フェンリルVSなず愛&スレイプニル&虹
動きのある描写が上手く書けない(;゜∇゜)
「貴様に与えられた未来は、二つだッ。まず一つ、俺に指図したことをいますぐ謝罪し泣いて許しを請うこと」
色とりどりの植物が立ち並ぶ植物園の中で、吹き抜けから煌々(こうこう)と照らす灯りを受けた虹は指を一本立ててみせる。
(指図って……そんなんしてないしっ。てか未来を選ぶってなに? もう意味わかんないよっ!)
「そして二つ、俺がこの雑草どもを根絶やしにする様をただ傍観していること。さぁ、選べよッ」
虹の声に構わず虹は指を二本立てる。ニヤニヤと笑いながら答えを催促する虹の人相は、もはや悪役そのものであった。
(わたし悪いことしてないんだし謝りたくないんだけどっ。てかなんで謝んないとお花をいじめるの? やっぱりわたし帰りたいよっ。フーちゃん、わたしの身体からでてって!)
「厭だ厭だで全てが通るかよ。なら仕方ねぇ、貴様には制裁を加えることにするッ!」
虹は青白い光に覆われた両腕を持ち上げ、光で形成された爪をシャキンと広げる。
そして華奢で小さな身体を大きくひねり……大きな爪で群生する植物を切り裂いた。
(キャアーっ! ほんっとサイテェーッ。フーちゃん、ひっどーい!)
「うっせぇんだよアホタレー! これで分かっただろうがッ。貴様は俺に逆らえねぇってことがなぁッ!」
長いツインテールと短いスカートを揺らし、ザックザックと草花を削いでいく虹の肢体。白い腕を振るう度に宙を舞う花びらが、虹の心に毒を与える。
(ヤダぁーっ! もう帰るってばぁー! フーちゃん大っ嫌ぁーっい!)
高笑いを上げて狂喜し、伐採を続ける虹。次なる狙いを百合の花に定めると、ブォンという風切り音を唸らせ左腕を振り上げた。
(……やめてぇーっ!)
「だったら二度と指図すんじゃねぇぇぇえーッ!」
バゴォォンッ――……!
という金槌が岩を砕くような音が鳴り……虹が地に膝を突いていた。その姿はまるで、馬の力強い脚にでも蹴りつけられたかのようである。
「……ッ! 貴様ァ……なにしやがんだ、スレイプニルッ!」
虹は苦悶の表情を浮かべ、左腕をだらりと垂らす。右手にスマートフォンを取り画面を見ると、左腕の部位の魂源ゲージがごっそりと減っていた。
そして視線を〈スレイプニル〉と呼んだ存在へ移すと……そこは植物園の中心で、黄色の光を据えたなず愛が自分の脚で立つ姿があった。その脚はスラリと長く伸び、車椅子に乗っているときとは違う印象を虹は受けた。
「喚くな、フェンリル。ここはなず愛殿と我が敬愛する場所。たとえ地下学園闘技場なる仮初めの場所であろうと……汚すことなど許しはせんッ」
虹に向かい説き放つなず愛の表情は昼休みに印象的づけられた穏やかなものではなく、まるで裁きを下す最高神のよう。語る声も勇壮なもので、虹は某歌劇団でも観ている気分になった。
(きゃあー、なず愛さぁーんっ! カッコいいーっ!)
思わず叫ぶ虹。しかしその声はフェンリル以外に届くことはなく、その上フェンリルの感情を存分に逆なでしてしまった。
「おい小娘ッ、ちったぁ黙ってらんねーのかッ! 貴様は俺の姿なんだ、邪魔すんじゃねぇッ」
(ヤ・ダ・よぉーっ。だっていま、カンペキにフーちゃんが悪役でなず愛さんが正義の味方って感じじゃーん。わたし、なず愛さん応援しまぁーすっ。わたしの肌が傷つかないてえどに、フーちゃんやられちゃえー!)
「き……貴様ァァァァアッ!」
虹は両腕を広げ、吠えに吠えまくる。それを見たなず愛は「ハッ」と笑い、虹の背後に瞬間的に移動した。
「……ッ! 相変わらずの翔脚だなッ」
虹は振り向き様、右腕の爪でなず愛に牙を剥く。しかしそれは空を切り、直後虹の右腕の上になず愛がスッと佇んだ。
「姿と呼吸がバラバラだな。相手にならんぞ。……やはりいまのお主では、なず愛殿の願いは叶えられぬようだな」
なず愛がフッと姿を消すと、虹が蹴破り番井の取れかけた植物園の扉が、ギィギィと音を立てて揺れていた。
「……っのヤロウ、倒されてぇんじゃねーのかよッ」
虹は、ダンッ! と土を踏みつけ勢いよく飛び上がる。そして当然のごとく虹の視界には天窓が迫り、それを自らの意思で回避できない虹はただ叫ぶしかなかった。
(わぁーっ! あのさ、てかさ、ちょっとさっ、もぉーっ、フーちゃんなにしてんのぉーっ!)
虹の怒りもフェンリルの殺意の前では意味をなさず、虹の身体は吹き抜けの天窓に突撃を繰り出し――。
ガッシャァァーンッ――……!
