friend
怖い夢…。
みんな、離れて行ってしまう。
待って…。置いて行かないで…。一人にしないで!
その声は、届かない。手を伸ばして掴もうとしたが、届かない。
(一人は嫌。お願い、誰か。)
そう願っていたら、すっと、誰かが手を差しのべてくれた。手をつかもうとした瞬間、突き落とされた。そして、ゆっくり、落ちていった。暗い闇の中へ。何が起こったのかわからないまま落ちていった。涙が止まらない。悲しさが止まらない。
そこで、夢が終わった。服が汗で濡れていた。
目には、涙がたまっていた。やっと現実に戻れたんだとホッとする。
時計を見たら8時30分すぎだった。
遅刻…。
急いで、シャワーを浴びて学校に向かった。
8時50分に着いた。HRをやっていたが私は、お構い無しに2-1教室に入った。
「小暮真琴、遅れました。」
「小暮、今日はどうした?遅刻なんて初めてじゃないか。」
「来るときに色々ありまして、すみません。」
「それなら、仕方ない。席につきなさい。」
「はい。」
そして、席についた。担任の永本徹先生は厳しい先生だ。生徒指導の先生より、厳しいと思うけど、私にはあまい。成績は、悪いほうじゃないし、何しろ、私生活が良いからだ。先生達は私を信頼している。
HRが終わり、1時間目の準備をしていると、肩を叩かれた。
「真琴~。おはよ~う。」
「実季、おはよう。」
「遅刻なんて初めてじゃん。どうした?何かあったの?」
「う~ん…。ちょっとね♪大したことないから。」
「そっかぁ。まぁ、無事だったから良かったけど。心配したんだからね!」
「ごめんね。お詫びにジュースでも奢るね♪」
「やったぁ~♪真琴優し~。」
「そんなことないよぉ~♪あっほら、チャイム鳴っちゃうから行こっ♪」
「はーい。」
小此木実季はクラスメイト。いつも一緒にいる。明るくて元気だけど、勉強が全くできない。でも、面倒見はよくって優しい。私のことを本当の友達だと思ってるみたいだけど、私は、本当の友達なんて思ってない。一言でいえば、うわべな関係。私は、みんなにいい人ぶっている。優しくすれば、友達になるし、周りに合わせていれば、信頼される。運動も勉強もみんなより出来ていれば、憧れを抱いて近づいてくる。愛想よく、笑顔でいれば告白される。
うわべで過ごせば、辛いことなんて何もない。だって、本気になって嫌な想いをしたくないから。昔みたいに。
だから、猫をかぶって生活していく。どんなことがあっても、絶対に本気にならない。全てに対して、本気にならない。
午前の授業が終わった。いつも通り、実季とお弁当を食べていた。すると、実季が不思議そうに遠くを見ていた。
「どうしたの?」
「あっいやぁ、あの子、いつも一人じゃない?それに、お弁当食べないでいつも音楽聞いてるし。あれじゃあ、死んじゃうなぁって…。」
「そういえばそうだね。ちょっと話してみる♪」
「うん。」
一番前の席にいる小金井鳴海に声をかけた。
「ねぇ…。」
「…はい。」
「小金井…鳴海ちゃんだよね?」
「はい。」
「何で、お弁当を食べないの?お腹空かない?」
「…作ってないから。空くけど、無いから。」
「購買で買わないの?」
「お金持ってない。」
「じゃあ、私の食べて♪」
鳴海は凄く驚いていた。
「でも、そしたら小暮さんのが…。」
「いいよ♪私は、購買で買あから。それと、真琴でいいよ♪私も鳴海って呼ぶから♪」
「ありがとう。」
「うん♪」
私は、実季の所に戻った。実季は食べ終えていた。相変わらず、大食いの実季。
「どうだったぁ?」
「大人しい子だったよ。ちょっと購買行ってくる。」
「了解~。」
私は、一人で買いにいった。
購買でパンを買い教室に戻る途中、誰かとぶつかった。ぶつかった相手はすぐにわかった。
「ごめん。小暮さん。」
「いつも、よくぶつかってくるよね?黒崎君。」
「そんなことないよ?あっそうだ。帰り一緒に帰らない?今日、部活休みだからさ。」
「いいよ♪じゃあ、いつもの場所で待っててね♪」
