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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第七章
235/398

エトルリアの世界樹

 皇国の首都、アクロポリスへ来たのは戦争の調停のためであった。


 だが、どこかで世界樹に入ることが出来ないかと言う期待は常に抱いていた。


 だから、そのうち折を見て、仲の良いリリィ辺りに頼んでみようと思っていたのだが、まさか皇王の方から中に入っても良いと言い出すとは思いもよらず、瓢箪から駒の出来事に但馬はほくそ笑んだ。


 尤も、案内人のガルバ伯爵はそれに今でも反対らしく、先ほどからブツブツと不満気なので、文句を言われる前にさっさと中に入ってしまおうと、但馬はいそいそと世界樹の根本へと近づいていった。


 世界樹はメディアにあったそれと同じように、地面にある人工物の上に乗っかるような格好で伸びており、根っこが建物を包み込むよう生い茂っていた。その根っこの隙間から覗く建物は何かの施設なのだろうが、窓一つないただの金属の箱のようで、その鏡面加工でもされたかのようなツルツルの表面は、一体何の金属で出来ているのか見ただけではさっぱり見当もつかなかった。


 メディアのそれは爆破された跡があるから分かりやすかったが、こちらの世界樹には入り口らしき場所はどこにも見当たらず、まずはそれから発見しないといけないのかと、肩をすくめたのであるが……


 但馬が世界樹の根本にある施設の数メートル手前まで近づいたら、突如として視界がぶれたかと思うと、彼が命の危機に晒された時に発動するエマージェンシーモードのように、視界にかぶさるようにウィンドウが勝手に開いた。


 どうも、世界樹のなんらかのインターフェイスが起動したらしい。施設の輪郭にそって光線が伸び、世界樹の根っこに隠されたその建物の全貌が、彼には3Dフレームのように立体となって浮かび上がって見えた。


 そのフレームの中央付近には、あからさまなドアのようなものが浮かび上がっていたので、多分ここが入り口なのかな? と思いながら彼がそこにまっすぐ向かうと、背後からガルバ伯爵のうめき声が聞こえてきた。


「まさか……本当に本物なのか?」


 その呟きがどういう意味なのか尋ねたいところではあったが、多分そうしたところでまともな返事は返ってこないだろう。また喧嘩になってもつまらないし、但馬は無視してそのまま入り口らしき場所まで歩いて行った。


 彼の視界には光るドアが見えていたが、しかし近づいてよくよく見てみても、現実にはそこには金属の壁しかなかった。多分、これが世界樹のセキュリティなのだろうが、他人には彼が何をしているのか、さっぱりわからないのではなかろうか。


 ドアの直ぐ側にある、タッチパネルのような場所に恐る恐る手を添えると、


『生体認証確認……アクセスレベル……10……20……99オーバー。対象にアドミニストレーター権限を付与。全モード解除します』


 と、人工音声っぽいものが聞こえてきて、キョロキョロと辺りを見回してみたが、他の人々が反応していないところを見ると、どうやら頭に直接響いてきたようだった。


 それにしても、アドミニストレーターとは……


 聖遺物を発見してからは、なんとかレベルだのかんとかレベルだのが色々と振りきれてしまって、もう殆ど気にしていなかった。だが、こうしてこの場所でアクセスレベルと言う言葉を聞いていることを鑑みると、やはり但馬の能力と世界樹は何らかの関係性があるらしい。


 それが何なのか、今度こそ分かるといいのだが……但馬がそう願いながら目の前にぽっかりと開いたドアの中へと足を踏み入れると、


「……え? 先生? 先生!? どこ行っちゃったの??」


 背後でアナスタシアとエリックが戸惑っている声が聞こえてきた。どうやら、彼らには但馬がドアを開いたことも、そして開かれたドアから施設の中へ入っていったことも、見えなかったらしい。


