瞬速
辿りついた先で出会った”大魔女”と呼ばれる女と行動を共にする事となった光治。
右も左もわからず流されるがままに大魔女に着いて行く事となった光治は、芽衣子と同じ顔をしたテロリスト”英騎”の情報を持つ者として、異界最大の都”帝都”から召集される事となる。
そこで出会った山賊達を仲間に引き入れ、帝都へたどり着く為に登る必要がある巨大山脈”アルフォンヌ山脈”を辛うじて渡りきる一行。
下山した先にある帝国山岳隊宿舎。そこに立ち寄った際突如現れた大男の襲撃を、道中で引き入れた精霊の力によりなんとか撃退する。
帝都への道のりは残りわずか。一大国家の首都。そこには一体何があるのか――――
「んしょ……」
長く続いたこの山登りもついに終わりか。一通り荒れた宿舎の手伝いを済ませ、オーマはついに帝都への綿密な渡航計画を示し始めた。
山岳隊の連中と打ち合わせを始め、ついでに帝都に連絡を送ってもらい、そして返事が届き次第再出発を始める予定だ。
今、僕の足元には大きな魔法陣が描かれている。陣の中には細かな筆記体のような文字がズラっと並び、その合間合間になにやら簡素な絵が描かれている。
その絵はどこか僕とあの大男の戦いを描いているように見えた。よくわからんが、今までの記録なのだろうか。いつぞやの執行官が言ってた、これが所謂連絡用魔法とやららしい。
「こんなもんかな」
「わざわざお手伝いいただき感謝の極み。本日は報告が多くあり過ぎる物です故……」
「陣くらいいーわよ別に。でも送伝はそっちでやってね」
相も変わらずけち臭い。そのくらいやってやれよと思ったが、余計な口を挟んでいらぬ怒りを買うのもイヤだったのでそこは黙って見守る事にしておいた。
連絡用の兵が陣をぐるっと取り囲み、何やら念仏のような呪文をブツブツと唱えている。
――――その直後。陣は、薄らとした光の線を這わせ、そして一瞬カッ! と光ったと思えば細かな煙を上げ、そして焼け焦げた痕を残し消えて行った――――
「帝都への送伝、完了しました」
「ごくろーさん。じゃ、返事来たら呼んでね」
そう言ってオーマはまたどこかから持ってきた椅子にデンと座り、作業を再開する兵をしり目に一人優雅にだらけ始めた。仕事の邪魔だ。彼らはこれから夜通しで復旧作業に入らねばならないんだからな。
あまり邪魔してやるな。せめて隅に行け隅に。
――――とまぁ心の中で一通り文句を立てた所で、とかいいつつ僕も思いっきりだらけているんだがな。
オーマは辛うじて体を縦にしているが、僕は頭の先からつま先まで完全に水平を向き、フヨフヨと漂っている水玉をつついたり、土を振りかけたり、水で絵を描いたりと誰がどう見てもそう思う程、暇を持て余している。
暇なのだから手伝ってやろうと思ったが、僕の好意は彼らにとってマイナスにしかならないだろうからやっぱりやめた。まだ傷の癒えない体で懸命に働く彼らに、無駄なストレスをかけてはいけない。
自分の事は自分でよーくわかっている。今僕にできる事は、寝返りをうちボーっとしている他はないのだ。
――――トンカン――――トンカン――――
「ふぁぁ……ん?」
「……」
ふと、オーマは何をしているんだろうと思った。それはオーマの仕草に少し違和感を感じたからだ。
椅子に腰かけ首をやや下に。その姿勢を維持している姿は本を読んでいるようにも見える。しかしその肝心の本がこの角度から見るとやけに小さく、そして速すぎるペースでページを捲っている用に見えた。
そんなのじゃまともに読めないだろうに。もしかして、活字ではなく絵本だったりして?
