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幻獣①

書いててなにを説明したいのか、分からなくなってきた……(@_@;)


「本日は六時限目がないため、教室待機です。ですが……迅狼寺(じんろうじ)さん、密鳥梅(みつとめ)さん、そして鞍蛇(くらだ)さんは私と一緒に生徒指導室へきてください。他の皆さんは、自習でお願いします」


 西田(さいだ)先生はカチャッと眼鏡を直し、(れいん)萌衣乃(めいの)璃奈(りな)に教室を出るよう命じる。ざわつく教室の中、三人は席を立ち言われるままに先導する西田先生に着いてゆく。そしてその最中、虹だけはただならぬ面持ちで廊下を歩いていた。


(ねぇねぇ、ねぇねぇっ。せいとしどーしつってヤバくないっ? わたしらさ、なんかさ、もしかしてさ、怒られちったりすんのかなぁ……)


 ヒソヒソと、璃奈と萌衣乃に耳打ちをする虹。しかし璃奈はまだ虹と距離を置いていたため、(さぁね……)と素っ気ない反応を示す。萌衣乃は萌衣乃でイタズラに笑い、(れいれい、亜東(あとう)先生に指導っぽい?)と脅しをかけてくる。

 ただならぬ雰囲気に虹が死相を浮かべて歩いていると、気づけば〈生徒指導室〉と表札のある部屋へと到着していた。西田先生はガチャリと鍵を外し扉を開くと、三人に入るよう促す。

 璃奈、萌衣乃と入室していき、虹はオドオドキョロキョロとあとに続く。が、その中には虹の心を脅かす亜東先生の姿などなく……目立つ物と言えば長椅子が二つと、その間にあるテーブルだけだった。


「どうぞ座ってください。緊張しなくて大丈夫ですよ、特別授業(スローン)……いえ、ラグナロクについて少しお話しておきたいことがあるだけですから」


 三人は、黒い革で調度されたふかふかの長椅子に並んで着席すると、扉を閉めた西田先生も向かい合って着席した。

 西田先生が話を始めるということは亜東先生が来ることはない……そう思った虹は、心底安堵した。


「さて早速ですが、三人は幻獣を(ルーラー)に持つ姿(ツール)です。そういう存在が一つのクラスに三人もいるというのは、極めて(まれ)でして……今回こうして呼びだしたのは、三人に幻獣についてお話をするためです」


 表情の変わらない顔で、口だけを淡々と動かし話をする西田先生。しかしその口調は、少しだけ急いでいるようにも感じられた。


「まず、なぜ幻獣に固有名詞があって百獣には普通名詞しかないかということです」


 西田先生は、虹、萌衣乃、璃奈……と、並んでいる順番に視線を移動させる。


「フェンリル、フェニックス、ヨルムンガンド……普通名詞にしてしまえば、狼と鳥と蛇。ですがこうして呼び名をつけられているのは、前ラグナロクにて優秀な成績を収め、〈幻獣〉の位を授かったからです」


 西田先生はつらつらと話してみせるが、目をぱちくりして表情を固くした虹が口を開き、質問をする。


「せんせい、らぐな……ってなんですかぁ?」


「それも説明がまだでしたね。ラグナロク……それは、特別授業(スローン)を含めたこの戦いの総称です。特別授業(スローン)というのはラグナロクの一角であり、皆さんにはいずれ更なる戦いを行ってもらうことになります」


 説明を聞いた虹は余計に分からなくなってしまい、そっと口をつぐんだ。


「ラグナロクにて幻獣として認められた者は名を与えられ、それ以外の者は百獣として区別されます。百獣は、次回のラグナロクまで名を持たずに生きなければなりません……と言っても、ラグナロクは今回で最後となるのですが」


「先生……。前回とか最後とか、この学園は代々こんなことを行ってるんですか? ずっと、周りに秘密にしてこんなことを……」


 璃奈は理解できないといった顔をして、小さく噛みつくように西田先生に口を利く。対する西田先生は眼鏡をクッと上げ、璃奈に見入る。


「ラグナロクは……途方もない時間を掛け、行われ続けてきました。ただ、場所も契約(スレイヴメント)の期間も、世界すら……ラグナロクが取り仕切られる度に違うのです。……これは説明をしても分からないことでしょうから、話題を次に移しましょう」


「ぷーっ。ぷにたち、名前ほしくて命がけ? ならウチせいめーはんだんやっぷっぷぅー」


 突然、萌衣乃が割っては入るように提案をする。――と、西田先生は眼鏡を外して眉間を押さえ、ため息を吐いてしまった。


「もちろん、幻獣としての名のためだけではありません。他にもラグナロクを行う理由はあるのですが、今回は割愛します。……では本題です。三人が幻獣の姿(ツール)として選ばれたことについて、お話を……」


