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25.コスプレ舞妓襲撃事件

「困ったなあ。社長。清水寺近くの、『四季調まつ』さんです。レンタル着物の。」

烏丸から電話が回ったので代子は受話器をとった。

「お電話変わりました。」


 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 島代子しまたいこ・・・有限会社芸者ネットワーク代表。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。芸者の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。

 飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 烏丸まりこ・・・芸者ネットワークの事務員。

 貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。

 西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。


 刑部政男・・・京都地検特別刑事部の警部補。

 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。

 楠田巡査・・・チエの相棒。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。


 =====================================


 ※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。

 現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。

 ※この物語に登場する『芸者ネットワーク』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。

 リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子しまたいこである。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。



 ※観光の街・京都には、レンタル着物店が幾つかあり、1番人気が「舞妓」と言われ、衣装を着て清水寺などを散策、記念の写真などを撮って貰えます。レンタルには色んな条件があり、興味ある方は、ホームページなどでご確認下さい。

 尚、このエピソードは、オリジナルの事件をです。現実とは関係ありません。


 午後1時。芸者ネットワーク本部。

「困ったなあ。社長。清水寺近くの、『四季調まつ』さんです。レンタル着物の。」

 烏丸から電話が回ったので代子は受話器をとった。

「お電話変わりました。」

「ごめんなさい、代子ちゃん。外国人のお客さんなんやけど、舞妓さんの衣装で清水寺付近歩きたい言うてはんねやけど・・・。性別はパスポートによると・・・。」

「規則にも、ちゃんと書いてあるんでしょ?塔子が貰って来た、ガイドブックの英語にも書いてた筈やけど。」

「そこを何とか、って粘りはるんです。どないしたらええんか、と思って。」

 電話の相手は、会社の副社長を務める女性だ。

「ちょっと待って。」

 代子は、電話を保留にして、チエに電話をした。

「エエよ、代子さん。店で待ち合わせる?」

 向こうで、塔子が頷いている。

「塔子を向かわせるから、頼むわ。」

 代子は、電話の相手に塔子とチエが向かうことを伝えた。

 塔子は、もう身支度を調えていた。

 代子は車椅子生活だ。

 代子を連れて行くには、車椅子移動車に乗せ、塔子か稲子が運転することになっている。大事だ。

 塔子は、代子とは『以心伝心』の仲だ。


 午後2時。『四季調まつ』。

 塔子が到着すると、チエは、もう来ていた。

 店のガイドブックを片手に流暢に説明をしている。

 外国人の、自称『心がオンナ』さんは、男性の連れがいた。

 どうやら、『彼氏』の入れ知恵らしい。


 30分後。漸く2人が帰って行った。

 塔子とチエは、お互いの方向に帰って行った。


 ところが・・・。

 翌朝。桂川に死体が上がった。

 午前9時。東山署。署長室。

「チエ。土左衛門は、お前が昨日通訳した相手らしい。『四季調まつ』さんのガイドブックを持ってる。」

「行ってくるわ。ばらさん、町ヤン、楠田、いくで。」


 午前10時。桂川中流。大阪府境付近。

「夕べの雨で流されたんでしょうね。お嬢、ほとけさんに見覚えは?」

 茂原の問いに、チエは即答した。

「昨日の外人さんや。ジェンダーはトラディショナルだけや、って説明したんやけどな。あ、『心はオンナ』はレンタル対象外って説明したんや。」

「警視。連れの男は、この人?」

 ひょっこりと刑部が顔を出した。

「アンタ、神出鬼没・・・また、代子さんに色目使いに行って聞き込んだ?」

「警視、言葉を選びましょうよ。」「何モン?」

「半グレですね。昨日、店で失敗したから、見せしめでしょう。渡月橋付近で、仏さん。昨夜、反社と『手打ち』があったようです。」

「詰まり、清水寺散策どころか、『余興』の為に・・・。許せんな。」


 午前11時。芸者ネットワーク本部。

 出社した代子は、警察からの連絡を稲子から聞いた。

「可哀想になあ。『心はオンナ』言うから、タダの変態かと思ったら、筋モンの関係者やったんやな。塔子に『トランスジェンダー』お断りって『四季調まつ』のガイドブックに載せるように依頼しに行かせたわ。本モンの女性やったら、99歳までオッケーらしいけどな、ただ着て楽しみたい人は、インターネットで取り寄せたらエエんや。」

 代子は、溜息をついた。


 ―完―


 ※日中、歩いている舞妓さんは、実はレンタル衣装で楽しむ観光客の場合が多いそうです。本物の舞妓さんでもレンタルの舞妓さんでも悪戯したら、犯罪です。





塔子が到着すると、チエは、もう来ていた。

店のガイドブックを片手に流暢に説明をしている。

外国人の、自称『心がオンナ』さんは、男性の連れがいた。

どうやら、『彼氏』の入れ知恵らしい。


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