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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第五章
181/398

遠き山に日は落ちて①

 ハリチ港に停泊していた西海会社の探検船団は、急遽慌ただしい日程で、但馬とブリジットの二人を乗せ、首都ローデポリスへと帰還することになった。


 本来ならば、新大陸発見の報せを持って帰ったそれは、国民から盛大に出迎えられるはずであったが、到着した港に人影は殆ど無かった。目につく商店はどこもかしこも休業で、動いてるのは公共設備くらいのものだ。海岸線にそって建てられた発電所の煙突から、黒煙が吹き上げられて空を薄っすらと黒く染めていた。それがこの国の将来の雲行きを表しているようで、なんとも不吉なものに思えた。


 二人を乗せた馬車がインペリアルタワーの前に差し掛かっても、公園には人っ子一人おらず、タワーは平日にも関わらず入り口が閉鎖されており、時折、職員の影がちらほら見える他には人影は見当たらなかった。


 西区の交差点から中央へ向かうメインストリートに入ると、いつもなら喧騒に満ちているその通りもどこか寂しげに見え、疎らに道行く人々が馬車の中のブリジットに気づくと、まるで縋り付くような視線を投げて手を振り、それを見咎めた憲兵隊に怒られていた。


 ピリピリとした雰囲気に、見ているだけのこっちまで緊張を強いられているようだと但馬は思った。


 詳しい話を聞かされずに、とにかく急いで戻ってきた二人は、港から王宮へと向かう馬車の中でこれまでの経緯を伝えられた。


 前日、但馬たちが提督に報告を受けている頃、遠い首都のインペリアルタワーの階段を上っていた皇帝が滑落した。日々、15階建てのビルの最上階へ通勤していた彼は、このところ歳からくる身体への負担でその登り降りがキツくなり、最近では途中で休憩を挟むようになっていた。


 その休憩中、おつきの近衛兵がちょっと目を離した隙に、一人で先に登ろうとした彼が、階段から転げ落ちて頭を打ったらしい。なんでそうしたのかはわからない。彼が休憩をする間、階段が封鎖された職員の仕事に影響がでるのを嫌ったのもあるだろうし、階段の途中でボンヤリと休憩してるのが年寄り臭くて恥ずかしかったのもあるだろう。


 ころんだ拍子に頭を打った皇帝は意識を失い、駆けつけたヒーラーが魔法をかけたが、傷は治っても意識は戻らなかった。それで急いでブリジットに連絡を入れたようだが……街の暗い雰囲気に不安に思っていると、


「幸い、命に別状もなく、姫様があちらを発ってから暫くして、陛下は意識を取り戻したのですが……」

「ほっ……なんだ。良かった」


 意識不明の皇帝をタワーの廊下に寝かせているわけにも行かず、上階の私室へ連れていくか王宮へ戻すか検討した大臣は後者を選んだ。しかし、その頃には皇帝の一大事を知った国民がタワーの入り口に詰めかけており、身動きが取れなくなった彼らは戒厳令を敷いて、国民を家に返したらしい。


 それで今日、国内のあらゆる職場が臨時休業になっていて、街はご覧の有様のようである。ブリジットが帰ってきたら、またパニックになるかも知れないから、出来るだけ家に居るように通達が出されているそうだ。


 そのお陰でガラガラのメインストリートは、いつもなら凄く時間のかかる場所だったが、殆ど渋滞も無く、王宮まであっという間についた。途中、普段であれば活気に満ち溢れた商店街が、どこもかしこも真っ暗に入り口を閉ざされている姿はなんとも不気味だった。


 但馬たちは王宮へ到着すると、一も二もなく皇帝の寝室へと急いだ。普通なら正装か、せめてマントを付けねば王宮に入れないのであるが、緊急事態であったので何も言われなかった。


 そのまま逸るブリジットの後をついていくと、やがて奥の皇帝の私室の前に大臣たちが居り、


「おお! 姫様! 逓信卿! お待ちしておりましたぞ」

「具合はどうです? 意識は取り戻したと先ほど聞きましたが」

「ええ、昨日姫をお呼び立てした後でしたが、意識を取り戻されました。起きてから暫くは自分の身に何が起きたか分からずボンヤリしておられましたが、今はもう、受け答えもしっかりしておいでで、早く公務に戻りたいとおっしゃっておいでです」


 但馬はほっと胸をなでおろすと、


「なんだ……でも暫くは安静にしといた方が良いですよ? 頭って見た目よりもダメージ大きかったりしますんで」

「もちろんですとも。我々も陛下がご無理をなさらぬように、口を酸っぱくして言っているのですが、本人は元気だと言って聞いていただけず」

「ありゃまあ」

「ブリジット姫様からおっしゃっていただければ、きっと聞き分けていただけるでしょう。お願いできますかな?」

「わかりました」


 そう言うと彼女は皇帝の私室の扉をノックした。


 中から返事があり、皇帝直属の侍従が音もなく扉を左右に開き、恭しく頭を下げた。まだ旅装のままのブリジットが慣れた様子で室内に足を踏み入れ、二三歩入ったところで振り返り、但馬に向かって手招きした。正装ではないので躊躇したが、周囲を見ても誰も気にした様子がないので、彼女の後に続いて但馬も一緒に室内へ入った。


