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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第九章
313/398

真夜中のギター

 アーサー達が前線で義勇軍に参加してから数週間が過ぎた。その間、彼らは五回ほどエルフとの戦闘に遭遇したが、それ以外は概ね平和と言ってよかった。最前線は思いのほか暇なのだ。


 というのも、対エルフ用の前線は前線と言っても、大昔の決戦地のような限られた場所のことではなく、敵が侵入しうる場所全てをカバーするため、長い長い国境線に兵士を並べたようなものだったからだ。


 言ってしまえば義勇軍は国境警備隊に近く、いつどこで戦闘が始まるか分からないので、エルフの侵入を許したエトルリア大陸南東部の森を囲むように、数百キロに及ぶ塹壕を掘って、その全てを前線と呼んでいるわけである。


 アーサー達が居るのはその長い長い前線のうち、フリジアから北に数十キロほど行った場所にある、丘陵地の手前、川を背にした旧街道沿いに掘り進んだ塹壕だった。この辺りは昔から小高い山が多くて人の手が入りづらく、特に森が濃いせいか、他と比べてエルフとの交戦が多い地域であった。だが、それでも一週間に多くても2~3回、数十分の戦闘があるかないかと言った程度のものだった。


 その、いつ戦闘が起きるかわからないということは、裏を返せば滅多に戦闘が起きないと言うことでもあり、その事実は残念なことに兵士に緊張感よりも倦怠感を生み出していた。そのせいか、義勇兵達は士気が低くていつも浮ついていた。


 また、塹壕の中はジメジメしてて暗くて臭くてストレスが溜まりやすく、そんなところで暮らしているせいか、アーサーが初日に見たような、兵士が子供を嬲りものにするような規律違反が横行し、大尉(キャプテン)の頭を悩ませていた。


 しかし戦闘が少ないとは言っても、危険地帯であることには変わりない。何しろ相手はエルフである。死ぬときはあっさり死ぬのだ。実際、アーサーも今までに遭遇した五回の戦闘の内で、気の毒な死者を数人見かけた。


 それはアーサーが初めて戦闘に遭遇した時の出来事だった。


 エルフとの交戦自体には既に初日に経験していたアーサー一行であったが、実際に塹壕に入って戦うのはこれが初めてだった。


 ライフルの撃ち方はヴェリアに居た時に、家庭教師から既に習っていたが、それは動かない的をよく狙って撃つという狙撃の方法であって、弾幕を張るような実戦は経験したことがなかった。そのため、アーサーは最初に大尉から口を酸っぱくして言われたものだった。


「あなた、一発撃つのにそんなに時間をかけていたら、ものの数分と持たずに死んじゃうわよ。いいこと? 対エルフ戦はとにかく手数が重要なの。狙いは大雑把でいいから、まずは一分間に十発撃てるように練習なさい。それが唯一、あなたと仲間の命を助ける方法なのよ」

「でも結局、弾が当たらなければ意味が無いじゃないか」

「ううん、そうじゃないの。残念だけど、あいつらが警戒して防御魔法を展開している間は、ライフルの弾だってはじかれちゃうのよ。その代わりに、防御魔法を使ってる間はエルフの攻撃もお留守になるから、それだけこっちも安全で居られるわ。覚えておきなさい」

「ライフルの弾がはじかれるだって? それじゃあどうやっても倒せないじゃないか」

「そうよ。私達が出来ることは、あいつらが応戦できないように弾幕を張り続けることだけ。それでも奴らの攻撃を全て防ぎきることは出来ないから、塹壕の中から一発撃っては伏せ、一発撃っては伏せを繰り返すの。そうしている内に、やがて奴らは攻撃を諦めて森へと帰って行くわ。私達が出来るのは、これが精一杯」