「わかった。じゃあね。」
私達は猫かぶりをしたまま、別れた。黒崎楓は私の本当の友達。幼稚園からずっと友達だったのもあるけど、一番信頼できる理由があるからだ。私は、楓しか信じられない。それは、私の全てを知っているからかもしれないし、楓と私は似た者同士だからだと思う。
「真琴~。さっき、楓君と話してたよね?」
「うん。なんで?」
「遠くで見てても二人はお似合いだなって思ったから…。二人って付き合ってないの?噂がすごいよ?」
「付き合ってないよ。楓とは家族みたいな感じだけで、恋人じゃないよ♪」
「そうなんだぁ~。お似合いなのにもったいない。二人とも、美女美男だし~。」
「そんなことないよぉ♪じゃあ私、戻るね♪」
「あっごめんね。まだ食べてなかったんだね。じゃあね。真琴~」
やっと、教室に帰れる。噂は私も知っている。楓と私が付き合ってるってこと。女子からも男子からも人気者同士だからあの二人なら付き合って当然という考えみたいだけど、いい迷惑。それを聞くたびにイライラする。
(私達のこと何も知らないくせに…。)
教室に帰ると、ざわざわしていた。クラスの女子がもめているみたいだった。男子は高みの見物。私は、実季の所に行き何があったのか聞いた。
「実季、何があったの?」
「あぁ、真琴。こいつらが紗李奈のこと裏切ったんだよ。紗李奈はぶちギレ。」
「なるほど。裏切ったって何したの?」
「なんか、過去のことをネタに紗李奈を脅したんだよ。馬鹿だよね。今まで通り大人しくしてれば紗李奈が優しくしてたのに。」
「…そうだね。でも、裏切ったって事になるの?昔から、グループに入ってたんだっけ?」
「入ってたよ。あと、小金井も入ってるし。」
「そうだったんだ。」
「真琴はそういうグループとか知らないもんね。でも、覚えておいた方が身のためかも。あんな風になりたくなかったらね。」
「どういうこと?」
「自分が偉いっていう女王様がいるから関わると危ないってこと。友はちゃんと選ばなきゃね。あっでも、真琴は皆に信頼されてるから大丈夫かぁ。」
「ねぇ…。裏切ったのって一人じゃないんだね?」
「あーそうだね。なんか、赤信号皆で渡れば怖くないみたいな?」
私は、その子たちを見て哀れに感じた。
チャイムがなり、全員席についた。何事も無かったように。
放課後、いつもの場所で待っていたら、遠くで話し声が聞こえた。気になって見に行ったら、紗李奈と裏切った3人が話していた。遠くでよく聞こえなかったが、最後の一言だけ聞こえた。
「じゃあ、うまく調べてね♪」
と、3人は頷いて行ってしまった。
紗李奈は薄く笑ってこっちを見てきた。私と目が合ってしまった。
(やばっ!)
と思った瞬間、誰かに肩を叩かれた。
私は、驚いて走った。というより、怖くて逃げた。
手首を握られこれ以上逃げることができなかった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…。」
泣きながら、謝った。すると、優しく、撫でて私を落ち着かせた。
「俺だよ。真琴。怖がるな。もぅ、大丈夫だから。ほら、な?」
「楓?私…。」
「大丈夫だ。俺がいる。何があったか話してみろ。なっ?」
「うん。」
そして、さっきのことや昼のことを話した。
すると、楓は「真琴は気にしない方がいい。」と慰めてくれた。でも、気にしないことができない。どうしても怖い。周りの人の目が、怖い。
「私ね、夢を見たの。落とされる夢。」
「誰に?」
「わからないの。顔は見えなかった。」
「…俺達、猫かぶって生活してんじゃん?だから、今まで普通に暮らせた。でも、俺達、それでいいのかな?俺は、大人が嫌いで周りが許せなかった。人ってさ平然と嘘つくだろ?だから、信じる事ができなかった。大人なんか、勝手じゃん。子どもの気持ちなんて知ろうとしない。だから、猫かぶって本当の自分を隠したわけだし。真琴は俺と変わらないからわかりあえて、本当の自分を出せてる。」