 皇帝は寝室で天蓋付きのベッドの上に腰掛けていた。フカフカの枕に腰を埋め、手には湯のみを持ってズズズッと退屈そうに紅茶をすすっていた。彼はやってきたブリジットをちらりと見てから、すねた感じの顔を見せて、


「なんじゃ、お主もあいつらの応援で呼ばれたのか? もう平気だと言うのに、どいつもこいつも儂を年寄り扱いしおって」

「陛下、お見舞いに上がりました。ご無事で良かった……そんなことおっしゃらずに、ご自愛くださいよ」

「まったく、ほんのちょっと転んだだけじゃと言うのに大げさにしおって……儂が女子(おなご)には弱いと思って、お主まで呼び寄せるとはのう。煩わせてすまんな。最近は、仕事も忙しいじゃろうに」

「いえ、どちらにしろ、今日明日にもローデポリスへ帰還するところでしたので……」


 そのように伝えてから出て行ったのにな……と言った感じに、ブリジットは困った表情を但馬に投げかけた。皇帝はその視線の先に但馬が居るのに気づくと、


「おお! 但馬殿。お主もわざわざ遠いところをご苦労じゃったな、使用人に言っておくから、たんと疲れを癒やしてくれ……して、西はどんな様子じゃったかの? ヴィクトリアは一緒に帰っとらんのか」


 但馬も少し違和感を感じつつ、


「いえ、陛下。あっちとこっちを行ったり来たりなんて、いつものことですし……西、ですか……西海会社の話はまた後でブリジットからお聞きくださいよ。きっと満足いく結果が待ってると思いますよ」

「ほう、左様か」

「ヴィクトリアは……一度あちらまで行きましたが、変わりありませんね。亜人の子たちもみんな元気そうで」

「ふむ? ヴィクトリアを置いてきてまで駆けつけてくれたのか? それは悪いことをしたのう。もう平気じゃから、明日にでも彼女を迎えに戻るがよろしかろう……あいや、その前に西での出来事を教えてほしいのう……これ、メアリー。ぼーっと、突っ立っておらんで、勇者殿に茶でも出さんか」

「……勇者?」


 但馬とブリジットは顔を見合わせた。


「メアリー、何をしておるか……? そう言えば、ハウルはどうした。みながこうして駆けつけてくれたと言うのに、まったくあいつと来たら……」


 皇帝は、記憶が混同していた。

 

***************************** 


 ローデポリスの自宅は埃が溜まっていた。前回とは違い、突発的に帰ってきたため、お袋さんにも知らせてなかったからだ。シモンの両親は戒厳令の敷かれたせいで家にいるのだろうが、彼らの家には電話がないので連絡の取りようが無かった。取り敢えず、大臣たちと話し合って、明日にでも訪ねて行くつもりだが、突然、帰ってきたことを知ったら彼らもビックリするだろう。いや、皇帝の一大事なのだから、当然と思うだろうか。


 対して、ハリチの方は自宅に電話があるので、


「こちらは特に変わったことはございません」

「なら良かった……アーニャちゃんは? 来る前、ちょっと元気なかったんだけど」

「……? いえ、特には。いつも通りでございますね」


 向こうの方はリーゼロッテに任せて出てきたのだが、最後に彼女らと別れる時の、アナスタシアの様子が気にかかった。


 ハンググライダーで飛んでいってしまったアナスタシアは、長いフライトの後に海岸にほど近い海に不時着したのだが、よほど怖かったのか、見つけた時の彼女はブルブル震えて泣いていた。


 だから怒るわけにも行かずに、とにかく無事でよかったと諭していたところ……街の方からメイドがやってきて、急を告げた。


 皇帝の一大事とあっては悠長にしていられるわけもなく、但馬はすぐに首都に帰還すると言うと、アナスタシアをリーゼロッテに任せて港へ走ろうとした。


 しかし、まだ落ち着きを取り戻していなかったアナスタシアが彼の服の裾をぎゅっと握るので、


「アーニャちゃん、ごめん。また帰ったら話聞くから」


 と、殆ど置き去りにするようにその場を後にした。


 そのことが気にかかっていたのであるが……メイドに言わせると、もうそんなことも無いらしい。その時のこともあったから、暫くハンググライダーはお預けかと思えば、それもなく、今日も夕方になると4人で高原に集まって遊んでいたそうだ。


