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六十八話 分水嶺

 

  

 サァァァァァァ…………


 

「何とか、なったな……」


「コポ!」



 相殺された爆発は火の浸食を鈍らせ、降り注ぐ雨が残った灯を鎮火していく。

 火の消えた光景はまるで心霊スポットのような廃墟と化しているが、とにもかくにもこれ以上の崩壊は免れた。

 一言で表すなら「助かった」と言ってもいいだろう。しかし、助かったのはあくまで”僕らのいる周囲だけ”。

 これで終わりなはずがない。

 この水の領域の外では、まだまだ炎が燻り黒い粉塵を巻きながら”崩壊”を導いているのだから。



――――グォ……



「地竜よく踏ん張った。ほら、これくえ」



 団長が地竜にねぎらいの言葉をかけ例の魔草を地竜の口に運ぶ。

 地竜のサイズじゃあの草は駄菓子にも満たないミントガムみたいな物だが、それ故に噛めば噛むほど味が出るのか? 

 くたびれていた地竜の首が、瞬く間に持ち上がっていく。

 


「ふぅ……全員無事?」


「ああ、おかげ様でね。にしてもあにさんすごいね。たった一日見ない間にものすごい成長じゃないか」


「正式に傭兵団の一員として迎えたいくらいだよ」



 これを成長と呼んでイイ物か少し疑問が湧く。レベルアップと言うよりレアドロップと言った方がしっくりくるのだ。

 と言うのも僕かどうこうしたと言うより、昨日王子に貰ったこの精霊石付きのメイスこそ水玉をあそこまで制御せしめたのだから。

 ていうか、よくよく考えれば水玉を拾った事自体が星五つ級の超レアドロップだ。

 苦労の末に倒した後「仲間になりたそうにこちらを見ている」の表示が出たわけじゃない。

 いつの間にかいて、いつの間にか付いてきていた。ただのそれだけなのに。



「いやいやいや……ハハ」


「コポ!」


(ほぼコイツの働きだけどな……)



