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8.うわさ

固定電話が鳴った。受話器を上げようとした稲子を制して、代子が出た。

暫く応答していたが、「何番におかけですか?」と代子が言うと、相手はプツッと切ってしまった。


 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 島代子しまたいこ・・・有限会社芸者ネットワーク代表。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。芸者の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。

 飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 烏丸まりこ・・・芸者ネットワークの事務員。

 貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。

 西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。

 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。


 =====================================


 ※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。

 現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。

 ※この物語に登場する『芸者ネットワーク』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。

 リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子しまたいこである。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。


 午後2時半。芸者ネットワーク本部。

 固定電話が鳴った。受話器を上げようとした稲子を制して、代子が出た。

 暫く応答していたが、「何番におかけですか?」と代子が言うと、相手はプツッと切ってしまった。

「なあに、代子。」「オレオレ詐欺。あほくさい。」

「代子、『暴れん坊小町、街で暴れる』って、SNSで話題になってるみたい。まるで、チエちゃんが怪獣みたいやな。」

「え?『暴れん坊小町』?戸部チエちゃんが?」「知らんかったの?」

「ねえさん、ごめんな。ウチが教えて無かったから。」と、いつの間にか入って来た小雪が謝った。

「いや、小雪ちゃんの幼なじみで警察の警視さんって聞いてたけど・・・。」

 小雪は、かいつまんで説明した。

「斎王さんが、暴れてはるわけ?しかし、『暴れる』、だけではビル壊したり火を噴いたりしてるかどうか分からんなあ。」

 塔子がPCから目を離し、「濡れ衣、やな。偽物現れる、か。正義の味方は辛いな。」と、塔子が言った。

「チエちゃんは、やーさんちゃうで。」と、小雪は膨れた。

「塔子。『拠点』に連絡して、何か情報ないか探ってみて。」「了解。」

 午後3時。

 固定電話が鳴った。小雪が出た。

「ねえさん、烏丸御池の『乾物どす』さんから。」

 転送電話の受話器を取って、代子が応答した。

 その電話を切ると、代子は迷わず東山署用のIP電話に向かった。

 東山署とのホットラインである。

「はい。東山署。何かありましたか?」

 出たのは署長の神代だった。

「了解しました。本物を向かわせます。」

 午後4時。中京区虎屋町。烏丸御池駅近く。

 烏丸御池駅は、地下鉄烏丸線と地下鉄東西線の2路線が乗り入れ、両路線の乗換駅となっている。『烏丸御池』という地名はなく、烏丸通りと御池通りの交差点という意味で、京都人は、英語のStreetとAvenueに相当する交差点を目印にして、東西の方角を「東入る(ひがしいる)」「西入る(にしいる)」と表現し、南北を「上る(のぼる)」「下る(くだる)」と表現する。

 所番地(住所)が分からなくても、目的地を見付けやすいから、今でも使用している。

 郵便物に、その形式で記入しても、ちゃんと届く。

 地下鉄の歴史は浅く、京都市交通局が運営する地下鉄の路線は、烏丸線と東西線しかない。

 地上の交通網は、市電が1978年9月30日限りで全廃されたので、市バスかタクシーになる。路面電車は私鉄であり、市電ではない。


 烏丸御池駅の地上出口の一つで、怒鳴り散らす外国人の女性がいた。

 先に到着した茂原刑事は、日本語が通じないので、困り果てていた。

 "Come on out, Abarenbou Komachi(出てこい!暴れん坊小町!!)”

 到着したチエは、5分程話して、理解した。

「ばらさん、駅周辺の外国人を探して。写真撮って見せたら、この奥さんに心当たりある人が出てくるかもしれん。ウチ、大使館に連絡するわ。かなり情報が錯綜しているわ。ケータイは電池切れ。ご主人とはぐれたんや。ご主人が、友人に呼ばれて行った『お座敷』で聞いてきた『暴れん坊小町』という単語を言えば、ご主人と会えると思い込んでいるらしい。」

「了解。」

 茂原達は、人海戦術で、旦那を探し出した。約30分で見つかった。

 幸い、旦那は日本語が堪能だった。

 慣れない日本に来て迷子になってパニックになったのだ。

 乾物屋が『暴れている』というのは、パニックで怒鳴り散らしていたことだった。

 午後5時。芸者ネットワーク。

 稲子と塔子と烏丸が帰り支度を始めていると、代子のスマホが鳴動した。

 代子がスピーカーをオンにして、チエの説明を皆に聞かせ、皆が納得した。

 烏丸が「犯罪やなかったんですね、良かった。」と言い、「湯豆腐食べに行きません?」と皆を誘った。

 ―完―





茂原達は、人海戦術で、旦那を探し出した。約30分で見つかった。

幸い、旦那は日本語が堪能だった。


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