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虹×フェンリル=密会

まだまだ続くぞ説明回……(;つД`)


「今日ねー、学園でねー、えーと……なんだっけぇ?」


 (れいん)は食事を進める手もそこそこに、口ばかりを動かして食卓にて独演会を行っていた。


「虹、おしゃべりもいいけど、早くご飯食べちゃってよー。あんた、お風呂に二時間もかかるんだから」


 虹のママである一美(かずみ)が、パパである嗣治(つぐはる)のコップにビールを注ぎながら言う。


「でもさ、あのさ、そのさ、プリントあるんだった!」


「ちょっと、虹っ。ご飯食べてからにしなさいよー」


 虹は突然プリントのことを思い出し、一美の制止を無視して一階のダイニングキッチンから二階の自室にドタドタと駆けていった。





「あったあった、ホラ、みてみてーっ」


 二階から降りてきた虹の右手には、ヒラヒラと一枚の紙が貼りついていた。虹はそれを一美に手渡すと席に着いて、スプーンをマイク代わりにして二人に演説をし始める。


「なんとっ、明日からしちじげんめがスタートしちゃうんです! 虹ちゃん、とくべつじゅぎょーに選ばれちゃいましたぁーっ」


「選ばれた……って、すごいじゃないかっ。パパ、褒めちゃうぞっ」


 嗣治が虹の頭をなでる。大きな手で髪をくしゃくしゃとされ、虹は微笑んだ。


「でもさ、生活リズム狂うし夜更かしはお肌に悪いから、ちょっと止めてほしいよねーっ」


「んー、確かに帰りが遅くなるのは心配だけど……学費は変わらないみたいだし、いい機会だと思ってしっかり勉強してきなさいよー」


 一美は、シャトルバスの運行本数増大の記載やその時刻表に目を通して話をする。その内心では、娘が特別授業などというものに選ばれたことに嬉しさも感じていた。


「んむんくっ……。んぅー……ごちそうさまっ!」


 虹は食事を綺麗に済ませ、自室に走ってパジャマやお風呂セットを取ると、そのまま浴室に飛び込んだ。



   ***



 バタンッ――。

 〈れいんのおへや〉とデコレーションされた表札がかかる部屋の扉が閉じられた。そしてその〈れいんのおへや〉の中には、ホクホクと湯だった長い黒髪をだらりと垂らした虹がいた。


「フーちゃん、でておいでよー」


 虹はスマートフォンの幻獣図鑑アプリをコツコツとタッチしまくる。しかしフェンリルは姿を現さず、虹は何度もコツコツコツコツ……。


「フーちゃんフーちゃんフーちゃんフーちゃんフーちゃんフーちゃん……」


「う、うるせぇーっ!」


 ぽんっ、という音と共にケムリが現れ、その中から声がした。そしてケムリからなにかが落ち、それは床に降り立った。


「あっ、フーちゃんっ! わたしに会いにきてくれたの? うれしーっ」


 虹はフェンリルの姿を捉えるなり、抱き着こうと飛んだ。フェンリルはそうはさせまいと、両手を広げて飛ぶ虹の下を潜って避ける。


「わぶっ! いたぁっ」


 見事に空振りした虹は、床に顔を強打した。フェンリルはしてやったりといった顔で、そのまま机の上へと移動する。


「ったく、明日からラグナロクが始まるってのに緊張感のねぇヤツだぜ。おい小娘、ラグナロクを勝ち抜くために少し話をしてやる。〈あいつ〉の話じゃ説明不足だったからな」


 床に()していた虹は起き上がるなり机から椅子をひっぺがし、それに座って机の上のフェンリルと向き合った。


「こむすめじゃなくて虹だよ、フーちゃんっ」


 虹は、にーっと笑ってフェンリルに名前を教えた。


姿(ツール)が偉そうに。貴様なぞ、小娘で充分だッ」


 フェンリルは短い後脚で胡座(あぐら)をかいて、短い前脚で腕組みした。


「あーもう、可愛いなぁーっ。フサフサさせてぇーっ!」


 青と白の毛が生え揃った耳や尻尾がピコピコと動く。それに合わせて、目を輝かせにんまりと笑う虹の顔は縦に横にと揺れる。


「あーもう、は俺のセリフだ。これじゃ話が進まん、いいから聞け、黙って聞けっ」


 フェンリルの苛立ちが高まる度、ピコピコは激しくなった。それを追う虹の顔や目は、ぐるぐるぐるぐると揺れる。


「チッ。俺と貴様は、特別授業(スローン)において二心同体(フェイト・スレッド)だ。俺が頂点に立つためには、貴様も強くなる必要がある」


「つよく? 大人の女性になるってこと?」


 虹は顔の動きをピタリと止め、フェンリルをじっと見つめた。


「……まぁ、成長しておくに越したことはねぇな。〈あいつ〉も言ってたろ、姿(ツール)自身の能力でも戦うってよ。俺が経験値を荒稼ぎするためにゃ、そういうことも想定して貴様も鍛えておけってことだ」


「けいけんち? ってなに?」


 フェンリルの言葉に、虹はきょとんとして聞いた。


「画面を見てみな、レベルってのがあんだろ。それが上がってくことで、俺は強くなれるしステータスも上昇する。で、レベルを上げるためには経験値が必要になるのさ」


 フェンリルの言葉に、虹の顔は険しくなりムムムと唸りだした。


「つ、つまりだな……特別授業(スローン)で勝てば、経験値が手に入るんだ。強いヤツに勝てば、その分たくさんの経験値がもらえる。その経験値を一定数稼げりゃレベルが上がるって仕組みよ」


 フェンリルは眉間にシワを寄せ、ヒクヒクと口角を上げて話をする。しかし虹は余計に分からないといった顔で、フェンリルに言葉を返した。


「でも今日、フーちゃんが戦ってたじゃん。わたしはフーちゃんに呪われて見てるだけでいいんじゃないのぉ?」


「だから……んがぁっ! 細かいことはやめだっ、筋トレしろ、小娘ぇッ!」


 フェンリルが頭を()きむしり、吠えた。


「ヤダよー、キツいの嫌いだもぉん。フーちゃんが戦ってフーちゃんが勝ってフーちゃんが強くなればいいじゃないっ。フーちゃん、大人の男になるぷろじぇくとーっ」


 虹はフェンリルの両前脚を握り、軽く上下に振る。フェンリルはそれをすぐさま振り払うと、虹を睨みつけた。


「俺だってなぁ、貴様のような小娘の手なんざ借りたかねぇよ。でもな、世の中にはルールってもんがあんだ。俺たちはこの世界で触れるものに制約がある。この状態で触れるのは……命がないもの、そして自分の姿(ツール)だけ。貴様らを介して、ようやく命あるものに触れられるようになるんだよ」


 虹は、「ふー……?」と素っ気ない返事をした。フェンリルはため息を吐き、目を閉じて話を続ける。


「それとな、特別授業(スローン)はリタイアできないと言われたろ? ……もし貴様が逃げようなんて考えたら、特別授業(スローン)の詳細を知った貴様を、俺は……」


 フェンリルは、ゆっくりと目を開けた。すると、そこに映ったのは――。


「くぅー……」


「…………。まだ8時だぞ、貴様……」


 フェンリルは、ケムリの中に消えていった。


もう少しで、バトルが始まります(;゜∇゜)

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