「それじゃ俺は一体、エルフをどうやって倒せばいいというのだ。エルフを倒したという証明がどうしても欲しいんだが」

「奇襲をして隙を作るしか方法はないわね。一応、理論上は奴らが攻撃魔法を使っている前後に隙があるとされているわ……ただ、防御魔法から攻撃魔法へ切り替わる瞬間なんて、私たちには見てもわからないし、仮に分かったところで無駄でしょうね」

「どうしてだ?」

「あいつらも連携をするのよ。とある一体が攻撃魔法を使ってる間は、別の一体がそれを助ける。昔はエルフが複数体同時に現れるなんてことは無かったらしいけど、困ったことに今のエルフは逆に一体で現れることのほうが珍しくなったわ。何かが変わってしまったのでしょうね……この空と同じように」


 そう言って大尉は空を見上げた。この一日中夕方みたいな薄暮の世界で、様々なものが変化したのだ。もしかしたら人間が生き残るのに必死なように、エルフも生き残るのに必死なのかも知れない。


 アーサーは大尉の説明通り、エルフを狙撃するのは諦めて、とにかくライフルの装填が早くなるよう練習した。そんな時に最初のエルフに遭遇したのだ。


 当たり前だが敵が今から行きますよ? と言ってから来るなんてことはない。それは唐突に始まった。アーサーと従者たちが塹壕の中で暇を持て余している時、いきなりどこかで銃声が轟いたかと思うと、部隊の兵士たちが慌てて塹壕から顔だけを出し、ライフルを構えて応戦し始めた。


 慌ててアーサーもライフルに装填しようとするのだが、これが初めての実戦だった彼は、ガチガチになってしまって大分手間取った。するとすぐ近くから罵声が飛んできて、


「おいっ! 新入り、なに悠長にやってんだっ! こっちは命が掛かってるんだぞ、しっかりしろ!!」


 貴族に向かってなんたる口の聞き方だと、言い返してやろうかと思ったアーサーだったが、どう考えても悪いのは自分であるからぐっと堪えて、とにかく応戦しようと立ち上がろうとした時だった。


 パシャッ……とバケツで水でもぶちまけたような音が聞こえたかと思うと、たった今しがた怒鳴り散らしていた兵士の首から上が吹き飛んでいた。ポッカリと空いた首の付け根の部分から盛大に血を噴出しながら、ドッと塹壕の中に転げ落ちる。


 アーサーがあまりの出来事に慄然していると、


「あ~あ~……敵に頭晒したまま怒鳴るバカが居るかよ」


 部隊の兵士たちはまるで気にした素振りも見せずにそうぼやくと、ただ機械のように攻撃を繰り返していた。誰ひとりとして男の死を悲しむことも、弾幕を切らすこともしない。やがて衛生兵がやって来て、男の死体を担架に乗せてどっかに行ってしまった。


 今のは自分のせいなのだろうか……


 臆したアーサーはその日はもう塹壕から顔を出すことが出来ず、周囲から散々怒鳴られながら、手だけを外に出して引き金を引くという、情けない醜態を晒した。初陣だから仕方ないこととは言え、その後、大尉にこってりと絞られた。


 こんな具合に、いくら戦闘が少ないとは言っても、やはり前線は危険がいっぱいなのだ。


 前線が危険なのはそれだけではない。このどうしようもない戦場には宿舎なんてものは存在せず、基本的に非番の兵士以外はみんな塹壕の中で寝泊まりをしていた。地上に何か建てたところで、ここを狙ってくださいと言ってるようなものだし、就寝中にエルフに襲われたとしても、結局、地面の下に居たほうが安全なのだ。


 だが、ただ穴を掘っただけの塹壕が快適な居住空間であるわけがない。雨ざらしの地面はいつだってぬかるんでいたし、男所帯でロクに洗濯もせず風呂にも入らず、下水道なんて立派なものがあるわけもないから、塹壕はトイレの中で暮らしているような酷い臭気がいつも充満していた。