 水玉を雑用に使っていた事が、少し恥ずかしくなってきた。

 そんな僕の羞恥心を底の底からえぐるのが、もう一人のお供のコイツの役目――――



『やめとけ。協調性ないから』


「うるせーよ!」



 スマホのツッコミはなまじっか当たっているだけに、赤面が三割増しで湧いてくる。

 期待されて入団したはいいが、課せられたハードルを”微妙に”超えられないのが僕と言う人間。

 今までの経験からしても、入ったら入ったでなんだかんだと面倒をかけさせるに決まっている。

 山賊からしたら自分から誘った手前、無下に扱うわけにもいかず、ただただハズレを引いたと残念な空気が立ち込めるのは目に見えている。



「ったく一仕事終えた所だってーのに……」


『お前に集団生活は無理や。わいが責任もって保証する』


「せんでいい」



 スマホのしつこい毒舌から耳をそむけるように、辺りをぐるりと見回した。

 やはりあの規模の爆発。建物と言う建物が全てガレキと化しており、これほど原型がなくなればもはや元々はどんな光景だったのかすら思い出せない。

 その代わり”火”の姿がない。あってせいぜい、煤けた黒ずみにシュウウと昇る白煙のみである。



「この区画だけキレイさっぱり洗い流したみたいになってるね」


「コインランドリーにぶち込んだみたいになってるな……」


『あ、地図見て。きれーに丸ができとる』



 スマホの地図が更新されている。

 開発区の広域を覆っていた赤い斑点がこの商業区まで広がり、僕らの現在地を飛び越え大通りを沿うようにして伸びている。

 着実に赤く染め上げられていく帝都全図の中で僕らのいる地点だけ、穴が開いたようにポッカリ開いた白い丸になっている。

 これはさっき行った【水風船】で掻き消した爆発を、俯瞰から見た物だ。 



「なるほど、この丸が俺らのいる所だね。ただその代わり……」


「商業区が……」


『この分じゃ次はほぼ間違いなく”伝統区”やで。中枢区の隣や』



 赤い斑点は火の手を意味する。つまり爆発の被害にあった場所。

 そして更新された”赤”は現在伝統区の少し手前でピタリと止まっている。

 この更新が意味する事。それはやはり先ほどの爆発が商業区全体に対する”一斉起爆”であったと言う事だ。

 そして王宮を目指し着実に”進行”していると言う事でもある……



「伝統区……ここ、僕昨日行ってないんだけど団長さんなんか知ってる?」


「うーん俺らもこの辺は……基本的にそこは金持ち貴族の道楽場所だからねえ」


『なんか歴史的な建物がいっぱいあるとか言ってたな。昔の城下町やったとかなんとかで』


「あ、それ観光用の方便。実際は老朽化とかの問題があるから、古い建物は何度か改築されてるよ」


(えぇ~……)



 まぁ、所詮観光地なんてそんなものである。

 創業が明治から続く食事処だって、何も本当に当時のままであるわけがない。

 有名なあの城やあの遺跡だってそう。

 中はエレベーターが付いて豪華なライトアップがなされた、それはそれはご立派な現代建築物なのだ。



「うわぁ……すっごい既視感」


『まぁそんなもんそんなもん。大阪城だって中身は普通に博物館やし』



――――観光地とは、あくまでその”土地”が培った歴史が現代まで伝わりできた場所である。

 重きはその”土地全体”であり建築物はその一端にすぎない。

 帝都に置いては、歴史を紐解けば中枢区から伝統区までが”初代帝都”である。

 故に帝都民にとって、伝統区への進撃はこれまでとは少し事情が異なる。

 「神聖な土地になんてことを」――――伝統区から先は、そう言った古くから伝わる”歴史の重み”が染み付いているのだ。



「信心的にも荒らす事は禁忌アウトな土地さ。どれだけの悪党だってあそこではまず暴れない……まぁ、そんな神聖な場所を連中はすでにやっちまってるんだけどね」


『だから速攻でA級戦犯に……いやそれだけじゃないやろけど』



 そんな伝統区の目と鼻の先にまで戦火をばら撒くテロリストの、現在の心境を知る術はない。

 が、ともすればあの区境ラインを超えてしまえば最後。

 向こうにとってももう引き返せないまさに”分水嶺”となるわけだ。



「いよいよレッドゾーンだな……」


 

 伝統区が陥落すればいよいよ次は中枢区。

 その中心には王宮があり、さらにその中にはテロの最終目標”王”がいる。

 それ故にあの地区の防衛網は生半可な物ではない。王宮の周辺は分厚い金属の壁がビルより高くそびえたっている。

 さらにその合間合間にあったレーザーライトや防犯装置の類を僕はこの目で確かに見た。

 あの鉄壁の要塞をどう攻略するつもりなのかは知らないが、奴らには僕自ら「行く」「引く」にもう一つ選択肢を加えてやろうと思う。

 計画が「お流れ」になると言う選択肢を、まさに”分水嶺”だけに。



「この近くにいる……爆弾魔ボマーを捕まえないと!」



 このあらゆる意味で邪魔の極みの”火”を根本から潰すには……それを放つ者。

 つまりさっきから話題になっている爆弾魔ボマーを捕まえ、そして爆弾を止める事。

 どれだけの数の爆弾が仕掛けられてようと、起爆できなければただの軽い発火性物質だ。

 どう考えてもそれしかない――――これこそが最善の一手だと、僕は結論付けた。



「「お~い、大丈夫か~~!?」」



「……ん?」


(あれは……)



 僕の脳内会議と入れ替わりに山賊達の声が入り込んできた。

 ふと振り返ると、山賊は見知らぬ人々を脇に抱えこの地竜の足元に集まってきている。

 話に夢中で気が付かなかったが、いつの間にか僕の背後には大勢の人だかりができていた。

 十、二十。いや、もっといる。そして彼らには一つの共通点がある。

 それは皆、”自力では歩けないくらい”ひどく負傷している。




 うう……いてえ……チクショォ……助けて……



「……」


「ああそうか、俺ら救助活動しに来たんだったっけ」


『逃げ遅れた人らや。火が消えたから見つけやすくなったんやろ』


(まだ……こんなにいたのか……)