 困惑する彼らに、どういう仕組みかは分からないが、これが世界樹なのだと、説明にもなってない説明をガルバが続けていた。


 戻って自分が無事なことを伝えても良かったのだが、早く中を探索したいという気持ちが先に立った。


 但馬がドアをくぐると細長い廊下がまっすぐ伸びており、少し歩くとすぐに何もない広場にぶつかった。


 まるでホテルのエントランスホールみたいに天井が高く開けたその場所は、壁に一切のつなぎ目が見えない真っ白な空間で、一体どこから差し込んでいるのか分からないが、人工的ではなく自然光のような柔らかな光に包まれていた。


 部屋の中央に祭壇のような、地面と繋がった机状の突起物がある他は、その部屋の中は無駄な装飾が一切ない殺風景な長方形の空間であり、但馬にさっきの3Dフレームのような物が見えて無ければ、きっと凶悪犯罪者の隔離施設のような印象を受けたであろう。


 彼の目にはその殺風景な部屋の左右に、奥に繋がる2つのドアが見えており、ここが行き止まりではないことを示していた。


 彼は早速、奥に進もうかとも思ったが、一応、祭壇も調べておこうとそれに手を触れたら……


 ジィー……カタカタ……ジィー……カタカタ……


 っと、機械が発するノイズのような音が右奥の部屋の方から響いてきた。


 どうやら、但馬が祭壇に触れたことで、何かが起動したらしい。


 初めはじっと成り行きを見守っていた、中々ノイズも消えないし、音の正体が気になって、結局彼は音のする右隣の部屋の方へと足を運んだ。


 入り口の時と同じようなタッチパネル式の認証を突破し、扉をくぐり抜けると、隣の部屋も同じように光のあふれる真っ白な部屋で……だが、隣とは明らかに毛色が違う施設であるのが誰にでも分かる、信じられない代物が目に飛び込んできた。


 部屋の中央付近に手術台のような猛烈な光を浴びせられたスペースがあり、その真上の天井から、何やらロボットアームのようなものがニョキニョキ伸びている。


 いや、ロボットアームのようなものではなく、ロボットアームそのもので、先端にはレーザーメスのようなものや、ドリルのようなものがくっついていて、手術台の上にある金属の塊を削っている。


 但馬がかつて生きた時代の、無人の工場でロボットが機械を作っている風景が思い出された。丁度、そんな感じの事が目の前で起こっていたのだ。


 一体何を作ってるのだろうかと手術台の上の物体をよく見ると、それはどうやら一振りの矛槍のようで、その中央にはシリコンウェハのような、ピカピカに磨かれた七色の金属があって、その上をレーザーメスが細かく動きながらオゾン臭を振りまいていた。


 多分、半導体か何かの精密機械のパターンを作っているのだろう。それは分かったが、逆に言えばそれくらいしか分からなかった。ただひとつ言えることがあるとすれば、それは但馬にも理解不能な、オーバーテクノロジーな何かがいま目の前で繰り広げられているということだ。


「これ……聖遺物(アーティファクト)だよな」


 但馬は独りごちた。


 そう呟いたことで思い出したが、そういえばエトルリアの世界樹は、聖遺物の生産工場のようなものであると聞いていた。さっき、但馬がエントランスホールにある祭壇に触れたことで、それが動き出したのだろう。


 かつてハンス皇帝に歴史の講釈を受けた時、彼は聖遺物は人を選び、素養のあるものだけが世界樹から与えられると言っていた。そのカラクリが、垣間見えた。


 恐らく、魔法使いの素養がある者があの祭壇に触れると、こうして機械が動き出し、その人に適したユニーク武器を製造してくれるという仕組みなのだろう。


 但馬は奥にある扉の存在に気づいたから、こうして作ってる場面を実際に見ることが出来たが、但馬以外の者達は、きっとあのエントランスで出来上がったものを受け取ることしか出来ないだろう。


 それにしても皇国の歴史が千年というなら、この施設は千年前から稼働しているのだろうが、それが今もこうして精密に動いてると考えると、驚きを隠せなかった。どんな機械だって手入れをしなければ経年劣化するのに、ましてやそれが千年なのだ。


