表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

幻獣×少女VS百獣×少年

ここまできてくれてありがとう( ^∀^)

バトルが始まりそうで、始まりません

 ぽんっ!


「わっ、フーちゃん消えちゃった」


 (れいん)の腕の中から、フェンリルが姿を消した。周りを見ると、どうやら皆のモノも同じように消えているようだった。生徒たちはなにが起こっているのかわからない様子で、ざわつきは強まるばかり。


「皆さん、静かにしてください。高等部と中等部が戻ったら、初等部も教室に戻りますよ」


 西田(さいだ)先生が、虹のクラスの列に沿うように歩きながら皆に話しかける。眼鏡越しに見えるその顔は、無表情に近かった。


「……はい、それでは教室に戻りましょう」


 西田先生の合図で、虹のクラスは初等部に向かい歩きだした。



    ***



 教室に入り着席するなり、西田先生は電子黒板の前で話を始めた。


「皆さん、学園集会お疲れ様でした。それでは、先ほど学園長先生からお話があったように、特別授業(スローン)について説明をしたいと思います。まず、皆さんの机と椅子を後ろに下げてください」


 西田先生に言われた通り、虹のクラスの生徒はガタガタと机と椅子を教室の後ろに寄せていく。そうして、教室には六割くらいなにもないスペースができた。


「説明は、実践しながらが一番早いです。誰か、協力してくれる人はいますか?」


 西田先生がそう言うと、すぐさま二つの手が挙がった。


「はいはい、わたしやりまーすっ」


「俺もやる。先生やらしてくれーっ」


 虹と小太りの少年が声を上げる。すると西田先生はその二人に前に出るように指示をした。


迅狼寺(じんろうじ)さん、奈良野(ならの)くん、ありがとうございます。ではいまから二人には、見本として特別授業(スローン)の練習を行ってもらいたいと思います」


 見本……という言葉に虹の心は踊る。活躍のチャンス、必ずモノにしようとやる気は満々だ。


「では二人とも、端末を用意してください。特別授業(スローン)を行うためにはアプリを使うのですが、起動(レイン・アップ)は昨晩済んでいます。起動(レイン・アップ)は常にされていて、終了(スーアサイド)は……できません」


 虹はスマートフォンの画面を見る。確認すると、いままで気づかなかったが本当に幻獣図鑑のアプリは起動中になっていた。


「ねぇ先生、このレベルってなんですかぁ?」


 虹はスマートフォンの画面を西田先生に向けて見せる。その画面には、子犬のようなフェンリルの顔と、〈レベル10〉、〈ステータス205〉という文字が表記されていた。

 奈良野もそれを覗き込むなり、大声でわめきだした。


「うっわ、迅狼寺のレベル10とか! 俺のレベル3なんだけど……ズルいぞっ!」


 奈良野が猛抗議を行う。しかし虹はそれを、ふふんと笑い飛ばした。


「わたしのは、あ・た・り、だもんねーっ。あんたのはハズレなんだから違って当然でしょーっ!」


 虹は、昆虫図鑑の仕返しをしてやったと上機嫌になった。奈良野はムカムカしながらも、言い返せず顔を真っ赤にするだけ。


「二人とも、意気込みは充分ですね。レベルのことですが、それはあとで説明しましょう。いまはまず、特別授業(スローン)のやり方から説明したいと思います」


 西田先生はそう言うと、右手を上げる。すると、ぽんっ! と二つのケムリが現れ、その中からフェンリルと小さいゴリラが出てきた。

 フェンリルは虹の横にスッと降り立ち、ゴリラは床にベシャリと落ちた。


「あっ、フーちゃんっ!」


 虹は両手を祈るように組み、瞳をキラキラさせてフェンリルをみつめた。


特別授業(スローン)を行うにあたって、まずは装着(デバッグ)をする必要があります。二人とも、端末の画面を見てください」


 虹はスマートフォンに視線を移す。そこにはさっきまでなかったはずの、〈装着〉という文字が大きく写り点滅していた。


装着(デバッグ)、してください」


 西田先生の無機質な声に応じるように、虹と奈良野は、画面の〈装着〉をタッチした。



 すると虹の周りに、強烈な青色の風が乱舞しだした。長い髪がバサバサと乱れ、スカートの中がちょっと見えたり隠れたりしてしまった。

 しかし虹は恥ずかしがるどころかそんなことはまったく気にする様子がなく、むしろ嬉しそうな顔をしている。それは、パンツを見せて喜んでいるのではなく、虹ではない虹が笑っているのだった。


「れいれい……にゅーモデ女児パンちょっぱや装備からのぴらみせおにプリーっ!」


 虹の新作女児用パンツをパンチラされた萌衣乃(めいの)は、アイホンのレンズを向けていた。


「ク……クク……。ようやくラグナロク開始かよ……。楽しませてもらうからなぁ……」


 風が止むと、虹はひとりごとを言った。虹の目つきは鋭く変わり、声も少し低く聞こえる。そして身体の周りを青白い光が覆っていて、両手の光は鉤爪(かぎづめ)のように(とが)っている。

 虹はニヤリと笑い、奈良野を睨んだ。灰色の光を帯びた奈良野は、(うつむ)いたまま、しんとしていた。


「では、始めてください」


 西田先生が眼鏡をクイッと上げながら言うと、奈良野は奇声を上げて、両手で自分の胸を叩きだす。そして、虹に向かって突撃しだした。


「奈良野くん、なにやってんのっ」


「ゴリラのマネ? うっまー」


 クラスメイトたちは奈良野のドラミングと突進に、爆笑。

 けれど璃奈(りな)だけは、思い詰めたような表情をして虹のことを心配そうに見つめている。

 そして萌衣乃はだけは、ネットで女児用パンツの購入ボタンをタップしていた。


「グオォォーッ!」


 奈良野は両腕を振り乱し、虹に襲いかかる。


「な、なんかちょっと怖くね……?」


「奈良野くん、あ、危ないよーっ!」


 クラス中が慌てだしたところで、すでに奈良野は虹に接近していた。そしてその激しく振った右腕が、虹の頭めがけて振り降ろされた。


「遅ぇよ、雑魚が」


 虹の姿が、突然消える。右腕は空を切り、奈良野はそのままドスンと床に転げてしまう。

 奈良野は起き上がりキョロキョロと周りを見回す。しかし虹の姿は見当たらなく、戸惑う奈良野。

 すると奈良野の背後から、いきなり虹の声が流れた。



「ククク……貴様に、未来を選ばせてやる」



 教室中に浸透した虹の声は、奈良野を喰い殺しそうなほど冷たいものだった。


最後まで見てくれて嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