩で息をしながらセッカについて行くジュウイチは、不意に立ち止まったセッカの背中にぶつかった。

 「あ。野ウサギ」

 「え? どこ?」

 ジュウイチはセッカに指を差してもらって、ようやく逃げて行くウサギを見つける事が出来た。

 「へぇ、この山結構動物たちがいっぱいいるんだなぁ…」

 セッカは感動していた。今日はなぜだか生き物の気配がよく判る。あそこにタヌキが、ここに野鳥がと、次から次へと見つける事が出来る。

 「どうやって見つけてるんだ? コツ教えろよ」

 「気配を感じるだけさ」

 「そんな忍者みたいな事、出来ないだろフツー」

 そんなことを話ながら歩いていると、やっぱりセッカが立ち止まる。人の気配がするのだ。

 「ヒバリだ」

 「え? どこ? どこだよ、おい! セッカ!」

 走り出したセッカは、とてもじゃないがジュウイチが追いつけるような速さじゃなかった。

 「ヒバリ」

 大木の洞にうずくまってシクシク泣いているヒバリを見つけたセッカは、優しく声を掛ける。ハッと見上げる視線の先で優しく微笑むセッカを見とめ、ヒバリはわんわん泣き出した。

 そこにやっとジュウイチがやって来る。

 「ヒバリ…よかったぁ…」

 泥だらけの体でペタンと座り込んでしまう。

 「ヒバリ、ごめん。僕らが悪かった。謝るよ」

 「…俺も……ごめん」

 「ごめんなさい。私…私……」

 ヒバリは、ワッとセッカの胸にしがみつく。

 「…帰ろ。みんな心配してるよ」

 「…うん」

 それをうらやましそうに見ていたジュウイチが、ふと気付いた。

 「セッカ? 背、伸びた?」

 「え?」

 気付くとなるほど、彼は背が伸びているようだ。ジュウイチよりもちょっと小さかったはずの彼は、いつの間にかジュウイチより大きくなっているようである。

 「ちぇっ、これで俺が自慢出来る事何もなくなっちゃったよ」

 赤く染まった夕日を浴びて、三人は笑いながら山を下りて行く。

最後までお読みいただいた皆様ありがとうございます。

この物語は当時小学生だった息子たちのために書いたものです。

オジロの物語、トキやツグミのエピソードなど本筋には直接絡まないけれども大なり小なりストーリーに影響を与えているお話のタネがあるのですが、今の所書く予定にありませんのでこれにて本編完結です。


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