「うん。だから、これからも…。」
「それじゃ駄目なんだよ。」
楓が何を言ってるかわからなかった。本当の自分を出したくないからやってるのにそれが駄目なのかわからなかった。
「本当の自分を出さないと、一生苦しむ事になる。猫をかぶっている自分は本当の自分じゃない。本当の自分を知ってほしいんだろ?違うか?」
「知ってほしくないよ。知られたら、昔と同じじゃん!傷つくのはもぅ、嫌!一人は嫌!」
「なら、尚更知ってもらわないといけないんだ!猫かぶっていたら、一人なんだよ!」
「なんで?みんな寄って来るよ?一人じゃないよ!」
「いいか?真琴自身あいつらをどう思ってる?」
「本当の友達じゃない。」
「本当の友じゃないなら一人と変わらないだろ?」
楓に言われて気づいた。ずっと、一人だったんだ。みんな、私自身を好きにはなってくれてない。本当の自分を見せて認められるから信頼できる本当の友達ができるんだ。
「どうしたらいいの?」
「ありのままの自分でいよう。すぐには無理だけど。俺もやってみるから。」
「…。」
家に帰り、部屋にこもった。昔の、過去のことを思い返した。
幼稚園の時、楓と一緒に遊んでた。その時から、楓は猫をかぶって過ごしてた。私は、それを不思議に思っていた。
「ねぇ、なんで、笑ってないの?」
「笑ってるじゃん。」
「違うよ!本当の笑顔じゃないよ!」
その時、驚いてた。楓は気づかないって思ってたんだと思う。でも、すぐにわかった。作ってるって…。すごく、違和感があった。そうかんじたのは私だけだったみたいだけど。
「こうしてれば、楽なんだよ。それに、みんな、いいやつだって思って近づくし…。」
「楽なの?」
「まぁ、本気になるよりはね。」
「わかんないよぉ」
「そのうちわかるよ。」
私は、わからないまま中学生になった。
楓は私以外、猫をかぶっていた。
「真琴~。帰るぞ!」
「待ってよ、楓!」
家が近いからよく一緒に帰っていた。
「楽しかったね♪部活。」
「そうかぁ?俺はふつー。」
「えぇ~!」
私と楓は、剣道部に入部した。楓は、県で1位だけど、私は、3位だった。でも、勝ち負けより、楽しめれば良かった。剣道が大好きだったから。楓も同じ気持ちだと思う。周りからの期待で、楽しめていないようだけど、やってるときは輝いていた。
「そういえば、友達できたか?」
「うん!みんな、仲良し!楓は?」
「俺は、真琴だけ。」
「変わんないね。」
「このほうが楽なんだよ。」
「嘘。」
「嘘じゃねぇよ。」
「つらいくせに。」
「別に…。」
「だって、みんな、楓が輝いて見えるみたいだけど、私には悲しく見えるよ?本当は、自分自身を見てもらいたいんでしょ?」
「見てもらってるじゃん。」
「みんな、見てないじゃん!楓のかぶってる姿しか見てないじゃん!本当は、寂しがり屋で、強気で、忘れっぽくて、心配性で、あんな完璧な人間じゃないよ!楓は、みんなが、思ってるほど完璧じゃないよ!そういうところがあるから楓なのに。みんな、本当の楓を見てない。悲しい顔してるところも、怒ってるところも…。楓が自分でいないのが可哀想だよ。」
泣きながら、楓に言った。楓はいきなりのことで驚いたみたいだけど、すぐに、笑った。
「ありがとう。真琴。でも、見てくれてるじゃん?だから、俺は、真琴だけ信頼してるんだよ。俺の事、ちゃんと見てくれてありがとう。マジで嬉しいよ。」
その時、楓は涙を流した。つらかったことを全て流すように。でも、猫かぶりを止めなかった。理由は、ずっとやってきたことをいきなり止めると後が面倒という事らしい。でも、本当は、止めたいけど、周りがどう思ってしまうのか不安だったからだと思う。今までの楓が偽りだと知ったら、みんな、離れてしまう。猫をかぶってきた時間を無駄にしないように、生活していきたいと思ったから、止めることができなかったのだと思った。