あにさんのおかげで、運よく俺らの近くにいた奴だけが助かった……はは、皮肉だね。俺ら帝都を追われた山賊なのにさ」


「……」



 この光景はまるで戦場にできた野戦病院だ。

 横たわる負傷者は悲痛なうめきを上げ、どうしようもない痛みに苦しんでいる。

 見渡す限り――――”擦り傷”程度の軽傷な者から体に何かの破片が”突き刺さっている”者まで。負傷具合も十人十色と様々である。

 団長は僕のおかげと言ってくれてはいるものの、彼らを助けたと言う実感は到底感じられなかった。

 それは同じく団長の発した言葉。彼らが助かったのは「運よく僕らの近くにいた」からにすぎない。



 いでぇ! いでぇよ”ぉ……ッ! 


 まだ向こうに……俺のダチが……


 この子を……この子を、先に治してあげてください! 


 うぁぁぁぁぁん…………



「……」


「で、あにさん。爆弾魔ボマー探しの件だけど……俺らも手伝うよ。一人で探すよか大分可能性は高いだろ?」


『ええやんええやん。手伝ってもらおうや』


「……」




 苦しみの声を挙げる負傷者達とその介抱を行う山賊達。

 その光景をひとしきり見渡した後、一つの結論が僕の脳裏に浮かんだ――――




「……いらない」




「え?」


『は?』


「コポ?」


「……あにさん。今何て?」





爆弾魔ボマーは――――僕が”一人で”探す!」





――――降り注ぐ雨粒が、ここへ来てようやく収まり出した。




「おいおいおいおいなんでさ? せっかく合流できたってのに!」


『いや絶対一人じゃ無理やろ』


「……」




――――……




「でえじょうぶかい? さ、地竜に乗って」


「大丈夫大丈夫。ほら、痛いの痛いのとんでけー」


「おーいさっきの魔草こっちに回してくれ。この人も熱にやられたみてえだ」



 