 兵士たちはそんなひどい臭気の中で、地面にスノコをしいただけの仮眠所で眠るわけだが、何しろ地面を掘っただけの穴の中だからとにかく狭く、隣の人と肩がぶつかるわ寝返りは打てないわで、とても疲れがとれるような寝床じゃなかった。そのせいでボンボンのアーサーは、毎晩のように悪夢を見てはうなされていた。


 そんなある日のことだった。いつものように彼がぎりぎりと歯ぎしりしながら浅い眠りを繰り返していると、まだ寝入りっぱなだったと言うのに、何故か突然はっと目が覚めた。身体はものすごく疲れてるのに、どうしたんだろうと思ったら、隣の人が寝返りを打つ度に、何やら彼の尻の辺りに硬いものが当たっている。


 雑魚寝にも慣れてきた彼は、仕方ないなあ……と思いながら、身体がぶつからないように少し避けて、また眠ろうとしたのだが……しばらくすると、今度は尻をさわさわと触るような感触がして、それが次第に股間の方へ向かってくることに気づいて、彼は眠気が吹き飛んだ。


「き、貴様……なにをしている!?」

「なあ、いいだろ、いいだろ。俺、兄さんのプリケツ見た時から我慢できなかったんだよ」

「ぎゃー! やめてやめて、このホモ!」

「俺はホモじゃない、ゲイだ。そんなことより、なあ、いいだろ? ほんのちょっとだけ、先っちょだけだから」

「お断りだ、ぎゃー! 汚いものを擦り付けるんじゃない! こらっ! ズボンに手を突っ込むなああああッー!」

「なあ、いいだろ、いいだろ。こんな生活だから溜まってたんだ。大尉はああ見えて身持ちが固くて、俺の愛を受け入れてくれない。こんな男臭い空間で、俺は気が狂いそうだった……もう我慢の限界なんだよ。なあ、いいだろ?」

「いいわけないだろう、このオカマ野郎!!」


 アーサーは枕にしていたヘルメットを掴むと、男の頭にガツンと叩きつけた。ゴイ~ン……っと、盛大な音が鳴り響き、ホモはバタンキューと目を回した。どうしたどうした? と、すぐ横で仮眠していた従者たちが起き出してきた。アーサーは泣きながら塹壕を飛び出した。やはり前線は危険がいっぱいなのだ。


「坊っちゃん、待ってくださいよー」

「うるさい、ついてくるな、役立たず共め!」


 役に立たない従者たちを引き離すような早足で、真っ暗な夜道を何度も何度も足をつっかえながら、彼はあてども無く彷徨った。


 見上げれば満天の星空の中に、薄っすらとした灰色の月がぼんやり浮かんでた。この世界は昼間がずっと黄昏時なら、夜はもう一寸先は闇みたいなものだった。明かりがなければ歩くことすら困難だ。


 遠くを見れば、眩しいハロゲンライトの投光機が、森の方角を絶えず明るく照らしている。エルフを警戒しての措置だったが、それが余計に森の暗さを強調して恐怖心をあおった。


 アーサーはその明かりを頼りにてくてく歩いて行くと、やがてタコ壺の子供たちの集落へとたどり着いた。吟遊詩人(ミンストレル)をスカウトしに、もう何度もやって来ていた。集落はいつも子供たちの声が絶えない場所だったが、流石に夜であるからか、今はしんと静まり返っていた。


 人の気配がしないボロ小屋はなんだか不気味だ……そんなことを考えながら先へ進むと、集落の奥のほうからポロンポロンとギターを奏でる音が聞こえてきた。見れば小さな炎と、木の焼ける匂いも漂ってくる。夜は一人でいると寂しいから、きっとみんな寄り集まって、キャンプファイヤーでもしているのだろう。


