萌衣乃×萌衣乃(フェニックス)
萌衣乃です。
少しはバトルっぽくなったかも?( ;∀;)
視界に、眩い光が広がった。
突然の灯りに目をチカチカとさせられた萌衣乃は、手にしたアイホンから目を離す。すると、いつの間にやら学生食堂に移動していた。
移動個室のガラスが開くと、萌衣乃はすぐさまベルトを外して食堂に降り立った。
「あーりりんっ? もぐもぐもぐりん、すとまっきんがペコりっぷーっ?」
萌衣乃はアイホンを食堂の座席に放り、厨房へと侵入する。それから業務用の大きな冷蔵庫を漁り、豆腐と醤油を抱えて座席に戻った。
「ひーややっこーんーに・ち・わんっ。ぷぅーりんみぃたいな、まねっコりゅーんっ」
萌衣乃が豆腐に醤油をかけていると、亜東先生の声による放送がかかった。萌衣乃は冷奴を頬ばりながら、音のでてきたスピーカーを見る。
『皆さん、無事に到着しましたか? いまあなたたちは、学園のどこかに……』
萌衣乃は「ひまっコめいっぷーっ」と呟きアイホンを弄りだす。これで亜東先生の放送は、もう萌衣乃の耳には届かなくなってしまった。
【装着せよ】
アプリにてフェニックスに語りかけた萌衣乃への返事だった。
「かーしこまりっぷぅーっ」
萌衣乃はアイホンの画面に映しだされた、【装着】というアイコンをタップする。
朱色の風が、萌衣乃の身体をふわりと包み込んだ――。
朱色の風がフッと消え去ると、その中から艶やかな顔つきの萌衣乃が姿を現す。化粧をしていることも合間って、初等部の生徒という雰囲気からは逸脱した出で立ちに見える。
「……さて、開始としようか」
萌衣乃は、すぅっと厨房を睨む。その表情や声色は、チャラチャラと着飾った制服が〈着物〉に見えてくるほどに風光明媚である。
(わっぷー、なんかふわふわりぃ。頭ぽわぽわ、身体ぴゅるぴゅるぅーっ)
「あまり余計なことを口走るな。気が散る」
萌衣乃は萌衣乃をぴしゃりと叱りつけ、厨房の奥の暗がりへ意識を集中させる。
そこには、細い紫色の光を無数に携えた黒色の制服の男子生徒が、萌衣乃を睨み身構えていた。
(にゅぷぅーっ。ぷに隊長っ、ありは中等部の男子んぐ生徒ぅじゃありっぷー? おめめこわこわぶるりんちーっ)
男子生徒は長めの黒髪を遊ばせたような髪型をしていて、そこから無数の紫色の光が伸びている。目は見開きギョロリとした印象で、暗がりに浮かぶそれは不気味にも見えた。
「むふっ、むふふふふふふ……。アンタぁ、幻獣フェニックスじゃなぁぁい? むふっ、アタシも幻獣でねぇぇ、早速楽しそうな奴が相手で嬉しいよぉぉぉ……」
それは女口調だったが、声は男の低いものだった。男子生徒は頭から無数に伸びる光の内の一本が持つタブレットを見て、にやぁっと笑う。そこには〈フェニックス〉、〈レベル11〉、〈ステータス293〉と映っている。
萌衣乃もアイホンを確認すると、画面には〈メデューサ〉、〈レベル10〉、〈ステータス131〉とあり、〈中等部二年〉、〈乙姫 巳恕〉と生徒の情報があった。
「幻獣メデューサ……。ふん、箔づけにもならぬ」
萌衣乃は視線を乙姫に戻すと、朱色の光を背中から翼のような形で広げた。その翼は、燃え盛る焔のようにゴウゴウと揺らめいている。
(わぷぅっ! ぷにっち、ちょーイケやばやばっ!)
