39.犯罪の陰に女あり?
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
橘[島]代子・・・仕事上、通称の島代子で通している。「有限会社芸者ネットワーク代表」改め「Geikoネットワーク」。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩。芸妓の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。
飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。カムフラージュの為、タウン誌『知ってはる?』を発行している。
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
烏丸まりこ・・・Geikoネットワークの事務員。
貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。
西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
代子は、芸妓の先輩。
刑部政男・・・京都地検特捜部所属。
灘康夫・・・京都府知事。
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※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。
現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。
※この物語に登場する『芸者ネットワーク(本作からGeikoネットワーク)』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。
会社名は『スポンサー』の一人、橘吉右衛門が命名した。
リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子である。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。
午前9時。Geikoネットワーク。
烏丸が正月休みに入ったので、代子は朝から出勤している。
実は、病院も今週末から診察が正月休みに入ったので、急用でないと、行きにくくなったのだ。
塔子が受付けし、雑誌記者が取材に来ていた。
「『知ってはる』は、こちらの出版だとお伺いしましたが、看板が違いますね。Geikoとは芸者さんのことでしょう?」
「本山さん、ですか。私がGeiko出身だから名付けた名前ですが、何か問題でも?見ての通り身障者になりましたので、何か京都に役立つ情報ネットワークがあれば、と立ち上げた次第です。」
Geikoネットワークの裏の情報活動は、表だってはいない。塔子は、気を利かせて、東山署とのホットラインを目立たぬ場所に移動し、オフラインにしていた。
「詰まり、名店紹介や名所旧跡の案内をする会社ですか。小規模ですねえ。」
「大規模にする必要はありませんので。タウン誌ですから。」
「引退した橘議員とは・・・。」
「橘は夫どす。Geikoも恋愛するんどすえ。」
「引退は・・・。」
「公式発表の通りです。橘は、がんになったので、政治家を引退しました。何か有効ながん抑制剤でもご存じどすか?」
「いえ・・・政治家さんと芸者さんとは、ロッキード事件に代表されるように・・。」
「産まれる前のことは知りまへんなあ。どこかの雑誌で、何かの『拍子』で読んだことがありますけど。元政治家と元芸妓の夫婦を取材しても、八つ橋買える程の値打ちもないと思いますけど。稲子ちゃん、『知ってはる』最新号、お渡しして。まだ市内に配ってへん、最新号です。お疲れ様どした。」
記者が帰って、30分してから小雪と刑部が入って来た。
「大丈夫やった、ねえさん?」と小雪が気遣いを見せた。
「不審な男がウロウロして入って行ったので、小雪さんを引き留めたんです。」
「おおきに、刑部さん。あれ、政治ゴロ言うやつですか?」
「ええ。灘知事の贈収賄のタレコミがあったから、我々も捜査しています。政敵のマッチポンプかも知れません。どの道、来年に持ち越しですが。」
「ロッキード事件のこと言ってました。どんなこじつけ記事書くのやら。ぜーんぶ、惚けておきました。橘が、がんで政治家引退したことは、党から公式発表してますからね。なんぞエエ薬おますか?って尋ねたら俯いてましたわ。」
「病院で、年越し、ですか?」
「ええ。病院は正月休みやけど、三が日は見舞いに行っていい、って言って貰ってます。家族ですし。今日は?」
刑部が、似顔絵を出した。
「似てます?」「あ。あの人。」
「気をつけて下さい、って挨拶に来たんですけどね。先を越されました。あの男、刑事事件にも関係しているかも知れませんから。」
2人の応答に、塔子、稲子、小雪が確認した。
「あの人やわ。何で似顔絵?」小雪が言うと、「奴を特定する前の目撃情報。こっちが写真。不審な男でしょう?」と刑部は剽軽に言った。
「じゃ、これで。来年もよろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いいたします。」皆で唱和して、刑部を送り出した。
「根はエエ人やけどねえ。」と稲子が言うと、「たーさんには勝てませんよね。」と、小雪が言い、皆で笑った。
塔子は、ホットラインをオンにし、チエに事情を話した。
静かな年末だった。
―完―