中3になり、受験の勉強でみんな、ストレスをためていた。私は、いつも通り勉強していた。特別、行きたいという高校が無かったため、自分の成績より、少し低めの公立にした。楓も、私と一緒にした。クラスの人は驚いた。当然だけど。学年1位の楓が有名高校じゃないんだもん。でもね、楓の気持ちは痛いほどわかったよ。だって、これ以上、期待されたくないもんね?演じるのに疲れちゃったんだよね。だから、私が楓を、本当の楓でいれるようにするからね。自由にするからね。だから、もぅ少し我慢してね。
ある朝、いつも通り学校に行き、クラスメイトに挨拶した。でも、みんな、私の事を無視した。
一番の友人に挨拶したら、無視してどこか行ってしまった。わけがわからない。その様子を見て、みんな、笑ってた。
頭が痛くなって、席に座ろうとしたら、自分の席がなかった。
「ねぇ、私の席…。」
みんな、聞かない。どうしてこうなったのかわからない。
「ねぇ、小暮さん。ちょっと来て。」
私は、ついていった。もしかしたら、助けてくれるんじゃないかって…。でも、違った。
「あんた気に入らないんだよね?」
「えっ?なんで…。いつも仲良しだったじゃん。友達だったじゃん!」
「友達なんて思ってないから。」
「そんなっ!」
「あんたなんか大っ嫌いなんだから!」
吐き捨てるように言い、教室に戻ろうとする。私は、なんで、こうなったのか聞こうとし、肩を掴んだら思いっきり突き放された。同時に足がよろけた。話してた場所は階段の踊り場。足が床についてない。
(死ぬの…?)
涙が止まらないまま階段から落ちた。
気がつくと知らない天井が見えた。頭が痛い。
(そっかぁ。階段から落ちたんだっけ?)
でも、死んだんじゃないっけ?本当に生きてる?
「生き…て…る?」
「真琴っ!良かった。」
「楓…私、生きてる?」
「生きてる。生きてるよ。」
右手が痺れていた。楓が思いっきり握っていたからだった。多分、私があっちの世界に逝かないようにしてくれたんだね。
私は、退院して学校に行った。本当は行きたくなかった。あんなことがあったから。でも、どこかで信じてた。いじめじゃないことを。ただの偶然だったことを。だって、本当の友達だから。
そう思い続けた。
教室に入るとみんな、集まって謝ってきた。やっぱり、いじめじゃなかったんだとホッとした。
すると、突き落とした子が私の前にきた。
「ごめんね。わざとじゃないの。」
「わかってるよ。」
「ごめんね。たまたま、ターゲットが真琴になって、それで、あんな事言ったりしちゃったの。」
その時、耳を疑った。何?ターゲットってなんの事?私は、真っ白になった。
「ターゲットって何?」
「みんな、勉強でストレス抱えてたから、その発散で誰かをいじめることにしたの。で、その場に居なかった真琴をターゲットにして、いじめをしたの。本当に悪いことしたって思ってるよ!ごめんなさい。」
何それ。私は、いじめられてたの?友達なのに。裏切られた。信じてたのに。本気で信頼してたのに。
怒りを抑えられず、教室の机やイスを投げたり、振り回したりした。何が、友達だよ。何が、信じるだよ。悪いことしたなんて思ってないくせに。本気で信じた私が、馬鹿らしく思えた。許せなかった。
そのあと、散々暴れて、ほとんどの子が怪我をした。私は、親を呼ばれ先生と話した。いじめがあったことを話したら、先生は「つらかったな。」と言ってくれたが、私の心には染みなかった。
私は、その日以来、猫かぶりをするようになった。本気にならないため。一人にならないため。本当の自分を見せないため。だって、本当の自分は、すごく、弱いから。心細いから。だからきっと、嫌われてしまう。前みたいに、ターゲットにされてしまう。笑われてしまう。怖い。誰か助けてほしかった。
楓は、私の猫かぶりを見て悲しそうな顔をしたが、何も言わなかった。そのほうが、幸せだと思ったからだろう。でも、どこかでそれは、幸せじゃないと感じていた。嘘の自分を好きでいてもむなしいだけ。本当の自分を知ってくれて、受け入れてくれて初めて幸せになれる。だから、本当は止めたいんだ。誰か、止めさせて。楓が頑張って止めようとしてるのに、私が、こんなんじゃ駄目。楓を救うためには私が、しっかりしないといけないじゃん。でも、一人じゃ何もできないよ。
