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玉葱とクラリオン  作者: 水月一人
第五章
167/398

NEW GAME! ⑤

 翌朝、但馬は脳内で道路工事でもやってるんじゃないかと言わんばかりの、酷い二日酔いに苛まれながら目が覚めた。目覚めるやすかさず、主人が久々にやらかしたと聞いて呼び出されたエリオスにしこたま怒られた。


 どうも昨晩、彼はブリジットから逃げるように部屋から飛び出して、全力疾走したせいで気分が悪くなり、宮殿から出て庭に差し掛かったところでゲロを吐いてぶっ倒れたそうである。


 何やってんだこいつ……と呆れる警護の近衛兵に引きずられて部屋にポイッされた後、朝まで意識がぶっ飛んでいたようである。殆ど眠った気がしない。頭がガンガンする。


「社長、君は一体何をやってるんだ! 王宮では粗相がないようにと、普段から何度も何度も口を酸っぱくして言ってるだろう!!」

「あ゛ああ゛あ~~~……やめてやめてやめて、頭に響くから……いや、俺もこんな酔っ払うほど飲んだ覚えはないんだが……食前酒と食後と、陛下の晩酌と、ブリジットと、ちゃんぽんしまくったから悪酔いしたんだろうな。醸造酒恐るべし」

「君が大変なことになってると、夜中に呼び出されて飛んできたら、情けなくて泣きたくなったぞ。そろそろ君もいい年なんだから、落ち着いたらどうなんだ」

「ちぇっ、うっせーな……反省してま~す」


 但馬はエリオスから水を受け取ると、ごくごくと飲み干した。アルコールのせいで大分のどが渇いていたのだろう、とても美味い。


 酔っぱらいが起き出してきたので応接の侍女が朝食をどうするかと尋ねてきたが、エリオスもいるので断った。本当なら朝食をブリジットと一緒に取るつもりだったが、昨日の今日でなんとなく顔を合わせづらい。侍女には鉄道の起工式に出るから、あとで会いましょうと伝えてもらうことにして、彼はエリオスと二人で王宮を出た。


「良かったのか? 今日はどうせその視察しかないのだから、後でゆっくり姫と一緒に出てくれば良かったのに」

「いいのいいの。ちょっと顔が合わせづらいってのもあったし」

「……何かやったのか? 珍しく酔っ払ったりして」


 やけ酒でもしたとでも思ったのだろうか。心配してエリオスが尋ねてきた。もちろんそんなことはこれっぽっちもないのだが、かと言って理由も言い出しづらい。


 そうこうしているうちに王宮周辺の高級住宅街を離れて中央区の商店街へと入ってきた。ここはアナスタシアが勤務していたカフェがあり、但馬もさんざん入り浸っていたから従業員の覚えもよく、彼が通りに差し掛かると遠目に気づいてすかさず挨拶してきた。


 にこやかにお辞儀するメイドさんたちに会釈しながら通り過ぎると、今や国内でも最大の交通量を誇るメインストリートへと差し掛かった。いつの間にか合流したエリオスの部下の護衛たちが、散開しておかしな者が近づいてこないか目を光らせている。まるで忍者みたいだ。そんな彼らを尻目に、但馬とエリオスは行き交う馬車をやり過ごし、通りを渡るタイミングを計りながらぼんやりと道に立ち尽くしていた。


 ふと思う……そう言えば、エリオスは今となっては妻帯者で、来年には子供も生まれるんだよな……


「そういやエリオスさんさあ……ランさんとはどんなタイミングで致したのよ。いや、カンディアかフリジアでだろうけど」

「……なんだ、藪から棒に。そんな下世話な質問をされても答えるつもりはないぞ」

「いや、割りと真面目なんだけど……」

「うん……? 本当にどうしたんだ? 姫と何かあったのか」

「あったと言うか、無かったと言うか……これからあると言うか……うーん」


 但馬はちらりと横目で盗み見てから、


「エリオスさんさあ。ランさんとやってる時、あの羅刹みたいな顔を見て恐ろしくなったりしなかった? あ、いま俺ホトケとやってる。こう、袋をかぶせてやれば丁度いいのに的な」

