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羨望のリフレクト  作者: モイスちゃ~みるく
大魔女の企て
155/169

【余談】変革――前編――

 

「陛下。帝国軍各部、伝達終了致しました」


「うむ……」



 それは、渡り舟が空の彼方に消えてしばらくの事であった。

 此度の強襲劇の中心となった帝都は、ようやっと幕を下ろした惨劇の”後始末”に見舞われていた。

 崩壊した建物、焦土となり果てた地、所々に未だ燻る、点々とした火々。

 その中を何とか生き残る事ができた人々。そして、できなかった人々――――



 それらの”責”を一手に引き受ける者――――王。

 王は依然として心休まる暇もなく、粛々と指示を出し続けていた。

 刻みつけられたいくさの爪痕は、夢ではない”確かな現実”として未だ存在し、消せども消せども次々と新たな問題が湧いて出る。

 いくら指示を出そうとも、代わる代わる指示を仰ぎに来る兵達。

 そんな終わりの見えない後始末の中で、王は愚痴一つこぼさず、また新たな指示を一つ出した。



「――――現時刻を持って【非常警戒令解除】。皆不安がっている……避難民もそろそろ、家路へと解放してやれ」


「陛下、その……中には、家を無くした者も」


「ならば商業区の各企業に連絡を取れ。宿泊施設を運営している者らだ」


「王の名において命ず。それら全てを難民の保護施設として開放せよ、と」



 問題はまだ山積みではある。が、とりあえず一応の区切りはついたと言える。

 現在時刻は「午前10時」。舟が彼方へと旅立ってから、約二時間程度が過ぎた形となる。

 この間、休みなく指示し続けた王の努力の甲斐あって、まだ消えぬまでも”最低限の安全”は保証されたと、王はそう判断した。

 現場の報告と、眼下に広がる都の様相からして――――「もう大丈夫」。王はそう、”思いたかった”。



「しかし……商業区には強固な商業連盟が……」


「なぁに、代金は持つさ。そう言えば奴らも納得せざるを得まい?」



 王は次なる段階として、「戻す」事を視野に入れ始めた。

 無粋な来客の散らかして行った塵屑の山。その後始末を済ませ、後は元に戻すだけ。

 ”全ては元に戻る”。そう言わんばかりに、王はそっと思い描いた。

 目の前の光景とは異なる、幻の都。

 火が広がる前の。奪われる前の――――平和と安心とに包まれた、栄華を極めし”夢見る都”の姿である。

 


「ほら、油を売ってる場合か……いけ! まだまだ仕事は終わらんぞ!」


「――――ハ! その任、確かに承りました!」



 命令を受けた兵は、王に対し少しばかりの口答えをした事に強い「恥」を感じ、そしてその汚名を返上すべく直ちに去って行った。

 王はその事に対し別段何とも思っていない。それ以前に、まず咎めると言う発想すらない。

 端的に言えば、その兵が一人勝手に”責”を感じ、そして勝手に高揚していただけの話である。



――――しかしその「自主的な自責」を感じる現象は、今しがたの兵だけの物ではなかった。

 それはこの都の全帝国軍兵士。

 否、全「民」一人一人が、大小問わず何かしらの”責”を感じているのである。




(ゥォォォォォ…………)




「……元気な奴だな……」



 本来ならば、彼らに責を感じる必要などない。

 むしろ彼らは被害者。責を被るどころか、責を言及する立場にすらいる。

――――彼らが被る責とは、後悔や懺悔と言った負の感情の類とは異なる。

 それは自ら追うと言う心情が示す通り、希望に繋がる罪滅ぼし。

 多大な被害を受けた帝都の、全てを預かる責任者――――王の追うべき、責である。



(そうか……皆……)



