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20.乱闘2

「お陰で、助かりました。ところで、いつ警視と、詳細な打ち合せをしたんですか?」

「ああ。以前、冗談で、こんな時はこうするみたいな話をしたことがあるんです。

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 島代子しまたいこ・・・有限会社芸者ネットワーク代表。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。芸者の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。

 飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 烏丸まりこ・・・芸者ネットワークの事務員。

 貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。

 西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。

 小雪(嵐山小雪)・・・舞妓を経て、芸者をしている。神代チエの小学校同級生であり、代子の芸者後輩。


 刑部政男・・・京都地検特別刑事部の警部補。

 遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』の広報課課長。

 大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。白鳥の父。

 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。



 =====================================


 ※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。

 現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。

 ※この物語に登場する『芸者ネットワーク』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。

 リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子しまたいこである。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。


 午後1時。芸者ネットワーク本部。

 刑部が、代子に礼の電話を掛けてきた。

「お陰で、助かりました。ところで、いつ警視と、詳細な打ち合せをしたんですか?」

「ああ。以前、冗談で、こんな時はこうするみたいな話をしたことがあるんです。チエちゃんは、そのキーワードを暗号で言ってきた。実は、ウチのスポンサーに東栄さんもいるんです。主義義務守ってくれますよね、刑部さん。」

「勿論です。そうでしたか。じゃあ、ダミーで投げた大根のことも。」

「ええ。私の案です。桶がそこにあれば、思い込むでしょ。」「成程。刷り込みですか。勉強になります。あ、あの反社ですが、手広くやってくれてたお陰で一網打尽。市長さんを芸者さんと誘拐する積もりが、マフイアっぽい連中が絡んで来たらしい。警視の話では、マフイアでなくて、近頃流行の『お騒がせ外国人』ご一行だったらしい。やつらは、本物らしい芸者さんを見て興奮していたとか。盛りの付いた犬、ですね。あ、下品かな。」

「今日のところは許してあげましょう。」「じゃ。」

 刑部の電話が切れると、塔子が、「また、乱闘らしい。今度は外国人同士。」とPCのNew Tubeライブを指した。

「場所は、富小路通り。御所の近く。」

 代子は、迷わず、東山署とのホットラインに繋いだ。

 電話に出たのは、副署長の船越だった。

「・・・分かりました。取り敢えず、警視に連絡します。府警にも連絡を入れます。New Tubeの『どこチャンネル』ですか?」

「めだかチャンネルです。」「了解しました。」

 副署長は、老けて見えるが、まだ五十代。世情にも疎くはない。

 午後2時。御所近く。

 チエは、木刀を2本持って来た。

 この際だ。逆らう者は、全て『公務執行妨害罪』だ。

 遊佐のCATV『きょうとのテレビ』のクルーは、目立たない格好で、野次馬に混じっている。

 15分。

 20人の若者は、『熱中症よ、来い!』と言わんばかりに、地面から太陽を睨んでいる。

 更に、10分。数台のパトカーが、全員を逮捕連行した。

「ばらさん、マチやん。付近に聞き込みして。そこのコンビニから100メートル以内。」

「了解しました。」

 チエは、楠田のミニパトに乗り込んだ。

 午後3時。芸者ネットワーク本部。

 チエが状況説明していると、遊佐からチエのスマホの電話が鳴った。

「チエちゃんが睨んだ通りやな。野次馬の中に、そっと離れる者がいたから尾行したら、めだかチャンネルの入っているビルに消えた。後は、警察の仕事やな。映像は、青戸で、警察に届けるよ。」

「どういうこと?」と代子がチエに尋ねると、普通は、野次馬が偶然撮影した映像を使う。ライブっちゅうことはグルや。」

 チエは、慌ただしく帰って行った。

「人が犬殺してもニュースにはならないが、犬が人を殺したらニュースになる。ニュースが無ければ、作れば良い。そういうことね。」と、稲子が言った。

「そう。ライブ中継は、『外れの角度』。詰まり、死角が無かった。普通はあり得ない。」と塔子も頷いた。

 午後5時半。

 小雪から電話があり。帰り支度をしていた代子らは、テレビのニュースを見た。

「New Tubeチャンネルの代表は、フォロワー数を増やしたかっただけだ、と答弁しています。」

 映像は、『袴姿』のチエが木刀で片っ端から倒していく画像だった。提供は、遊佐のCATV『きょうとのテレビ』だ。

 最後に、市長の記者会見が映った。

「不良外国人観光客が多いことは事実です。京都府京都市、色んな事案に対処しております。『余所のマチ』のようにまるで『独立クーデター』を起こすかのような民族も、世の中に存在することも事実です。でも、京都は京都です。日本民族の『芯』です。不安がありましたら、不審な人物を見かけられたなら、警察にお知らせください。」

 横で。大前田警視正が大きく頷いた。

 テレビを消した代子は言った。

「暴れん坊小町、舐めたらあきまへんえ。」

 塔子も稲子も烏丸も唱和した。

「暴れん坊小町、舐めたらあきまへんえ。」

 ―完―







「暴れん坊小町、舐めたらあきまへんえ。」

塔子も稲子も烏丸も唱和した。

「暴れん坊小町、舐めたらあきまへんえ。」


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