「……残念だな。君は人の身体的特徴をあげつらって、悪口を言うようなやつだとは思わなかったぞ」

「うっ……すみません。反省します」

「一体何があったんだ。観念して話してみろ」

「はあ……実は……」


 但馬はブリジットと二人きりでいい雰囲気になったこと、なんとか劣情を抑えようとして胸を凝視したこと、それを勘違いされて触ってもいいよ的なことを言われたこと、そしてそんな邪なことを考えてたわけじゃないのに勘違いされた挙句そのことについて何も言えなくなって打ちのめされたことをエリオスに告げた。


「分かった、もう何も言うな。聞くんじゃなかった……」


 即答である。


「ムカッ、自分が言えって言ったんじゃん!」

「しかしなあ……まさか姫の胸の大きさが自分の好みじゃないから将来に不安があるなどと考えてるなんて、思いもしなかったぞ。バカバカしくて泣きたくなる」

「泣きたいのはこっちだい……事情が事情だけに、俺、今までまともに考えてこなかったけど、昨日のあれで打ちのめされたんだよ……今後さ、もしもブリジットとそういうことになった時、ちゃんと最後まで出来るのか? って言うと、実は結構怪しいんじゃないかって。やってる最中に、あのボインボインがボヨンボヨンとしてるのを見て、どうしようもなく冷静になる自分が見えるんだ……ブリジットが、ねえ、どうしてエレクチオンしないのよーとか叫んでるんだ……由々しき事態だとは思わないか」


 そうだった、但馬と言う男は元々こんな奴だった。エリオスは露骨に視線を逸らした。


 しまったなあ……彼は思った。こういう時のために、エリックやマイケルのような奴らが必要なのだと……護衛としては役に立たないからクビにしてしまったのだが、今は無性に彼らが頼もしく思える。


「ねえ、聞いてるの?」

「い、いや……」

「別にいいよ? 俺が出来ないならそれはそれで、自業自得だけど。ブリジットは将来、世継ぎ問題とかあるわけじゃない。そんな時、俺が不能だからって彼女に迷惑をかけることになったらどうするの」

「そしたら、袋でもかぶせてやればいいじゃないか」

「ああ! ひっでえの。自分は他人の身体的特徴あげつらって云々言ったくせに、俺と同じようなこと返しやがって。もっと真面目に考えてよね!?」

「そうは言ってもなあ……普通、女性の胸が大きいと言うことは、嬉しいことなんじゃないのか? まさか君がそんな変態的性癖を持ってるなんて思いも寄らず、戸惑っているというか寧ろ納得してしまうのが悲しくもあるが……」

「そうだろ?」


 どうしてそこで誇らしげに胸を張るんだろうか。エリオスは頭がズキズキしてきた。とにかく、この馬鹿げた会話をやめたくて仕方ない。


「しかし、そう言われても俺にはお手上げだ。俺は普通に胸の大きな女性の方が好きだからな。社長の感覚が分からないから、アドバイスのしようもない」

「どうして分からないのかねえ……みんな貧乳だ無乳だって言うけどさ、そこには男の胸板とは違う何かがあるんだよ」

「そうだな。君の言うことは分かる。だからこの話はここまでにしよう」

「エリオスさん、露骨に会話を切り上げようとしてるよな」

「ん……そうか?」

「別にいいよ? 俺も相談する相手を間違えてるなと思ってはいるから……でも、こんなこと相談できる相手なんて、エリオスさんの他には居ないんだよな」

「そんなことは無いだろう。領地へ戻ったら、エリックやマイケルに相談すればいい」

「エリオスさんはバカだなあ。あいつらには相談出来るわけないじゃん。露骨に煙たがられるか、からかわれるのがオチだよ。あいつらからしたら、俺たちみたいなリア充は敵だもん。だからこんなの相談出来るの、同じリア充のエリオスさんしか居ないんだよ」

