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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第九章
321/398

聖遺物狩りあらわる

「きぃーっ! ムカつくムカつく! あの野郎、人が何も努力してないみたいに言いやがって。今に見てろよ、必ず吠え面かかせてやるっ!」


 ビテュニアで政敵ベネディクトと何故か出くわしたアーサーは荒れていた。子供たちと遊んでる姿を見られて一方的に失望され、正論を言われて言い返せず、挙句の果ては施しまで受ける始末。おまけに自分たちのせいで、アーサーが馬鹿にされたと思っているらしき子供たちは委縮してしまうし、踏んだり蹴ったりである。


 しかし、ベネディクトの言うことも尤もだった。


 ぼろを着てても心は錦と言えば聞こえはいいが、実際問題、領民がぼろを纏っていたら、それは領主の力不足が原因に違いない。人は石垣、人は城とも言うではないか。領民と領主は持ちつ持たれつで、領主だけが綺麗な格好をしてればいいというわけではないだろう。


 ここはグッとこらえて、彼の言葉を受け入れ、子供たちにいい服を着せてやるべきだ。実際、子供たちはどこへ行っても嫌な目で見られる。それはアーサーも本意ではなかったのだから。


「変なの。嫌いな相手からでも、あなたは施しを受けちゃうの?」


 そんな感じでぶつぶつ文句を言っていたら、金貨袋を差し出しながらアンナがぼそっとつぶやいた。正直耳が痛いところであったが、


「うるさいな。そうしたほうが合理的だからだ。決して負けを認めたわけじゃないぞ。金は天下の回りものと言うではないか。金は使わねば意味がないのだ。奴が使いきれぬと言うのなら、俺が代わりに使ってやるほうが世の中のためといえるだろう」

「ふーん……」

「あらあら、みんなどうかしちゃったのかしら? 帰ってきたら元気が無くなっちゃったみたいだけど」


 アーサーがそんな強がりを言っていると、宿を探しに行っていたアトラスが帰ってきた。彼は出がけには広場で元気いっぱいに遊びまわっていた子供たちが、今は意気消沈している姿を見て首をかしげた。


 アーサーがぷんすかしながら、かくかくしかじかと事情を説明する。


「そんなわけで、子供たちにいい服を買ってやろうと思ってるところだ」

「まあ、それはよかったわ。実は宿を探してる時にも言われたのよね。団体客はウェルカムだけど、浮浪児となるとちょっと……って難色を示されちゃったの。あまり流行ってない宿でこれだから、どうしよっかって相談に戻ってきたとこなんだけど」

「そうなのか? 客を選ぶなとは言わんが、けち臭いものだな。ならば尚更、子供たちにはいい服を着させてやった方がいいだろう。俺のプライドなんかどうでもいいのだ」


 アーサーがふんぞり返りながら言い訳をしていると、そんな彼の強がりを真に受けてしまったのか、いつも彼にべったりの子供が、くいくいっと彼の上着の裾を引っ張った。


「王子……私はこのままでいいよ」

「む、どうしてだ?」

「王子がつけてくれたアップリケがあるから、これがいいよ」


 そう言って子供は薄汚れた洋服につけられた、ピカピカのアップリケを大事そうにゴシゴシさすった。するとそれを見た周りの子供たちも、自慢げにそれぞれのアップリケを示してみせた。それは穴だらけだった洋服を補修するためにつけたものだったが、つけた当時と変わらない輝きを放っている。どうやら子供たちは大事にしていてくれたらしい。


「せっかくつけてくれたものを捨てるくらいなら、外で寝るからいいよ。今までと何も変わらないもん」


 アーサーは鼻がむずがゆくなった気がして、指でごしごしとすると、、


「むむむ、そうか……では、洋服屋のついでに手芸屋にも寄っていこう。新しい服にも同じものをつけてやる。いや、どうせなら、もっと可愛いのをつけてやろう。俺も手芸屋に行くのは久しぶりで、とても楽しみなんだ。だから遠慮せずに新しいのを買いに行こうな」