何もできないまま、3ヶ月引きこもった。楓には、なんでもないから安心してとメールした。
すると、誰かがノックしてきた。
「いいよ。」
「失礼します。」
そこには鳴海がいた。
「…これ、お弁当箱。」
「これだけの為に?」
鳴海は首を振った。
「真琴が来ないから。」
「…。大丈夫だよ。なんにもないから。」
「…嘘だ。」
「えっ?」
「そうやってごまかさないで。何かあったんでしょ?いつも、作り笑いしてて、でも、悲しそうで。つらそうで。真琴は何をそんなに隠してるの?話してよ!友達でしょ!」
驚いた。全部、私の事を見ていて。わかってくれて。だから、嬉し涙が止まらなかった。
そのあと、私は、全部話した。過去のことも。猫かぶりのことも全て。鳴海は真剣に聞いてくれたあと私を抱きしめて泣いてくれた。私も泣いた。
「私は、真琴の味方だよ。ずっと、ずっと。だから、苦しいことは言って。つらいことも言って。それが友達だよ。本当の友達って助け合えるんだよ。うわべの友達なんて必要ないんだよ。本当の友達って1人か2人でいいんだよ。私はね。猫をかぶっている真琴より、今の真琴が好き。だから、そうやってごまかさないで。真琴は真琴なんだよ?」
「あり…がと…う。」
鳴海は泣き止むまで抱いてくれた。
そのあと、私は、鳴海に本当の友達になってくれるようにお願いした。そしたら、「今さらなに言ってるの?当たり前でしょ。私たちは、本当の友達!」
と言ってくれた。そのあと、色々話した。
一番気になったのは、グループのこと。鳴海は紗李奈のグループじゃないか聞くと即答で違うと言った。そもそも、本当の友達がその時いなかったし、紗李奈は苦手だから、関わらなかったらしい。
なら、何故、実季があんなこと言ったのかわからなかった。鳴海が言うには、実季は紗李奈とつるんでたらしい。それを聞いて嫌な予感がした。
明日の朝、鳴海と一緒に登校することを約束した。
見事、鳴海のおかげで立ち直ることができた。
猫かぶりもしないで過ごすことも約束した。楓にその事を報告したら、喜んでいた。楓も、猫かぶりをやめれるように努力するみたい。これで、全て終われたかに思えた。
また、あの夢を見た。
手を伸ばそうとしたら、突き落とされた。
(誰?)
そこには、実季がいた。私は、驚いた。実季に嫌われる覚えがなかったからだ。いつも、一緒に過ごしてたはず。笑いながら、楽しく過ごしてたはずなのに、どうして?
つらいおもいを抱えたまま、闇の中に消えた。
何事もなかったように鳴海と登校する筈だったが、鳴海は、私が何か、抱えてるのに気づいた。
私は、鳴海に夢のことを話した。鳴海は、真琴を絶対に守るから!だから、安心して?と言ってくれた。それだけで、私は、幸せに感じた。だから、頑張ろうと思えた。楓の為にも、鳴海の為にも、自分の為にも…。
鳴海と一緒に教室に入ると一斉に振り向いた。いつもと様子が違った。私が、挨拶したら無視されてしまった。今まで、嫌われないようにしてきは筈なのに過去に戻っている。それを見て笑ってる人たちがいた。鳴海は、私の手を引っ張り、教室から出してくれた。そのまま、階段を降りようとしたとき、誰かが、私たちの前に立ちふさがっていた。
その人は、実季と紗李奈だった。
「どぅ?過去に戻った気分は?」
「どうして、紗李奈がそれを?」
「調べてもらったのよ。あの3人に。」
3ヶ月前にあったことを真琴は思い出した。調べるという意味は、私の事だったことにショックを受けた。
「あんた、ほとんどの人を怪我させたんでしょ?すごいよ。」
「紗李奈、あんた最低!真琴の気持ち知らないで…勝手なこと言わないで!」
「私の気持ちも知らないじゃん!私、ずっと、真琴のことを親友だと思ってたのに、うわべだったなんて…。ただ、利用されてただけじゃない!真琴を許せない。」