 突如として王に圧し掛かった、あまりにも重すぎる責。

 彼らは、それらの一つ一つを自らが受ける事で、「王の責が少しでも軽くなるように」と、そう考えていた。

 別段口裏を合わせたわけではない。

 「我らを収めるは王が唯一」。口に出さずとも心に秘めた思いは、自然と行動に移り――――

 そして結果として、王に少しばかりの息つく間を与えた。



(なんともまぁ……ありがたい話だ……)



 それは、民が王に送る絶大な「信頼の証」であった。

 民が国を作り、国が民を作り、また国が民を作る――――

 それは普段、誰もが口に出す事のない事。言い換えれば”口に出すまでもない”事。

 王が日々四苦八苦を繰り返しながら国を治めるように、民もまた影ながら奮闘していた。

 帝国の未来。栄華。発展。

 そして、平和――――その頭に、”王との”が付くように、と。



「…………フゥ」



 王は与えられた思いに少しだけ甘え、一時の猶予を椅子に腰かけ過ごした。

 眼下に広がる帝都の姿は、依然として黒煙が燻り、所々が欠けたパズルのように歪な凹凸ができている。

 見るも無残な、痛々しい姿である。しかし裏を返せば、”希望の現れ”でもある。



――――帝国の民は皆等しく力を持っている。それは「魔法」と呼ばれる願いの力。

 その力を持ってすれば、多少怪我をした所で、きっとまた元に戻る。

 むしろこれを機にまた強く、より大きく発展出来るかもしれない。

 全ての経験を糧に。それはまるで、傷口にできる瘡蓋かさぶたのように。

 



大魔女パム……お前もか……?」




 そんな思いを王は今、その手に持つ一つの”機器”に重ねていた。

 帝都以上に無残な姿となり果てた、原型留めぬ”黒焦げの”魔導話マドーワである。

 


 この魔導話は、舟が消えた数分後、王宮内にて待機していた警備兵が発見した物である。

 発見場所は王がいる【王宮内指令室】の少し下。

 その場所は、王が王宮に迫り来るいかずちの矢から皆を守る為に、「喝」で持って掻き消したその際。掻き消しきれなかった矢が、そのまま落下した箇所である。

 雷の矢は、魔導話の内部電源を媒介に発生した物であった――――つまり、大魔女オーマの放った矢である。




(――――くたばれボケェェェェェ!)




「…………」



 改めて見てみれば、やはり魔導話は黒コゲであった。

 外装は至る所が剥がれ落ち、溶け、そして放たれてから随分経ったにも関わらず、シュウウとまだほんのり熱すら残っている始末である。

 あの時オーマが逆切れ交じりに放った雷の矢。そのキッカケは王の叱責。

 その行為は、第三者から見れば”反逆行為”以外の何物でもないであろう。



 だが、王にはその真意がしかと伝わっていた。

 気持ちの問題ではない。”物理的”にである。

 「こんな伝え方があるか」――――オーマがこの場にいれば、きっと王はそう怒鳴っただろう。

 それはかつて、王を最も苦労せしめた問題児として。

 王と大魔女ではなく、「教師と教え子」として――――



「……バカモンが」



 黒焦げとなった魔導話には、唯一一つだけ無事な箇所があった。

 その箇所は、魔力によって”意図的に防御”された箇所である。

 電流がその箇所に及ばぬように、矢を放つ者があらかじめ仕込んでおいた魔法のバリア。

 そこは魔導話を魔導話足らしめる、「誰かの意志を伝える為」にあるもっとも根幹の部分である。

 雷程激しくなく、しかし灯火よりは明るい部分。

 闇夜にひたせば、ほんのりと照らされた光の長方形が浮かびあがる箇所。




 そこには――――こう記されていた。

 