「うん」「王子、僕のもつけて」「私のもー!」

「そうかそうか、そんなに気に入ってくれたのか。いいだろうとも、ちびっ子たち。今日は夜なべでこの俺が、貴様らのアップリケをつけてやるぞー」


 そう言うとアーサーは子供たちの手を取って、和気あいあいと歩いて行った。初めての町で案内も居ないのに、後先考えない主人だなと思いつつ、エリックとマイケルが彼の後に続いた。


 まるで遠足みたいにぞろぞろと大勢の子供を引き連れて、アーサーは意気揚々と先頭を進んだ。そんな彼を呆れた素振りで眺めながら、最後尾をアンナが進んでいると、隣にアトラスが並んできて、


「みんなをアーサーに取られちゃったわね。悔しい?」

「別に」


 アンナはムスッとしながら顔を背けた。アトラスはにやにやと笑いながらも、


「それにしてもあの王子様、本当に子供たち全員の面倒を見るつもりなのね。正直言って、最初はあなたを引き入れるために、嘘も方便ってつもりで言ってるんだと思ってた」

「どこか孤児院にでも入れてくれるなら、私はそれでも構わなかったんだけど」

「あら、そうだったの?」


 アトラスはアンナからそんなドライな返事が返ってくるとは思わず目を丸くしたが、それ以上にアーサーの子供に対する優しさの方が気になって、少し首をかしげながら誰ともなく呟くように言った。


「それにしても……おかしな子よね。生まれも育ちも、本物の王子様みたいなんだけど、それを全く感じさせないのはなんでかしら」


 やたらと偉ぶってて、基本的に何も出来なくて付き人に任せっきりで、いけすかないボンボンみたいな性格をしているのだが、何故か憎めない。アトラスはそれはおそらく、彼が弱者に共感しやすいところがあるからだろうと見ていたが、帝王学を学ばされたアーサーがどうしてこうもアンバランスに育ったのか、彼は不思議でならなかった。


 それに答えたのは、エリックとマイケルの従者二人組だった。


「坊ちゃんはああ見えて、子供のころは凄い引っ込み思案だったらしいんですよ。今みたいに無鉄砲な性格じゃなかったそうですね。とにかく慎重で、石橋をコンクリで固めて渡るような、そんな感じ」

「あら意外……とてもエルフ相手に最後まで引かなかった子と同一人物とは思えないわね」

「……一体、どうしてあんな変人になっちゃったの? さっきみたいに実力に見合わない喧嘩でもして、頭の打ちどころが悪かったの?」


 珍しくアンナが興味を示す。二人が苦笑いしながら続けた。


「俺達が言ったってことは内緒にしてくださいね? アンナちゃんの言う通り、坊ちゃんは実力が全くありません。剣の腕前はそこそこで、魔法の才能は皆無です。勉強の方も家庭教師が投げ出すくらい酷いもんでした。ただ、坊ちゃんはご自分でもおっしゃってるように、それはそれは凄い方々の血を受け継いでおいでですんで、子供のころからみんなの期待を一身に浴びて育ったんですね。それで物心ついたころには、いつからか恥をかくことを極端に恐れて、失敗すると一日中ぐったりしちゃうような、そんな性格になっちゃったそうです」

「とてもそんな風には見えないわ」


 アトラスが目を丸くする。


「きっと、プレッシャーに負けちゃったんじゃないですかね。お祖父様であるミラー伯爵は坊ちゃんを溺愛していて、それを周囲の大人たちが知ってたのも悪かったんですよ。坊ちゃんの周りには、いつしか腰ぎんちゃくが取り巻くようになって、代わりに何でもやってくれた。坊ちゃんは恥をかかないで済むからそれに甘えてしまって、ただでさえ無い実力はどんどん錆びついていくから、同い年の子供たちの中では、群を抜いておバカになっちゃったみたいですよ。まあ、これは今もそんなに変わりませんが」