 どうなってるんだろう、これ……左のコメカミを叩いて鑑定魔法を発動すれば、何か分かるだろうかと思い、チョンと叩いて見たら……


 突然、目の前に物凄い勢いで大量の文字が流れだし、但馬の視界を埋め尽くした。


 その情報の奔流は桁外れで、何が書いてあるのかも分からなければ、自分が何を見ているのかさえ分からなくなった。視界が遮られて目の前が真っ白になり、平衡感覚が失われた但馬は、咄嗟に目をつぶって右のコメカミを叩いてその文字列を消したが、たった数秒の出来事だったのに、信じられないくらい、どっと体が疲れていた。


 どうやら、この施設の物は、但馬の鑑定魔法では理解不可能らしい。もしくは、これもまた世界樹のセキュリティなのだろうか。分からないが、もうこれ以上、気楽に発動しないほうが賢明のようである。


 但馬がまだふらふらする体を壁に手をついて支えていると……ジィー……カタカタ……カタンッ! っと、それまでずっとノイズのように響いていた機械音が止まった。


 次の瞬間、手術台の中央がパカっと口を開けたかと思うと……一体、重力制御とかどうなってるんだろうか? と言いたくなるような動きで、その上に乗っていた聖遺物がゆっくりと手術台の中へと消えていった。


 そして、天井からぶら下がっていたロボットアームがするすると、その天井に収納されたかと思うと、眩しく照らされていた手術台の灯りが消え、穴もピタリと閉じて、後には何事も無かったかのように、つなぎ目の無い床と天井が残されていた。


 さっきまで、穴が空いたり天井からニョキニョキぶら下がっていたりしていたのに、その痕跡は髪の毛ほどの隙間すら見つからない。


 一体、どうやったらこんな芸当が可能なのだろう……千年間もメンテナンスフリーだった施設を前に、呆然と立ち尽くした。


 ともあれ、ここでいつまでも呆けてる場合ではないと、但馬は気を取り直すと、部屋の隅々までを調べてから、また隣のエントランスホールまで戻ってきた。


 すると案の定、先ほど前は何もなかった祭壇の上に、さっきまで隣の部屋で作られていた聖遺物が乗っかっていた。これがこの世界樹の主たる機能なのだろう。但馬はそれを見て、はぁ~……っとため息を吐いてから、改めてその聖遺物をとっくりと眺めたのであるが、


「あれ……? これって、見たことあるぞ」


 そこに置かれている物が、かつてリディアの海岸で見つけた自分の聖遺物、天の沼矛のような気がして、目をパチクリさせた。


 ひと目間違いないように思われたが、いまいち確信できない。鑑定魔法を発動すれば分かるはずだが、さっきのあれのせいで躊躇われた。代わりに、手にとったそれをためつすがめつ眺めていると……


「社長!」


 背後の入り口の方からリーゼロッテの大声が聞こえてきて、


「社長! ああ……良かった。ご無事でしたか」

「うわ、ビックリした。なんかあったの?」


 但馬が尋ねると、彼女はこくりと頷いて、


「先程、いきなり私の持つハバキリソードがサラサラと砂のように崩れだして……」


 彼女にとって命の次に大切な父親の形見を突然失って、そのあり得ない状況に暫く放心していたが、すぐに但馬の身に何かあったのではないかと思い至り、こうしてリリィに頼んで中に入ってきたそうである。その言葉通り、彼女の背後にはリリィが続いている。


 それにしても何故急に聖遺物が壊れたのかと訝しがるリーゼロッテに対し、但馬は逆に合点がいった。恐らく、聖遺物の一つ一つは世界樹に管理されたユニークアイテムであり、この世に一つしか存在が許されないのだろう。ところが、但馬がこうして二本目を創りだしてしまったことで、リーゼロッテの持つ方が壊されたのではないか。