【英騎の謎。きっとアタシが解いて見せる。

 だから、アタシがまたここから出て行く事を、どうか許して欲しい。

 アタシは必ず帰ってくる。その時まで待ってて欲しい。

 どうかアタシを、信じて欲しい。

 もう誰も死んで欲しくない。その気持ちは、わかってるつもりだから。】





「……欲しい、欲しいと……」



 王はまた一つ、溜息を洩らした。

 一方的かつ無駄な破壊の末に送り付けて来た文章には、これまた一方的な「要求」のみがズラズラと記されていたのである。

 まるでない物ねだりをする子供のような幼稚な文章。

 こんな物を魔導話の機能を使わず、わざわざ”直接”伝えて来たと言う事は、「直接言った所で断られるのがわかっていた」からであろう。



 王はこの一文を読んだだけで、そんな大魔女の考えが手に取るようにわかった。

 意味もなく、付き合いだけは無駄に長い、実に不敬なる「元」教え子。

 そんな間柄になってしまっている二人だからこそ。

 故にそれは、逆もまた然りでもある――――。



「いつまでも進歩のない奴め……これでは……」


「これでは……まるで……」




 「あの時と同じじゃないか……」王はそう呟き、もう一度溜息を洩らした。




(パム……)



 大魔女パムはやはり、帝国を裏切ってなどいなかった。

 大魔女パムもまた、王を慕う民らと同様。王に圧し掛かった責を、その身で持って肩代わりしようとしていたのである。

 現状の帝国における最重要課題、「英騎の調べ」。

 過去帝国が幾度となく送り込み、そして憂き目にあった最も危険な責務。

 その役を自ら買って出る事が、何を隠そう【大魔女の企て】の全てであった。



(しょうがないから守ってあげるわ――――”外から”ね)



 かつて本人オーマが発した言葉通り。

 オーマは帝国を、引いては王を守る為。全貌知れぬ英騎の元へと旅立っていった。

 この世界で唯一魔女に付き従う事が出来る存在――――精霊使いと共に。



 そして宣言通り本当に彼方へと旅立った今となっては、あれほど騒がしかった問題児の気配すらも感じられない。

 探索に長けた王だからこそわかる、確かな存在の有無である。

 大魔女は「ここからいなくなった」。その事実を王はしかと受け止め――――




「…………ぐぅッ!」




 強く、うなだれた。





(違う…………違うのだ……!)



(パムよ……わかっている……お前の思い……素直になれない……お前の気持ち……)



(それでも……やはり……だったとしても……儂は…………!)




 「だったとしても、儂は許可を出さなかったであろう」――――感情の昂りが、王の言葉を阻害した。

 仮にオーマがこんな強引な手段ではなく、涙ながらに、そして真摯に頭を下げて頼んできたとしても。

 それでもやはり、王は”許しを出すつもりはなかった”。



(アレは……そのような存在じゃない……)



(あの存在は……我らが決して……”触れてはならぬ”存在……!)



 その判断はもはや、教師と生徒の関係ですらなかった。

 問題児のワガママを諫める教師。

 そんな程度では到底片づけられない、王の、過去から現在に至る「全ての経歴」を捨てた、純粋な一個人の判断である。



(アレは……”使い”なのだ……)



 言い換えれば、王個人の”ワガママ”とも言える。

 人を諫める立場の王。なおかつ自身が過去に、大魔女パムに向けて何度も叱責した自己中心的行為わがままの数々。

 そんな事は全てかなぐり捨て、単なる”一人の人間”として、王の強権を強いる。

 それはもはや王ですらない。言うなれば「独裁」とも言える、一個人の思考。

 


 民が信望と畏怖の念を置く、一大帝国の王。

 しかしその実、裏を返せば元は”一人の人間”である。

 一人の人間である以上、必ずどこかに穴がある。

 それは王ですらも、例外ではない――――




(アレは……”奴ら”の差し向けた……!)