 ひどい言い草だったが、それほど不快に感じないのは、二人がそんなおバカな主人を慕っていると分かるからだろうか。


「それがどうしてあんな風になっちゃったの?」

「まあ、ベネディクト様の影響なんですが……」

「さっきの人……アーサーは嫌ってるみたいだけど」

「あれでも子供のころの二人は仲が良かったんですよ。ベネディクト様はミラー伯爵のお孫さんの中でも最年長者でして、従兄弟の中ではお兄さん的な存在だったんです。そんな彼があるとき、坊ちゃんの境遇を憂えて、このままじゃ彼のためにならないからと言って、腰ぎんちゃくを追い払っちゃったんです。そしたら坊ちゃんは失敗続きで、ぐったりしちゃって、内向的な性格にもどんどん拍車がかかっていった。見かねて周囲の大人が手助けしようとするんですが、そうするとベネディクト様が手を出すなと怒った」


 そうこうしているうちにアーサーはどんどん暗くなる。人目に触れるのを嫌って家に引きこもるようになり、母親に習っていた裁縫の腕前だけはみるみる上がっていった。


「……そんなことされて、どうして仲が良いなんて言えるの?」

「ベネディクト様は失敗しても決して笑いませんでしたから。そして、何度失敗しても諦めちゃダメだよと言って、成功したらすごく褒めた。坊ちゃんは知っての通り、手芸の才能がありますが、昔は男らしくないからって周囲には隠してたんですよ。でも、ベネディクト様はそれを知ると、それも君の才能だからととても褒めてくれたんですね。それで坊ちゃんは恥ずかしがらずに好きなことをしてても良いんだと、失敗してもやり直せばいいんだと、お母様以外にも情けない自分を肯定してくれる存在が出来てホッとしたんだと思います。二人は年も離れてますし、素直に言うことが聞けたというのもあったでしょう。それで次第に元来の……つまり今の性格に戻ってきたんでしょうね」

「へえ~……話聞いてる限りでは、ちょっと厳しいだけで別に悪い人じゃないみたいじゃない。それがどうしてあんなことになっちゃってるのよ?」

「それはですね。ベネディクト様が坊ちゃんの殻を割ってくれたのは良かったんですが、お陰で坊ちゃんの本性が世間にバレてしまった。言うまでもなく、坊ちゃんはポンコツですからねえ……伯爵家の跡継ぎがこんなので良いものかと多方面から苦言を呈されてしまったんですよ。伯爵様はそれでも坊ちゃんのことを買っておいででしたが、周囲からの圧力も半端なく、仕方ないのでそれまで誰とは明言しなかった後継者争いをさせたんです。結果は言うまでもないでしょう」

「はあ……そりゃあ、勝ち目無いでしょうね。今だって酷いのに」

「ええ、坊ちゃんは周囲の人たちの失望を買った。逆にベネディクト様の求心力は否が応でも上がりました。それで伯爵様も後継者問題を見直さざるを得なくなった」

「それであの子はベネディクトさんを恨んでるの?」

「いや直接的にはそれが原因ではないです。坊ちゃんはむしろ、後継者指名をベネディクト様に譲ったことで、逆にホッとしてた面もあるんですよ。元々、周囲の期待が重荷になって引きこもってたくらいですからね。別に自分がミラー家の跡取りにならなくとも、彼なら上手いことやってくれるだろうと……ところが、ベネディクト様はご自分が後継者となられるや否や人が変わったみたいに、ライバルたちを次々と左遷して地方に飛ばしたり、坊ちゃんの取り巻きを吸収し、言うことを聞かない者は容赦なく失脚させ、終いには坊ちゃんをカンディアに飛ばしてしまった。坊ちゃんはまさかベネディクト様が自分を遠ざけるなんて考えたこともなく、大変ショックをお受けになったようで、そして現在に至るわけです」