 西田先生が眼鏡をかけ直し、三人をスゥッと見つめると――……カチャリ、という音が生徒指導室に響いた。

 それは、扉が開く音。そして開いた扉から姿を現したのは、四人のうち一人にとって最も会いたくない存在であった。



「……おや、これは失礼、まさか人がいるとは思わなかったもので。ですが、こちらの使用許可はとっているのでしょうか」



 西田先生を見下ろし言い放ったのは、学園長だった。金の髪をさらさらと揺らし司教が着るような衣装を(まと)い、笑顔を振りまく学園長。だがそれは決して爽やかと呼べるものではなく、むしろ不敵とも呼べるもので、それを見た西田先生は思いきり顔をしかめる。

 いきなりの学園長の登場に異様な空気が漂い始める中、璃奈はふと疑問を抱いてしまった。それは虹に対してのもので……虹とはいまだ気まずい感じでありながらも、やはり気になってしまい疑問を率直にぶつけてみることにした。


(ねぇ、虹っ……。あんたさ、いつも学園長先生にキャーキャー言ってたわりに、反応なさすぎなんじゃい?)


 ヒソヒソと話かけてくる璃奈に、虹は「にーっ」と笑ってコソコソと返す。


(んとね、そのね、あれねぇ。みんなが大声だしてるから、負けないように叫んでただけだよっ)


 学園集会などで学園長が姿を見せるとき、女子生徒たちは好色狂乱する。それは虹にとって目立つための絶好のチャンスでありそのために騒ぎ(わめ)いていただけで、学園長そのものに特別憧れの念を抱いてるわけではなかった。


「……申し訳ありません。すぐに戻ります。皆さんすみません、教室に……」


 西田先生は席を立とうと腰を浮かせる……が――。

 学園長はそれを許さんと言わんばかりに西田先生の前に立ちはだかった。


「いえ結構。せっかく集まってもらったのですから、幻獣と皆さんの関係についてお話するのもよいでしょう。フェンリル、フェニックス、ヨルムンガンド……お出でなさい」


 学園長の言葉を受け、ぽんっと二つのケムリが発生し……その中からフェニックスとヨルムンガンドが現れた。

 フェニックスは萌衣乃の肩へ羽ばたき着地。ヨルムンガンドは璃奈の膝の上へボトリと落ちた。

 しかし、もう一つ呼ばれたはずのフェンリルは……まるで姿を現そうとしない。


「ちょっと、フーちゃんも呼ばれてるよっ。はやくでておいでよぉー、もぉーっ!」


 一人だけ取り残された気分になり、慌ててフェンリルの名を呼ぶ虹。それでも、フェンリルが出現する気配は(わず)かも感じられない。虹はますます焦り、なんとかフェンリルを呼びだそうとスマートフォンを取りだそうとする。 ……が、それはニコニコと笑う学園長に制止されることとなった。


「フェンリルは怯えているのでしょう。それならば、放っておいて構いませんよ。では、フェニックスとヨルムンガンドだけを交えて……」



 ――タンッ!



「だぁーれがビビってるだってぇ? 貴様、戯れ言が過ぎると寿命が縮むぜ……」


 突如現れたフェンリルが、皆の中心にある机に降り立ち言い放つ。キッと尖らせた眼で突き刺すように見上げる先には、当然のごとく挑発的な態度を取った学園長の姿があった。


「フェンリル、やはりお前はそうでなくては。ですが、その勢いだけでは……今回も幻獣止まりでしょうねぇ」


「なぁんだとキサッガッ……!」


 フェンリルはセリフの途中で、舌を噛んでしまったように発言を途絶えさせた。それは、背後から虹が抱き着き、フェンリルを懸命に絞め上げていることが原因だった。


「フーちゃぁーん! よかったぁ、もう会ってくれないのかと思っちゃったよぉー……」


 涙目になった虹は、ギュウギュウみりみりとフェンリルを息の根を止めにかかる。フェンリルの目は血走り、虹の腕を前脚でタシタシと連続でタップした。


「ぎ……ぎざまっ……は、な、ぜぇ……ッ!」


「わ、ご、ごめんねフーちゃんっ!」


 パッ――と虹に手を離されたフェンリルは、虹の膝へドサリと落ちる。そのまま舌を出し、へーへーとへばるフェンリル。

 虹は苦しそうなその姿を見るなり「わぁーっ!」と叫び、なんとかフェンリルを蘇生させようと揺さぶったり息を吹きかけたり逆さ吊りにしたりと試し始めた。


「れいれい、フーピーとラブどっきゅんっ。ぷに萌えっ」


 二人を見て、ヘラヘラと笑う萌衣乃。それを横目に見る璃奈は、うつむき肩を揺らし、必死に笑いを(こら)えていた。


「皆さん、本当に仲がおよろしい。それこそ……我々が求めるもの。さて、役者も揃ったところで――いよいよ本題といたしましょう」


 学園長は西田先生の隣に座り、金と白の彩飾があしらわれた衣装をサッと整える。そして、すっかりと黙り込んだ西田先生に、凍ったような笑顔を向けた。


読了、お疲れ様でした(._.)_


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