 思えば、但馬は彼女の父親である勇者と同じ聖遺物をリディアの海岸で創りだしたわけだが、それじゃあ、勇者の持っていた武器はどこへいったのだろうか。憶測ではあるが、きっと彼が死んだ後も聖遺物だけはどこかに残されていたのだろうが、但馬が木の槍を創りだした時点でそれは消えたのではなかろうか。


「チェンジフォーム……だったっけか」


 但馬が手にした聖遺物を掲げて呟くと、それがカタカタと震えだし、光を発しながら形を変えて、お馴染みの小太刀の形態へと変形した。こうして変形するところを見ても、これは以前但馬が創りだしたものと、全く同じもののようである。


 但馬はぽかんとしているメイドにそれを押し付けると、腕を組んで考えこんだ。


 先ほど見た通り、本来なら聖遺物はこの世界樹で、あんなSFチックな方法で製造されるはずなのだ。ところが、但馬はそれを何もないリディアの海岸で、拾った流木を材料に創りだしてしまった。どうしてあんなことが出来たのだろうか。


 あの近辺には世界樹もなく、取り立てて不思議な現象の頻発する地域でもない。今では鉄道が通っていて、毎日のように人が往来しているはずだ。


 思い起こされるのはあのイルカであるが……確か、あいつが作り方を教えてくれたのだ。いや、まあ、その方法は『クリエイトアイテム』と叫ぶだけなんて、魔法みたいな方法だったわけだが……本当にあれはなんだったのだ?


「あ~……わっけわかんね」


 但馬はバリバリと後頭部をかきむしると、頭を振った。何も分からないということは、まだ情報が出揃っていないということだろう。大体、まだ調べてない部屋があるではないか。


「何を騒いでおったか余にはわからぬが……何事も無かったのであれば幸いであったの。それで勇者よ。世界樹は十分に調べ尽くせたのかのう」

「いや、さっき右の部屋の方は見てきたけど、左の方はまだこれから」

「ほう……」


 但馬がそう言及すると、リリィはにやりと含みのある笑みを見せた。対してリーゼロッテは首を傾げて、


「右の部屋? ……左? どういうことです? 私の目には、ここは行き止まりのように見えますが」

「まあ、そうだろうね」


 但馬だって謎のインターフェイスが起動していなければ、彼女と同じようにここが行き止まりだと勘違いしたはずだ。それくらい、ここは何もないし、壁はツルツルに磨かれていて、そこに扉があるなどとは思いつきもしないのだ。


「しかし、あるんだよ。俺の目にはそこに扉が示されていて、多分、リリィ様もそうなんだろう」


 すると彼女は悠然と頷き、


「いかにも。余は目が見えぬのでな、見えると言うわけではないが、あっちの方に何かがあるということだけは、なんとなくわかるのじゃ」


 そう言ってリリィが指差した先は、但馬に見えている光の扉と同じ方向だった。間違いなく、但馬とリリィは、同じ情報を共有しているようだ。


 なんでこんなことが二人にだけ分かるのか、それは分からないが……これを可能にしているのは、おそらく世界樹のセキュリティ機能なのだろう。


 但馬は尋ねた。


「それじゃ、リリィ様はこの先に何かあるのか、知ってるってわけだ」

「いいや、余は知らぬ」


 しかし、返ってきた答えは意外なものだった。そこに扉があると分かっているのに、その先に何があるのかが分からない。普通に考えれば、彼女には開けられなかったということだろうが、


「そうではない。余は目が見えぬので、周りに何らかの手がかりが……例えば、人間や動物の気配がない限り、どこに何があるか全く分からないのじゃ。本当は人工物の輪郭くらいなら辛うじてわかるのじゃが、何故かこの中ではそれがわからぬ」