「そうなのか……うーん」


 そんな風に言われるとなんだか頼りにされてるような気がして悪い気はしない。正直、こんな話は自分には荷が重いと思ったが、もう少し真面目に聞いてやろうかと、エリオスは但馬に言おうとしたら……


「あ、親父さんだ。おーい! 親父さ~ん!!」


 通りの向こうから丁度出勤途中の親父さんがやって来た。彼は但馬とエリオスの姿を見つけると、手を振りながらやって来て、


「やあ、二人共、珍しいところで会ったな。ここで会うってことは、昨日は王宮に泊まったのかい?」

「そうなんすよ。陛下に晩餐に呼ばれて……それでさ~、聞いてよ~、親父さん。昨日、ブリジットといい雰囲気になったらさ?」


 ポカリ! っと、但馬の頭にげんこつが落ちた。


 激痛で涙目になった但馬が振り返って抗議するも、エリオスは不機嫌そうな顔をしてまともに取り合ってくれなかった。


**************************

 

 一旦家に帰るつもりだった但馬達は、親父さんと出会ったことで行き先を工場に変えた。今日はこの後、鉄道の起工式で彼らと合流するはずだったからだ。親父さんは工場にいく道すがら、但馬に昨日あった馬鹿馬鹿しい話を聞かされて、呆れながらもアドバイスしてくれた。


「ふ~ん、社長はそんなのが好きだったのか。そうかあ……まあ、人の好みは千差万別だしな。大きいおっぱいが好きな者も居れば、小さいおっぱいが好きな人が居ても不思議ではないかも知れない」

「もしかしたら貧乳好きが居るように、小さいおちんちん好きな女性もいるかも知れない」

「……そう考えると夢が広がるな」

「そうだろ?」


 但馬と親父さんは二人でウッシッシと笑っている。エリオスはもうどうしていいのか分からなくなって、無意味に周囲を警戒して仕事してるアピールをしていた。


「ブリジットのことは凄く可愛いと思うんだけど……あのムネムネがマゴついてるのを見ると、どうにも冷静沈着なる第二の人格が顔を覗かせてしまうんです」

「でも、可愛いとは思ってるんだな?」

「そりゃあ、もちろん」

「ならまあ、社長の考え過ぎだと思うよ。君はその……特殊性癖だとは思うが、そうは言っても本当に好きな相手とそういうことになったのなら、普通に上手くいくだろう、普通に」

「そうかなあ……」

「そうだよ~。女の子には、男を変えてしまえる力があるのさ。君もその内、そのことに気づく。俺もまだまだ子供だったなって」

「そっかあ……」

「性癖なんて物よりも、好きって気持ちの方が強いのさ。なんなら、こう考えても良い。大きかろうが小さかろうが……結局、攻めるのは乳首だ」


 但馬は脳天をガツンとやられた思いがした。


「そ、そうか……攻めるのは乳首……攻めるのは、乳首なんだ!」


 何かを悟ったかのような表情をしながら、アホな言葉をつぶやいている主人を尻目に、同じく脳天をガツンとやられたような気がしながらエリオスが親父さんに尋ねた。


「……社長のこの手の話についてけるとは、あなたも案外若いですな」

「ん? そうかい? ……まあ、工場は男所帯だし、若いのが多いからなあ。一緒に酒を飲めば、自然とこういった話になるから」

「ああ……なるほど」


 そう言えば、工場の若い連中を炊きつけて、エロ写真集なんてものを作ったこともあった。そう考えるとアホばっかだな、この会社。本当に大丈夫なのだろうか……エリオスは少々心配になりつつも、


「なんにせよ助かりました。社長は普段は真面目なくせに、何かあるとスイッチが入ったようにおかしなことをやり始める。相談相手が必要なんですが、俺では力不足で殴って修正するくらいしか出来ない」