「それで、アーサーはあんなにあの人のことを嫌ってるのね……でも、どういうつもりだったのかな。アーサーに強くなってほしくてそうしたの?」


 話を聞いていたアンナが眉を顰める。


 眉毛だけが困ったようなその表情は、なんだか彼女の母親のことを思い起こさせ、エリックとマイケルは妙に懐かしい気分にさせられた。


 そんな二人がじっと見つめてくるのを、アンナがけげんな表情で返すと、彼らは慌てて首を振ってから、彼女の疑問に答えた。


「正直なところ、彼の胸の内は計り知れませんね。もしかしたら本当に、坊ちゃんにカンディア公爵になって欲しくてそうしたのかも知れませんし、単に政敵を追い落としただけかも知れない。ただ、ベネディクト様が家中を掌握なさるうえで、坊ちゃんがこの上なく邪魔であったことは確かです。ミラー家にとって、大恩あるリディア王家の血筋は特別なんですよ。だから坊ちゃんがヴェリアに居る限り、彼は常に後継者問題を蒸し返されることを恐れなければならない」

「それで一番の理解者から心変わりしちゃったってわけ? だとしたらアナルの小さい話ね。いくら金持ちのイケメンでも好きになれないわ」


 アトラスがほっぺたをプクーっと膨らませる。可愛いというよりも、軽く恐怖を覚えながらエリックが続けた。


「それくらい、坊ちゃんが受け継ぐはずだったものは、大変なものだったってことです。人の心を変えてしまうくらいにね。考えてもみてください。かつてリディア王家は世界の富の半分を手中に収めたと言われてます……その流れをくむミラー伯爵家は、それに匹敵する価値を生み出す力を秘めているってことですから」

「ふ~ん……」


 話を聞き終えたアンナは、先を行くアーサーの後姿を見つめながら、気のない返事を返した。彼はカンディア公爵だとかリディア王だとか、いつも景気のいいことばかり言っているが、その胸の内には複雑なものを抱えていたようである。


 先頭を行くアーサーの周りを子供たちがつかず離れず飛び回っている。いつもアンナにべったりだった年少者の子供は、いつの間にか彼の腰にしがみついて離れなくなっていた。きっと歩きにくいだろうに、まったくそんなそぶりを見せず、子供たち相手にイキイキとした笑みを浮かべる彼を見てると、従者たちの言う、ヴェリアに居た頃の彼を想像できなかった。


 正直なところ、世界の富の半分なんてどれくらいのものかもわからないから、そのプレッシャーが彼にどれだけ重く圧し掛かっていたのかも想像がつかない。だが、今の彼の姿を見ていると、こうなってよかったのかも知れないなと、アンナは漠然とそう思った。


 もし、彼はリディア王家ではなく、魔王の娘だと言われていたら、どんな顔をしてあの場所に立っていたんだろうか……


「アンナちゃんは、ビテュニアに居た頃は、どんな風だったんです?」


 アンナがそんなことを考えていると、従者の片割れ、マイケルの方が唐突にそんなことを聞いてきた。


「えっ……!?」


 それが本当に不意打ちだったから、彼女は目を丸くして立ち止まってしまった。マイケルは慌てて、


「いや、別に無理に言わなくってもいいですよ。アンナちゃんがこの町出身だって、ランさんに聞いてたから、ちょっと気になっただけで」


 空気が重くなりかけたのを見て、すかさずエリックが話題を変えた。


「俺はそれより、アトラスの方が気になるんだけど」

「あら、今度は私ぃ……?」

「アトラスとアンナちゃんって、前線で一緒だったんなら、昔から知り合いだったんだろう? 二人はどうして知り合ったの?」


 エリックは、それはきっと、アトラスがエリオスの息子だからだと考えていた。もし彼が生きていたら、そうしただろうと思ったからだ。


 ところが、返ってきた答えは全然別のことだった。


「きっかけは殆ど偶然よ。私は聖遺物狩りを追いかけていたの。そしたら前線で盛大に魔法をぶっ放しては、ブイブイ言わせてる女の子が居るっていうから会いに来たんだけど……」