暇を持て余していた僕はほんのささいなイタズラ心から、オーマにバレぬよう抜き足差し足忍び足で、音を立てずそっと背後に忍び寄ってみた。
――――そして、もっと早く動いとけばよかったと思った。
「あ~~~~~ッ!」
「ッ!? アンタ、いつの間に!?」
「ちょ、そそ、それッ!」
「僕の”スマホ”ォ!」
このアマだけはマジで油断も隙もない……この午後のティーブレイク中の女は、いつの間にか僕のスマホを我が物顔でいじくっていたのだ。
そうだ思い出した。服を乾かす時に鎧に着替える為、一度ポッケの中の物を全部出したんだ。この所のゴタゴタで忘れていた。
あの時か……山にキノコを採りに行くときに、一人になった所を見計らって……くそう、魔女め。よくも僕の目を盗んで。
「返してくださいよ! ぼ・く・のスマホォッ!」
「な、ちょ!? いーじゃないの別に! アンタちょっとケチ臭いわよ!」
「あんたに言われたかないですよ! いいからさっさと返しやがれェ~~~ッ!」
このアマは盗人だけだけしく人のスマホを使い、バッテリーへの配慮等全くせずに、一人パズルゲームに勤しんでいやがった。
おかげで充電アイコンは真っ赤になっている。それに比例して僕のデコも真っ赤っかだ。
こんな傍若無人な行為を許すほど僕は甘くない。以下に魔王と手容赦はせぬ。
今ここで我が手に戻れ、マイフルスクリーン液晶搭載電子機器スマートフォォ――――!
「ふんぎぃぃ~~~!」
「誰が渡すか! とぉ!」
――――ピコーン
「あ、やったぁハイスコア更新」
「ぐぬっ!? こ……ちぇすとォーーーー!」
――――ピコココーン
「何やってんだアニキ達」
「鬼ごっこだろ」
「あの、邪魔なんだけど……」
――――ぬおるぁぁぁ……――――はいぃぃぃ……――――
――――……
「ハァ……ハァ……」
「ザコが。アタシを捕まえようなんざ999年速いのよ」
「いい加減……返してくださいよ……」
「も~うっさいなぁ~。わかったわよ……あら?」
「……なんか、動かなくなっちゃったんだけど」
「ええ!?」
そう言ってオーマは不吉な予言と共にスマホを僕に差し出した。そして僕は無事、この魔王から取り返す事が出来た。
――――充電の切れたスマホを。
「ふぎぃぃぃぃ~~~!」
「え、ちょ、もしかして壊れた?」
「ノォ~! ノォ~!」
「うっさい! でもなんで? アタシ何もしてないじゃん」
「充電が切れたんすよ! あんたがずっと”アプリ”つけっぱなしにしてるから!」
「ジュディン……エイプリィ……?」
「ちがっ……あーもう! めんどいな!」
年に一度家に遊びに来る親戚にパソコンの使い方を説明するくらいのめんどくささを発揮するオーマの為に、スマホの仕組みを事細かに教えてやった。
当たり前だがスマホは永久機関等搭載していない。さっきまでのお前ら同様、定期的な”食事”がいるのだ。
「へぇー、これ、電気で動いてたんだ」
「ゲームは一番消費が激しいんですよ! ったく……何時間つけっぱなしにしてたんすか!」
そしてこの充電どころかコンセントすらない異世界に置いて、充電切れとはすなわち即”死”を意味するのだ。
「終わった……」
「ふーん、異世界のすごい機器だと思ったけど、仕組みは意外と単純なのね」
「ふぎゅぅ……」
「わかったわよも~うざいな~。要はメシ食わせりゃいいんでしょ」
オーマは再び充電の切れたスマホを手に取り、しばらくの間まじまじと見まわした後、スマホの背面に何やら簡素な陣を描き出した。
そして先ほど同様オーマが呪文を唱えると、陣は淡く輝き始め、パチパチと細かな静電気を立てながらゆっくりと回り始めている。
そして静電気がやがては集まり、一つの大きな塊になった頃。赤ん坊にミルクを飲ますようにオーマはスマホを手に掲げ、まじまじと”側面を”見渡し始めた。
「えっと……お口はここかしら?」
(まさか……)
「はい、あーん。たんとおたべ」
「ちょっとまったぁーーーー!」
このバカヤロウが! スマホは精密機器だ! 以下に充電式とは言え、そんな火花散る高圧電流を一気に流し込めば、今度こそ本当に動かなくなってしまうだろうが!