「いやあ、エリオス君がそんな萎縮することはないよ。俺だって、そうだよ。あと、あんまりポンポン殴らないでくれよ、あれでも我が社のブレインなんだから」


 そんな具合に3人で和気あいあいと会話しながら工場へとたどり着くと、工場の外には数人の工員たちがそわそわとしながら立っていた。彼らはどうやら親父さんの到着を待ちわびていたようで、但馬たちと一緒に歩いてくる彼を見つけると、息せき切って駆けつけてきて、


「親方あ! 大変です!」


 と悲鳴のような声を上げた。


 何かトラブルだろうか。但馬達は顔を見合わすと、取り敢えず何があったのか報告を受けるために工場内へと急いだ。


「実はその……おかしな現象に見舞われまして」


 工場に入ると中は殆どもぬけの殻で、どうやらほとんどの工員は今日の鉄道の起工式に駆りだされて市外に行ってるようだった。さっき駆けつけてきた彼らも本当はそのはずで、どうやらトラブルが起きたから大急ぎで親父さんに知らせに戻ってきたようだった。


 それにしてもおかしな現象とは何のことだろう。


「鉄道建設にあたって、レールとか枕木とか、資材搬入を行ってたんですが、その資材置き場に邪魔な岩がゴロンと転がってまして、みんなでそいつをどけようとしたんですが、その……それが変なんです」

「変って? もうちょっと分かりやすく話せないのか?」

「いやそれが、本当に見てくれとしか言いようが無いんです。とにかくおかしいんですよ。俺達が近づこうとしてもそいつに近づくことが出来ないんです。みんなそいつに向かって歩いていってるつもりなのに、右に左に流れて行っちゃう。わざとやってんじゃないかって思うんですが、そうじゃなくって……本当に見てくれとしか」


 但馬達は顔を見合わせた。取り敢えず、尋常じゃない事態が起きてそうなことだけはヒシヒシと伝わってくる。


「現場はどの辺? 街に近いのかな」

「えーっと、近いと言えば近いんですが、街と製鉄所との丁度中間辺りです。距離にして5~6キロくらいですか」


 資材置き場にしようと言うのだから、当然そう言う立地になるのだろう。それにしても、なんとも中途半端な距離である。


 取り敢えず、何かが起きてることは伝わってきたので、とにかく現場に行ってみようということで話はまとまった。歩いてもいける距離だが、人数も増えたし時間も惜しい。馬車の方が良いだろうと、通りで捕まえて分乗して市外へ向かった。


「あれ……先生!」


 途中、市街地の門から外へと出ようとしたところで、王宮の方からやってきたブリジットの自家用車が通りかかった。どうやら但馬を追いかけて来たらしい。トラブルが発生したことを告げたら、自分も行くと言い出したので、何かあったら事だからと、近衛兵の同行を求めた。


 そんな具合に大所帯になってしまったものだから、結局ノロノロと時間ばかりかけて到着したころには、既に各方面に連絡が言っていたらしくて、現場には人だかりが出来ていた。どのくらいの人数が居るだろうか、ざっと見ただけでも100人はくだらない。


 元々、魔物を警戒して市外へ出る人は少ないのに、こんな辺鄙な場所にこれだけの人数が居るのは珍しいことだった。何もない海岸に大勢の人々が詰めかけ、中央にあるただの岩を遠巻きに眺めている姿はかなり異様だ。


 その岩をぐるりと取り囲むように揃いの軍服に身を包んだ兵隊が見えた。まだ配備されて間もないカービンライフルを所持しているところを見ると、どうやらエルフ討伐の銃士隊のようである。


 その銃士隊の中でもリーダー格の魔法兵が、但馬とブリジットを見つけて駆け寄ってきた。


「逓信卿、おいででしたか! これはこれはブリジット姫様。姫様にはご機嫌麗しゅうございます」

「いや、挨拶はいいから。なんだか大事みたいだね。何があったの?」


 魔法兵は、はいと頷くと、彼らが遠巻きにしている岩を指差して、先ほどの工員と同じように、要領を得ないことを言った。とにかく岩に近づけないと。


「作戦のキャンプ地へ向かう途中だったのですが、こちらへ差し掛かりましたところ、どうやらトラブルのようでしたので、僭越ながらお手伝いをさせて頂きました。異常事態だというので確かめたところ、尋常ではない現象を確認しまして……もしかしたらエルフの仕業ではないかと」