――――協力はいらない。その返答には団長も想定外だったようで、何故だとしつこく食い下がってくる。

 その内団長も僕の視線に気が付いたようで、僕の見つめる先に沿うように視線を振った。

 そこには負傷した人々に世話を焼く部下達の姿がある。

 その光景を見たからこそ、なおの事団長は理解できなかったようだ。

 何故自分達の申し出を断るのか、と。



あにさんなんでだよ。野郎共総出で探せばすぐ見つかるじゃん」


「……僕は、本当はここに来ちゃダメだったんだよ」


「え、なんで? 精霊使いなのに」


「その前に僕は召喚者だ。この世界とは違う世界から来た……だから、本来僕は”無関係”の人間なんだ」


『あー……はいはい、そゆ事ね』


「無関係って……でも実際にこうしてここにいるじゃんさ!」



 食い下がる団長に対し、スマホは僕の心情に気が付いたようだ。

 僕は決して口がうまい方じゃない。だからこういう時どういう風に言えばいいのかわからない。

 油断すると煽る感じの事を言ってしまいそうだ……どういえば誤解なく伝わるか、ニュアンスが至極難しい。

 だから、代わりに無駄にべしゃくりの多いスマホに代弁して欲しい所なのだが――――



『ちゃうちゃう、こいつな。さっき王様に行くなっつって止められてん』


「え、王に!?」


『危ないから王宮出るなって言われたのに、逆らって無理やり突破してな』


「お、王様に盾突いたのかい……」


「……なんとか王の許可を得れたのは、僕にしかできない事があったからなんだ」


『みんなで説得してん。火には水しかないやろってな』



 あの王を納得させるのは本当に大変だった。

 怒らせ怒鳴られ殴られ叩かれ、しまいには一番大事な所でよりにもよって味方オーマのせいでとっ捕まったと来た。

 あの時は本当にもう終わったと思った……けど、味方のせいで危機に陥ったけど……

 今ここにこうして”これた”のもまた、味方のおかげだったんだ。



「実際水玉のおかげで少々の爆撃には耐えられる。ま、さっきはちょっとやばかったけど」


「 ”俺らじゃ役不足”って、言いたいのかい?」


「違う、そういう意味じゃない……確かにこの爆弾が潜んでいる一帯で動けるのは、この中じゃ僕だけだ」


「だけど……けど……”助けを求める人たちを救う力”は、僕にはない……」


「……」


「僕はいつだって一人だ。でもあなた方は、こんなにいっぱいの仲間がいる」


「僕にはない力をあなた方は持っている。だから、この仲間を使って……」


「いや、使うっておかしいな……えとその、協力していただいて……それもなんか変?」


『詰まるなやもー。肝心な所で』



 こういう時は本当に何をどう言えばいいのかが本当にわからない。煽り言葉ならポンポンと出てくるのに。

 しどろもどろになりながらどうにか真意を伝えようと、普段使わぬ言い回しを必死になって探し続ける。

 そんな僕の様子を見た団長は――――どうやら、言葉ではなく”感覚”で理解したようだ。



「えと……あの……だからつまり……」


「……わかったよあにさん。つまりこう言いたいんだろ?」


「――――”適材適所”ってさ」


「あ、それそれ!」



 そんな便利な四文字熟語があるなら先に教えてほしかった。僕も大概だがスマホも人の事は言えないな。

 そう、僕が言いたいのはまさに”適材適所”と言う事だ。

 僕は爆弾の中でも比較的低ダメージで突き進んで行ける。けど、救助を待つ人々を一人では運べない。

 だが山賊ならそれができる。同じ故郷の竜族達と、さらには百人乗っても大丈夫そうな、立派な巨躯の地竜がいるのだから。



「まぁ、確かに職業柄奪う事は専門職だけどね。人を丸々奪い去るってのはないけど」


「だからさ、山賊のみんなは”救助”に尽力を注いでほしいんだ」


「……で、あにさんは?」


「僕は……爆弾魔ボマーは僕が……なんとかするから……!」



 僕らの進むべき道が、徐々にだが見え始めた。残念ながら互いの方角は反対方向だ。

 だが、反対にずっと進んでいけば、グルリと一周した後、再び会いまみえる事が出来る。

 無論その道中には幾多の障害が待ち受けているだろう。

 でも、きっと大丈夫。僕らは共に、同じ苦難を乗り越えてきたはずだから――――



「……わかった。英騎のヤツラはあにさんに任せるよ」


『えらいあっさり信じるな』


「傭兵ってさ、正規軍じゃないただの雇われだから、依頼主との繋がりはあくまで金でしかないんだよね」


「だから傭兵が大事にするのは”横”の繋がり……こいつなら信頼できるっていう奴。そういう奴との繋がりを大事にするんだ」


「俺らにとって、あにさんは信頼できる人。だからあにさんが任せろっつったら任せるのさ」


