フェニックスVSメデューサ
ちょい長めですm(__)m
主役より主役っぽい……
(王って、なーぁにぃっ? ぷに隊長、ぷにぷにぷにんせすぅ?)
萌衣乃は、ボゥッと右手に小さな光の焔を数個生み出し、乙姫に向けて撃ちおろす。
乙姫は襲いくる焔で数匹の蛇を犠牲にしながらも、直撃は避けそのまま背中から窓に向かい飛び退いた。
「むっふぅーんッ、ここじゃあ狭すぎるわぁぁ。こっちにいらっしゃいなァァッ」
バッシャァァーン――!
窓ガラスにダイブしガラスを粉々にする乙姫。そのまま外へと転がり出ると、食堂沿いの桜並木を駆け抜けていった。
「…………」
萌衣乃は無言のまま朱色の光で形成した翼を羽ばたかせて、乙姫が割った窓から外へと舞う。
(わっ、まぶしゅうまぶしゅうっ。さんさん太陽さー……あらっ?)
食堂から舞いでた萌衣乃は、非常に輝度の強い光に照らされた。しかしそれは、陽の光とは異なるものであった。
(むぅー? ぴっかり電球まーるまるぅ?)
目を眩ませるような光は正午の辺りに位置を決め、萌衣乃の身体を照らしつけている。巨大で丸い、電球のような形をして。
「……太陽の紛い物だ。いちいち目についた物事に反応するでないッ」
萌衣乃は萌衣乃を叱りつけ、桜吹雪が舞う地へ翼を休めるように降り立った。辺りを見回すと、撹乱するように校舎の陰へ身を隠す乙姫の姿が目に映った。
(わーっ。ぴゅるりらおにゴッコ、かくれんぼまでずるいなぁーっ)
「……ふん。地形を生かすことも、また戦略。全ては武器であり、防具であるのだ」
萌衣乃は、ボウッと右手に焔の玉を数粒作りだすと、それを桜の木の下にある茂みに放った。すると茂みは燃え盛り、灰色の光が3つ弾け飛んだ。
「幻獣を狙う輩を利用し、武器且つ防具にする。実に小賢しい」
灰となった茂みから、三人の生徒が倒れて姿を現した。
(おにゴッコ、たっちするニャーおに変わりんるん。このおにゴッコ、ぱちぱちたっちんどーなりっぷぅ?)
萌衣乃の言葉を聞いた萌衣乃は、「ふんっ」と一つ笑ってみせる。
「汝よ、魅せてやろう……」
萌衣乃は両手を広げ、ボウッと焔の玉を十数個生み出してみせる。そして茂みや桜の木に、少しばかり楽しげな顔で一瞥くれる。
すると、ガサガサという音が萌衣乃を取り囲むように合唱を始め、陰から幾つもの目が光って見えた。
「余に捕まるということは、総てを焼き尽くす灼熱の焔を味わうということ……」
灰色や茶色の光を帯びた生徒たちが、一斉に萌衣乃に飛びかかる。ある者は光の爪を立て、ある者は光の牙を剥き、ある者は光を武器のように形成して猛威を振るう。
「幻獣フェニックスぅぅぅーッ、死にやがれぇぇぇぇぇッ!」
生徒たちは雄叫びを上げ、萌衣乃を襲撃。
バキンッ、ガキンッ、バゴンッ!
と次々に音が鳴り、砂埃が辺りを支配する。
……風が吹き、砂埃が流されていく。
鮮明になったその場所に、襲撃を受けたはずの萌衣乃の姿はなかった。それどころか、徒党を組んだ生徒たちが互いを攻撃し合い、倒れている。
「……ってぇな、クソッ! てめー、ふざけんじゃねぇぞッ」
「おめぇこそふざッ……あ、や、ヤベェ……ッ!」
男子生徒の一人が、女子生徒の背中を指差し言い放つ。女子生徒は、「あー……?」と言いながら周りを見渡す――。
萌衣乃を襲撃した生徒全員の身体に、焔の玉が数個ずつ付けられていた。
「……これが不死鳥の、鬼業火なるものだ」
空高く舞い上がった萌衣乃は、天から降り注ぐ光を一身に受けて生徒たちを見下ろしていた。
そして萌衣乃が両手をグッと握りしめた途端、下々の生徒たちに捕り憑いた焔が――破裂した。
ボウオァァァァアッ――……!