「やめろォーーーー!」
「ぬあっ! ちょ、何すんのよ!」
「スマホ虐待断固反対~~~!」
「離せ! この……ショラッ!」
「へぶぅッ!」
オーマの、それはそれは見事な回し蹴りが僕の肝臓に突き刺さった。さすが大魔女様だけあって体術もある程度習得しているらしい。
「寝てろ!」その掛け声と共にオーマは再び詠唱を再開し、細かな火花が、小規模な落雷の用に大きく広がってく。
バチンッ! バチンッ! オーマの周囲に点滅するこの光の長枝を見て、僕も心の中でそっと詠唱を唱えた。
(やすらかにねむれ……)
――――バチチチチ! どう見ても暴走した高圧電流に見えない電気が一つに集まり、そしてオーマの指示でUSB差し込み口へと一挙に挿入されていく。
その光景はどう見ても、充電と言うよりエネルギー弾を放つ時のそれに近い。
完全に、終わった……僕とスマホの楽しかった思い出が頭を駆け巡り始める。休み時間に一人いじくった時。授業中にいじっていて見つかった時。没収された後返してもらった時。
いままでありがとう僕の心の友よ。次に買い換える時は、きっと同じ、キャリアのモノを使うから――――
――――カッ
「……はい。終わったわよ」
「えっ」
「はやく起こしなさいよ。そして貸しなさい。もう少しでランキング入りするんだから」
「……」
シュウウウと似つかわしくない煙を上げながら、スマホは再び僕に帰ってきた。火事の中奇跡的に火の手を免れた遺品みたいだ。その遺品と化したスマホは、手に持つと少し熱かった。
どう見ても死んだだろと思いつつ、オーマが急かすので仕方なしにそっと電源ボタンを長押しした。
少し熱くて押しにくい。それになんか、焦げ臭い。ていうかそもそもこれ僕の……等と心の中で文句をあれこれと言いつつ、奇跡が起こる事を天に祈っていると
――――奇跡は、本当に起きた。
「……うそォ!?」
「ほら、だから言ったじゃない」
結論から言うと”電源はついた”。あれだけ電流過多に程がある、充電より拷問に近い電流を浴びたのに。
スマホの画面には、再起動でおなじみキャリアのロゴが浮かび上がり、そしてその後に軽い注意事項を流した後、いつものように粛々とデータを読み込み始めた。
奇跡だ……こんなコンセントもロクにないような世界で、急速どころか”瞬速”でフル充電できる環境が、すぐ目の前にあったなんて。
「じゃ、その子起きたら返して頂戴。パズルの続きやるから」
と言って我が子を託されるベビーシッターのような扱いをされた後、オーマは元いた椅子へと戻って行った。
バカが……取り返したらもうこっちの物、誰がお前などに渡す物か。お前には今この時を持って永遠の別れとなるのだ。このスマホ、もう二度と手放したりはしない。そう心に堅く誓った。
――――その矢先。
「……へ?」
画面からなにやら見慣れぬ文字が浮かび上がっている。ハッキリとした文字で「パスコードを入力してください」と。
おかしいな。こんな機能付けた覚えはないのだが。まぁ、入れろと言っているのでとりあえず誕生日を入力してみた。
が、もちろんハズレ。それもそのはず。パスコード機能なんて購入してから今まで、設定した事なんてないのだ。
「……んん?」
ここで、一つイヤな予感がした。スマホの背面にこびりついた、さっきあいつが描いていた陣。この陣、どっかで見たような気がする。確か一切の権利を全て譲り渡す、僕本人にもやられそうになった”例のアレ”
「……」
やはりイヤな予感がした。魔法で充電ができるなら、だったら魔法で他の事もできるだろうと。そしてそれは、役に立つ事から”人の足を引っ張る事”まで。
「あのー……」