「こんな理由じゃ不服かい?」


「いやいや、とんでもない」



 「信頼できる人」。

 彼らの中の僕の位置関係が、心の底から嬉しかった。




「ありがとう……」



「いやいや、こっちのセリフさ。来てくれてありがとう」





――――ドォン。またどこか遠くから、爆発音が鳴り始めた。




『トカゲのエサちょっとわけてくれや。またコイツぶっ倒れたら、わいらが無理やり口に突っ込むさかい』


「負傷者の分もあるからね……これくらいでいいかい?」


「十分! 恩に着るよ」


「それと……そうだ。これ……」


「あ、これ」



 団長はぎこちない手つきでそっと何かを取り出した。

 一瞬何かがわからなかったが、よく見るとそれはこっちでも見知った形の、手に”携帯”できるやや細長の箱であった。



「マドーワ……」


「留置所の係員に貰ったんだけど、俺らこれ使い方よくわかってないからね。意思疎通ができる魔導機らしいんだけど……」


『大丈夫。そんな難しいもんちゃう。ここの数字をポチポチポチっと押して通話ボタン押すだけ』


『ほら、お前のケー番教えたらんかい。こいつらにさすよかお前がササっと入力したった方が速いわ』


「……」



 差し出されたマドーワを滑らかかつ迅速に操作する。レトロな機器に少し戸惑うが、大体はスマホと同じだ。

 画面には僕の番号がでかでかと表示される。このご時世にカラー画面じゃないのは軽いショックだが、とにもかくにも通話ボタンを押し、そして即座にスマホへと着信が入る。

 久しく忘れていたこの感覚。LINEが出てきてからはふりふりするだけで簡単に交換ができるからな……

 妙ななつかしさを感じつつ無事彼らの連絡先を入手する。

 これで例え進む方向が別々でも、僕らは線で繋がった。それは比喩の意味でも、本当の意味でも。



「はい……できたよ」


「ありがとうあにさん……じゃあ、俺らは行くよ。こうしている間にも被害は増えているだろうしね」




――――グオオオオッ!




「……」


「……あ、そうそうあにさん、一つ言っていいかい?」


「……何?」


「さっき”自分は一人”だって言ってたけど……それは違うよ」


「俺らはすでに”仲間”さ。満場一致でね」


「……」


「じゃあ……おい野郎共!」




「「へい!」」




『お、なんやなんや?』


「コポッ?」



 山賊は横一列に綺麗に並び、そして僕の目の前で剣を縦に構えた。

 出陣前の激励のように見えなくもないが、竜族の習わしなのかオリジナリティに溢れすぎていてこっちとしては「?」のマークが頭から離れない。

 この謎の整列の指揮を執るのは、団長その人。団長の号令と共に、山賊はやはり激励の言葉を唱え始めた。



「業火に挑みし勇ましき者に、竜の加護を……」


「「加護を」」


「竜の如き猛々しさを。龍の如く高みを目指せし事を」


「「竜族の血に誓い、悠久の大地より祈ろう」」




 我ら竜の子 天昇る辰の化身 人の身ありて竜へと身を堕とせしは太古の昔

 住処を追われ行く早々 安寧求め彷徨う先に 降りかかれしは数多の苦難

 精根尽き果て焦燥に 一夜の宿の与えしは その者その地安寧を示す使者

 礼にと恵みを与えれば その地永劫に竜の地と崇められ ついに大地と一体と化す

 沈む我が身のその最中さなか 思い浮かぶはかつての仲間

 再び会いまみえる時来たれれば きっと果たそう岩魚の責

 



――――グオオオオオ!




「……民謡?」


『よくわからんけど、期待されてるのだけはわかったわ』


「コポォッ!」



 山賊元い竜族達は去っていった。

 自らが救い出した人々を地竜に乗せ、そしてまた新たに助けの手を差し伸べる為に。

 ゴウゴウ、ドォン――――またじわじわと、火と熱風が立ち上がってきた。

 雨は遠の前に晴れている。視界を塞ぐ物が何もなくなったこの場所には――――”一人”。



『ほんま、こんな所でもぼっちになるとはな』


「うるせえ自分から選んだんだよ」


「コポ!」


『ハハ、寂しいならまた相手したるからへこむなへこむな』


「うぜえ~。戻ったら絶対機種変してやるからな」


『おうおうおうしたらええ。タッチパッドでもらくらくホンでもなんでもよ』


『ただ……その前にやる事があるのは、わかってるな?』


「コポ! コポポポポ……」


「ああ……」




 じわりじわりと足元から忍び寄る小さな火を――――燃え広がる前に、踏みつぶした。




「――――いぶり出してやる! 爆弾魔ボマー!」





                           つづく 


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