「…ごめんね。実季。どうしても、裏切られるのが怖かったの。私、自分の事しか考えてなかった。実季のことを考えてなかった。だから、初めからやり直そう。だから、許して…実季。」
実季も私も泣いた。鳴海はハラハラしてたけど、ホッとしてる様子だった。その場が許せなくなった紗李奈はイライラしていた。
「実季。それで、いいわけ?」
「…うん。真琴は私以上に苦しんでたから。それに、やり直そうって言ってくれた。全部、真琴の本音。一緒に居たからわかる。言葉を選んでない。だから、真琴を信じたい。」
「じゃあ、私を裏切ったって事だよね。じゃあ…。」
紗李奈は実季に内緒話をした。すると、実季は顔色を変えた。
「やらないと、どうなるかわかるよね?」
「できないよ!」
すると、実季は私の方を向いて訴えかけてきた。
私に、どうすればいいかわからないという目をしていた実季に、勇気を振り絞って言った。
「…いいよ。」
「えっ?」
「何されるか、わからない。でも、私は、大丈夫だよ。実季が、無事なら嬉しいから。それに、助け合えるから友達なんだよ。だから、大丈夫。助け合おう?今回は私が、実季を助ける番。今度は、実季が、私を助けて?」
実季は、ずっと、泣いてた。苦しいことがたまっている証拠だった。でも、私の言葉を理解し泣くのをやめた。
「…真琴。死なないで。」
「大丈夫。思いっきり押して。」
実季は頷き、私を押した。鳴海は、あわてて、私の手を取ろうとしたが届かない。紗李奈は笑っていた。
(夢はこのことを伝えたんだね。なんとなくわかっていたかもしれない。…私、死んじゃうの?)
覚悟を決め、目をつぶった。しかし、落ちたはずなのに痛みが感じない。麻痺してるのかと思ったが体はちゃんと動く。
誰かが、後ろで受け止めてくれていた。
「今度は、助けられた。」
楓だった。嬉しそうに言っていた。
「なんで…?」
「嫌な予感がした。それに、前は助けられなかった。だから、助けたかったんだ。」
「楓…ありがと。怪我は?大丈夫?」
「なんもねぇよ。」
「よかったぁ。」
鳴海は上で、力が抜けていた。実季は、泣きながら、私に抱きついてきた。そして、ごめんなさい。とずっと、謝った。実季には、もぅ大丈夫だよ。と伝えた。そして、私は、紗李奈のとこに行きビンタをした。
「貴方は最低。卑怯よ!」
「なんですって?!」
「これ以上、私の友達に手を出さないで!」
紗李奈は、キッと睨んだが、私も負けなかった。すると、鳴海は、紗李奈に言った。
「貴方は可哀想ね。友達を作れないなんて。イジメだけの友達なんて友達じゃない。だから、本当の友達を作りなさい。そうすれば、貴方は変われるから。真琴のように、強くなれるから。」
紗李奈は泣きながら一言言った。ごめんなさい、と。言ったあと、走ってどこか行ってしまった。
私は、空を見上げた。そして、強く願った。
これからも、仲良く友達と過ごせますように、と。
全て終わって4人で教室に戻った。
友達ってなんだろう?
なんで、必要なのだろう?
本当の友達とうわべの友達って、同じ友達なのにこんなに違うのだろう?
友達だから許せることも許せないこともある。
それって、幸せなことかもしれないよ?
友達って特別なことだと思う。いて当然なんて思わないでほしい。いるってことをありがたく思ってほしい。幸せに感じて。そしたらきっと、いい絆が生まれるよ。何でも言い合えて、助け合えて、笑いあって、泣きあって、相談しあって…それが友達でしょ?信頼しあってるから友達でしょ?じゃなきゃ他人だよ。うわべの友達ってそんなに続かない。どんどん離れていっちゃうよ?そんな世界って切ない。だから、みんなで一人一人を分かり合おう?
そして、その人たちを、受け入れて?
手を差しのべて、掴んでみよう?
貴方のおかげで、救われる人が必ずいるから。
友達との思い出を作っていこう。楽しい日々ってあっという間だから、後悔のないようにね。
My friend…。