「聖遺物狩り?」

「あら、あなたたち知らないの? かつて魔王は、エルフの秘儀である魔法を使う人間を悉く誅殺すると言った……その言葉は本当で、前線で魔法使いがエルフと戦ってると、どこからともなく現れると言うのよ。魔法使い専門の殺し屋がね」


 それは黒く大きな兜で顔を覆った巨漢で、エルフとは明らかに体型が違うから、きっと中身は人間ではないかと当初は思われていた。しかし、エルフが仲間と認識し攻撃しないようなので、今では亜人であろうと考えられている。


 その亜人は魔王の手先として、魔法使いを見つけては人に紛れて襲撃を繰り返し、抵抗するものには死を与えた。ただし、おとなしく聖遺物を差し出せば命までは取らないらしく、彼を恐れた魔法使いたちは、聖遺物を失うことをも恐れて前線からどんどんいなくなっていった。


 もし前線に魔法使いが少しでもいれば、今の膠着状態を打開し、もう少しくらいエルフを押し返せていたかも知れない。魔王は的確に人類の弱点を突いてきたわけである。


「このままではジリ貧だから、ビテュニア候は聖遺物狩りの討伐命令を下したんだけど、相手はエルフの森を根城にしてるような奴だから、未だに捕まっていないの。私とママは彼を追って、昔っから前線を渡り歩いていたんだけど……」

「なんでまたランさんが? あの人、コルフの議員さんでしょう。アスタクスに鞍替えしたのか?」

「それは……」


 アトラスが理由を言いかけた時だった。突如、遠くの方で、


「きゃああ~~~っっ!!!」


 ……っと悲鳴が上がった。


 道行く人々がぎょっとして立ち止まる。どうやら、アーサーたちの前方で何かがあったらしい。見れば、ほんの一町ばかり行った先の広場に、人だかりができている。


 何があったんだろうか? と、エリックとマイケルが背伸びをする。その隣でアンナがぴょんぴょん跳ねていた。対照的に、普段通りの態勢で、長身のアトラスがなにやら前方の上空に向かって指を突き出した。


「見てっ! あっちよ」


 エリックとマイケルは彼の指さす方向を仰ぎ見た。すると、建物の屋根の上を、とんでもないスピードで駆け抜ける黒い人影が見える……


 男は筋骨隆々の体に無骨な兜をかぶっており、100キロは下らない巨体をのっしのっしと揺らしているくせに、まるで重力を感じてないかのような身軽さで屋根から屋根へと駆け抜けていく……


 と、その時、前方で何かが煌いたかと思うと、屋根の上を伝う男に向かって炎が吹き上がった。業火が男を覆って、一瞬彼の姿が見えなくなる。


 しかし、男は手にした剣でその炎を一刀両断すると、炎が飛んできた方へ向かって、躊躇なく屋根から飛び降りた。


 その瞬間、前方で火花のように蛍光色の光が飛び散った。それは魔法使い特有のオーラに違いない。するとまた、


「きゃああ~~~!!!」


 っと悲鳴が上がって、パニックになった群衆がこちらへと必死に逃げてきた。


 何故か知らないが、いきなり前方で魔法戦が始まったのだ。


 逃げてくる人々に翻弄されて、アーサーと子供たちが人ごみに攫われていった。押し寄せてくる人の波に逆らう様に、エリックたちがもがいている中、アトラスだけが何事も無かったように、悠然と立っていた。


 彼はにやりと不敵な笑みを浮かべると、


「クマと見紛う偉丈夫に、巨大な黒兜……おいでなすった。あれが、聖遺物狩りよ」


 そう言い残し、軽々と人波をかき分けて、魔法が飛び交い火花が飛び散る広場へと駆け出して行った。


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