生徒たちは火柱のような火焔に包まれ、悲鳴を上げる。すると、次々に帯びた光をパシンと弾けさせ、事切れたように倒れていった。
(うっぴゅーんっ! ぷにたいちょおっ、ノンおに、アットあくま……っぷぅー)
「ふん、此れはまだぬるま湯よ」
不自然なほど青い空に朱色の焔で羽ばたく不死鳥は、手の届く太陽に祝福を受けるように大空を仰いだ。
(いっぱいわっきわきぃー、みんなやっきやきぃーっ)
「…………」
物陰から湧いてでる生徒を問答無用で焼き払う萌衣乃に、萌衣乃は即興で作った歌を歌って聞かせる。
萌衣乃は乙姫の気配を追って校舎の周りを歩き回り、襲いくる生徒を無言で根絶やしにする。見た目は金髪で肌の白いギャルメイクの少女だが、その振る舞いは玄人の狩人そのものであった。
(あっ、ぷにたいちょおっ。砂がもくもくグラウンド、標的みっけりぴーんでありまっぷ!)
萌衣乃の視線の先には、合戦場と化したグラウンドがあった。白、黒、橙の制服を着た生徒たちが、一心不乱にバトルを繰り広げている。
そしてその中に、紫色の異様な光を放つ者がいた。
「……ふん」
萌衣乃は焔の翼を広げ、飛び立つ。グンと高度を上げ、空高くから乙姫に狙いを定めた。
当然、乙姫も萌衣乃を捉えており、ギョロギョロとした眼で見上げている。
「幻獣というだけで、同じ土俵に立っているつもりとは……哀れな」
全身を包む朱色の光を燃え盛る火焔のように揺らめかせ、萌衣乃は標的に向かい、滑空した。
ギュオォォォォッ――……!
(わっぷぅーっ! じぇっとこーすたーじゃーんっ?)
勢いをつけ焔を振りまき降下する萌衣乃は、身構えた乙姫を砕かんばかりの激突をみせた。
バキャァァァァーンッ!
乙姫を突き飛ばし地上すれすれを旋回する萌衣乃は、速度を落とし翼を羽ばたかせ、ゆっくりとグラウンドに降り立つ。
乙姫は萌衣乃からの体当たりを受け、頭部の蛇を二十匹は散らしていた。
「むふっ、むふふふふ。幻獣の王、やっぱり素敵ねぇ……。もっと、遊ばせてくださいますぅ?」
乙姫は肩を揺らして笑い、スゥッと振り返る。話し方は丁寧であるが、声が低いためドスが利いており奇妙な雰囲気を醸している。
「…………」
「むふっ。女同士、仲良くやりましょぉぉぉおッ!」
乙姫が、萌衣乃の周りをずるずると駆け回り始めた。乙姫の描く円の中心に置かれる形となった萌衣乃。乙姫はそれに併せ、頭部の蛇を数匹飛ばし萌衣乃に攻撃を仕掛ける。
萌衣乃は飛び交う攻撃を素早くかわし、乙姫を追うようにその場でスピンして両手から焔の玉を飛ばしていく。焔の玉は乙姫を掠め、その度に紫色の蛇が少しずつ地に落ちていった。
(むぉぉぅっ、おめめくるりんぷぅーっ)
乙姫は円を描いて高速で走り萌衣乃に向かって何度も蛇を投げ込むも、それは空を切り続ける。
「むふっ、そろそろいいかしらんっ」
急に、乙姫が砂の上を滑るようにして動きを止めた。
気づくと、乙姫の頭部から蛇がほとんどいなくなっている。しかしその代わりに、萌衣乃の周りに紫色の光の蛇が円状に撒き散らされていた。
「むっふふぅーん、そぉれッ」
乙姫が両腕をバサリと挙げると、散らばった紫色の蛇が一斉に萌衣乃の身体に突撃し、ガジリと全身に噛みついた。
「ッ!」
萌衣乃は瞬く間に腕や脚など身体中を蛇の牙で撃ち抜かれ、動きを封じられてしまった。
(ぷにゅーっ! ウチ、こーゆーの趣味じゃないならりーん!)