 王に限っては、それは一つしかなかった。

 そう、王は知っていたのである。





(……”六門”…………の…………)






――――英騎の、正体を。






(………………)









「「 王 ォ ォ ォ ォ ー ー ー ー ー ッ ! 」」




「――――ッ!?」




 突然の大声に、王は無条件に反応せざるを得ない。

 バァンと力強く扉が叩きつけられる音と共に、複数人の兵らが王の元へと現れたのである。

 その参上振りは「無粋」以外の何物でもなく、王に対して不敬と成り得る程に、礼節をわきまえず我先にと兵らは雪崩込んで来た。

 王はそんな兵たちの無粋な行為に咄嗟に振り向き、そして条件反射的に叱責しようとした。

 「突然大声で入ってくるな! このバカモン共が!」――――王は、そう言いたかった。




 しかし、言わせてもらえなかった。




「お、王ォ! お、お逃げ…………”逃げろ”ォ!」



「なッ――――!?」




 雪崩れ込んだ兵士の一人が、王に向かって”命令口調”でこう言った。

 本来ならば投獄物の大不敬である。

 あらゆる意味でありえぬ口の利き方。しかしそれが故に理解せざるを得なかった。

 今、王の眼が映す光景が――――”ありえぬ事態”であったと。





(消えろ…………!)





――――パララララララ。連続した炸裂音が、扉の奥から鳴り響いた。

 その音を契機に、騒がしかった兵達は一片。王が叱責するまでもなく、兵らは一人でに口を噤んだ。

 それはまさに、一瞬の出来事であった。

 兵らは、揃いも揃って乱雑に横たわった――――「静かな肉塊」と成り果てて。

 


「な……ん…………?」



「王ォ……陛下ァ…………」



「――――ッ!? オイ! しっかりしろ!」



 鮮血滴る肉塊の積。

 その中に、唯一一人だけ息の残った兵がいた――――先程命を受けた兵士である。

 王を支え、王の負担を少しでも軽減しようと、一人張り切りを見せていた若い兵。

 その若い兵は、寄り添う王を弱弱しい力で必死に押した。

 もはや息絶え絶えの口の中から、何度もうわ言のように、「逃げろ」と不敬な命令口調を放ちながら。




(目…………障り……だ…………)




――――それが、最後の言葉になるとも知らずに。





「――――ギャッ!」




 ピシャリ――――王の身に、不敬な血が飛び散った。

 それにより王の召し物及び顔の一部分が、瞬時にして「赤」に染め上がる。

 最後の兵は、その背に血が飛び散るほどに鋭い刃を突き立てられ――――そして絶命した。



――――刃を突き立てられた兵は、他の者らとは一変。肉塊になる事すらなく、刹那にして煙と消えた。

 儚い程に美しい、”煌めき”を残しながら。



「貴…………様…………!」



 そして消えゆく兵の命の奥から、その代わりと言わんばかりに一人の「来客」が現れた。

 その来客は甲冑に身を包み、片手にはT字状の筒を。

 そしてもう片手には”王がよく見知った剣”を携えながら、コツコツと一歩ずつ歩を進め、そして王に語り掛けた。



「こんな所で……一人優雅に休息か……いい御身分だな……」


「貴様が……否、貴様”ら”が余暇を過ごす場所等……」


「この世界には……ありはしないと言うのに……」



(バ……カな……)



 王にとっては、過去幾多に渡る全ての出来事を合わせても、まるで足りぬ程の衝撃である。

 生涯で最も驚嘆を漏らした瞬間。

 その記録を今、塗り替える存在が目の前に現れたのである。



「砂上の掃き溜め……魍魎の主……蝿の王……」



「この世界に見苦しくもこびりつく……不浄極まりない”穢れ”……」



「一体いつまで……そうしているつもりだ……」



「一体どこまで……澱み腐れば気が済むのだ……」



 声の主は、先程までとは比べ物にならぬ程の「不敬」を王に示した。

 「勢い余ってつい言葉を間違えてしまった」。そんな陳腐な失態と一線を画す、恣意的で悪意に満ちた雑言。

 声の主は事もあろうに、王を”汚物”と形容した。

 漂う生命の煌めきと、対を成すような――――漆黒の敵意で持って。 




(な…………ぜ…………)