「ふーん、そっか」

「そちらの方はいかがでしたか? 皇帝陛下は……」

「ああ、うん……」


 皇帝はかなり記憶が混同していた。帰ってきたブリジットのことを、彼女の母親だと思い込み、そして但馬のことは勇者と勘違いしていたようだ。


 息子夫婦が亡くなっていることはおろか、孫のことも忘れてるようで、異変を感じた後にかなり根気よく説明したところで、ようやくブリジットのことを思い出した。そしてブリジットの事を思い出した瞬間、その直前までのことを忘れていた。


 主治医がやってきて彼の様子を確かめていたが、なにしろヒール魔法のあるような世界だから、見た目は健常そのものであり、また、皇帝ほど長生きするような人も中々居ないので、結局何も分からなかった。


 ただ、まあ、但馬にはなんとなく分かった。皇帝はかなりの高齢であったが、どうやら転んで頭を打った拍子に一気にボケが進んだらしい。自分の祖父母もそうだった。歳を取ると、健康な人でも案外、記憶が曖昧になってくる。それが何かの拍子に一気に進行するのだ。


「……では、陛下はお治りにならないのですか??」

「わからない。ブリジットのことを思い出してからは、またいつものカクシャクとした陛下に戻っていたけど……一晩寝たらまたわからん。そんなわけで、俺は暫く、こっちから動けないよ。大臣たちと対応を協議しなきゃだし、陛下の仕事も肩代わりしなきゃならない」


 皇帝は普段、主に訴訟を受け持っていたわけだが、これは恐らくブリジットが受け継ぐことになるだろう。他の決裁事項は当面は後回しだ。


「かしこまりました……こちらのことはお任せください。と言いたいところですけど、困ったら本社のフレデリックさんにお聞きします」

「うん、まあ、そうして」

「アナスタシア様とリオン様はそちらへお送りした方が良いでしょうか?」

「いや……」


 アナスタシアは工場の仕事があるし、リオンもハンググライダー制作が楽しいようだった。こちらへ戻ったら、また暫く二人は家の中に缶詰になってしまうだろう。それも可哀想だ。


「そっちで普段通りに生活しててくれれば、その方がいいよ。リーゼロッテさん、あの子たちのことお願いできる?」


 但馬はそう言うと電話を切った。


「……ティレニアとの国交回復なんて、とても言い出せなくなっちまったな」


 但馬は独りごちるようにそう言うと、エリオスを呼びに部屋から出て行った。エリオスを、身重のランと離れ離れにしてしまうのが申し訳なかった。出来る限り早く領地に戻ろう。


 ……この時点ではまだ、皇帝の具合も良くなるだろうし、きっとすぐにハリチへ帰れると思っていた。

 

******************************

 

 しかし、皇帝の容体はあまり良くならなかった。


 一度休み始めたら、今まで頑張って抑えてきた疲れがどっと押し寄せてきたとでも言うのだろうか、王宮で養生する彼は日に日に歳相応に老けていった。毎朝、体を起こすのが辛いらしく、今となってはお付の人に起こしてもらわなければ、ベッドから出ることも出来なくなっていた。


 そんな中、更に状況を悪化させるかの如く、皇帝が風邪を引いた。どうもクーラーが原因らしい。


 王宮は全館に空調が完備されており、この熱帯地方の中にあって、常に快適な温度に保たれていた。だが、ファジーだのニューロだのと言った技術もない昔ながらの冷風機ではそれも限界で、場所によっては温度差にむらがあった。それが弱っている皇帝の体に直撃した。


 それに気づいてクーラーを止めた時は、もう後の祭りで、肺炎とまではいかないが、それに近いほど症状が悪化しており、彼が死ぬのではないかとブリジットが覚悟をするくらいに生死をさまよった挙句、どうにか一命を取り留めた彼は、それ以来、仕事に復帰するとは言わなくなった。


 言いたくても言えなかった。記憶はますます混濁し、体は思うように動かなかった。


 長年の付き合いであった腰痛も悪化し、空調もなく、昔ながらの暑さの中で、ベッドで辛そうに体を横たえる彼を見ていると、ブリジットは悲しくて悲しくて、何も言えなくなった。彼は度々ブリジットのことを、彼女の母親と勘違いし、様々な注文をつけたが、彼女はもうそれを否定することはしなかった。


 調子がいい時もある。そう言う時の彼は記憶を混同することもなく、寧ろ、自分がそう言う状況に置かれていることを深く理解していた。そして焦るかのように但馬達大臣を呼び出し、病床にありながら、自分が不在の時の報告を求め、帝国の行く末について様々な意見を述べた。


 そしていつも決まって最後に、


「儂もそろそろお迎えが近いかも知れんのう……」


 などと自虐的に笑い、大臣たちを泣かせるのだ。


 皇帝の仕事を肩代わりするようになると、但馬達大臣は仕事に忙殺された。今まで、全ての決定権は皇帝にあったが、今は4人の大臣で追認しあうしか無く、どうしても仕事が滞りがちになるのだ。