 但馬がさっき食らったような、セキュリティ上の制限のせいだろうか、


「故にこの先へ進むとなれば介助者が必要なのじゃが、しかし、その先へ行こうとしても、余以外の者は扉をくぐることが出来ぬのじゃ」


 そのせいで、仮に一人で扉の向こう側に行っても、そこに何があるか分からないし、満足に歩くことさえ出来ないようである。


 尤も、一人で行ってもわからないだけで、この先へは行ったこともあるし、最奥に到達したこともあるそうで、彼女はその時の記憶を懐かしそうに語ってくれた。


「それは、勇者が余を導いてくれた時じゃ。彼の人が、何かを探して世界樹を探索しに来た際、まだ人間らしい意識が芽生えていなかった頃の余を連れて、最奥まで導いてくれた。そして、その場所で余をギュッと抱きしめ、自分と同じ能力を持っていることを教えてくれたのじゃ。以来、余は目は見えぬが、普通の子どもと同じように生活することが出来るようになった」

「ああ……そう言えば、そんな話もあったなあ」


 その縁があって、リーゼロッテは皇家に預けられリリィの従者になり、リディア・メディア戦争が終わった時は、世界樹のことを調べるために、わざわざ危険なヴィクトリアまで足を運んでくれたわけである。


「それじゃあ、この先に人が入るのは……」

「余が勇者と共に訪れた時以来、およそ16年ぶりじゃ」

「……そういうことか」


 道理で、皇王がわざわざ但馬を指名してまで、自由に内部見学を許可したわけだ。


 彼らは、この先にあるものが何かを知りたいのだろう。きっと、但馬がここから出た後、質問攻めにされるに違いない……だったら、あまり向こうの思惑に乗せられないほうがいいのではないだろうか……


 但馬はブルブルと頭を振った。


 それで、千載一遇のチャンスを逃すのはバカバカしすぎる。知りたいというなら教えてやればいいだろう。どうしてケチケチしなきゃならないのか……だからさっさと中を調べてしまおう。そう考えた但馬はリリィに腕を伸ばし、


「リリィ様も一緒に行くかい?」


 と尋ねると、リリィは、ほうっとため息を吐き、


「よいのか? お主だけの秘密にしておけば良いのに」

「いいよいいよ。そもそも勇者と一緒に入ったことあんでしょ。ここで断ったところで、あとでまた頼むつもりなら二度手間になるし」

「かなわぬのう……確かにその通りじゃ。余はこの先が気になる」


 それから但馬はリーゼロッテも手招きし、


「丁度いいから、あんたも一緒にいこうぜ」

「私もでございますか? ですが、私はこの先に扉など、見えていないのですよ?」


 目を丸くして素っ頓狂な声を上げてる彼女に、


「そんなこといったら、この施設の入口も見えてなかったんでしょ。でもこうしてここまでは入ることが出来ている。それに……あんたは自覚ないんだろうけど、実はあんたって相当素質が高いんだよ。さすが勇者の娘ってだけある。だから試してみようぜ」

「はあ……それでしたら」


 但馬がそう言うと、リーゼロッテは少々顔を赤らめて体をもじもじとくねらせた。滅多に褒められないから、素質があると言われて嬉しかったのだろう。三十路のくせに気持ち悪い。


 但馬は彼女を先導すると、奥へと向かう扉の前に立たせた。リリィは自分以外は入れなかったと言っていたが、ここにも入り口と同じようなタッチパネルのようなものがあるのだ。もしかしたら同じ方法で入れるかも知れない。


 そう思い、但馬はリーゼロッテの手を取って、彼女の手をタッチパネルの上にかざしてみると……


「……え? ……あれれ!?」


 彼女はその先に何かを見出し、驚愕の表情を浮かべた。


 おそらく、但馬の予想が正しくて、彼女もこの先にすすめるようになったために、目の前の扉の先が見えるようになったのだろう。但馬も彼女に続いてタッチパネルに手を乗せようとした時……


「驚きました……ここは……この場所は……私はよく知ってますよ?」


 リーゼロッテが戸惑うようにそう呟くものだから……但馬は驚いて彼女の肩越しに視線を向けた。


 そこには、彼自身もこれまで何度も見たことのある、馴染み深い場所が広がっていた。


 メディアの世界樹。その世界樹の入口から入ってすぐの廊下と、全く同じような施設がその先には続いていたのである。


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