「俺を焚きつけるたぁ肝が座ってんじゃねぇかよッ! 全身魂崩壊なんかで済むと思うなよ……終了まで追いつめてやるッ!」
はらはらと舞い飛ぶ花びらのようなガラス片の中で、虹は顔をひきつらせて極悪面を浮かべる。植物園の屋根へ降り立ち辺りを見渡し、低めの鼻をスンスンと利かせ標的を定める虹。すると、獣のように四つ足で構え、風のように屋根から屋根へと飛び移りだした。
「いくら脚が速くたってよぉ、甘チャン独特のくっせぇ臭いは消えねぇんだよッ。すぐ見つけてやっから、せいぜい膝抱えて泣いて怯えて祈って……」
ぐにゃり。
「……あ?」
虹が中等部一年の学舎の屋上へ着地すると、足元になにか柔らかい感触を覚えた。すぐさま虹は足元に視線をくれると、顔を踏まれて頭部の光を失った男子生徒が見上げていた。
黒色の制服を着た男子生徒は空を翔ていた虹の支柱となっていて、ある種オブジェのような異様な造形を作りだしている。そしてそれを、周りにいる十数人の男女の生徒が、唖然とした顔で眺めていた。
しかし……この状況に最も焦っているのは、他でもない、虹なのであった。
(ちょ、ちょっとフーちゃんはやく降りてっ! スカートの中、みえちゃってるからっ!)
いまにも泣きそうな声で訴える虹。だが虹に全く慌てる様子はなく、軽く跳んでクルリと宙返りをして――ぼすんっ、と他の男子生徒の顔を踏みつけた。
パシンッと弾ける男子生徒の頭部の光。その瞬間男子生徒の顔は赤くなり、あろうことかヘラっと笑いだした。
(は、はぁぁーっ? なにしてんのフーちゃん! てかさ、あのさ、こいつさ、ぜったい喜んでんじゃーんっ)
虹の言葉を聞き、虹は「ククク……」と肩を揺らして笑う。それから虹は、男子生徒を蹴散らし屋上に着陸した。
「そりゃ愉快な話だな、小娘。スレイプニルを追うのは、もうヤメだ。小娘、今日のところは貴様の調教をしておくことにしようじゃあねぇか……なぁ?」
(へ? フーちゃん、それどーゆう……)
虹は手近な女子生徒に飛びつき、細く白い脚を上げて頭部を凪ぎ払う。そうして蹴り上げた脚から後転し、地面に手を突くと逆立ちの状態になり……ガバッと大開脚をしてみせた。
(うっぎゃぁぁあぁあぁぁーっ! さいてーさいてーさいてーさいてーさいてーさいてぇぇぇぇーっ!)
「ククク、ククククッ! 思った以上の反応でなによりだぜッ。さぁよく聞け小娘、やめてほしけりゃまず手始めに……特別授業をバックレるなんて考えは捨てると誓えぇッ!」
虹は、天から注ぐ光を浴びて輝くプルプルつるつるスベスベの脚を惜しげもなく披露し、その両脚の中心にある桃色の布までも堂々と露にしてしまっている。その状態を男子生徒も女子生徒もまじまじと見つめ、じりじりと近寄る者まで現れた。
(んあぁーっ! むわぁーっ、んもぉぉーっ! わかったから、はやく足とじてよぉーっ!)
虹のセリフに虹はニヤリと笑い、にじり寄ってきた男子生徒の身体を両足の裏でバシンッと挟み込んだ。その瞬間、男子生徒は全身から光を失いダラリと地に伏した。
それでも器用に逆立ちを続ける虹は、地面からトンと手を離し青空を背景にして宙を舞う。そして、青白い光に覆われた両腕とツインテールを素早く振り乱し、コンクリート造りの屋上にストンと降り立った。
「まぁ今日はこんなもんで許してやるよ。だが貴様に下僕としての自覚が足りるまで調教してやるから、覚悟しておけよ?」
そう、悪い顔をして言う虹の周りには……十数人の生徒が光を失い気絶している。
辱しめを受けた虹は本当に悔しくて悔しくて耐えがたい気持ちでいっぱいだったが、やられっぱなしでは終わるまいと一つの知恵を心に芽生えさせていた。
キーンコーン――……。
「チッ、結局雑魚しか狩れなかっ……」
(フぅぅぅーっちゃんっ! つぎからは、こんなヒレツなこと、ぜぇぇーったいにさせないからねぇぇえーっ!)
突然、生き返ったようにフェンリルに噛みつく虹。だがフェンリルはフェンリルで、小者しか狩れなかったことで心底機嫌が悪い。それに虹の態度を重ね、ふつふつと沸騰し始めた怒りは噴火寸前であった。
「……あ? 貴様ァッ、まだわかって……」
(あーっはっはっはっはぁーっ! そんなこと言えるのも、いまのうちだよぉーっ)
「な、なんだ貴様……どういうことだ?」
虹のあまりに自信に満ちた様子に、虹の怒りは鎮火され少したじろいでしまった。
(…………。ぷぷっ)
虹は、見せパンの着用を決意していた。