 そして4人の大臣が集まると決まって容体の話になり、彼らは但馬に話を聞いては、いつもしんみりするのだ。


 この頃になると但馬は家には帰らず、毎日王宮に滞在していた。


 ブリジットを支えると言う意味もあったが、勇者と混同する皇帝に、但馬が呼ばれることが多かったからだ。彼は勇者の話をしていると若いころを思い出して元気になったが、何かの拍子に自分が年をとったことを思い出すと、途端に意気消沈した。


 やがてぼんやりしている日が多くなり、復帰はもう絶望的のように思えた。彼は一人ずつだと、ブリジットと但馬を認識出来ないようだったが、二人が同時に見舞いに来ると比較的しっかりしていた。


 そしてまた月日が流れ……


 カンディア公爵ウルフが見舞いに来ると、彼は祖父の様子を見てから、二人に早く結婚しろとせっついた。それで皇帝が心安らげるのならば、安いものではないかというのである。


 だが、もちろん、このタイミングでそんなことは出来ないだろう。今、彼女と結婚をすると、但馬が実権を握るのでは? と勘ぐる連中が、ウルフを担いで大暴れしかねない。


 彼は彼で、大陸に睨みを利かせるアナトリアの盾として、国民に絶大な人気があるのだ。


「面倒くさいものだな……俺は今の生活に満足してるんだ。だがまあ確かに、ブリジットは少し頼りないからな、国民が心配するのも分かる。いっそ、おまえが皇帝になってはどうか」

「公爵閣下!」


 ウルフがおどけた調子で言うと、彼の後ろに付き従っていた若い連中が色めきだった。以前、カンディアに遊びに行った際にはこんな連中引き連れていなかったのだが……彼もまた、暫く見ないうちにいろいろあったらしい。


 思えば、フリジアを落とし、南部諸侯を従えているのも、エトルリア西部で戦線を構築しているのも彼である。前線では軍閥が出来上がり、南部連合からも人材が集まってきているのだろう。


 その中にはかつて但馬の研究所で働いていた者たちも見えた。


 彼らは敵意を隠さない目で但馬を睨んだ。こんな時に威嚇しやがって殴ってやりたかったが、こんな時だからこそ殴れなかった。但馬はため息を吐きながら言った。


「カンディアについて、陛下はなんて?」

「戦争はもうやめろと言っていた」


 ウルフを呼び出したのは皇帝だった。ウルフはアナトリア軍を統括する元帥としてカンディアにいる以上、戦争中の今、そこから離れるわけにはいかない。それで、見舞いに来たくとも来れなかったのであるが……


 皇帝直々の呼び出しとあっては関係ない。彼は後を帝国大将マーセルに任せると、今日、こうしてローデポリスまで戻ってきた。


「陛下は、これ以上の戦争を望んでいないそうだ。前線を押し付けてしまったが、頃合いを見計らってやめるようにとおっしゃって居られた」

「……陛下は、そのためにあんたのこと呼び戻したの?」

「どうもそうらしいな」


 ウルフは顔をしかめて眉根を寄せた。糸のように狭めたその瞳が、ほんのりと赤く見える。


「本来、リディアの敵はエルフだったはずだ。亜人も、エトルリア人も、どっちも最初は味方だった。どうしてこれと仲良く出来ないと言うのだろうか。つい、実家のバカどもに腹を立ててしまったが、それを孫の代にまで背負わせたくない……だそうだ」

「……そうか」

「……(ブリジット)とエトルリア皇女は、本当なら友達同士だったのだ。俺だって争わせたくはないが……」

「カンディア公爵!」


 二人が立ち話をしていると、王宮の侍従が忙しなくやってきた。彼はウルフに耳打ちすると、その場で睨みを利かせている若い連中におっかなびっくり頭を下げて去っていった。


 以前までの但馬だったら、同じようにビビっていただろうが……但馬はウルフに尋ねた。


「なんだって?」

「……南部諸侯がガラデア平原の国境を侵犯されたらしい。俺の留守を狙われたようだな」


 彼はため息をつくと自虐的に笑い、


「始めたのは陛下……祖父かも知れないが、広げたのは孫の俺だ。俺が始末をつける。次に帰ってきた時、戦争が終わったと胸を張って報告できるように努力しよう」


 そう言うと、彼は若い部下たちを引き連れて颯爽と去っていった。王宮に軍靴の音が鳴り響く。時に勇ましく聞こえるそれは、この時はただ悲壮なだけだった。


 そんな音を響かせて去っていくウルフに、皇帝は戦争をやめろと言ったらしい。


 そして……それが、彼への遺言となったのである。

 

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