蛇は後部を地面に根づかせていて、楔のようになり萌衣乃を磔にしている。
「むっふふふふーんっ。アンタの攻撃を受けるフリをして、わざと蛇を撒き散らしてたのよんっ。それと……アンタはそろそろ魂源切れじゃないかしら。ち・か・ら、でないんじゃなぁーい?」
乙姫は勝ちを確信したように、にやぁと笑い舌舐めずりをする。
しかし萌衣乃は表情を微塵も変えることなく、ただ乙姫を睨んでいた。
「むふっ、強がらなぁーいのっ。アタシ、知ってるのよ。アンタは技を使うたびに、魂源を消費しちゃうってこと……。もう、だいぶ消耗してるんじゃなぁぁーい?」
「…………」
萌衣乃に噛みつく蛇の力が、一層強まった。ミシミシと音を立てる紫色の蛇は、朱色の光に侵食していくように見える。
「楽しかったわぁん。ほいじゃ、また遊んでねぇんっ」
乙姫はすっかり少なくなった頭部の蛇を総動員し、磔になった萌衣乃に向けて、一直線に飛ばしつける。
速度を上げて迫りくる、コンクリートさえ破壊する数匹の蛇。その弾丸が的を外さぬようにと身体中を打ちつける、堅牢な鎖のような十数匹の蛇。
状況から言えば、まさに絶体絶命といった様である。
(ぴゅーっ。めいっぷ、さいしゅーかぁーいっ?)
蛇は、少女に、到達した――。
「ギャァァァァアッ!」
叫び声が上がった。
それは、蛇の攻撃を食らった少女……に攻撃をした乙姫の声。弾丸となった蛇は、萌衣乃に当たると同時に全て爆ぜていたのだった。
「あぁあぁぁ……、そんな、ウソでしょおッ? ど、どういうことなのォ?」
なにが起こったのか全く見当がつかずパニックに陥る乙姫。それを見た萌衣乃は「ふんっ」と笑い、全身を拘束している蛇を、パシンッ! と瞬時に消滅させた。
「……んがっ! えぇ? ……はいぃッ?」
乙姫は頭の光をずる剥けにされらギョロリと目をひん剥いて呆然とする。
対する萌衣乃の身体を包む朱色の光は、その輝きを一切損なっていない。萌衣乃は腰に手を当てて余裕な笑みを浮かべ佇み、口を開いた。
「汝よ、思い違いも甚だしいな。あのような者たちを往なすために消耗する力など、たかが知れているわッ。……汝、もしや余に勝てるなどと考えておったのか?」
凛としたギャルが、凛とした声色で扱き下ろす。しっかりと侮辱された乙姫は、なにも言い返すことができずただただ目を丸くするばかり。
「ふん……。果たして遊ばれておったのは、どちらであったのだろうなぁ?」
萌衣乃は右手を挙げると、少し大きめの焔を作った。
「やっ、ちょっ……、ご、ごめんなさぁぁぁーっいッ!」
焔はクネクネと動く乙姫に向かい放射され、すぐさま直撃し――。
「いやぁぁぁぁぁんッ!」
乙姫から紫色の光を焼却した。
(ぷに隊長、ノンおにごっこ。りあるおにだっしゅーっ)
光を失った乙姫は、グラウンドの砂の中へ、その大柄な身体を沈めていった。
キーンコーン――……。
『皆、ご苦労様。今日の特別授業はこれで終了よ。生き残った魂たちは……』
特別授業の終わりを知らせるチャイムと亜東先生の声がグラウンドにこだまする。
萌衣乃はおもむろにアイホンを取りだすと、画面をじっと見つめた。
〈レベル12〉、〈ステータス315〉
萌衣乃は「ふんっ」と一つ吐いてみせると、焔の翼を羽ばたかせ、校舎の中へと消えていった。
ありがとうございました( ´∀`)
またいらしてください。