「お、起きた? さ、はやく貸しなさい」
「電源付けたら……僕の知らない機能がついてるんですよ。パスワードって言うんですけど」
「パスワード? あらーそれは大変ねー(棒)」
「……」
「はやく解除しないとーアンタ一生それに触れないわー(棒)」
「……めぇぇぇァァァーーーーッ!」
……やられた。このアマ、スマホを僕から奪い取る為に、充電と同時に”改ざん”までしてやがった。
ハッキング、いや、この場合クラッキングって言うのか? そんな事はどうでもいい。
こんな傍若無人なマネ、許してなる物か。残る全ての力を使い、この魔王に向けて勇者の如く立ち向かう――――が。
「はい、ザコ」
「ひぐぅ……」
「ホッホッホ、甘い甘い。こっちにはね、異世界の機器の事はわからないけど、【元素組成解読魔法】ってのがあんのよ」
「大体そう言うのって学者とかが使う魔法なんだけど……ま、アタシが使えばこんなもん楽勝ね」
「仕組みがわかればこっちのもんよ。ホホホノホー」
なんでこんな事に”だけ”ちゃんとした魔法を使うのかが理解ができない。僕が死にそうなくらいピンチの時は口から出まかせで済ませた癖に。
オーマはこめかみをトントンと叩き、それを僕に見せつけてくる。そしてこう言う。「ここが違うのよ、ここが」
――――このありとあらゆる卑怯な手段で人々を苦しめるオーマは、やはり魔王と呼ぶにふさわしい存在なのだろう。
「さっきまでそこに……キノコ生やしてましたよ」
「じゃあキノコの方が賢いわね」
率直な感想としては”ムカつく”以外の何物でもないが。
「さーって続き続きっと……」
「ちくそー……」
「――――いけまへんなぁ姐さん。そりゃちょっといじわるが過ぎるってもんですわ」
『ぬえっ!?』
「そんな本人の許可なくムリくり奪ったかて、そんなもんは譲渡と呼べません。単なる”略奪”やさかい」
――――二人は、確かに聞いた。うさんくさい関西弁を用いた声を。しかしこの場の誰もが声など出しておらず、もちろん関西弁など使うなど誰もできやしない。
だとすれば、声の主は自然と――――
「ほら坊ちゃん、今パスといたるさかいな。ほーれポチポチポチっと」
「……」
パスの解かれたスマホは、案の定通話状態であった。電話のアイコンの下に文字化けした番号通知が乗っている。番号不明の通話画面は最高に不気味だが、おそるおそるスピーカーをONにしてみる。
「おっこれでしゃべりやすくなったな! 坊ちゃん、もう奪われたらアカンで!」
――――声は、スマホから出ていた。
「……あんたマジなにしたんすか」
「……わかんない」
「つーわけでども! わしスマートフォンでおま!」
「よろしゅうたのんま! 通話だけに。ダッハッハー!」
この下らないダジャレが逆に気持ち悪さをそそり上げる。音声認識機能は近年のスマホには標準搭載されているが、自発的に語りかけしかもジョークまでかますスマホ等、世界広しと言えどこいつくらいだろう。
このエセ関西人と化したスマホは、頼んでもないのに自己紹介と言いつつ型番やメーカー、おすすめアプリなどをうさんくさい関西弁でべらべらと一通り告げた後、あろうことか持ち主の僕にやれヘタレだやれ無課金だの言って説教まで垂れてきた。
なんなんだこいつは……呆気にとられる僕らをしり目に、こいつは饒舌すぎる速度で一人延々と話している。話を遮る勇気が出ない僕の代わりに、オーマがふと、スマホに問いただした。
「ちょ……あんたあんた。自分語り中の所悪いけど」
「はいなんでっしゃろ姐さん! なんでも聞いておくんなはれ!」
「なんでもって言うか……そもそもあんたはなんなの?」
「だっはっは、何をおっしゃりますやら姐さん!」