歓喜する萌衣乃を無視し、萌衣乃は厨房へ向かい一歩ずつ前進していく。対する乙姫は、頭部から伸びる無数の光で厨房内にあるあらゆる調理器具を持って構えていた。
「むっふふふふふふッ、遊びましょぉぉぉおッ!」
乙姫は、構えた調理器具を萌衣乃に向かいビュンビュンと投げつける。包丁にまな板に調味料を入れた瓶、中華鍋や穴空きお玉……全てが勢いをつけ萌衣乃に牙を剥く。
(ぷに隊長っ、カラアゲせってぃんぐが接近中なんですけどぉっ?)
ヘラヘラと笑うように話す萌衣乃。萌衣乃は凛とした態度で萌衣乃の言葉を受け流し、広げた焔の翼を羽ばたかせて風圧を起こす。
ブワッ! と風に煽られた調理器具は、ガランガランと床に叩き落とされた。
「ふん、茶番などしよって」
キリッとした瞳で乙姫を睨む萌衣乃。そして続けざまに、朱色の光に包まれた右手を前に伸ばした。
「散るが善い」
萌衣乃の右手の光は、火柱のような焔と化して渦を巻き、空間を焦がしながら乙姫に襲いかかった。
ゴオォォォ――……!
朱色の火焔は触れるもの全てを焼き払うような音を鳴らし続け、容赦なく乙姫の全身魂崩壊を狙う。
(ぷにたいちょぉぉーっ! おにイケっぴるぷぅーっ!)
渦巻く火焔を目にした萌衣乃はテンションを満点にし、フェニックスに称賛を送った。しかし萌衣乃は身も心も、厨房を潜む乙姫を捉えたままだった。
「……ふん」
顔をしかめる萌衣乃の視線の先には、もくもくと朱色の煙を身体中から吐きだす乙姫の姿が。それは紫色の光を失っている様子はなく、一見先ほどと変わらぬ風体であった。
「むふっ、むふむふふ……さっすがぁっ。アタシの子たち、もう20くらいやられちゃったかも」
乙姫は暗がりから這い出るように、厨房からずるりと姿を露にした。その身体は思いの外、大きくガタイがよく見える。
ギョロギョロと大きく目をひん剥き、にやぁっと笑う乙姫。その頭部に携える無数の光は細長くしなり……先端は蛇の頭のようになっていた。それらは萌衣乃を威嚇するように口を開いて牙をみせ、刺すような視線で睨んでいる。
「アタシの子たちは全部で100匹ッ、全て魂崩壊するまでアンタに勝ちはないわぁぁぁッ!」
乙姫の光の蛇がわらわらと動きだし、勢いをつけ小型ミサイルのように萌衣乃に降り注いだ。
「……ぬるいわッ」
萌衣乃は焔の翼をはためかせ、後方へひらりと身をかわす。目標から外れた光の蛇たちは床に追突し、爆発音を鳴らして床を破壊した。
(わっぴょぉーっ、でぇーすとろぉーいっ!)
床から一斉に顔を上げる光の蛇たち。その先には萌衣乃を捉えていて、軌道を決め直すなり次々と弾丸のように射出していく。
「むぅーっふっふふふふふッ! 一匹残らず召し上がれぇぇぇえッ」
「笑わせるッ」
萌衣乃の両手から、ボワァと十数の焔の玉が出現する。それを迫り来る光の蛇の集団へ放ると、当たる先からパシンッ! と消滅していった。
乙姫は「むふっ」と笑い、残った光の蛇をシュルシュルと巻き戻し身体の周りでずるずると這い回らせた。
「んんーッ、やっぱり正面突破はムリみたいねぇーっ! さすがは……むふふっ」
萌衣乃は焔の翼で宙に浮いたまま、乙姫を見下ろす。見上げる乙姫は、にやぁっと笑って言葉を続けた。
「前ラグナロクにおける……幻獣の王フェニックスッ!」
乙姫の言葉を受けた萌衣乃は、全身の羽根を逆立てるように光の焔を奮い起たせた。
読了、お疲れ様でした(。-∀-)