「吟遊詩人は在宅か? 何度も尋ねてきたが、いつも顔すら拝めず逃げられる。避けられているのだろうか」

「出会いが最悪でしたからねえ。いきなり手の甲にキスするなんて」

「前々から思ってたんですけど、貴族の人たちってただの変質者みたいですよね」


 口さがない従者の声を無視して広場まで足を運ぶと、案の定、一斗缶に木を焚べた焚き火を囲んで、子供たちが寄り添うように寝転がっていた。その中心には吟遊詩人がギターを爪弾きながら座っている。


 子供たちはアーサーがやって来たことに気づくと、良いおもちゃが来たと言わんばかりに喜んだが、吟遊詩人の方は逆に眉を顰めて不愉快そうな顔をしていた。それでも今日に限って逃げようとしないのは、多分、彼女にくっつくようにして年少の子供たちが眠っているからだろう。よほど彼女のことを信頼しているのだろうか、その寝顔はどれも健やかで、ここが戦場であることを忘れそうになった。


 アーサーが腰のあたりにまとわりついてくる子供たちを千切っては投げ千切っては投げしていると、吟遊詩人の演奏が何だか少し乱れてきた。彼が子供たちをぞんざいに扱うのが気になるのか、それとも話しかけられるのを嫌がってるのか分からないが、演奏中に話しかけるほど野暮ではない。仕方なし、彼は子供たちのいたずらを甘んじて受け入れ、あちこち引っ張られながら地面にどっかと腰を下ろした。


 広場に微妙な空気が流れる。焚き火の炎がパチパチと爆ぜる音がさっきよりも大きく感じられた。こりゃあ邪魔してしまったかなと、少々バツが悪い思いをしながら座っていると……そんな時、従者の片割れエリックが子供たちの夕飯だったものらしき缶詰を適当に並べて、木の枝で作った即席スティックでチャカポコ叩きだした。


 食事の席で子供がやるような行儀の悪い行為だったが、意外なことにこれがすこぶる上手いのである。なんというか年季が入っている。これには吟遊詩人も驚いたらしく、暫く呆気にとられていたようだったが、すぐに彼のそのチャカポコが自分の演奏に合わせてリズムを刻んでいることに気づくと、またギターの音色に力が戻って来た。


 すると次の瞬間、アーサーの右斜め後方から、ぷわっぷわっと突然大きなラッパの音が聴こえてきて、見ればマイケルが相棒がいつも腰にぶら下げていたクラリオンを口にくわえて、「久々だから出来るかな……」などと呟いてから、二人の演奏にアレンジをくわえて音色を奏でだした。これがまたやけに決まっている。


 子供たちはこの突然始まったセッションに大いに喜び、手を叩いてもっとやれと囃し立てた。現金なものであっちの方が面白いぞと言わんばかりに、アーサーにまとわりついていた子供たちもどっか行ってしまった。お陰で身軽になった彼はホッとしながら、従者たちにこんな特技があったのかと目を丸くした。


 三人の演奏はその後、夜遅くまで続けられた。演奏が終わりそうになると、子供たちがアンコールをおねだりしてキリがなかったからだが、三人は嫌な顔ひとつせずに求められるままに曲を奏でていた。


 アーサーは一人、それを遠巻きに眺めながら、自分も何か音楽をやっておけば良かったと、ほんのちょっぴり後悔しながら、ゴロンと横になった。そういえば、寝入りっぱなにホモに襲われたせいでロクに眠ってなかったのだ。目をつぶると、じわじわと疲れが全身に広がっていき、気がつけば彼はいつの間にか眠ってしまった。


 それからどのくらいの時間が流れたかは分からない。


「…………うん……そうかな……でも……」


 アーサーは夜中になってハッと目が覚めた。まだ覚醒しきってない脳みそがギシギシと音を立てているようだった。どこからか母を思いださせるような心地よい声が聞こえてくる……寝ぼけた頭でぼんやりとそれを聞いていたら、次の瞬間、ゲシゲシと顔に蹴りが入った。見れば彼に乗っかるようにして眠っている子供が足をバタバタさせていた。