「わてを生み出したのは他でもない姐さんやないですか!」
「えっ」
――――こいつの話は無駄に長い。主題から逸れに逸れて無駄なジョークとギャグで答えをうやむやにするスマホに変わって、僕が一言で言おう。
「……ねーさんの、せいっすね」
「……」
こいつが充電の際、こっそり僕のスマホを奪おうと”契約の陣”を描いていた。そのせいでパスコード機能等僕の与り知らない事がいくつも起こったのは、さっき見た通り。
しかし与り知らないのはオーマにとってもそうだった。魔力を注ぐ際にとある不具合が発生していたのだ。それは、電気を注入する時の事。
「ま、魔法陣間違えた……」
「マジなにしてくれてんすか!?」
陣にははっきりと描かれていた。さっきこいつが描いたのと同様、元気に動き回る”人型”の絵が――――
「これ、送伝用の陣だった……」
「ちょっとォォォ!? じゃあこれッ、かかか、書き換えちゃったんすか!?」
「いやはや、わてみたいなもんに命を与えてくれてありがとさんさんサンフラワー!」
「うるせえ! つまんねえんだよ!」
まさかスマホに怒りを見せる日が来るとは、一度たりとも思った事はなかった。やたら声がデカいのはさっきのあの男をトレースしているのだろうか。
背面を見るとこびりついた陣の中にハッキリと、”さっきと同じ”暴れる男のような人型の姿が描かれている。
「ねーさぁーん……」
「ほほ、ほら! 流れ作業でささっと書いちゃったから!」
そして関西弁の謎もすぐに解けた。それはいつだっただろう。おすすめアプリ覧に乗っていた、ネタで落として、結局使わず仕舞いだった――――
「か、関西弁変換アプリ……」
「知ってる? 関西では仕舞うは直すって言うんやで!」
「知らねえよ……いいからお前ちょっと黙れ!」
「コラコラコラ! 乱暴に扱ったらすぐ壊れるっつったのはアンタでしょ!?」
「こわいわー暴力主義やわーやくざちゃうかーそう沸点落としなやー」
「物はソフトに扱わなアカンねんでー」
「沸点だけに」
「――――うるせェェェーーーーッ!」
「やめろっつ~の~~~!」
何故だろう。こいつがしゃべるとこんなにイライラするのは。それは長らく愛情を注いでいた心の友が、実は関西弁で下らない事をベラベラとしゃべり続けるKY野郎だったからろうか。
こうしている間もこいつのムダトークは止まらない。その辺はさすがスマホ、持ち前のメモリと処理能力で話題が次々と湧いて出てくるのか。
ああ、今わかった。このトークスキル、僕には持ち合わせてないスキルでかつ、にもかかわらず”全く面白くない”からだ。
スマホは僕の望み通り無事、手元に帰ってきた。しかしそれはもう、スマホと言うよりスマトラと言うべき、変わり果てた姿で。
「なんてこった……」
「坊ちゃん元気だしてーなーなんでーなーええやんかいさー」
「そ、それアンタに返すわね! 元々アタシのじゃないし……」
こうして、魔王と僕のスマホ争奪戦は以外な結末で幕を閉じた。どちらも予想だにしない、「どっちもいらない」と言う結末で。
いつまでもしゃべり続けるコイツとは裏腹に話す事など何もなくなった僕は、ため息と共にそっと終了ボタンに指を当てた。
お互い、足らなかった。思えば僕らは最初からそうだ。あの時もあの時もあの時も……そう、僕らは一つ共通点がある。
今後いつ何があるかわからないこの世界で、僕らは同じ過ちをこれ以上繰り返さぬ用、反省し、改善せねばなるまい。
「いいですよ別に! 好きなだけゲームしてください!」
「いらな――――おおいみんな~! やっぱアタシも手伝う~!」
「まてぃ! 逃げんなよ!」
――――注意力不足を。
つづく