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36.偽警官

「メール、受け取ったけど、西京極のアパート管理人さんが『警察から逮捕のメール』来たって銭湯のおかみさんが相談受けたって?」

「うん、写真、添付してて。警察手帳かざした写真らしい。」


 

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 橘[島]代子・・・仕事上、通称の島代子しまたいこで通している。「有限会社芸者ネットワーク代表」改め「Geikoネットワーク」。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩。芸妓の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。

 飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。カムフラージュの為、タウン誌『知ってはる?』を発行している。

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 烏丸まりこ・・・Geikoネットワークの事務員。

 貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。

 西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。


 神代チエ・・・東山署刑事。『暴れん坊小町』で知られる。

 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。


 =====================================


 ※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。

 現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。

 ※この物語に登場する『芸者ネットワーク(本作からGeikoネットワーク)』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。

 会社名は『スポンサー』の一人、橘吉右衛門が命名した。

 リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子しまたいこである。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。


 午前9時。Geikoネットワーク。

 烏丸から電話を受け取った稲子が相手をした。

「ああ。おかみさん。え、ほんまに?社長は午後からですから、出社次第、伝えます。」

 午前中は、代子は病院だ。

 お昼前。代子は、車椅子移動車で出社した。

「メール、受け取ったけど、西京極のアパート管理人さんが『警察から逮捕のメール』来たって銭湯のおかみさんが相談受けたって?」

「うん、写真、添付してて。警察手帳かざした写真らしい。」

「容疑は?」「エロ画像観たから、罰金を振り込みなさいって。」

 稲子と代子の会話に塔子が加わった。

「最近、高齢者もインターネットやSNSやる時代になって、中途半端な知識やから引っかかる場合があるらしいの。それやわ、きっと。」

 代子は、すぐに東山署のホットラインで連絡した。

 電話に出た船越が「お嬢と変わりますわ。」と言った。

「代子さん、その管理人さんに協力お願いしてくれはる?」

「了解。許せんなあ、そんなん。」「同感。」

 代子は、銭湯のおかみさんを通じて、西京極のアパートの管理人にメールを送るよう説得した。

 1時間後。

 雑談をしている間に、連絡してきた管理人からメールが送られてきた。

 すぐに塔子が東山署に、メールを転送した。

 そして、また、メールが届いた。

 今度は、塔子が東山署にホットラインで電話した。

 ホットラインには、署長が出た。

「Geikoネットワークの貴志です。たった今来たメールの第二便を送ります。署長さん、第二便には振込先が書いてあるので、銀行を抑えて下さい。それと、第一便ですが、AIエーアイで作った写真が使われています。警察官が持っている警察手帳も偽物ですが、映っている警察官も人間じゃありません。現実に近い、コンピュータで作った合成写真と考えて下さい。」

「成程。よく分かりはりましたね。」

「リアルな人間の顔は、左右非対称なんです。AIは、そこまで細かくできません。」

「ああ。そう言えば、いましたな、昔。東栄で。左側の方が映りがええから言うて、カメラマンに左側しか映させへんかった俳優がいました。」

「つまり、この写真で指名手配しても無駄なんです。存在しない顔やから。」

「成程。流石プログラナ、ですな。現行犯逮捕させます。おおきに。」


 4人は、吹き出した。「プログラナ、やて。おやつ用意しますね。」と、烏丸は笑いを堪えた。


 午後4時半。

 東山署のチエから電話が入った。

 代子はスピーカーをオンにした。

「3人組の高校生でした。やはり、黒幕がいるみたいで、今、府警の二課から逮捕に向かってます。ウチも有名になったもんやわ。高校生の一人が、『暴れん坊小町さんですか?』って聞くから、ばらさんが調子こいて、『ひかえおろう!』って言ったら、ビビって、おしこっこチビって。ほな、詳細は後で。」

 4人は、また吹き出した。

「『ひかえおろう!』って、時代劇やないんやから。」と、代子も笑いながら言った。


 午後6時。代子は、退出前に『夫』にメールした。


 こうして、Geikoネットワークの一日は終った。


 ―完―






「代子さん、その管理人さんに協力お願いしてくれはる?」

「了解。許せんなあ、そんなん。」「同感。」

代子は、銭湯のおかみさんを通じて、西京極のアパートの管理人にメールを送るよう説得した。


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