 そんな不敬極まる存在に対し、王は怒りどころか怯えるように身を震わせた。

 突然すぎる来訪者の為か、目の前の「死体」のせいなのか。

 何故にこの身の震えが止まらないのか、それは王本人にすらわからなかった。



 唯一わかるのは、目の前の存在が触れてはならぬ存在であると言う事。

 決して、関わってはならぬ存在であると言う事。

 誰かが差し向けた、刺客に等しい【使者】であると言う事――――



「なぜ……貴様がここに……!」



「わかるだろう……幻想の王よ……」


「”迎え”に来たんだ……貴様を、しかるべき所へ送る為に……」



 ギリィ――――王の歯ぎしりだけが、この場で最も強い音となった。

 対面する「使いの者」はそんな王の心情をまるで意に介さず、「迎え」の旨を伝えた後に。

 か細い程に吐息の交じった声で、こう告げた。



「辛く……苦しい日々であったろう……」



「しかしもう……苦しむ事はない……怯える事はない……」



「恐れる事はない……さあ、今解放してやろう……」



「その魂にこびりついた……ドス黒く染まった”穢れ”から……」



 自称迎え人は、その言葉を最後に口を噤んだ。

 横たわる遺体をゴミのように踏みつけ、命の煌めきを集るコバエのように払い――――

 そして数歩だけ王に近づくと、依然血の滴る刃を緩やかに王に向けた。



 王は、嫌が応にも受け入れざるを得なかった。

 呼んだ覚えなど微塵もない、まさに招かざる客。

 しかもその客は、過去から今現在にかけて王に多大な”責”を覆い被せる人物と同一の存在。

 そして今この瞬間。招かれざる客は、今度はその手に持った刃をも王の身に被せようとしている。

 王もかつて握った事がある、帝国を未来へと導く継承の剣――――【六門剣】で持って。



「ふざ……けるな……」



「…………?」



「数多の村々を襲い、数多の命を屠った貴様に……穢れと呼ばれる筋合いはない……」


「その血に飢えた狂気、ついに儂にも向けようと言うか……やらせんぞ、やらせはせんぞ!」


「儂は王だ! この国を守る使命がある! この国の民を守る義務がある!」


「それを脅かす物は、何人たりとも許さぬ……」



 王の振るえは、止まる所かより輪をかけて激しく昇って行った。

 それが怯えから来るものではない事は、もはや明白である。

――――王にとっては、まさに分岐点となる重大な機会チャンスであった。

 今ここでこの”使者”を葬れば、大魔女が帝都を離れる大義名分が消える。

 大魔女に訪れる命の危機も消える。そして自分の責。すなわち自分を”支えようとする民の責”も消える――――。




「許さぬ……許さぬぞ貴様…………!」




 王は、その身に昇る激しい”怒り”を糧に――――

 ついに、一線を越えた。






「 英 騎 ィ ァ ァ ァ ァ ァ ー ー ー ー ッ !」





「…………」




 ”自分が誰か”と知りつつそれでも抗う意志を見せる王に対し、英騎は一切の変化を見せなかった。

 表情は凍り付いたように微動だにせず、気圧される様子もなく、ただ静かに「憤怒の王」を見つめるのみである。





 ァァァァァァ………………!




 力を上げる為か。もしくは恐怖をごまかす為なのか。とにもかくにも”意図的に”怒りを昇らせる憤怒の王。

 部屋いっぱいに溢れる王の咆哮は、先ほどまでの静寂を直ちに破壊せしめた。

 咆哮は、まだまだ昇る――――

 王の怒りの度合いを示すように、さらに高く。さらに轟くように。




(もういい……のだ……)




 そんな王を英騎は、ただただ静かに見守っていた――――。

 





(”まやかしの”王よ…………)






――――我が子を見守る、母のように。






                   後編へつづく



次で終わります

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