「エルフ!?」

「はい。そうとしか思えないような奇妙な現象でして……とにかく、ご覧になってください」


 但馬たちはお互いに顔を見合わせた。


 但馬が先頭にたって進むと、エリオスとブリジットが続いた。親父さんは少し迷ってから、弟子の工員達が居る方へと走っていった。


 但馬がやって来ると銃士隊の面子が直立して敬礼をしてきた。一応、最高責任者であるからだが、堅苦しいことは抜きにしてくれと手で合図する。


 取り敢えず、どんなもんなのかと岩に近づこうとしたら、先ほどの魔法兵がやって来て、慌てて但馬を止めた。


「逓信卿、お待ち下さい! そういうのは我々がやりますから……」


 エリオスに首根っこを捕まれ、ズルズルと引っ張られる但馬を尻目に、銃士隊の何人かが、装備を同僚に渡すと、深刻そうな表情でゆっくりと問題の岩に近づいていった。


 見た感じ、おかしなところは何も見当たらない。


 しかし、彼らが岩にあと数歩というところまで近づくと……何を思ったのか、彼らは方向転換して全然別の方向へと歩いて行くのであった。


 何やってんだ? あいつら……と、冷ややかな目で見ていたのだが、当の本人達の表情を見て考えが変わった。


 彼らの顔は深刻で青ざめていた。わざとそうしてると言うわけじゃないと言うことが、ありありと伝わってきた。


「誰がやってもああなるの?」

「はい。本人は岩に近づいていってるつもりなのですが、気が付くとああなってるのです」


 つまり、岩に近づこうとすると、無意識に方向転換して、明後日の方向へ歩いていってしまうわけである。そして本人は、まるで自分が瞬間移動したような錯覚を覚え、うろたえているようだ。


 確かにこれはおかしい。


 こんな理不尽な現象は、魔法に関係すること……つまりエルフの仕業と考えても不思議じゃない。エルフではないとしても、少なくとも世界樹や古代文明の遺産、マナが何か悪さをしてることは明白だ。


 さて、どうしたものか。近づけないのでは話にならないから、どうにかして近づきたいのだが……人間は駄目でも、馬や家畜ならどうだろう?


「それが無理なんです。生物どころか、無機物も駄目なんですよ……」


 魔法兵が眉をハの字に曲げて言う。彼は続けて、


「みなさん、申し訳ございませんが、少し離れていただけませんか?」


 魔法兵に言われて但馬達が距離を置くと、「構えー!」銃士隊の数人が遠目から銃を構えて、「射てー!」岩に向かって射撃した。しかし、


 チュインッ……!


 っと、一種独特な音がして、岩の周囲に緑色のバリアっぽい物が展開されたかと思うと、弾丸はそれに弾かれて、岩とは全然別の方へと飛んでいった。これは恐らく、エルフや魔法使いが攻撃を弾くときのあれだ。


「……これは……おかしいな。何が起きてるんだ?」

「ここへ到着してから色々試してみたのですが、さっぱり分かりません。ただ、街にも近いですし、このまま放っておくわけにも行かず、応援が来るまでこうして周囲を取り囲んで見張っていました」


 報告は既に行っているから、そのうち応援がやってくるだろう。ただ、応援がやってきたところで、どうなるとも思えなかった。但馬は言った。


「いつからこれがあったか分かる?」

「分かりません。作業員達は、1週間くらいまえからここへ資材の搬入を行ってるそうですが、その時には既にあったはずと言っておりました」

「怪我人や気分が悪くなったと訴えるような人は?」

「出ていません」


 つまり、近づけないだけで、危害を加えようとする感じではないわけだ。


 但馬はそれを聞くと、問題の岩へと近づいていった。エリオスが難色を示したが、もう魔法兵は止めようとはしてこなかった。


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