 お陰で完全に目が冷めてしまったアーサーはムスッとしながら子供を払いのけると、寝ぼけ眼をこすり、欠伸をしながら声の主を探した。


「……が、そう言うなら……でもあの人、信じられないよ? ……そうかな?」


 すると集落の中心にある大木の方から声が聞こえることに気づいた。辺りが真っ暗で誰が誰やら分からなかったが、薄っすらと見えるシルエットが他の子供たちよりも大きいことから、それが吟遊詩人であることは分かった。


 アーサーは欠伸を噛み殺しながら、


「一体誰と喋ってるのだ?」


 大木の陰にいた吟遊詩人はビクリとしてから押し黙った。その顔色は窺えないが、かなり戸惑っているらしい。


 邪魔するつもりは無かったのだが、驚かせてしまっただろうか……アーサーは素直に謝ると、


「いきなり声を掛けてすまんな。そこに誰か居るのか?」

「……いないよ」

「……? そうか? 気のせいだったろうか」


 木の影に誰か居たようだが、出てこないところを見ると、もしかすると彼女が独り言をつぶやいていたのかも知れない。あまり詮索しても悪いだろうと思い、追求をやめたはいいものの、会話が途切れて気まずい空気だけが残った。


 自分と彼女は相性が悪いのかなと思いつつ、アーサーはボリボリとケツを掻き毟りながら、


「どうやら、いつの間にか眠ってしまったようだな。俺の従者たちはどうした?」

「……あの人達は先に帰るって。坊っちゃんが起きたら見つからないように早く持ち場に戻れって」


 仮眠中とは言え、塹壕から離れてしまったのは規律違反だ。大尉に見つかったら、きっとあの熱い胸板でギュッとされてしまうに違いない……そんな不遜なことを考えていたら、そもそも塹壕から逃げ出してきた理由を思い出してしまい、寒くもないのに身体が勝手にブルブルと震えた。


 吟遊詩人はそんな彼の姿が見えるのだろうか、きょとんと小首を傾げると、


「どうしたの?」

「いや……人間がどうして争いをやめられないか、その理由を考えていたのだ。それはきっとそこに男と男が居るからだ」

「……哲学?」

「真理だ。今日、それを心の底から理解した」


 アーサーは嫌な記憶を振り払うように頭をブルンブルンと振り回すと、


「……そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はカンディア公爵、アーサー・ゲーリック。偉大なる初代アナトリア皇帝ハンスのひ孫にして、次代のリディア王になる男だ。改めてよろしく頼む、吟遊詩人よ……ところでこれは通り名だろう。本名はなんというんだ?」


 返事は返ってこなかった。アーサーは肩をすくめてから、


「そうか。言いたくないのなら、まあいい。それにしても呼びにくいな。吟遊詩人と言う二つ名は貴様らしいとは思うが、どうしてこんな名前がついたんだ?」


 それは多分、子供たちを相手にギターを弾いているからだろうが、話の切っ掛けになればと思い、アーサーは何気なく尋ねてみた。すると意外にも、考えていたこととはまるで違う返事が返って来て、彼は首を傾げることになった。


「私のお父さんは、音楽家なの」

「……え?」

「お母さんがそう言ってた。だから私はギターを弾くんだ」


 父親は音楽家……? アーサーは戸惑った。聞いていた話を鑑みると、そんな答えが帰ってくるとは思えなかったからだった。だから、彼はもう一つについても聞いたほうがいいかも知れないと考えた。正直、好感度のことを考えると口にしづらい言葉だったし、聞くつもりは無かったのだが……


「……悪魔の子、魔王の子供だとも呼ばれているそうだが」


 すると彼女は怒ったように首を振り、


「違う……! 魔王が父親だなんて、冗談でもやめてよねっ!」


 そして憎悪をたぎらせ、


「やつはお母さんの(かたき)……憎い、憎い、私の敵……」


 吐き捨てるようにこう言うのだった。


「私のお母さんを殺したのは……魔王だ!」


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